花は少女の幸福を願う   作:カフェラテ

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お茶濁しの短編投稿。
だいぶ前にTwitterにあげたやつです。
短いです。
本編とは何の関係もない原作時空です。


短編 移りゆく 晩夏に想う 桜かな

 蒸し暑い夏日、煌々と差す日光の下、私は冷えた缶ビールを片手に英霊之碑を訪れていた。

 今年も既に何人もここを訪れたようで、いくつかの石碑の前に供え物が置かれている。

 

「……ここに来るのも今年で何度目かな」

 

 数ある石碑の内の一つを見つけると、そこには既に供え物がいくつか置かれていた。この土地にその少女の親族はいないはずなのに。

 故に、これを持ってきた人物にはすぐに思い当たった。

 

「一応場所を教えておいたが、既に来ていたか」

 

 私は石碑の前に腰を下ろすと、缶ビールのタブを開けてグビッと口をつけた。

 

「……少し来るのが遅くなった。既に盆は過ぎているが、まぁいいだろう」

 

 熱気にじわじわと汗をかきながら、淡々と話し続ける。何か言葉が返ってくるわけではないが。

 

「こっちは最近ようやく落ち着いてきたよ。上里は強引に物事を進める事もあるが、大人達が仕切っていた頃よりはマシな組織になったはずだ」

 

 大社を大赦と改め、神世紀へと移り変わり、上里を始めとする巫女達が大赦のトップに立った。

 時代の変化や組織内のゴタゴタ等で長らく忙しくも楽しい時間を過ごし、最近になりようやく少し落ち着いた、ように思う。

 

「そういえば、毎年あいつが送ってきていた手作りの絵本が、今年から出版社から出たものになった。どうやら夢を叶えて絵本作家になったようだ」

 

 鞄の中から取り出したそれは、著者名はペンネームだが確かにあいつから届いたものだ。その絵もよく見知った画風だ。

 自室の本棚に並ぶ絵本は既にそれなりの数になっている。その冊数の分だけ出会ってから年数が経っているのかと思うと、私も老けたなと実感する。まだ三十代ではあるが。

 

「……お前も、生きていれば今頃は酒を飲める歳か。私はなんだかんだ丈夫だから、そっちに行くのはまだまだ先になりそうだ」

 

 缶を傾け、最後の一滴まで残さずに飲む。真夏の冷えたビールはあっという間に飲み切ってしまった。

 もう一本持ってくるべきだったかと思いながら遠くの空を見ていると、段々と曇り始めていることに気がついた。これはひと雨くるか。

 

「……そろそろ帰るか」

 

 立ち上がってズボンを払う。

 

「おっと、供え物を持ってくるのを忘れたな。何かないか……これでいいか」

 

 鞄に仕舞おうとしていた絵本を石碑の前に置く。

 一人の少女が叶えた夢の形を、この少女はどんな風に受け取るのだろうか。

 きっと、自分の事のように笑顔で喜ぶのだろう。

 

「じゃあ、また来年来る」

 

 後ろに振り返り、歩き出す。

 帰ったら上里達を飲みに誘ってみるか。きっと安芸辺りは喜んで奢られに来るだろう。

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