スーパーダンガンロンパ2:return   作:アラモ

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23話

 

俺はやはりダメな男だ。復讐にも失敗し自死して罪を償おうとしても死ぬ事もできずこのザマだ。ファイナルデッドルームまで来たまでは良かった。冷りとした銃口を頭に突きつけた時には逃げ出したい気分だったが俺は引き金をそれこそ決死の思いで引いた。これで罪を償うことができると俺は喜んだ。

だけど死ぬ事は無かった。自殺は良くないと神様が俺を生かしたのなら余計なお世話でしかない。俺の人生なんだから俺の思い通りに幕を引かせてくれよと。

でも死ねなかったならもう一回引き金を引けばいいじゃないかって?そうだよ。俺はいろんなもののせいにして結局死ぬのが怖えんだ。いくら決意してもいくら啖呵を切ってももう一度引き金を引いた時の勇気を持つことはできなかった。

 

であればこんな所に用はねえ。ヘタリと座り込んでいた俺はため息とと共にファイナルデッドルームを出た。

 

「左右田さんじゃないですかぁ。どうしたんですかこんな真夜中に出歩いて。」

 

俺に近づいてきたのは罪木だった。こんな鬱屈とした気分の時にこんな白々しいセリフを聞かされればいつも以上にイラついてくる。

 

「ストロベリーハウスまで来てるってことは俺の事も見てたんだろ?」

 

「おっとっと、そこまで気が回りましたかあ。そうですよ。ルーレットは見事に成功したみたいですね。」

 

「そんな事はどうでもいい。俺を殺しに来たのか?殺すならむしろ一思いに殺ってくれ。自分じゃどうしようもねえんだ。」

 

罪木は両手をこちらに広げて見せ攻撃の意思がないことを示しながら静かな声でこう言った。

 

「そうですと言いたいところですけど別に貴方を殺す気はありませんよ。むしろ貴方に提案をしに来たんですよ。」

 

「提案?」

 

「どうやらモノクマちゃんは未来機関の皆さんが邪魔で邪魔で仕方がないようなのでここら辺でお掃除したいそうなんですよぉ。そこでモノミちゃんをオクタゴンに誘き寄せて欲しいんですよ。あそこなら邪魔も入らないでしょうから簡単に始末できるでしょうし、もう一人である七海さんも袋の鼠にできるでしょうから。」

 

「お前、七海が未来機関の人間だって知ってたのか。」

 

「貴方と日向さんには前周回の記憶があるように今の私には現実世界で皆さんと過ごした記憶があるんですよぉ。そこで七海さんは私たちと一緒にクラスメートして楽しく過ごしてたんですから。」

 

衝撃の事実に言葉が出なかった。七海はあくまで未来機関が作ったオリジナルの存在だと思っていた。でも罪木が言うには元となった七海千秋という人間が実在していたらしい。

 

「あ、でも結局はあの方によって絶望の淵で死んでいったんですけどね。」

 

「プログラム世界といえど存在するはずのない人間がいるからお前は七海が特異的な存在だと勘づいたって訳か。」

 

「そういうことです。で、どうしますか?モノクマちゃんに協力してモノミちゃんと七海さんを始末してくれますか?別に殺せって言ってるわけじゃないです。ただおびき寄せてくれるだけでいいんです。」

 

コイツは何故ここまでモノクマの肩を持とうとするんだ?何か契約でも結んでるってのか?いや、あのモノクマに限ってそんなことはない。

しかし罪木やモノクマの意図が何にせよ俺の答えは一つしかない。

 

 

「俺はやらねえぜ。」

 

罪木はこれまたへえとワザとらしく驚いた様子を見せた。

 

「死ぬこともできなかった俺には何もかももうどうでもいいんだ。未来機関だの絶望だのはそっちで勝手にやってくれ。俺を巻き込まないでくれ。」

 

「モノクマちゃんに媚びを売っておけば何か役に立つかもしれませんしそもそもデメリットは何もないですよ?」

 

「理屈じゃねえんだ。それに今となってはもう誰かを陥れてやりてえとか殺してやりてえとかそんなことすら湧いてこねえんだ。俺が協力すると思ったみてえだが残念だったな他を当たってくれ。」

 

