赤い血がしたたるホスティア。
ピエロの心は血塗られた指の中にある。
恐怖の晩餐ミサに向かう。
(アルノルト・シェーンベルク《月に憑かれたピエロ》より〈赤いミサ〉)
〈夜奏視点〉
暗い。
この闇はどこまで続くのか。
轟音回す頭上の空も、身を隠しながら歩いている森も…全てが黒一色で呑まれそうになる。もうじき僕もその一部になるのかもしれない。
降り注ぐ雨と容赦ない向かい風。身も心も凍てついていく。
道ならぬ道、何度も急斜面の泥濘に足を取られては転ぶ。
揺れる木々は夜の怪物みたく、今にも襲いかかろうと僕に枝を伸ばしてくる。
仮にこの先希望があるとして、僕は生きてそこに辿り着けるだろうか。もしかしたら待ち受けるのはそんなものですらないのかもしれない。
それでも行かなければ。
生きるため、僕が僕であるため…おじさんとの日々も、湖上の朝日を見る夢も全部捨て去り歩き続ける。
そうでなければ──僕は一体何のために生まれてきたというのか。
カラ…。
小石が落ち、岩壁に弾かれる音がして我に返ると、いつの間にか断崖にいる…一歩間違えば滑落は免れないのに、どうやらぼんやりしていたらしい。
雨はいつの間にか止んで、雲の切れ目からわずかに月光が差し込んでいた。風は相変わらず吹き荒れ、眼下では暗い渓流が激しい飛沫を上げる。そこから薄らと立ち昇る白い霧が僕の足もとにかかり、なんとも非現実的な光景を見せつけていた。思わずこれは夢なのではないかと思ってしまう。
今し方抜け出してきた集落は崖上の森のなか、嵐の夜闇に眠っているはず…ずっとそのまま眠っていてほしいものだが、そんなに甘くはいかないだろう。とにかく息を殺して、闇に身を隠しながら逃げるしかない。
山の麓へ続く道は、集落の中心から敷地内の森を通りずっと下降していく坂になっている。それだけがまともに歩ける唯一の道だ。見張りの物見櫓もこれに沿って置かれている。普通に考えればこんな嵐の最中に外を歩くだけでも危険なのに、そのまともな道すら通らず、わざわざこうして森端の急斜面を下り崖に出て逃げようとしているのだから、我ながら自分の無鉄砲さに呆れてしまう。けれどそうでもしない限り、見張りの目を掻い潜ることはできない…捕まったら終わりだ。文字通り命懸けなんだ。
歩きながら僕は、おじさんと山道の整備をしていた時のことを思い出す。何となくこの辺のことを頭に入れておきたいと思って、作業しながら少しずつ森の地形、歩きやすい箇所などを確認してまわっていた。そう言えば…おじさんにもあれやこれやと尋ねたっけ。聞いたところでは、森の急斜面を下れば断崖に出、それを伝っていった先に小さな洞窟があるのだという。そこを辿っていけば人知れず麓に出ることができる。表向きと全く違うこの経路は、大昔に山伏が通っていたもので、わざわざ遠回りしながら命をも危険に晒す険しい修験道だった。明治元年から五年にかけて、修験道が太政官達により公式に廃止されると、誰にも使われなくなったそうだ。断崖の道は幅が大人の両足をそろえた程度しかなく、用済みになったことでどんどん朽ちている。それを聞いてから、なぜだかその裏経路のことがずっと頭の片隅に引っかかっていた。
