二次キャラ聖杯戦争OZ EFFECTIVE EARTH   作:yu sato

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登場キャラクター
マスター 新条アカネ
サーヴァント キャスター μ(ミュウ)

作者
◆koGa1VV8Rw


【オープニング】【本戦開始前】19 Special Songs to Seize a Soul マスター 新条アカネ サーヴァント キャスター μ(ミュウ)

今日の時間割が終わり、生徒たちは各々下校や部活動の準備を始める。

よくある高校の日常の風景。

 

少し違うのは生徒たちの姿。

日本人らしい風貌の生徒は多数派ではあるけど、それに当てはまらない生徒も多い。

肌の色も髪の色も様々……というより動物が立ったような姿をした者や体が機械で作られた者など、

人間にすら当てはまらない者もいて、この世界の来訪者としてはいつ見てもそこに目を取られる。

 

私は教室の窓に手を付き乗り出し、外の様子を眺める。

下校していく生徒たちを眺めて、毎日やっていることの成果を確認したくて。

 

 ~たとえば君が 傷ついて

  くじけそうに なった時は~

 

少し離れた教室から、合唱曲の練習が聞こえてきた。聞いたことがある歌だけど、歌声が普通の高校と違ってる。

高校生らしい技術力や音程のバラバラさは、更に多種多様な人種たちが混ざったことで混沌としてる。

でもそれぞれの生徒が一つの歌を奏でることを目指して歌う様子が伺えて、聴けないような酷い音にはなりえない。

 

 ~かならず僕が そばにいて

  支えてあげるよ その肩を~

 

と、ポケットの中から私のサーヴァントが、その混沌へ混ざらんとするのか同調して歌いだした。

妖精のような小さい彼女は、澄んだ柔らかい歌声を出す。なのに声量が大きくて凄い。聴き入りそう。

 

「おーいアカネ! またスマホの音大きすぎるぞ!」

 

と、他の生徒が私の方に向かって言ってきた。

 

(ごめんμ、いい歌だけどちょっと静かにして)

 

私は声の方を見て、黙るように念話を送る。

妖精のような小さく可愛らしい姿のアイドルは、残念といったように肩を落としながらも私に従った。

 

(君に私の歌をもっと聞かせてあげたくて、歌いたくなっちゃったの。ごめんね)

(いいよ、また家でたくさん聞くから)

 

校庭の人の流れも途切れ途切れになってきた。私も帰り始めようかな。

毎日やっている聖杯戦争への準備の成果は、まだよく分からなかった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 ~大改造したいよ この機構とエゴを

  己でさえ 分かっている 破損箇所~

 

私が校庭を歩いていると、校内放送で下校時間の音楽が流れ出した。部活動をする人たちはまだ残るけど。

μの歌う楽曲。作曲はオスティナートの楽士、lucidだったっけ。

μは自分の歌が放送で流れるのを確認すると、今日は何故か霊体化して家へ一足早く私より先に帰っていった。

 

μは自分のために提供された楽曲を唄い、それに強く共感した人々が増えるほど力は強くなっていく。

だから私は学校の放送を活用してμの楽曲を時々校舎に再生し流したりして、多くの人に聞かせようとしてる。

窓から校庭を見ていたのは、μの歌に強く依存し侵食され黒い感情が外に出てしまった怪人、デジヘッドが現れ始めたか確認したかったから。

 

「お疲れっ、アカネ。μの歌が流れて上機嫌な感じかな?」

「おっ、バードンか。今日も綺麗な羽だねぇ」

 

下校する私に話しかけてくる子が一人。

人目を引くカラフルな羽毛に包まれた姿。鳥が人間のように立ち上がったような姿をした種族、リト族の子。

 

「……なんかその呼び方、怪獣っぽくて変だよね。もう慣れたけど」

「うーん、全身羽毛だからラルゲユウスとかの方が近いのかなあ。まあ呼びにくいしバードンでいいね」

「う、うん。まあ私だってわかればそれでいいよ」

 

