花は少女の幸福を願う   作:カフェラテ

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若葉happybirthday!!
ずっと書きたかった場面を書けて満足です。


第63話 初めまして

 バスが走行していると、時折車体が揺れる。蓮花さんが屋根の上で踏み込んだ瞬間だ。

 揺れと同時にフロントガラスからは飛び出していく蓮花さんが見える。

 弾丸のように飛び出していく蓮花さんはバスとどんどん距離を広げ、その先にいたバーテックス達を手に握った槍で貫き叩き切った。蓮花さんに頼まれて私の槍を一本渡したのだ。

 

「……あの人、何者なんでしょうかね?」

 

「……スーパーカガワジン?」

 

「香川県民は戦闘民族ですかw」

 

 敵が前方にいたにも関わらず、安全すぎるせいで他の人達と冗談を言う余裕すらある。最初は敵が現れると悲鳴が挙がったりしたものだが。

 小さい子供達はもはやバス遠足を楽しんでいるかのようだ。目の前の戦闘はヒーローショーのように見えるのだろうか。

 やがてバスが追いつくと蓮花さんが屋根の上に飛び乗り、再び車体が軽く揺れた。

 

 

 ──────────

 

 

 翌日の早朝。もうすぐ諏訪に到着するといった所で、まだ少し薄暗い遠くの空に白く長い物を見つけた。

 

「あれは……」

 

 まだ距離はあるがバスの屋根上から降り、崩れ掛けの建造物の上を渡って近づいていく。

 それは巨大な蛇のような姿をした進化体バーテックスだった。矢を放つ進化体や百足のような進化体と比べて、なかなか見かけない形態だ。

 

「ふむ……」

 

 あれは確か、切断すると分裂、再生する個体だったはず。球子が輪入道で燃やして倒したんだったか。

 しかし、今はそういった手段が無い。

 どうしたものかと考えていると、向こうがこちらに、正確には僕の下を走るバスに気がついたように迫り来る。

 

 

「ちょっ、蓮花さーん!!なんかこっちに来てますけどぉ!?!?」

 

 敵を前に立ち止まっている僕に、雪花が焦りながらバスから叫ぶ。

 すぐに助けに向かい、ひとまず遠くに蹴り飛ばす。

 

「めちゃくちゃ焦りましたよ!」

 

「ごめんごめん。どうやって倒すか考えてた」

 

 雪花に謝りつつ、蹴り飛ばした敵を追う。

 対処法を考えながら何度も近づく度に遠くに投げ飛ばす。

 

 そして、穴を空けてみようという結論に至った。

 分裂はせず、かつ自己再生ができない程の大きめの穴を沢山空けてやれば、身を維持できずに崩れていくのではないだろうか。

 周囲に星屑はおらず、融合して再生することもできない。

 

 勢い余って引き千切らないよう、左手で敵をしっかりと掴み、右手で慎重に貫く。

 

「フンッ」

 

 残った部分の方が少ないんじゃないかという程に大きめの蜂の巣にしてやると、やがてその蛇のような長い体は砂のように崩れていった。

 

「なるほど、これでいいのか」

 

 また一つ学習し、いつの間にか離れていたバスの元に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝日に眩しく照らされながら、長い道のりを走ってきたバスは止まった。諏訪に、辿り着いたのだ。

 

「人がいる!!」

 

「本当にここにも勇者様がいるんだ!!」

 

 驚きや歓喜に騒がしくなるバス内と同じように、歓迎する為に諏訪の人々が集まり周囲も騒がしくなる。

 バスの上から降り、傍に来ていた纏め役のお爺さんに歩み寄る。

 

「おかえりなさい、郡さん。この方達が北海道の?」

 

「はい。長旅で疲れているから、何か食べさせてやってください」

 

「わかりました、任せてください」

 

 諏訪の人々に案内されてついていく北海道の人々。雪花と共にその後ろ姿を見送っていると、二人の少女がこちらに走ってくるのが見えた。

 

