ゴッド・ストラトス   作:狼ルプス

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遺されたメッセージ

 

リンドウが行方不明となり二週間が経とうとしていた。

 

支部長への報告を終えたツバキはエレベーターに向かっていた。隣にはサクヤがツバキの横に立つとずっと考えていた事を話始める。

 

「私…やっぱり捜索の打ち切りだなんて…納得できません」

 

「またその話か…上層部の決定だ。覆る事はない」

 

 

「腕輪どころか、神機だって見つかってないのに…神機使いが任務中に行方不明になった場合、神機が回収されるまで捜索されるのが通例じゃないてすか!」

 

 一方的に捲し立てるサクヤに対して、ツバキはどこか冷静だった。

 

「…もうあいつが姿を消してから2週間経とうとしている。生存の確率は限りなく0に近い。ましてや深手を負っていては…」

 

 ゴッドイーターでも補給も無し、偏食因子もなしに外で戦い続ける事は事実上不可能。

現場からはリンドウの血痕が見つかっている。生きていても手負いなのは間違いない。そんな状況で助けを呼ばないと言うのが何を意味するのかは多くの人は察しがついていた。

 

「でも…でも…ツバキさん…」

 

「……」

 

 未だに食い下がるサクヤに無言でツバキは返す。ここでエレベーターが来たのでツバキが乗り込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う…うぅ…リンドウゥ…」

 

 

ツバキはエレベーターの隅で、一人静かに涙を流していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、雨宮リンドウは…正式にK.I .A認定された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リンドウの捜索の打ち切りが決まり、いつものアラガミを倒す日常が戻ってきた。アラガミ討伐任務に行く為のブリーフィングをしている。

 

 

「よし。以上でブリーフィングを終わる。準備が出来次第始めてくれ。それとサクヤ、お前は少し残れ」

 

 ツバキはいつも通りの調子で任務内容を伝える。最後にサクヤだけ残るように伝え、イチカを下がらせる。今この場にはツバキとサクヤしか居ない。

 

「…何か?」

 

「サクヤ…お前は暫く休暇を取れ。イチカからの頼みでもあるが、これは上官命令だ」

 

「そんな…私は!」

 

「サクヤ…最近鏡を見たか?」

 

「は?」

 

ポカンと表情でサクヤは返事をするが、ツバキは気にした様子もなく話を続ける。

 

「…ほとんど寝てないんだろう?イチカも、心配していたぞ」

 

 ツバキの言う通り、サクヤの目の下にはうっすらとだが隈が出来ていた。

 

「お前がアイツを想う気持ちは、姉として嬉しく想う。だが、上官としては別だ。コンディションの整えられない者は死を呼び込む…分かるな?」

 

「…はい…軽率でした」

 

 

本調子を出せない者は戦場で周りの人間の足を引っ張る、尚更調子の悪い人間を出撃させる訳にはいかなかった。

 

「最後に忠告だ。お前はもう少し周りを頼ることを覚えろ…いいな?」

 

「…善処します…」

 

 

サクヤは返事をするものそれは必ずしも行うとは限らない返事だった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

イチカたちが任務に向かって数時間、サクヤは何もする気力もなく、自室のベッドに座り込んでいた。正直休めと言われても、体を動かしでもしてないと余計な事ばかり考えて余計気が滅入ってしまう。

 

そうしているとリンドウがひょっこりと帰ってくるのではないかと思え、リンドウの事を思い出す。

 

 

『おーいサクヤ、いるか?』

 

 

突然扉が開いてリンドウが部屋に入ってくる。

 

 

『り、リンドウさん!』

 

『おっ、イチカもいたのか』

 

 

『もう、さんざん言ってるけど…せめてノックぐらいしてから入ってきてよ!イチカだってビックリしてるじゃない!』

 

リンドウがノック無しに入ってくる事は日常茶飯事だった。当時はイチカがこの世界に来てまだ半年がたった頃で、イチカは突然の事にまだ慣れておらず、リンドウはその事に対して軽い謝罪をする。

 

『あーわりぃわりぃ』

 

『今回も、ビール目的ですよね?』

 

『まぁな、というかイチカ…お前、背が伸びたんじゃないのか?』 

 

『そう…ですか?自覚はありませんけど…』

 