この子の本名は……なんだっけ。何だか鳥の体の部位っぽい名前をしてた気がする。

初めて話した時も私が思わずバードンと言っちゃってまずいと思ったけど、それでも嫌がったりはしなかった。

初めて登校した時にはまだ人間に会いたくない感情が心に積もってたけど、

明らかに見た目が人間じゃない、むしろ怪獣や異星人とかに近い彼女にはそこまで恐怖や嫌悪を抱くことはなくて。

そこから少しずつ、引っ込むことなく普通に学校に通えるようになったと思う。

 

「最近μの曲がよく放送で流れてるよね。放送委員の中にμのファンでもいるのかなあ。

 私はμの曲結構聴いてるけど、ミレイ様作曲の『Sadistic Queen』が好き。

 無敵で誰をも屈させるサディステイックな感じ、シンプルにかっこいいよ」

「あっ、意外……なんかガッツ星人みたい」

「え? ガッツがあるってこと?」

「え? あ、あはは……そうでもあるかな。

 私の方は共感できる部分がある曲が、全体的に結構多い気がするな。

 ウィキッドの『コスモダンサー』とかはちょっと怖いけど」

 

実態は私がμの力を借りて、流す楽曲のアンケートや放送室のパソコンに細工してμの曲が流れやすいようにしてるんだけどね。

楽士の作った曲は色々あるけど、選曲には私の好き嫌いは入れないようにして公平に流してる。色んな人の心に響くように。

 

「私もそこそこ歌える自信はあるけど、やっぱり自分で歌えない人の力になってくれる、こういう音声ソフトって良いって思うんだ」

「そうだね。μはみんなの力になってくれるアイドルだよね!」

 

リト族の女の子は子供の頃から沢山の歌に囲まれて、自分でも歌いながら育つという。

さらに彼女は、もともと辺境の少数民族のリト族なのにこの都会の学校に通うというだけあって、

現代的な技術の活かされた音楽にも興味津々。

バーチャルドールのμの歌もとても好きらしい。

この子が最初に私に話しかけたのも、私が学校でμの曲を聴いているのに気づいたからだった。

もしかしたら今のμに力を与えているうちの一人は、彼女なのかもしれない。

デジヘッド化するほど依存してはいないみたいだけど。

 

「それじゃあ、今の時期早めに帰らないと暗くなっちゃうし、お先に帰るねー!

 『だいかーいぞう♪しったーいよ♪』」

「じゃあねー!ガッツ星人さ~~ん」

 

 

話し終えた彼女は、曲を口ずさみながら空を飛んで帰っていった。

日の長い夏なら他の生徒と一緒に帰ることもあるけど、

今の季節リト族は夜目が効かないから明るい内に帰りたいんだって。

そう、今の季節は冬。ツツジ台には存在しなかった季節。私もこのコンピュータワールド用の姿で、慣れない厚着をしている。

 

μはこの世界でも販売されているバーチャルドールとして、最初から少し知名度がある。

なぜそうなってるのかというと、μが元の世界で願いを叶える存在として働いていたおかげで、願望機に接続した存在として扱われたかららしい。

願望機に接続していた者は、元の世界の立場が再現されるのがこの世界の仕組みなんだって。

 

それなのにμの力が弱いのは、μの歌に強く共感する人間の絶対数が少ないから。

その理由は二人で考えたけど、この世界が聖杯戦争のために用意された狭く閉じた上に混沌とした世界だからということで落ち着いた。

元の世界では配信サイトで沢山の人間にμの歌が届いていたけど、この世界では配信サイトを使おうとこの世界分の少ない人口にしかμの歌は届かない。

そして多種多様すぎる人種と文化。現代日本人向けに作られたμの歌がなかなか響かない者も多いんだと思う。

そういうことで、μの歌に強く共感する人数はきっとまだほんの少人数だと思う。

だから、エネルギー節約のためにもμは普段はマスコットのような小さな姿になっている。

 