「蓮花さーん!!」

 

「……はぁ……はぁ……待ってようたのん…速いよ……」

 

 全力で走る歌野について行こうとした水都が、僕達の元についた瞬間膝から崩れ落ちた。

 

「水都大丈夫?」

 

「はぁ…はぁ……うん……おかえりなさい、蓮花さん」

 

「…ただいま」

 

 二日ぶりの二人の笑顔に安心する。離れていた間は何もなかったようだ。

 

「ねえ蓮花さん、もしかしてこの人が……」

 

「ああ、北海道の勇者だよ」

 

「どうも、秋原雪花です」

 

 雪花をじろじろと見回す歌野に紹介する。自分以外の勇者を直接見るのが初めて故に、とても興味が湧くのだろう。

 

「初めまして!私は諏訪の勇者、白鳥歌野です!」

 

「あっ、えっと……巫女の藤森水都です……」

 

 ハツラツと自己紹介をする歌野に続いた水都だが、人見知りが発動しているようだ。

 まぁ、すぐに打ち解けられるだろう。

 

「白鳥さんと藤森さんね、よろしく」

 

「とりあえず、私達のホームに行きましょう。お風呂を沸かすわ」

 

「やった!お風呂入りたい!向こうじゃたまに水浴びする程度だったから……」

 

「ああ……ゆっくり入ってね」

 

 歩き出す歌野達にひとまず僕もついて行く。

 後で大人達と集まってここからの移動手段等を話し合う必要があるが、この二日間でたくさん動き回り砂埃を浴びたりしたので、まずは僕もシャワーくらいは浴びたいのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

 夕日がほとんど沈んだ頃、用事を済ませて歌野達の家に戻ると、居間から歌野がひょこっと顔を出した。

 

「おかえりなさい、バスは見つかった?」

 

「ああ、あったよ」

 

 昼食後に集まって話し合った結果、やはり移動はバスということになった。諏訪にいるのは約百人、老人や子供もそこそこいるため、徒歩による長距離の移動は難しいという話が出た。

 しかし諏訪の結界内にはここまで乗ってきたものと同程度の中型バス一台しかなく、なんとか全員が乗れるように僕と大人数人で結界外に探しに出ていたのだ。

 見つけてもタイヤがパンクしていたりバーテックスに潰されていたりと、まともに走行できそうなバスはなかなか見つからず、数時間かけてなんとか二台見つけた。

 これならば少し詰めれば全員乗ることができるだろう。

 

「今日のディナーは蕎麦よ!」

 

「わぁ、いつも通りだね」

 

 居間ではちょうど三人で蕎麦を食べていた。ちなみに今日の昼食も蕎麦だった。美味しいので構わないが。

 

「諏訪の蕎麦美味しいね」

 

「でしょう!?私はこれを香川に持っていって蕎麦を布教するの!雪花さんも蕎麦派として一緒にどうかしら!?」

 

 ハイテンションで身を乗り出し、雪花を自陣に引き入れようとする歌野。

 

「いや私は麺類はラーメン派かな。ていうかうどん県で蕎麦を布教するってまじ?」

 

「まじよ。正々堂々とうどんに勝負を挑むわ」

 

「どっちも美味しいでいいんじゃないの?」

 

「駄目よ!直接会って勝負するって乃木さんと約束したもの」

 

「え?」

 

 無線でやっていたアレを、面と向かってやるのか。……面白そうだ。若葉と歌野、それぞれに自慢の一品のうどんと蕎麦を用意してもらい、プレゼンしてもらいつつ皆で食べ比べるとかどうだろう。

 久美子に話したら時間を確保してやってくれそうだ。

 

「楽しみだね」

 

「ええ!」

 

「えぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 入浴を終えると、歌野達は縁側に並んで座り夜空を見上げていた。よく晴れており綺麗な星空だ。

 僕もその横に腰を下ろす。風呂上がりの熱された体に夜風が気持ちいい。

 

「明日でこのホームともお別れね」

 