そう言うとリンドウはイチカの頭を軽く撫で、ドカッと音が聞こえる程勢い良くソファに座り、その間にサクヤは冷蔵庫に向かって歩いて行った。

 

 

『まったくもう、いっつもすぐ飲んじゃうから…』

 

 サクヤは愚痴りながら冷蔵庫を開けてビールを取り出す。対してリンドウはケラケラと笑いながら返事をする。

 

『いいじゃんか、お前飲まないんだし。何なら新種のジャイアントトウモロコシと交換するか?』

 

『いやよー!』

 

『あははっ』

 

 

 

 

 

 

そのやりとりをイチカは楽しそうに見ていた。

 

 

過去のやり取りを思い出し、そんな現実を忘れたくて、冷蔵庫にあるビールを手に取る。すると、ビールの底から何が落ちた。

 

「何…これ?(何で配給ビールの底にこんなものが?)」

 

 サクヤの知る限り、部屋に来てビールに興味を示す人間はリンドウしか居ない。

 

 

ーー配給ビール、とっておいてくれよ

 

 

「まさか…」

 

これはリンドウからのメッセージではないかと思い、直ぐにターミナルで閲覧する。

 

「(リンドウの腕輪認証がかかってる…?)」

 

 しかし、ロックがかかっているため、閲覧出来なかった。直接の手掛かりが封じられたとなると、その鍵であるリンドウの腕輪が必要になる。

 今となってはその腕輪を探す事さえ難しくなっている。こうなると自分で調べていくしかない。

 

「(そもそも…あの日はイレギュラーが不自然なまでに多かった…指令情報の食い違い…アリサの様子もおかしくって…)」

 

 リンドウの事件の時、同一区画に複数のチームが配備されていた上、アリサが何故か錯乱し、大量の新種と遭遇。いくらなんでも出来すぎていて、違和感が残る。当時の事を調べようと、サクヤはミッションの履歴を調べる。

 

「え…」

 

 しかし、調べていくうちに思いがけない事実にたどり着く。

 

「(あの日のミッション履歴が消されている?)」

 

 都合良く履歴が残っていない。こうなるリンドウがフェンリル側に消されたと言う可能性が浮上してくる。

  

「(どう言うことなの?リンドウ…)」

 

  

「サクヤ姉」

 

特に気がねなく部屋のドアを開き、イチカが入室したのだが……

 

「っ⁉︎」

 

 

「ど、どうしたんだ?そんな身構えて…」

 

 

「な、なんだイチカか…任務はどうしたの?」

 

「……もう終わらせたよ。サクヤ姉…少し話がある」

 

イチカはサクヤの反応を気にしていたがすぐに用件を話す。今のサクヤならアリサの事を話しても問題ないと判断していた。

 

 

「……そう。アリサが…教えてくれてありがとう」

 

「信じるのか…今の話」

 

イチカは感応現象の事をアリサの過去を伏せながらサクヤに話した。

 

「ええ。感応現象……触れるだけ気持ちが通じ合うなんて、新型同士の能力なのかしらね……その様子だと、あなたの正体もバレてるみたいだし」

 

「ああ、前の名前を言われたからな…それに、この左腕の事を綺麗だって言われたから…」

 

「そう…それに、さっきあなたが部屋に入って来た時…リンドウが重なったわ。ノックせずに入ってくるところなんてソックリ…」

 

「そうか?意識してたわけじゃないから分からないけど…」

 

「貴方も所々でリンドウの影響を受けてるからね。とりあえず、しばらくはアリサのそばにいてあげて?アリサも貴方には心を開いてるみたいだし」

 

「ああ…わかってる」

 

「それと、ごめんね…あなたにも心配かけてしまって」

 

「気にしなくてもいいよ。サクヤ姉がリンドウさんの事をどう思ってるかは…俺も近くで見てたからわかるよ……」

 

「そっか…」

 

「今は、ゆっくり休んでくれ…サクヤ姉」

 

イチカはそう言うとサクヤの部屋を退室し、アリサのお見舞いに向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だいぶ…落ち着きは取り戻してはいるのかな…」

 

 

イチカはツバキにサクヤを休ませてほしいと頼み、頼むよりもツバキもそのつもりだったらしく、そのまま実行した。

 

サクヤの部屋を後にしたイチカは医務室に向かいイチカは病室に入る。

 

 

「あっ……イチカ!」

 

「…元気そう、だな」

 

 