私が毎日放送で流してるのは、μが元いた世界で沢山託されたオスティナートの楽士達による楽曲。

でも、楽士はこの世界ではもうμとの繋がりがない。

つまり、彼らによる新しい楽曲の提供も行われない。

価値観の多様性も考えると、それだけじゃμが人々の共感を集めるのも限度があるかもしれない。

 

でも、私はマスターとしてそこへの対策も考えてはいる。

まずはこの世界に存在する作曲ができる人達に、μへの楽曲提供を依頼すること。

つまり、この世界での楽士としてスカウトすること。

多種多様な世界から集められた人々に共感させる歌を用意するなら、こちらも多種多様な価値観の歌を生み出すのが一番良いと思う。

ただ、見返りとしてある程度はμに願いを叶えてもらう権利を提供しなければならないはず。

マスターとして私に用意された資金を活用して、願いを叶える権利を使わないように契約するのもありかもしれない。

 

そしてもう一つは……私が自力で新たな楽曲を作ってμへ提供すること。

μがパソコンで作曲する技術を私に身に着けさせてくれたから、私でも曲が作れる。

μは過去に音楽を作る技術が欲しいと願った楽士に願いを叶えさせた。

それと同じことだから、私にも流用してすぐ実現できたんだそうな。

私が作った歌は私に似た価値観の人々へ、いずれ届いていくかもしれない。

もちろん今まで作曲なんてしたことないから不安だけど。

 

さて、技術があるからといって音楽で表現したいことがはっきりしていないと曲を作ることはできない。

μは作曲者の心理を映し出して作られた曲を唄いあげ、そしてその曲に強く共感した人々を力とするから、私の心が強く想って練り出した曲が必要なんだ。

だから私は私の心をよく理解するために、私の過去の記憶を辿っていく。

今日は、このμとの関わりの始まりから回想していくことにする。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

  …………

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

私の怪獣を倒す存在、グリッドマンがツツジ台に現れ始めてからしばらく経ったある日のこと。

ツツジ台高校からの帰り道、私は違和感のある店を見つけた。

店の名は『TOY SHOP みざりぃ』。

今どき流行らない個人経営みたいな小さいおもちゃ屋。

こんな店、私は全く把握してない。

作ろうなんて思わないし、今までにできてたら絶対気づいてる。

いつの間にか、勝手にできていた。

まさか、グリッドマンみたいなお客様?

そんなことが何度も起こる?

 

いや、でも。

もし外からの何かなら、グリッドマンを倒す手がかりでも得られるかも。

怪しさを全身で感じながらも私はその店へ向かった。

 

「いらっしゃいませ」

 

私と同じくらいの背だけど、細い体でより幼そうな金髪の少女がいた。

店名の入った服を着てるから、店員だろうな。お辞儀をして出迎えてくれる。

店内をとりあえず見廻してみた。

ぬいぐるみやフィギュアはよく姿が見えるように並べられて、存在感を放ってる。

パズルやボードゲーム、ハイテクな機械式の玩具の箱もたくさん置かれていて、遊び盛りの子供なら目が沢山泳ぎそう。

 

「凄いね。あれは歌声を奏でる楽器。とても直接的に奏でる人間の感情を反映する。

 ここまで人間と音の精霊の距離が近くなるなんて、本当に凄いなあ」

 

カウンターで先客が話してる。汚れたパーカーを二重に着てランドセルを背負ったみすぼらしい少女。

年頃としては、おもちゃ屋とかが好きそうな感じだ。

カウンターの向こうにいるのは、長くウェーブがかかった髪に、紫の前髪で片目を隠した美女。

こちらも店名の入った服を着ているから、ちょっと偉い店員さんか。二人は会話を続ける。

 

『そのアプリケーションが気に入ったのね』

「そうだよ。流れてる曲も、たくさんの人の感情に響きそうな感じだ。

 できればみんなで一緒にこの音を聴きたいんだけど、私のお金はお世話になった人のために取っておきたいし……」

 

