それから数週間後任務を終えたイチカが帰ってくると、タツミが不機嫌そうにソファでコーヒーを飲んでいた。
「た、タツミさん?…何かあったんですか?」
「…あんたか」
タツミは如何にも機嫌がわるいですと言わんばかりの声色でイチカに返事をした。
「防衛任務の時でちょっとな…まあ、新入りのお嬢さんが優秀なのは分かった…でもよ…防衛任務は市民の安全が最優先なんだぜ?避難民をビビらすなって話だよ、パニクったら収集つかないだろ。掃討戦とは作戦の自由度が違うってことをご理解いただけないかねぇ」
「確かにパニックになったら避難させにくいですからね…更に被害も大きくなりかねませんし…」
「だろ!なのにあのお嬢さん避難中の民間人の目の前に発砲したんだぜ!流れ弾が避難民に当たる危険なんかお構いなしにだぞ!」
「(溝が深まる一方だ…前には小川先輩にも八つ当たりもいいような事も言われたし、とりあえず報告が済んだら榊博士の講義だな)」
「お前の方はどうだ?任務の時の嬢さんは?」
「俺はなんというか…いっつも競うような発言を言われているんですよね。別に俺は競ってるつもりはないんですが…そのせいで危ない場面が何度もありましたよ…」
「お前もお前で大変だな…そう言えば、お前の活躍はこっちでも耳にしてるぜ!もちろんいい意味でな。けどあまり無茶はするなよな?神機使いはすごいやつほど早死にするからな…」
「はは、サクヤ姉と同じ事言われましたね。けど、ありがとうございます、タツミさん」
「いいってことよ!」
報告をすませたイチカはラボに着くと、先に出ていったアリサは勿論、コウタもいたが、既に完全に寝ていた。
席に着くと、そんなことお構いなしと言わんばかりにペイラーは講義を始める
「アラガミ…オラクル細胞は発見された時、まだアメーバ状のものだった。それからミミズ状のアラガミが発見され、半年後には獣型のアラガミが発見された。」
講義に合わせてスライドが変わっていく。微生物の様な画像が映り、次に細長い微生物にも見える画像、最後に映し出されたスライドはオウガテイルの画像だった。
「そして1年経つ頃には、1つの大陸がアラガミによって滅ぼされたんだ。彼らが食べたものの形質を取り込み、進化するとしても、異常なスピードだと思わないかね?」
確かにその通りだった。例外はあるが、通常生物の進化には膨大な時間が必要になる。それをたった1年で人類を滅ぼしかねない強大な存在になり、多様な進化を遂げたのだ。普通に考えるとあり得ない事だった。
ちらりとコウタの方を見てペイラーは講義を続ける。
「…そう、正確には彼らは進化などしていないんだ。事実、オラクル細胞の遺伝子配列は変化していない…そう、一つとしてね」
「は?」
「そんなはずはありませんよ!現にやつらは形態変化してるじゃないですか?」
どういう事か理解が追い付いていないイチカだが、アリサは即座に反論した。
「彼ら…アラガミもね、今の君と同じなんだよ。食べたものの形質を取り込むと言うのは、知識を得る、ということ。そう、ただ知識を得て賢くなっているだけなんだ」
「(もしかして…俺の左腕は知識ではなく、力を手に入れている事になるのか?)」
今の話でイチカの左腕が何故触れるとアラガミの欠片を取り込むのか少しだけ分かった気がした。コウタの横に移動して空虚を見つめてながらも講義を続ける。
「どういう骨格をしていれば、早く動くことができるのか?空を飛ぶためにはどうすればいいのか?それこそスポンジが水を吸い込むように情報を取り込んで、わずか20年の間に、彼らは非常に高度な形態を得るまでに至ったんだ」
「うぅ~ん…」
ベイラーは一度講義を止めて、落ち着いたのかコウタの頭をグーで軽く殴り、講義を再開する。
「アラガミがコウタ君位勉強嫌いだったらよかったんだがね」
ペイラーはイチカとアリサの方を見て講義を再開する。
「そう、彼らの勉強熱心さには舌を巻かされるばかりでね。なんと、ミサイルを発射するアラガミが目撃された噂まである。これが確かなら、彼らは人間の作った道具さえも取り込んだという事になる。実に興味深いと思わない?」
そして再び少し上を見上げて、空虚を見つめてある可能性を語り始める。
「それほどまでに複雑な情報を取り込めるのなら、まるで人間という姿をしたアラガミが現れるのも遠い日じゃないのかもしれないね。」
「…人間という、アラガミ…?」
「(あっ、前に思ってたこと…)」
ペイラーの意味深な発言を最後に講義は終了した。コウタを起こして、イチカとアリサは任務に向かう準備をする。