中に入ると、どこか嬉しそうな顔をしたアリサが、声を弾ませてイチカに視線を向ける。

 

 

「具合はどうだ?見た感じ調子は良さそうに見えるけど」

 

「はい。今日は朝から調子がいいんです」

 

「そうか」

 

「えっと…今日はどんな事を聞かせてくれるんですか?」

 

「そうだな…」

 

ここ最近の快方具合に一安心する。その後は2人はイチカが過ごした世界の事にについての話をした。

趣味や特技、本やアニメやゲーム、IS、イチカのスマホにある写真のアルバムなどを見せ会話に花を咲かせた。

なるべくトラウマを刺激しないように、アラガミについての話や過去の話を避けた。

 

「束さん…でしたか?綺麗な人ですね」

 

「ああ、俺にとってははじめて織斑一夏として見てくれた女性なんだ。よく寂しい時なんてそばにいてくれたな…まぁ、会うたび抱きついて来てたけど」

 

「ふふっ、見た目の割にとても元気なんですね」

 

「ああ、元気すぎるくらいさ。その明るい元気が俺を救ってくれたんだ」

 

「………」

 

アリサは感応現象の際イチカの記憶は見ている。イチカの世界はこの世界…過去にすら存在しないパワードスーツ、ISにより大きく変わった。女尊男卑の思想が深まり、男性の地位は下がり平等世界からかけばなれた。そのISの1回目の大会でイチカの元姉である千冬は有名人となり、いやでも注目された。

 

そのせいでイチカは不当な扱いを受け、いじめられていた。数少ない友人もいたがイチカは巻き込ませない為あえて距離を取っていた。

その行動は友達を守る為だとアリサはすぐに理解できた。姉はイチカの事を理解せず、出来ると勝手な理想を押し付け、イチカのことを全く理解してくれなかった。

 

「(あんなの……姉でも家族でもない)」

 

アリサが心底思った事だ。そして2回目の大会でイチカは誘拐され、姉は助けには来ず決勝に出ており、イチカは殺されそうになるところアラガミに襲われ、重傷を負ったままこの世界に来て、リンドウとサクヤにより救助された。その後に感応現象が終わり、気が付いたアリサの手を握っていたイチカがいた。

 

「アリサ、お前に言いたかったことがあるんだ」

 

「な、なんですか?」

 

アリサはイチカの真剣な表情に身構える。何を言われるのか緊張しながらアリサはイチカを見る。

 

「ごめん」

 

「………え」

 

「俺、前にお前のこと強く怒鳴っただろ?かなり遅くなったけど、ごめん…」

 

「あ、謝らないでください!元を辿れば全面的に私が悪かったんです!」

 

「けど、あの時のアリサ、俺のこと怖がってたろ?避けられてたし…」

 

「謝るのこっちですよ!…極東のみんなの事、理解もせずに勝手な事を言って…あなたを怒らせた、ごめんなさい!」

 

「アリサ……」

 

そうやって互いに謝罪をしていると、不意に病室の扉が開いた。ルミコが戻ってきたのかと思い、そちらを向くと意外にもサクヤが入ってきた。サクヤが入って来たのをみると、イチカは動揺する。

 

 

「サ、サクヤさん…」

 

大切な人を奪った張本人に会いに来るなど、報復意外に思い付かなかった。それ故に、アリサの表情が一気に怯えたものになる

 

「サクヤ姉…」

 

 アリサの言葉を遮り、彼女を隠す様に前に出てサクヤを見据える。

 

「大丈夫。アリサを責めに来た訳じゃないわ」

 

「……」 

 

サクヤは穏やかな口調で答えた。イチカはサクヤが手を上げないと信じてアリサと話せるように少し下がった。

 

 

「ありがとう」

 

サクヤはアリサと向き合い話を始める。

 

「話を聞かせてほしいのよ、そう…あの日あの瞬間…あなたに起こった事を、本当はあなたのした事にに納得出来ない、でも、だからこそ…そこにある違和感がなんなのか知りたいの。辛いお願いをしているのは、承知の上よ…お願い、貴女に何があったのか…教えて欲しいの」

 

 真剣な目でサクヤがまっすぐアリサを見る。対してアリサはと目線をイチカに送る。

 

「大丈夫、傍にいるから。話せる所まで…話してほしい」

 

