花は少女の幸福を願う   作:カフェラテ

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セリフのひらがなを多くすることで幼さを表現したい。


第5話 二人の友達

 夏休みの学校には珍しい、子供の声が聞こえた。

 2年生の教室前、廊下の突き当たりを曲がると、その声の主らしき二人の子供達と目が合った。

 片方は綺麗で長い落ち着いた金髪の女の子、もの片方はこれまた綺麗で艶のある黒髪の女の子。

 なぜか蓮花さんは二人を見つめたまま固まっていた。

 その見つめる目はどこか嬉しそうな、懐かしむような、それでいて哀しそうだった。

 

「あら、君達どうしたの?」

 

「わたしが教室に夏休みの宿題をわすれてしまったのをとりに来ました」

 

 山根先生の問いかけに金髪の女の子が答える。

 繋いでいる蓮花さんの右手に少し力がこもっていた。

 固まっていた蓮花さんが口を開く。

 

「…こんにちは、お名前は?」

 

「乃木若葉です」

 

「上里ひなたです」

 

 答えてぺこっと頭を下げる二人。すごく礼儀正しい。

 名前を聞いた蓮花さんの目は、さらに感情が溢れそうになっていた。

 

「……若葉ちゃんとひなたちゃんか。ここで出会ったのも何かの縁、千景と友達になってくれないか?」

 

「えっ、……え?」

 

 突然私の名前で初対面の女の子二人にフレンド申請し始めてしまった。

 さすがに唐突すぎて私も困ってしまう。いきなりそんなことを言われて了承する人がいるのか。

 

「いいですよ、わかばちゃんはどうですか?」

 

「わたしもかまわないが」

 

「…え?」

 

 いいの?友達ってそんな簡単にできるものなのだろうか。

 

「ありがとうね二人とも。千景も自己紹介しないと」

 

「…あの、えっと…郡千景、です…」

 

 蓮花さんに促され、私も自己紹介する。

 すると、上里さんが私の空いている手を握って笑いかけてくれた。

 

「ちかげさんですね、よろしくおねがいします!」

 

「うん…こちらこそ」

 

 とても優しそうな子。私なんかが友達になっていいのだろうか。

 蓮花さんの顔を見上げると、なぜか嬉しそうに微笑んでいた。

 

「ちかげ…ちゃんは何年生なんだ?」

 

「3年だけど」

 

「え、じゃあちかげ…さん?」

 

 学年が1つしか違わないのに、律儀にさん付けしてくる乃木さん。1歳しか違わない友達にさん付けされるのもなんだか嫌だ。

 

「…呼び捨てでいい」

 

「じゃあ、ちかげ」

 

「うん」

 

 一段落したところで、ずっと空気と化していた山根先生が声をかける。

 

「千景ちゃんは転校してきたところだから、学校の事とか色々教えてあげてね」

 

「「はい」」

 

 いい返事をする乃木さんと上里さん。上里さんはずっとにこにこしていて、なんだか見ていて癒される。

 隣の蓮花さんがずっと微笑んでいるのはそれが理由だろうか。

 

「では、そろそろ行きましょうか。君達も気を付けて帰るのよ」

 

「「はい」」

 

 やっぱり声を揃えて返事をする二人。とても仲良しっぽい。

 

「ではまたな」

 

「さようならちかげさん」

 

「うん、またね」

 

 手を振って帰っていく二人に手を振り返す。

 誰かに「またね」と言ったのは初めてかもしれない。

 

「…いきなりごめんね」

 

 蓮花さんが謝ってくる。突然フレンド申請したことについてだろうか。

 

「ううん」

 

 結果的に優しそうな子達と友達になれたのだから、謝られることではない。

 

「まあまだ7月だし、次に会うのは1ヶ月以上後かな」

 

 ──────────

 

 なんて言っていたら数日後の昼。僕達はとあるうどん屋さんに昼食を食べに来ていた。

 扉を開けて中に入る。空いている席を探して店内を見回す。

 

 見覚えのある姿を見つけた。金髪二人と黒髪一人。

 

「あ、ちかげさん!」

 

 ひなたが僕達を見つけて千景の名前を呼ぶ。

 

「あ、上里さんと乃木さん」

 

 自然と近くの席に座る。まさかこんなにすぐ会うことになるとは思わなかった。

 

「若葉、友達か?」

 

「ああ、この前友達になった」

 

 若葉に話しかける金髪の長身美女、おそらく若葉の母だろう。誰が見ても血縁者だとわかるほどとても似ている。

 

「郡蓮花です、この子は千景です」

 

「若葉の母の楓です」

 

 お互い初対面なので名乗っておく。やはりこの人は若葉の母であったか。

 

 その後、うどんを注文しお喋りを始める子供達。千景は同年代の人と話すことに慣れていないみたいだが、たどたどしくも楽しそうに話している様子を見て安心する。

 

 うどんを食べ進めてしばらく経った頃。

 

「次の土曜日はひまですか?」

 

「まぁそうだね」

 

「うん」

 

 唐突なひなたの問いに素直に返す。何だろうか。

 

「次の土曜日、一緒にプールに行きませんか?」

 

「プール?」

 

「私と若葉と、ひなたとひなたの母親の四人で行く予定だったんだが、この二人が千景達も誘いたいと言うんでな」

 

「一緒に行っていいの?」

 

「私は構わないぞ」

 

 若葉とひなたが僕らをプールに誘ってくれて、楓さんも構わないと言う。

 

「プール行く?」

 

「うん」

 

 千景に聞いてみれば行く気満々である。千景の返事を聞いた若葉とひなたは、笑顔で顔を見合わせていた。

 

「じゃあ一緒に行こうか、よろしくね」

 

「はいっ!」

 

 笑顔でいい返事をしてくれるひなたがとにかく可愛い。撫でてもいいだろうか。

 そんなわけで、次の土曜日は市民プールに行くことが決まったのだった。

 

 

 

 うどんを食べ終え、若葉達と一緒に店を出る。

 これから向かうのはイネス。食料品と水着を買いに行くのだ。

 ちなみに、連絡をとるために楓さんとRINE(SNS)を交換した。

 

「じゃあまた土曜日に」

 

「ああ、またな」

 

 

 若葉達と別れ、千景と共にイネスへ向かう。

 今夜の晩御飯はとろとろのオムライスでも作ろうか。千景はなんでも幸せそうに食べてくれるから、毎日頑張ってしまう。

 

「千景はどんな水着が似合うかな」

 

 小学生だからさすがにビキニとはダメだろう。やはりフリフリか?

 千景に似合う水着を見つける情熱に少し駆られながら、千景と手を繋いで歩く。

 

「イネスでアイス食べる?」

 

「食べる」

 

 この数日で随分懐いてくれたように思う。

 真夏の昼過ぎはとても暑く手汗もかくが、それでも手を握ったまま歩いていた。

 

 千景が僕の手を握ってくれるかぎり、僕からこの手を放すことはないだろう。

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