仕事の合間に、時々森端の急斜面の手前まで行っては下にある崖を想像する。そんな癖がいつの間にかついていた。今思えばこの閉ざされた集落から解放されたい一心で、無意識にそうしていたんだろう。それが今日いきなり堪え難い事実を突きつけられて、本当にこの経路で脱することになるとは思ってもいなかった。
実際思い描いていた断崖にこうして立つと、道のあちこちに亀裂が入っていて今にも崩れそうだ。場所によっては途中で断絶していて飛び越えなければならないところもある。子供の僕なら何とかなるが、大人だったら相当難しいだろう。僕はなるだけ足に体重をかけないように慎重に進んでいた。
頭が痛い…。
なぜだろう。こんなに寒さで凍えているのに、額に変な汗が滲む。猛風の中、頭を片手で押さえながら、もう一方の手で岩壁を伝っている。
──く…。
足もとの小石がまた落ちる。先の道が次第に歪み、重なって見え始めた。何が起きているんだ…息苦しさに呼吸を荒げて立ち止まるが、先はまだまだ遠い。こんな所でもたついている時間はない…自分に残された唯一生き残る道なのに、肝心な時に頭が痛むとは。
思うようにいかず悔しさと苛立ちを募らせていた時、懐に忍ばせていた鈴が僅かにチリンと鳴り、頭の中に映像が流れ込んできた。
《おい!!金目の小僧!!!どこにいやがる!!》
誰かが上の森の中で叫んでいる。村人であることは間違いない…凄まじい形相で目を血走らせ、もう一人の男の首に短刀を突きつけている。短刀を突きつけられた男は散々殴られたのか、痣だらけだ。その顔がだんだん鮮明になってくるにつれ…僕は頭が真っ白になった。
──おじさん…!
《ここを無断で出ていくとは貴様!!いい度胸だな!!育ての親を犠牲にすると知ってのことか!?》
男は力一杯短刀をおじさんに突きつけ、語気を荒げる。
《淀見那様がお呼びだ!!出て来やがれぇ!!四つ数えるごとにこいつをぶっ刺してやる!!》
そう言うと、もう片方の手にしている短刀を大きく振り上げ、数え始める。
《一!!》
《夜奏!!こっち来るな!!》
おじさんが叫ぶと同時に《ニ!!》の掛け声が入る。
《絶対来るんじゃねぇ!!親父たちは殺されちまった!俺ももう終わりだ!構わず行け!!》
《三!!》
《俺は…お前と過ごした日々だけでもう十分だ!!》
その悲痛な叫びが暗い森に響いた。
《四!!》
短刀が容赦なくおじさんの右太ももに振り下ろされ、おじさんが悲鳴を上げる。太い血管をやられたのか、血がどくどくと流れ出ておじさんのたつけを赤く染めていく。
………
わかっていたはずだ。こうなることを知っていて僕は自由になる方を選んだ。非情な決断だった。今更引き返すなんてできるわけがない。一度踏み出したら最後まで行かなきゃ駄目だ。
僕は目を瞑り、岩壁に添えた手に額を打ちつけ、自分の中から飛び出そうとする衝動を必死に抑えようとした。頭痛も相まって額の汗が滴り落ち、震える拳にどんどん力が入っていく。
──クソッ…。
村のしきたりとはいえ、長に屈して自分の母親を手にかけた男。そんなやつを守る義理などどこにもない。助ければお前は必ず捕まる。助けられる保証もないんだ!こんな集落とは永遠におさらばすると決めただろうが!脇目も振らず先を行くんだ!