「そうだね」

 

「ここって歌野か水都の実家なの?」

 

「いえ、ここは天災の後、大人達からこの家を使っていいって言われたの」

 

 ここでの生活が始まってからのことを思い返しながら話す歌野。

 雪花は自己紹介の時は二人を苗字で呼んでいたが、もう既に名前で呼ぶほど打ち解けている。きっと丸亀城の皆ともすぐに仲良くなれるだろう。

 

「今になって思うと、本っ当に私って頑張ったわね。みーちゃんが一緒じゃなかったら、途中で挫けてたかも」

 

 歌野は体を後ろに倒すと、水都の方を見て笑った。

 

「うたのんは凄いから、私がいなくてもきっと頑張れたよ」

 

「そんなことないわ。何があってもみーちゃんは私の味方でいてくれるって信じられたから、とても心強かったの」

 

 何の含みもない思いを真っ直ぐ伝えられるその素直さは、きっと歌野の美徳だ。

 それは何にも染まらずに、大人になっても変わらずにいてほしいと、夜空の星々を見上げながらそんな願い事をした。

 

「蓮花さんと千景さんが私とみーちゃんを引き合わせてくれていなかったら、今の私ってどうなっていたのかしらね」

 

「え?歌野も千景さんを知ってるの?」

 

 ずっと黙って話を聞いていた雪花が口を開く。そういえば話していなかった。

 

「ええ。三年くらい前に蕎麦屋さんで蕎麦を食べていたら蓮花さんと千景さんとみーちゃんが来たの」

 

「一人で公園にいたら旅行で来てた蓮花さん達に話しかけられて、近くの蕎麦屋さんを聞かれたから案内して一緒にお昼ご飯を食べたの」

 

「へぇー」

 

「それで、私が一人で食べていたら蓮花さんが話しかけてきて、食べ終わってから一緒に話したのよ」

 

「思い出した。確か千景に対しての第一声は『うどんとそば、どっちが美味しいですか!?』だったっけ」

 

「アハハハハハッ!昔からそうだったんだw」

 

 軽く笑いのツボにハマる雪花。

 今後ずっと香川で暮らしても、歌野の蕎麦への情熱は変わらないだろう。

 

「その時に私とみーちゃんは初めて話して、フレンドになったのよ。今では大親友よ」

 

「あの日蓮花さん達に会わなかったら、私が蕎麦屋さんに行ってうたのんに会うこともなかったね」

 

「だから、私は蓮花さん達にたくさん感謝しているの」

 

「……そっか。どういたしまして」

 

 きっと歌野と水都は、僕達がいなくても出逢えただろう。そういう運命だろうから。

 けれどこの笑顔を見ると、過去の自分の行動は無駄ではなかったのだと思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝。既にほぼ全員がバスに乗り込み、後は僕達だけだ。

 

「バス四台で移動って、校外学習みたいね」

 

「そんな楽しいものじゃないでしょ」

 

「三人は一番後ろに乗ってくれ。一応後方の警戒を頼む」

 

「りょーかいです」

 

 北海道からここまではバス一台だったから一人で問題なかったが、四台となると先頭と最後尾でそこそこ離れてしまう。

 歌野と水都、雪花がバスに乗り込んだのを確認し、僕は先頭のバスの屋根の上に乗った。

 

「よし、行こう」

 

 縦一列に並び走り出すバス。

 ここから瀬戸大橋までは約600km弱。途中で給油や休憩を挟んだとして、今日の夕方、遅くとも夜には到着するはずだ。

 

 諏訪の結界を出ると、そこには待ち構えていたかのようにバーテックスの群れがいた。

 声が聞こえるように開けている窓から、悲鳴や泣き声が聞こえる。

 雪花に借りた槍を右手で握り、バスの上に立つ。

 

「そのまま止まらずに走り続けてください」

 

「は、はい!」

 