例えアイツらをまだ殺意が湧いていてもコイツに協力するのだけはごめんだ。澪田の末路を嫌と言うほど知ってるし誰の力も借りるつもりもねえ。

コイツは俺の自暴自棄っぷりを見て声をかけたんだろうが当てが外れてさぞ悔しがってるだろうなと思ったがこれまた予想外の反応を見せた。

 

「うふふふふふ。はぁ〜、本当にダメですね、貴方は。何も成し遂げる事ができずにこのまま意味もなく生きようとしてるんですから。きっと今の貴方には希望も絶望もないんでしょうね。」

 

「余計なお世話だよ!」

 

俺の言う事に見向きもせずに俺に背を向けると俺にとって聞き逃すことはできなかった言葉を罪木は吐いた。

 

「じゃあもういいですよ、ソニアさんの復活権を放棄するなら他の人に持ちかけますよ。他の人にも生き返らせたい人はいるでしょうから。」

 

「おい、それはどういうことだよ!ソニアさんの復活だと!?」

 

考える間もなかったし聞かないという選択肢などなかった。反射的に出た俺の言葉に罪木は内心何を思ったんだろうか、俺の方に向き直り囁く様にそして唆す様に言葉を紡いでいく。

 

「そのままですよ、ソニアさんを生き返らせる事ができるってことです。だってそうですよね、本来モノクマちゃんが七海さんを始末する事はコロシアイの趣旨に反しますし本意ではありません。公正なゲームにする為にも埋め合わせは少なからず必要となります。ですから一人減った人員を誰かを生き返らせることによって埋め合わせをしようというわけです。」

 

「....」

 

「モノクマちゃんに協力と言ったのはこういう事なんですよぉ。それで最も死者に執心している貴方に私が声をかけたってわけです。」

 

「だけどだけどよ、人間を生き返らせるなんてそんな上手い話いくらモノクマでもできっこねえだろ。」

 

正直、俺は断る口実を探すと同時にソニアさんを生き返らせられるかもしれないという淡い期待を抱いていた。そしてそれを罪木は証明してみせた。

 

「むしろモノクマちゃんにしかできませんよ。」

 

「根拠は?」

 

「私が今ここにいること。」

 

「!?」

 

「左右田さん、貴方なら分かりますよね。前周回処刑された私がここにいるその意味が。」

 

「モノクマが人間を生き返らせることができるから。」

 

「その通りです!仕組みや理由は分かりませんけどモノクマちゃんは確かにコロシアイ修学旅行を繰り返している。そして人間を生き返らせる何らかの術をもっているということです。」

 

いくらプログラムの世界といえども人間が生き返るなんて考えられない。事実、江ノ島盾子は前周回で一度プログラム世界で死んだ者はアバターが完全に消去されて現実世界でも脳の活動を停止すると言っていた。常識で考えればその通りだ。

でも罪木の指摘した事や俺たちの今置かれている状況が示すのは否定しようのない本来あり得ない事実。そして生き返ったのが罪木以外にもいるということは例外なく全てのやつを蘇られられるということだ。

 

「最後にもう一度聞きますね、左右田さん。モノクマちゃんに協力しませんか?」

 

俺の答えは決まっていた。むしろこれ以外の選択肢があるだろうか。

 

「乗ってやるよ。モノクマの作戦に。」

 

一瞬だけ罪木はニヤリと笑みを浮かべるとすぐに優しい笑顔になり

 

「流石、左右田さんです!ではオクタゴンに二人をおびき寄せて下さいね。後はモノクマちゃんに任せればいいですから。」

 

そう言って罪木は俺の元を去った。

 

俺はとんでもない悪魔の囁きに乗ってしまったのかもしれない。でもこんな希望をぶら下げられて食いつかないなんてことはできなかった。罪木はこれをチラつかせれば俺が縦に頷くと思っていたと考えると不愉快極まりないが、もはや俺には何も捨てる物がない。モノクマに協力だってしてやるよ。

それに俺は殺人をするわけじゃない、そんな自分を正当化させる言葉を頭に巡らせながら俺も自分の部屋へと帰って行った。

 

 

運命の夜、俺はモノミをオクタゴンにおびき寄せた。モノクマがオクタゴンで怪しい行動をしていると言ったらすっ飛んで言った。そして俺は今七海にモノミとモノクマが戦っていることを伝え七海をオクタゴンに案内している。