《行け、夜奏!!戻って来んなぁ!!》──自分で自分を叱りつける内声に、おじさんの声が重なっていく。それは最後の力を振り絞り、我が子を守ろうとする親の叫びそのものだった。
《六!!》
・
・
・
・
・
僕は目を開けた。
頭の中が空っぽになった。
後先のことなどもう考えなかった。
気がつけば岩壁の亀裂に右手を添え、獣のような唸り声をあげている。全身が憎悪でいっぱいになり、目からは金色の光が迸っていた。それは、一度飛び出したらもう二度と抑えられない狂気だった。
短刀振りかざす男は、未だ処刑までの残り時間を数え続けている。その意気高揚した顔は殺人鬼そのもので、とても人間とは思えないほど醜い。
《七!!》
辺りはしいんと静まり返っている。
《は…お前も惨めなもんだなぁ》──男はふいに笑い出した。
《育ててやったガキにまで見捨てられるとはよ。やっぱり底辺は底辺だな》
そう言うと短刀を再び大きく振りかぶる。
おじさんは項垂れたまま、静かに笑みを浮かべ《それが本望ってやつさ》と言った。
《そうかい。そんならせいぜいあの世で落ちぶれ親父どもと仲良くやってんだな》
その言葉と共に、短刀の刃先がおじさんの腹目掛けて一直線に振り下された時。
男の額から突如血が噴き出、緑の
それは──僕の掌から放たれた鋭く固い一本の茎だった。岩壁の切れ目を縫うように進み、地面を通って男の足元まで忍び寄り、一気に頭まで串刺しにした凶器だった。
男は悲鳴を上げるまでもなく、ほんの少し痙攣を起こした後動かなくなる。振り下ろしていた短刀も、おじさんの首に突きつけていた短刀も地面に落とし、まるでかかしのようにそこに突っ立ったまま両腕をだらりと垂れた。さっきまでいきり立っていたやつが、糸で吊られた操り人形みたく魂の抜けたモノ同然となる。それが、僕の人生ではじめて──人の命というものを奪った瞬間だった。
その時の感情を、僕はあまり覚えていない。ただその瞬間から自分を取り巻く世界が一変してしまった、ということは分かっていた。動き出した歯車はもう止められないのだと。
男の腕から離れたおじさんが、支えを失い急斜面から断崖へ転げ落ちてきた。僕は残った力を左手に集中させ、無数の蔦を出して落ちてくるおじさんに絡ませる。右手の茎を岩壁に引っ掛けたまま力いっぱいおじさんを引き上げると、耳奥がキーンと鳴り、視界がまた何重にも見え出した。
「ゔっ…ぐ…」
耐え難い頭痛と吐き気に、思わず目を瞑る。歯を食いしばったまま、一呼吸置いたところで再び力を込める。ようやくおじさんを自分のもとに引きずり上げ、少しだけ道幅が広くなっているところへ横たえた。
息を切らしながら顔を覗き込むと、おじさんは気を失っていた。
「おじさん…」
呼びかけるが、返事がない。軽く揺さぶると薄らとその目が開いた。
「よ…かな…」
僕をぼんやりと見上げ、「何…してんだ」と呟く。
「何…やってんだテメェは…なん…で…俺なんか…助ける…」
おじさんの目に涙が浮かぶ。おじさんは見られまいとすぐに自分の目元を手で覆った。初めて見る泣き顔だった。
「俺は…お前の母親を…。なんで、こんなクズなんかっ…助ける」
答えられなかった。
僕は黙っておじさんの血塗れの足に手を置き、傷を治していく。
声を殺して泣くおじさんの、それでも微かに聞こえる嗚咽が、未だ荒れ狂う冷たい風のなかに消えてはまた聞こえ、消えてはまた聞こえ…今自分たちが生死の境にいることを痛いほど知らしめた。絶望の淵だ…誰も助けてはくれない。
「…おじさん、前言ったよね」
「……」嗚咽が止む。
「『人生一度きりだ』…僕は、その言葉が忘れられないんだ」
おじさんは目元の手を退けて、静かに僕を見上げた。
「今がその
太ももの出血はとうに止まり、傷も塞がっている。
「自由になって、好きに暮らして、やりたいことをやるんだ」
いつの間にか雲の切れ目から月が顔を出していた。冷たい闇夜にひときわ眩い白い光を放ち、僕たちがいる断崖を照らし出している。誰も味方してくれないこの世界で、この月だけは僕たちの背中を押してくれているように感じた。
「行こう…さあ立って」
「俺は手負だ。足手纏いにしかならねぇ」
「大丈夫、肩貸すから…」
僕はおじさんを起こしにかかった。
「ったく…馬鹿野郎が」
おじさんはまだ泣いているが、よろよろと腰を上げた。
──その時だった──
背後に気配を感じて、僕は咄嗟におじさんに覆い被さる。
バアアアン!