 先頭のバスを運転する青年に声をかけ、次第にこちらに近づいてくる星屑に向かって飛び出す。

 槍で貫くと同時に蹴って次の敵へ飛び掛かる。

 空中戦は苦手だが、できなくはない。足場ならたくさん浮いているから。

 

 

 ──────────

 

 

 空中を飛び交い次々と敵を倒し続ける蓮花さんを、バスの中から見上げる私達。

 

「……降りてこないね」

 

「身体能力どうなっているのかしら」

 

「そのうち見慣れるよ」

 

 私は北海道から諏訪までの道のりで見慣れた。

 たぶんあの人は水の上も走れる。知らんけど。

 

 結局、全ての敵を倒し切るまで蓮花さんが降りてくることはなかった。

 見上げ続けていた私達は首を痛めた。

 

 

 ──────────

 

 

 夕日が沈み始める前に、バスは長旅を終えて停止した。

 出発直後の戦闘以降、ほとんどバーテックスに遭遇することはなくスムーズに移動できた。

 現在地は瀬戸大橋の上、四国を囲う壁の前だ。

 

「ようやく着いたのね……」

 

「でもこれ以上進めないよ?」

 

「この大きな壁は何?」

 

 雪花達は疑問の答えを求めて僕を見る。他の人達も同じような事を思ったのか、僕に注目が集まる。

 

「この壁は神樹の結界を形成するものだよ。諏訪の御柱みたいなものかな」

 

「へぇー」

 

 ここから先はバスでは進めない。ここなら電話は繋がるだろうか。

 スマホを取り出し、大社の神官に電話をかけるとすぐに繋がった。

 

『こちら大社です。郡様からのお電話ということは、到着なさいましたか?』

 

「はい、諏訪と北海道の人達が到着しました。壁の前にいるので予定通り迎えをお願いします」

 

『了解致しました。すぐに向かわせます』

 

 簡潔に必要な情報のやり取りを終えて電話を切る。この神官は有能かもしれない。

 

 もう一度、次は違う番号に電話をかけると、こちらもすぐに繋がった。

 

 

 

「もしもし?」

 

『……今はどこにいる?』

 

「壁の前、大橋の上だよ」

 

『そうか』

 

「今日の夜までには丸亀城に三人が着くと思うから、後のことはよろしくね」

 

『わかった』

 

 電話の向こう、久美子の声を聞くのは四日ぶりだが、かなりの距離を移動してきたのもあってか、もっと久々な感じがする。

 

 

「……皆はどうしてる?……生きてる?」

 

 これは聞いておかなければ。ずっと心配していた事だ。

 不安と緊張で心臓の鼓動が早くなる。

 

『ああ、いつも通りだよ。今のところ敵の襲撃はない。だから安心しろ』

 

「そうか。よかった……」

 

 安心して一気に体の力が抜ける。電話越しの声でも不安が伝わったのだろうか。

 なぜ襲撃が無いのかは少し疑問ではあるが、まずは一安心だ。例えこの後に襲撃があったとしても、外で生き残ってきた戦闘経験豊富な歌野と雪花が一緒だ。きっと大丈夫だろう。

 

 

 

『……なぁ、蓮花』

 

「ん?」

 

『……あとどれくらいで帰ってくるんだ?』

 

 確認したいことは聞けたためそろそろ電話を切ろうと思った瞬間、聞こえてきた声はどこか寂しげだった。

 

「三日くらい、かな」

 

『……そうか』

 

「どうした?寂しいの?」

 

『黙れ』

 

 このまま本当に黙り続けたら、どういう反応をするのだろう。

 

「……できるだけ早く帰るね。もう少し待っていてくれ」

 

『わかった……またな』

 

「ああ」

 

 

 電話を切り、ここからの事を皆に説明する。

 

「この後、ここにヘリで迎えが来て、順番に壁の向こうに運んでもらいます。そこからはバスが用意されているから、それで移動します」

 

「なるほど」

 

「歌野達は別移動だよ。三人は丸亀城に運ばれる」

 