モノミの事を伝えると七海は険しい顔をしすぐに俺に先導するよう頼ってきた。これだけでも二人の絆が分かる。この絆を俺はこれからソニアさん復活の為の生贄にする。

 

ファイナルデッドルームに到達した途端、迷わず七海は拳銃を手に取り自分の頭に向けて発砲した。結果は成功したが俺は七海の覚悟や意思の強さを思い知らされた。

 

オクタゴンに七海と共に入った俺はすぐにモノクマと対峙するモノミを見つけた。

 

「モノミちゃん!!」

 

「千秋ちゃん!!」

 

「うぷぷぷ。どうやら役者は揃ったようだね。」

 

その時俺の頭上を放物線を描く様にそれは飛び、隠し通路の入り口付近に落下した。そしてそこから出てきた紫色の気体。その瞬間、理解した。毒ガスが散布されたのだと。

 

「左右田さん、よく頑張りましたね。そこで私が復讐のお手伝いをしてあげます!」

 

声のした方にいたのはメスをチラつかせた罪木。罪木もオクタゴンに入れたのか。そんなことより毒ガスとは違って罪木の言っていることは理解ができない。

 

「前方は私の投げた毒薬の瓶から毒ガスが撒かれましたから隠し通路に逃げることはできません。後方、ファイナルデッドルーム側はこのメスを持った私が塞いでます。さてここで問題です。この状況で左右田さんが助かる方法は何でしょうか?」

 

「そ、それは...」

 

俺は血の気が引いた。こいつは何を言っているんだ。何という余計な事をしてくれたんだ。いや、全てここまで織り込み済みだったのか。

 

「正解は七海さんを殺して学級裁判を開くことですぅ。そうですよね、モノクマちゃん?」

 

「確かにこの状況じゃ左右田クンが助かる道はそれしかないかもね、もし君が七海さんを殺したらボクは君を死なせるわけにはいかないからすぐに毒ガスは排除してあげるよ。なんてたって学級裁判は全員参加ってルールで決まっちゃってるからねー!」

 

そんなのは詭弁だ。モノクマの主張通り一人殺された時点で生き残っている人間が学級裁判に参加必須ならどうして直近の連続殺人を止めなかった。しかしこんな屁理屈でも学級裁判は全員参加というルールを広く解釈すれば矛盾点は何もない。つまりモノクマは何もルール違反を犯していない。

 

「左右田さんが復讐する勇気を失っちゃったみたいなんでお膳立てというやつですよぉ。ついでに未来機関も一掃できるので一石二鳥というやつです。」

 

「なんて外道な事をするでちゅか...。」

 

「まあ私に闘いを挑んだら勝てはするでしょうけど少なくとも私は死んでも貴方を殺してみせますからねぇ。」

 

根拠はない。だが悪魔の様な笑みを浮かべる罪木を見ると本気だと思わざるを得ない。確かにこいつは俺に希望をぶら下げてきたけどそれは絶望に喰われるための希望にすぎなかったみたいだ。

 

殺人、罪木やモノクマへの怒り、騙された自分への怒り、ソニアさん復活の希望、七海を殺す覚悟

混沌とした感情が胸の中で渦巻いていた。

 

「左右田くんが助かるなら私はここでいなくなってもいいよ。」

 

「は?」

 

「千秋ちゃん!」

 

罪木やモノクマの言動とは別ベクトルで予想外の言葉に俺はそれ以上の声が出なかった。

 

「私たちの事情に巻き込んじゃったみたいだからその責任の一端は私にある。だからしょうがないよ。君はただその為に利用されて嵌められただけだもんね。」

 

「い、いや俺はそんな...。ソニアさんを蘇らせたい一心で...。」

 

「それでもここで二人とも死ぬよりはプログラムの私が死んで一度は生き残った君が助かる方がよっぽどいいよ。それでソニアさんを生き返らせてあげて。」

 

「千秋ちゃん!そんなダメでちゅよ!諦めるなんてらしくないでちゅ!」

 

「ごめんね、モノミちゃん。もう決めちゃったんだ。左右田くん大丈夫だよ。私は恨んだりはしない。むしろ死んでほしくないんだよ。」

 