渇いた銃声音が辺りに響き、右肩に激痛が走った。弾が貫通したのだ…まだ温かさをもった血が噴き出、僕の野良着を真っ赤に濡らしていく。
振り返ると村人の男がもう一人、村田銃を構えたまま、ゆっくり岩陰から姿を現した。銃口の向きからして、おじさんを狙っているのは間違いない。僕は肩を押さえながら男の前に立ちはだかり、睨みつけた。男は構えていた銃を下ろしながら目の前まで迫ってくる。
「よ、よせ。夜奏…!」
おじさんが必死に僕を退かそうとするが、僕は動かない。
「こんなところにいやがったとはな…」
男の顔の半分が、暗がりから月光に照らし出され、浮かび上がる。にやけていて、壮年らしい深い皺が刻まれておりいっそうの不気味さを増している。獲物を見つけた時の猟奇的な悦びだ。
「あいつを
懐から呪符を出し、ひらひらと見せつける。
「くっ…」
僕は右手に力を込め、再び茎を出そうとした。だがさっきの一撃とおじさんの傷の手当てに力を使い過ぎてしまい、出てこない。右肩からの出血も酷く、頭が朦朧とする。掌を見ればか細い根が張っているだけだ。
「けっ、
男はいきなり僕の胸ぐらを掴み自分に引き寄せた。そして笑いながら僕のほおを殴り、みぞおちを膝蹴りする。ボキッと肋骨が折れる音がした。僕は息ができずに倒れ込んでしまう。男はなおも僕の襟首を掴み、拳を振り上げて殴ろうとする。
「やめろ!」
背後からおじさんが男に飛びかかった。だが男はおじさんの脇腹に肘鉄を喰らわせ、銃尾で頭を殴りつける。おじさんがよろめき倒れたところを何度も踏みつけ、蹴り飛ばした。転がされたおじさんは断崖から落ちそうになり、片手一本で辛うじて崖淵にぶら下がった。
「よ…夜奏…!」
「いい加減死にやがれよ
男は再び銃口をおじさんに向けた。僕はみぞおちを押さえながら、もう片方の震える手で地面をつき、なんとか起きあがろうとする。だが折れた肋骨が悲鳴を上げ、息をすることすらままならない。
──ぐっ…。は…やく…。
「頭ぶち抜いてやるよ。しぶてぇんだから全くよ」
「……!」
男は引き金に指をかけると同時に、「あばよ」と言い放った。
バアア…ン
銃声が轟いた。
果たして、この世と本当におさらばしたのはどちらか。
答えは男の方だ。
引き金を引いた瞬間、やつの身体は既に、背後斜めからの僕の体当たりで大きく傾いていた。放たれた弾丸は何にも当たりはしなかった。焦げ臭い細い煙が瞬時に風にかき消される。
「うわあああああ!!!」
身の毛もよだつほどの断末魔とともに、男は奈落の底へ落ちていった。
「はっ…はっ…」
目の前の人殺しを排除した僕は、息も絶え絶えにその場に倒れ込むが、すぐさま這うようにおじさんのもとへ寄る。
「おじ…さん…!」
崖淵にぶらさがるおじさんの片腕は震え、もう限界が来ていた。指が伸びていて自分の体を支える力がない。僕は急いでおじさんの手を掴んだ。途端、自分の右肩の傷口から血がどくどくと流れ出し、腕を伝っておじさんを支える僕の手に下りていく。おじさんの顔にもぽたぽたと僕の血が…。力めば力むほど肋骨が歪んで軋み、息ができない。
「……っ」
「やめろ!死んじまう!」
「い…いや…だ!」
絞り出すように声を出す。
僕はもがいて拒絶していた。こんな現実、こんな運命…冗談じゃない。今まで苦しんできたのは何のためか。こんなに蹂躙されて、報われずに終われと言うのか。そんなの嫌だ。絶対…絶対に嫌だ!