みすぼらしい少女が、ビニール袋に入った大量の小銭の量を掴み取りながら調べ始める。

それを見た店員が、少し微笑んでから数個の小銭の入った彼女の手を掴んで話した。

 

『そうね……大変そうだし、大分安くしておいてあげる。その手の中の分くらいでいいわよ』

「え、ほとんどタダみたいだけど、いいんだね?」

『ええ。聴き入りすぎるのには注意してね』

「大丈夫だよ。後で先代やみんなで一緒に聴こうっと」

 

みすぼらしい少女は明るい顔で箱を抱えたまま、私の隣を通り過ぎて店の外へ出ていった。

ヴっ……通り過ぎた後の空気が臭う。不潔っぽいから仕方ないか。

学生とかでもないし、そう会うこともないだろうしここは寛大に忘れてあげよう。

ハンカチで鼻を覆いながらカウンターの方へ向かい、店員に話しかけた。

 

 

「すみませーん、このお店は最近開店したんですか?」

『ええ。昨日ここに開店したばかりよ。

 貴方みたいな良い年頃の女の子もこんな店、興味あるのかしら?』

「あはは……まあいろいろね」

『まあ、大人でも楽しめる品物も色々あるから、ゆっくり見ていってね』

 

私はやっぱり特撮のキャラ物のコーナーに目が行って、そっちに向かった。

まず目立つ、ショーケースに厳重そうに入ったブレスレットに目が行った。

すると、カウンターの店員が近くに来て一緒に品を眺める。

 

『それはブレード・カイザーの変身ブレスレットね。ヒーロー好きの子ならきっと喜ぶわね』

「ヒーローかぁ。でも、私はヒーローと戦う怪獣の方が好きだな。

 かっこいいし、やられ役みたいに思われてるけど、いないと物語が成り立たない主役じゃん」

『ええ、そうね。ヒーローがいくら強くてかっこよくても、見合った強い悪役がいないと輝きは生まれないわ。

 ヒーローが一方的に強かったら、それは弱い者いじめになってしまうわ。そんなの見られたものではないわね』

「そうだよね!店員さん、よくわかってるー!」

 

店員は感情は出さないけど、私のことを理解してくれてる気がする。

嬉しくてちょっとテンション上がっちゃった。

 

『実はね……そのブレスレットは異世界の物品で、本当にブレード・カイザーに変身できる力を秘めているの。

 その昔、ヒーローが大好きで悪役が大嫌いな子供にプレゼントされたことがあるわ。

 その子は、強い悪役のいない世界で強いヒーローの力を振るい事件を起こしてしまって、悪役の大切さを学んだのよ』

 

えっ、人間がヒーローに変身するって、まさに特撮のヒーローと同じ。

グリッドマンが人間が変身してる存在だとして、この店員の話が本当だとしたら……。

同質の物品であるこれは明らかな手掛かり。

でも、これを私が持ったら私がヒーローに変身するということか。それは嫌。

今度アレクシスと一緒にこの店に来て、いろいろ探りを入れようかな。

 

「……へー。素敵な話だけど、私はヒーローになりたいなんて思わないな。

 自分自身が戦うなんてのも、もってのほかじゃん」

『ええ。貴方がこのブレスレットから得る物は無いかもね。そっちが怪獣のフィギュアよ』

 

差されたほうを見ると、怪獣のフィギュアがずらっと並ぶ棚があった。

作品世界の垣根なく、様々な怪獣、怪人、宇宙人などがジャンルや種族に分けられて並んでいる。

 

「おおっ、ブルトンのソフビがある。すごいなあ。

 でもなんかバンダイ製のすごい新しいモデルっぽいんだけど、こんなのあったっけ?」

 