「あっ、そっか」

 

「そこからの事は久美子に任せてあるから、久美子の言うこと聞いてね」

 

 昨日の夜に改めて写真を見せておいたから、大丈夫だろう。

 おそらく久美子はわかりやすいように丸亀城の門の前にでも立っていてくれるだろう。

 

「蓮花さんは一緒に行かないの?」

 

「ああ、僕は今から沖縄に向かう」

 

「ええ!?沖縄!?」

 

 まだ、迎えに行かないといけない子がいる。

 

「千景さんに会っていかないの?」

 

「……一度会ったら、もう一度離れるのが辛くなるから」

 

「……そっか」

 

 やる事が全て終わったら、今度こそあの子のところに帰ろう。離れていた分、たくさん傍にいてあげよう。

 

「じゃあ、行ってくる」

 

 後ろを向いて来た道を戻り、再び大橋を渡る。そして次は沖縄へ。

 

 

 ──────────

 

 

 一緒に避難してきた人々が大社の手配したバスで運ばれていくのを見送った後、私達三人は高級そうな車に乗り込んで運ばれていた。

 運転手の話によると、丸亀城の勇者や巫女が大社に用がある時は、いつもこの車で送迎しているそうだ。

 ちなみに勇者装束のままだと目立つため、服は人がいなくなった後にバスの中で着替えた。

 

 車に揺られること30分程、私達は丸亀城に到着した。

 扉を開けて車を降り、目の前にそびえ立つ城を見上げる。

 

「お城だぁー!!」

 

「嬉しそうだね、雪花さん。お城が好きなの?」

 

「城っていうか歴史が好きなんだよね」

 

「歴女ってやつね!」

 

 私は雪花さんのように城が好きな訳ではないけれど、同じように気持ちは昂っている。

 ようやく会えるのかと思うと、少し緊張もしてくる。

 門の前で立ち尽くしていると、中から一人の女性がこちらに歩いてきた。

 

「ん、お前達が蓮花の言っていた三人だな。写真で見たことがある顔だ」

 

「え?」

 

 一瞬、どちら様で?と思ったが、その人の顔には見覚えがあった。

 

「あ、写真で見た人!」

 

「は?」

 

「えっと……久美子さん、でしたっけ?」

 

「聞いているのか、なら話が早い。私は烏丸久美子、これからお前達の担任となる。寮の部屋まで案内するからついてこい」

 

 振り返って中に入っていく久美子さんの後についていく。

 

「丸亀城で生活してるって聞いたから丸亀城の隣にでも寮を作ったのかと思っていたけど、敷地内に作ったんか」

 

「これから私はここを拠点として蕎麦を広めていくのね……!!」

 

「蕎麦を広める?」

 

「うたのんの言うことは気にしないでください……」

 

 歩いていると、意外と人がいる。皆丸亀城勤務の大社の職員なのだろうか。

 五人の勇者が生活しているのだから、それを支える為に人手を多めに回していても不思議ではないか。

 

 

 

 

 

 

「見えたぞ。あれが今日からお前達が暮らす寮だ」

 

 久美子さんが立ち止まり、指を差す。その先を辿ると、確かに寮らしき建物と、その前で木刀を振る少女がいた。

 長く綺麗な金髪で、凛とした佇まいの少女。

 ようやく会えた、初対面の友人。

 

 私は持っていた荷物をその場に置き、その人の元へ駆け出した。

 少女はこちらに気がつくと、木刀を振るのを止めて私を見た。

 

「ん?丸亀城は関係者以外立ち入り禁止のはずだが……」

 

 無線機越しに何度も聞いたその声に、感極まって今にも泣いてしまいそうだ。

 

 

「乃木さん!!」

 

 

「ぇ……」

 

 

 少女の前で立ち止まり、その手を握る。

 ──ああ、触れられる。本当に貴女はここで生きているんだ。

 ずっと会ってみたかった。乃木若葉さん。

 

 

「初めまして、白鳥歌野です!!」

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