 そう言われて、怯えながらもサクヤを見る。

 

「私が…定期的にメンタルケアを受けている事は…ご存知ですか?」

 

「ええ、ツバキさんとリンドウから聞いてるわ。詳しい事は聞いてないけどね」

 

「私がアラガミに両親を殺されて数年間、私は精神不安定な状態で病院生活をしていました」

 

 意を決してアリサはメンタルケアを受けている原因となった両親の死を語り始める。聞いている2人は話を遮ることなく、聞き役に徹している。

 

「そんな生活が数年続いて、ある日フェンリルから私が新型の適合候補者の連絡が入って、それで、それまでの病院から無理矢理フェンリル所属の病院に移送されたんです」

 

 

「そうだったの……」

 

 

「いえ、新しい先生は良くしてくれたし、これで両親の仇も討てるって思ったから…それからは症状を薬で抑えながら敵のこと…戦い方のことを、勉強しました」

 

そうまでしないとて戦えない状態だったようだ。それでも戦場に出たのは余程アラガミが憎かったのだろう。この世界ではこれが普通なのかもしれないとイチカは改めてこの世界の残酷さを思い知る。

 

「フェンリルにいた新しい先生はとっても優しかったんです。この極東支部にも一緒に赴任してきてくれて…」

 

「その先生は、今もアナグラにいるってことね?」

 

「…はい、皆さんも知ってる大車先生ですよ?」

 

「……………」

 

大車、その名を聞くと反応してしまう。あの時、イチカが聞いた大車の会話が、否が応でも思い出された。

 

「…そう、ごめんなさい、続けて?」

 

「極東支部に仇のアラガミが出るって聞いて、赴任して……。それで、ようやく仇を見つけたと思ったのに……あの瞬間、何故か仇のアラガミがリンドウさんになってて……!」

 

アリサの声が震え出す。話しているだけでも汗だくだ。

 

「……気が付いたらっ……リンドウさんに神機を向けてて……ぁあああぁぁあ!」

 

 

そこまで話すとアリサは頭を抱えて震えだした。

 

「無理をさせてごめんね。ありがとうアリサ。イチカ、後…頼んでもいいかしら?」

 

「うん」

 

そう言うとサクヤは部屋を出ていった。

 

 

 

「アリサ……」

 

そう言ってイチカが優しく背中を撫でアリサは落ち着く

 

「大丈夫、大丈夫だ。よく話せた」

 

「イチカ…私、どうしたら」

 

「………」

 

イチカは何も言わず、ベッドの方に腰を移してしっかりと抱きしめた。かつてイチカにしてくれた人達のように…優しく頭を撫でる。

 

「あ…ううっ…」

 

アリサはイチカ胸で泣いた。気を使いイチカは体制までも変えた。しばらくの間泣き続け、アリサの意識はそのまま途切れた……

 

   

 

 

 

 

「イチカ、アリサ、飲み物持って来たのだけど……って、あらあら」

 

「さ、サクヤ姉、これは…その」

 

 

 

サクヤが病室を出て五分くらい経ち、サクヤが自販機で買った飲み物を手に戻って来た。イチカの膝の上で、アリサが寝ているからである。イチカの胴に手を回し、しっかり抱きしめており、イチカは身動きが出来なかった。

 

「うふふっ、随分信頼されてるみたいね」

 

「笑ってないでどうにかしてくれよ。動こうにも動けない…」

 

「その状態で起こすこ事なんてできると思う?こんなにいい寝顔で寝てるんですもの…」

 

「うう、それは…」

 

今のアリサを見てイチカは今起こすのはとても申し訳なく感じた。

 

 

「はい、これ…イチカの分」

 

 

「ありがとう」

 

「私は戻ってるわね。これ、アリサが起きたらあげておいて」

 

「って…サクヤ姉、俺…まさかこのまま?」

 

「ツバキさんに休みを取ってほしいって頼み込んでたんでしょ?起きるまでアリサの側にいてあげなさい、いいわね?」

 

「……わかったよ」

 

「素直でよろしい」

 

と言って棚の上にジュースを置いていく。その背を見送り、イチカはアリサが起きるまで側にいる事にした。

先飛ばしてイチカにバースアーツ、デビルトリガー擬を使わせるか…

  • バーストアーツ
  • デビルトリガー擬
  • 両方
  • 必要ない
  • 作者に任せる
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