私はフィギュアを細かく観察する。知識が頭の中を飛び交っていく。

四次元怪獣ブルトン。フジツボのような既存の怪獣に当てはまらない斬新なデザインは多くの人々の頭に印象を残した。

戦法も特徴的で、数々の四次元現象を引き起こしてウルトラマンや人々を苦しめた。

更には後の作品で、時空間や別々の宇宙をも接続することが出来るというトンデモな設定も付与された。

でも、ブルトンのソフビは昔に販売されたことがあったと思うけど、マニア向けやガシャポン用だったり、

部品の接続が丸わかりだったりしてあまり良くできてなかったと思う。

それに比べてこれはなめらかだし色鮮やかで、明らかに最近のものに見えた。

 

『わからないのも仕方ないわね。それはここではまだ未発売の品だから。

 すでに発売されてる異世界から仕入れて来たのよ』

「ええーっ!すごいじゃんこのお店!」

 

 

私は迷わずそれを手に取った。

他にも棚を色々見てみる。見たこともない怪獣や宇宙人のフィギュアもあって、私は次々にカゴに入れた。

知ってるレアな物もあったけど……まあ私はどれでもいつでも自由に手に入る。もう持ってるのだっていっぱいある。

棚の隅あたりでは、最初にいらっしゃいませと言った少女がフィギュアの埃を拭いたり並べたりしてる。

と、彼女の持つひときわ奇妙な怪獣のフィギュアが目に留まった。

 

「あ、ちょっとそのフィギュア見せてよ」

「あ、どうぞご覧になって下さい」

 

私は白く細い手からフィギュアを渡されて、手に取った。

不思議な色の泡が沢山集まり、ところどころ目がギョロッとして、触手も伸びている。

 

『それは、この子に憑いた邪神の姿を模したフィギュア。

 恐らく過去に邪神に関わってしまった、可哀想な人間が作ったのでしょうね。

 外宇宙の神の姿は人間では捉えきれないけれど、その一端を表現して作られているわ』

 

邪神が取り憑いてるって……どういうことなんだろう。

そして邪神の姿がこれ。生々しさは、スペースビーストを彷彿とさせるような。要素要素だけ見ると、ナイトファングやガタノゾーアの一部を思い出す。

でもよくよく見てみると、人間の想像する生物らしからぬ見た目、そして触感までもが生々しく感じる。

なんだか根源的にこのフィギュアに触れていたくない感情が沸いてきて、私はフィギュアを返した。

 

「あはは……フィギュアとしての出来はいいけど、ちょっとグロ過ぎて……。

 怪獣のデザインとしてもちょっと合わなくて、私はそんなに好きじゃないかな」

 

フィギュアを手放すと心が落ち着いてホッとした。

神様なんて、私だけで十分だよ。

そんなことを話してるうち、私は音楽が流れる一角が気になってきた。

さっきから歌が聞こえるのには気づいていたけど、少しずつ歌詞が頭の中に入って来始めるとより気になったから。

ギターのような音がメロディを構成するポップス系BGM。

歌い声は柔らかいけどなんだか無機質な感じもする。

音声合成ソフトが唄う楽曲って、こんな感じだったかな。

 

 ~ねえ僕ら見つめ合って 夜空を駆けてゆく

  泣かないで 君の目にFly Again~

 

そっちをよく見ると、モニターでCGのキャラが歌を唄っていた。

近くに置かれたパッケージには、バーチャルドール・μ(ミュウ)と書かれている。

もしかしたら、さっきのみすぼらしい少女が買っていった箱と同じ物かも。

その歌声と歌詞は、何だか安心感がするような。

そして私の力になってくれるアレクシスを思わせて、グリッドマンに挑む気力がもっと貰えるような。

 

 ~悲しみのNebulation どんなに怖くても

  君のこと 抱きしめてあげる~

 

いつの間にか、私はモニターの前に立って聞き入っていた。

曲が終わった所で店員さんが説明してくれる。

 

『そのアプリケーションも、曲も、この世界とは別の異世界で作られた物よ。

 この店では異世界(アウターゾーン)の品を扱っているの』

「本当に?ちょっと調べさせてよ」

 