「だけどよもしお前を殺したとしてアイツらにどんな面して会えばいいんだよ。それにこれからどうすれば...。」

 

「本当なら殺人を犯した以上自白して罪を償って欲しいと言いたいところだけど私のせいで君を殺人者にしちゃうんだからそんな事は口が裂けても言えないね。

後の事は君に任せるよ。無責任なようだけどやっぱり私には左右田くんと日向くん達の命を天秤にかけることなんてできないから。後悔のないように生きてね。」

 

「でもこれが罠ならソニアさんを蘇らせるってのも嘘かもしれないだろ。」

 

「でも日向くんは私にまた会えたよ。だから左右田くんも諦めちゃだめだよ。ほら、やればなんとかなるってやつだよ。

ほら、毒ガスも待ってくれないからお願いするよ。」

 

七海は前周回から何も変わってなかった。でも俺は随分変わっちまったな。これから殺人者になろうってんだから。

 

「でも最後に一つだけお願いできるかな?」

 

「何だよ?」

 

「ここで起こった事は皆には言わないで欲しいんだ。特に日向くんがこの事を知ったら彼が前に進む邪魔をしちゃうかもしれないから。」

 

「分かった。約束する。」

 

七海は全てを受け入れたように目を閉じる。

そして俺は愛用のスパナを七海の脳天に振り下ろした。

 

 

「ぶっひゃっひゃっひゃっ!左右田くん、君は素晴らしい生徒だよ!こんな絶望的に感動的なシーンを見せてくれるんだからね。

あとちゃんと毒ガスは中和してあげるから安心してね。それじゃバイナラ〜。」

 

そういうとモノクマは一瞬消えたと思ったら、天井にスプリンクラーが突き出して来て水が降り始めた。俺は手にかけた七海が濡れないようその体を手近にあったカーペットで覆った。そしてスプリンクラーは水を降らし終わるとまた引っ込んでいった。

 

「私もいいものが見れましたし、もう帰りますからねぇ。」

 

罪木が去って残されたのは俺と立ち尽くすモノミだけだった。

 

「左右田くん...。」

 

「モノミ、目撃者を逃す訳にはいかねえんだ。」

 

罪木のこれまでの言動からして目撃者と言っても俺の犯行をバラす可能性は限りなく低い。だとしたら残る不穏因子は七海と繋がってたモノミだけだ。

 

「どうやら君は覚悟を持って生き残る道を選ぶみたいでちゅね。」

 

「こんなところで覚悟を決めるのも皮肉な話だけどそうなるな。」

 

「分かってまちゅ。正直、千秋ちゃんを殺した君を許すことはできまちぇん。でも今の君の覚悟と生きる希望を持った顔つきは好きでちゅよ。」

 

「やっぱりどこまで行っても俺は生きてソニアさんに会いたいみたいなんだ。そして七海を犠牲にしたからこそもう立ち止まるなんて許されねえんだ。」

 

「そうでちゅか。それも愛の成せるわざなんでちゅかね。いつかソニアさんに会えるといいでちゅね。

...それじゃあそろそろお別れでちゅね。千秋ちゃんや左右田くんが覚悟を決めたのに先生がお手本を見せないわけにはいかないでちゅからね。あと喧嘩はダメでちゅよ!短い間かもしれないけどみんなと仲良くしてくだちゃいね!」

 

「死ぬのは怖くねえのか?」

 

「怖いでちゅよ!今でも逃げだしたい気分でちゅ!でも生徒の幸せを願ってこその教師じゃないでちゅかね?」

 

「ははは、オメーはすげえよ。今までありがとよ。」

 

「こちらこそでちゅ。らーぶらーぶ忘れないでくだちゃいね。」

 

そして俺はモノミにスパナを叩きつけた。

 

 

【シンギュラリティ】

 

俺は今様々な機械類に取り囲まれている。これから始まるオシオキはどんなものであれ悲惨な末路を迎えることになるんだろう。

 

全ては俺の弱さが招いたことだ。覚悟を持つのも希望を持つのも全てが遅すぎた。江ノ島盾子を倒して俺は絶望を乗り越えたと思ってた。

でも実際はそうじゃなかったってだけの話だ。俺は何も変わってねえ。弱い人間のままだ。日向や七海あいつらとは違う。

 