でも。
必死に足掻けば足掻くほど力が無くなっていく。夢に描いていた、何にも縛られない未来が遠のく。なんで…こうなるんだ。虚しさと自分への腹立たしさで涙が滲み、雫となっておじさんに落ちていく。
「泣いてるのか…お前」
「……」
「泣き顔…赤ん坊の時以来、だな…」
おじさんはふっと笑い、穏やかな表情を浮かべた。今まで見たことのない、優しい笑顔だった。目尻に涙が光っている。
「いいか、夜奏…人生一度きりだ。俺のことはもういい。お前一人で行け」
「嫌だ…!そんなこと…できる…わけ…」
「お前の人生だ。俺は…もう十分、お前から幸せをもらった」
──お願いだ。そんなこと言わないでくれ。掌から何でもいい…出て来てくれよ!
そう願うが、ますます手の力が無くなり、僕の上半身がおじさんの体重につられてずり落ちていく。肩から流れ出る血の滑りで、おじさんの手を握ることすらままならなくなった。掌からは相変わらず何も出てこない。
おじさんは僕の手から自分の手をゆっくり離し、最後に両手でそっと僕の手を包んだ。
「もう行けって…ぐずぐずするんじゃねぇ。いつも言ってるだろうが…」
その言葉と同時に、両手を離した。
「おじさああああん!!!」
僕の悲鳴も虚しく、おじさんはずっと下の暗い渓流の中へ…どんなに声を張り上げても届かない闇奥へ、笑みを浮かべたまま吸い込まれていく。
僕は眼下の渓流に手を伸ばしたまま、もう思考が完全に停止してしまい、動けなくなってしまった。
「お…おじ…さ…」
頬を伝う涙が冷たい。
これは現実なのか。悪い夢を見ているだけじゃないのか…もしそうなら覚めてほしい。
真っ黒な渓流がどんどん赤黒くなっていく…。
「ここらで聞こえたはずだ」
「あ、いるぞ!あそこだ」
「早く縄持ってこい!」
村人たちの声が近づいてくる。銃声を聞きつけ、駆けてきたのだ。
──行かな…きゃ。
僕は肩を押さえ、呻きながら立ち上がり、よろよろと歩き出した。だが、もう…
遅かった。
「こいつめ!!」
怒声とともに後ろから髪を掴まれ、地面に激しく頭を叩きつけられた時には、もうほとんど意識をなくしていた。額がぱっくり割れて血がだらだら滴り落ち、口に入って鉄の味がする。
首と両手に縄がかけられきつく縛られた。それはいつだか、あの遊びをした日を思い起こさせた。
かごめかごめ…
かごのなかのとりは…
「もうお前に逃げ場はない。今日からたっぷり淀見那様に可愛がってもらうんだな」
傍で僕を見下ろしている男が、皮肉混じりの笑みを浮かべた。
頭が痛い…。
割れそうだ。
僕はゆっくりと顔を上げる。
そうして目に飛び込んできた光景は──
「赤」だった。
さっきまであんなに白く光っていた月が、赤黒くなっている。
そうか。
この月が映っていたから川が赤黒く見えたんだ。
まるで御伽話に出てくる怪物の眼みたいだ。
真っ黒で澱んだ瞳孔に、血走った白目。僕を睨みつけている。
虚ろで、
飢えていて、
狂っている。
そこから血の涙が滲み出すように、空を真っ赤に染めていく。
空が赤い。
空が泣いている。
血の涙で真っ赤だ。
僕がおかしいのか。
僕がまともでないからこう見えるのか。
それとも本当にこの空が赤いのか。
どっちなんだ…。
意識が遠のいていく。
その端で僕は、村人たちの会話を聞いていた。
「なあ、嶺二のやつはどうなった」
「知らねぇなあ」
「どうでもいいさ。生きてたって惨めなだけだろ、あんなやつ」
【裏解説】
1. 赤い月
おそらく夜奏は月蝕を見ているのだが、サウロンの目のようなものが血を流しているのを想像して頂ければ…。
2. 断崖の道
スペインのガイタネス峡谷にあるエル・カミニート・デル・レイ、あるいは中国の崋山の長空桟道がモデル(ちなみに筆者は高所恐怖症)。