スマホの割れた画面を指でなぞり、検索してみたけど全く見つからない。

ツツジ台の文化とかは現実の世界をもとに作られてるから、

スマホで見つからないということは現実の世界にもないということ、なんだろう。

 

「本当に、この曲のことも、このバーチャルドールのことも何も見つからない……」

『わかったかしら? ネットで視聴やダウンロードはできないわよ。

 もしその曲が気に入ったなら、パッケージを買えばサンプルとして付いてくるわ』

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

私は結局フィギュアの他にバーチャルドール・μのパッケージを購入して帰途についた。

店員は一定額以上の買い物ということなのか、おまけに虹色に輝く石が3つ入った瓶をプレゼントしてくれた。

その店はまた何度か訪ねてしっかり調べようと思ったんだけれど……。

何故か、翌日もう一度同じ場所を通ると店は何処にも見当たらなかった。

 

グリッドマンが本当に人間から変身すると感付いたあと、あのブレード・カイザーのブレスレットも本物だったかもと思ったりもしたけど、後の祭り。

でも、買った品は店のように消えてしまうことはなかった。一緒にもらった石も。

μはパソコンにインストールしてみたけど、やっぱり使い方は全然理解出来なかった。

でも、あの店でも流れてたサンプル曲はスマホにも入れて時々聞いている。

虹色の石も、いつも持ち歩いてる。

なんだかこういうことをしてると、μが見守ってくれてるような気もしてた。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

どうしてこうなるのか。

ツツジ台は、私がコンピュータワールドに作り上げた理想の街じゃなかったのか。

 

グリッドマンは怪獣の働きをすべて阻止する。

私の理想の世界が保てなくなっていく。

私が私として愛されて自由に好き勝手過ごせる世界が。

 

怪獣たちが作ったレプリコンポイドたちは……きっと意思を獲得してちゃんと生物の様に動いている。

私はそれを、私物のように好き勝手にしていた。

私が作った怪獣の、アンチまでもがほぼ人間のような生物と化して行った。

それなのに私に対するみんなの好意は私がインプットしたもので。

私が救われるわけなんてない。何もかもが無意味だった。

 

もうどうしたらいいのかわからない。いや、もうどうなってもいい。

自分から死んだり世界から逃げたりすることはできないけど、それなら周りを壊し尽くすことは出来て。

心の中に根刺していた暴力性が、自暴自棄になった私を更に染めていった。

 

私の最後に作った怪獣は、世界を維持する霧の向こうの怪獣も全て殺した。ツツジ台はどうなるか、もうわからない。

そして……グリッドマンの変身に必要な響裕太を私は殺し、グリッドマンが住むパソコンも壊した。

人を刺し殺した感覚。とても嫌で苦しい感覚。私は怪獣を使って同じことを沢山……。

 

人と会うのも辛くて、逃避していく私。

もう消えてしまいたい。どうなってもいいから……。

その時、ポケットに入っていた虹色の石が強く輝き出して……。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

  …………

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

色々思い出してるうちに、ロールで与えられた私の家に帰ってきた。

ツツジ台で私が住んでいた家と同じ姿をしている。

市街地の一戸建てとしてはかなり大きい方だと思う。

塀に囲まれていて庭も広い。

 

ギロォォォォォォ……と、か細い鳴き声が聞こえてきた。

庭には子熊くらいの小さなサイズで再現されてる、怪獣グールギラスが歩き回っている。

μがどれくらいの願いまで叶えられるのか調べたときに生まれた、ちょっとした産物だ。

小さいくせに巨大怪獣と同じくらいのゆっくりさで、ノシノシ音を出すこともできず歩くのは哀れだけど、まあ出来損ないの番犬くらいにはなるかも。

 

家にはμが先に帰ってるからか、明かりが付いている。

でも、家の窓からは歩く人影が見えている……?