前周回でも今周回でもそうだった。俺はいつも誰かに頼りっぱなしだった。今週回だってそうだ。また最後まで生き残れる未来だって確実にあった。

七海は後悔するなって言ったけどやっぱり少しばかりは後悔があるもんだな。情けねえよほんと。

でもどれもこれも今となっては負け犬の遠吠えに過ぎないけどな。

 

俺の周りを取り囲む機械類はかつて俺が作ったオモチャや電化製品、自転車なんかのちょっとした乗り物たち。

それらはまるで自律型の意思を持つかのように俺に襲いかかって来た。俺の腕に体当たりするやつ、俺の足を踏みつけるやつ、俺の頭をぶん殴ってくるやついろいろだ。

幼少期の俺が機械いじりの楽しさに気づいたときに作ったやつ、暗い中学時代の寂しさを埋める様に作ったやつ。そんな俺の思い出たちが今は俺のことをリンチしている。皮膚が腫れても、骨が折れても、出血をしてもお構いなしだ。

大人たちが議論しているのをいつか聞いたことがある。いつか機械自身が意思を持ち人類以上の知能を持ち始める時がやって来るって。まるでこのオシオキはそれを象徴しているようだ。

 

皆からしてみれば俺はただの裏切り者だろう。改心したように見せかけてこのザマなんだから。でもオクタゴンの事だけは言うわけにはいかない。これが七海の最後の願いだ、日向の足を引っ張ったらアイツにあの世で怒られちまうよ。

それにアイツらが生き残る限り七海もソニアさんだって生き返る事ができるかもしれないからな。

 

あと日向だ。お前は本当に謝っても謝りきれねえ。もうソウルフレンドだなんて絶対に言えない。七海を殺した事だけじゃない。お前のくれた希望を無駄にしちまったこともだ。でもそれでもお前ならまた江ノ島を倒せるってなんか思うんだ。お前がカムクライズルだとかじゃない。予備学科の日向創だからそう思うんだ。

 

俺たちは全員才能を持ってここにいる。ソニアさんでさえそうだ。でもそれって出せる力がある程度決まってる様なもんだよな。だけどよ日向は何にだってなれる無限の可能性を持ってるってことよ。そんなお前を信じずに誰を信じるんだよ。また江ノ島はお前らを絶望に落とそうとしてくるだろうけどその時は俺に希望を持たせてくれた時みたいにお前が導いてやってくれよな!

 

その時リンチをしていたやつらは蜘蛛の子を散らす様に去っていった。俺は息も絶え絶えで全身が痛くて堪らない。

そこに現れたのは特撮番組に出てくるような巨大なロボット。全身を両手をドリルで武装された真っ黒なフォルムをしている。こんな物、俺は作った覚えはない。そもそも殺戮兵器を作るわけが...。

 

俺はそこでこのロボットの正体を悟った。こいつは多分俺が超高校級の絶望に堕ちた後作ったものだろう。でなきゃこんな物をつくるなんて正気の沙汰とは思えない。

 

であればコイツを使って俺は何人もの人たちを殺して来たんだろうな。コロシアイ修学旅行がちっぽけに思えるくらいの命を奪って来たんだろうな。

 

他者を殺す為に作った兵器で自分が殺されるなんて報い以外の何ものでもない。精神的な逃げ場もない。甘んじて受け入れるしかないということか。

 

そのロボットは俺の方へ走ってきてそのドリルでそのまま俺を貫いた。

 

「ああああああああああッ!」

 

俺の断末魔の叫びと鮮血が辺りに飛び散る。ドリルは電動で回転している為内部から肉も血も全てをえぐっていく。

 

そして俺が最期に想ったのはやはりソニアさんだった。俺はソニアさんに盲信的な恋心を抱いていたのかもしれない。恋は盲目とはよく言ったもんだ。でもこの恋心までは最期まで捨てる気もないし恋心を抱いた事を後悔もしていない。

俺が愚かだったばかりにその恋心を正しい方向に向けずこの結果を招いただけのことだ。殺人者の俺を貴方は許してはくれないでしょう。それも仕方のない事です。

ただまたいつか会う事ができたならその時は一方的な愛を向けるだけじゃない成長した男になってみせますから。

 

 

          

           【chapter4】

 

       全てを知る者は蘇りの夢を見るか

 

            END


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