「なぁ…防衛任務の時に民間人の近くで発砲したって聞いたが、本当なのか?」
「その話ですか…極東支部の防衛班にはウンザリさせられますね。特に防衛班長さん…戦術より人々の気持ち…ですか?そんなことでアラガミを撃退できるとでも?話になりませんよ…それに、同じ第一部隊のソーマ…でしたか?あんな自分が選ばれた存在みたいな言い方に、見下すような態度…」
「……おい、流石に」
「コウタといい、本当にいい加減ですよ。ここの神機使い達は…」
プツン……と何かがイチカの中で切れた音がした。中に溜まった感情が一気に湧き上がる感覚に陥る
「……いい加減にしろよ」
「はい?」
「聞こえなかったのか?いい加減にしろって言ったんだ。それに…お前には失望した」
「なっ⁉︎」
イチカの声色は低く本気で言っているのだとアリサでも分かった。
「小川先輩、カレルさんもジーナさんも、癖の強い人達だけど、アラガミと戦うことへの決意はお前より比べられない程はるかに強い!タツミさんやブレンダンさん、台場先輩だってあんたの言う通りアラガミをすぐに倒したい。そうじゃないと被害はもっと大きくなる。けど、タツミさん達は防衛班……目の前に襲われそうな人がいたら、アラガミを倒すよりも先に人を助けるのが最優先事項とされている。リンドウさん、サクヤ姉も、常に仲間のことを考えて動いている」
今のイチカは怒りを抑えられるような状態ではなかった。
「ソーマはキツい言い方もするけど…ほんとうは優しくて、俺達と比べ物にならない物を負っているんだ!それにコウタは誰よりも真っ直ぐな奴で家族の為に命をかける事ができるすげー奴なんだよ!!俺なんかよりもずっとな!憎しみに駆られてアラガミを殺そうとしているお前とは違う!大切な物奪われたのはお前だけじゃないんだぞ!!お前だってそれは分かるはずだろ!!」
今のイチカはただ感情が体を動かしていた。アリサはあまりのイチカの変化に怯える事しか出来なかった。
「あまり調子に乗ってんじゃねぇよ、この大馬鹿野郎が!!」
アリサを一人にし、イチカは出撃ゲートに向かう。少し遅れてリンドウ、アリサもエレベーターから降り、アリサは二人を無視し、ゲートの中に入っていく。
「どうにもアリサに嫌われているらしいな」
「そうですか…」
「その様子じゃ、お前さんもアリサとも上手くやってなさそうだな…」
「はい…」
「ああ、その…なんだ…ありがとな」
「はい?」
「お前、アリサを怒鳴ってただろ?あんな感情をぶちまけてるお前を見たのは、はじめてだ」
「リンドウさん…まさか、見てたんですか?」
「まぁ、あれだけ大きな声を出されちゃな…それと何人か他のやつも見てるぜ」
「……穴があったら入りたいです」
「アナグラだけにか?」
「殴りますよ…?」
「ジョーダンだジョーダン!!だから左拳を構えないでくれないか、な?」
イチカは左拳を構えたので流石のリンドウも慌てながら謝罪する。イチカの左腕の威力は加減を間違えば人は簡単に殺せると理解しているからだ。
「……機会があったら、アリサに謝ろうと思います。少しいいすぎましたし、まぁ…どのみち今は無理でしょうが」
「そうだな…っていうか、アリサのこと名前で呼んだの初めてじゃないか?」
「はじめて?」
「自覚なかったのか?基本お前さん、アリサ対してあんた、とか、なぁ、お前、としか言ってなかったからな」
「…そう、でしたか。後ここでタバコ吸うのやめてください」
タバコを吸おうとしたリンドウに注意しつつ、取り上げる。
「一服くらいいいじゃねえか」
「喫煙スペースか任務先で吸ってくださいよ。まったく…」
「任務先ならいいのかよ」
その後のイチカはソーマと任務に出て、少し八つ当たり気味にアラガミを討伐していった。
その様子に口には出さなかったがソーマは少しだけ心配したのだった。
先飛ばしてイチカにバースアーツ、デビルトリガー擬を使わせるか…
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バーストアーツ
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デビルトリガー擬
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両方
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必要ない
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作者に任せる