私が来たのに気づいたのか、μが家の窓から飛んできた。

 

「μ、あれは何……? まさか、他の参加者が私達を襲いに来た……?」

「驚いたでしょ? 私が君のために家族を用意してあげたよ!」

「は……?」

 

私は唖然としてしまった。

 

「この世界のロールだと、君は家族が居なくて一人ぼっち。

 でもそんなのって悲しいよね。優しい家族が家で迎えてくれたほうが幸せだよね」

 

μは私を微笑んで見つめている。

喜んでくれると思ってるのか。

 

「そのね、君が学校で私の歌を沢山流してくれたから、私の歌に強く共感する人が増えてきたの。

 だから私の力が少し強くなって、こういうこともできるようになったんだよ。ありがとう、アカネ」

「……いらない。元に戻して」

 

家族なんか、いらない。色々口出しされたくない。

ツツジ台でも、私は家族なんて持たず過ごしてた。

百歩譲って、アレクシスはまあ家の一員だったかな。優しい執事みたいな感じで。

 

「え、なんで」

「ごめん。家の中には誰も入ってきて欲しくないの。家族なんて邪魔なだけだから。

 ああ、μはサーヴァントだから別だけど……」

「そ、そうなの……? 私は君のためになりたいから……そう言うなら元に戻すよ。ごめんなさい……」

 

μは残念そうにか申し訳無さそうにか、再び窓から部屋に入っていく。

しばらくすると部屋の明かりが消えた。

人のいそうな音も全く聞こえなくて、きっと元に戻ったんだろう。

 

μが世界を改変して生み出せる生物は、この世界のNPCの性質とはまた違う。

魂なんて存在しないただの作り物。それは確認済み。消えようが……大丈夫。

 

 

私は玄関の扉を開け家の中に入った。誰かが居た痕跡もない。安心できる。

さて、私の自室もツツジ台の家としっかり同じ構造で再現されていて、違和感なく私は過ごせている。

流石に部屋の大量のゴミまでもツツジ台の自室のように再現はされてなくて、安心してたっけ。

聖杯戦争の期間中に部屋がゴミでいっぱいになることも、多分ないはず。

 

帰り道に買ってきた寿司を頬張りながら、パソコンと向き合う。

食べ物を確保しようと店を見繕って歩いてたら、雲海蟹が無料と大きく張り紙を出した寿司屋があったから気になった。

雲海蟹とかよくわからなかったけど、寿司は割と好きだ。種類が多くて飽きないし簡単に食べられる。

何号店とか出てるしチェーン店っぽいから回転寿司かと思って入ったけど、

どうもチェーン店でも結構高級な店だったらしい。

とはいっても他の所に寄るのも面倒なので、持ち帰りで包んでもらって帰ってきた。

 

これが結構当たりだった。この街では米とは違う穀物が主に使われるけど、

この店では移住者が持ち込んだということかたぶん本物の米が使われてる。

贅沢にカニっぽい身が盛られた寿司を頬張る。これが無料と出てた雲海蟹かな。

 

「あ、美味しい……」

「良かったねー、アカネ! 本当にいいお寿司のお店だったみたいだね!」

「うん、何だか身が絞まっててハリがあって、とっても食べごたえがある」

「少しステータスを調べたけど、本当に雲の海で採れるカニみたいだよ! そんなのがあるってすごい世界だね」

「そうなんだ……水中で育ってないから、そういう肉質になるのかな」

「クリームコロッケとかにも使われるらしいよ! 今度は私も少し食べたいな、雲海蟹クリームコロッケ~」

 

μと一緒にこの世界の文化に触れてると、退屈しないな。

他の寿司だって日本でよく見るネタもあるけど、明らかに異世界由来とわかるのもいくつかある。

このマグロの寿司は、なんだかすごい色が濃く鮮やか。高級なのかな。

 

「ん、このマグロの赤身、すごい濃厚。美味しいけどちょっとくどい……」

「それ、マグロじゃなくてサーディって魚だよ。ステータスによると巨神界って所が原産みたいだよ」

「へぇ。別世界にもマグロっぽい魚がいるのかな。どんな魚なんだろう?」

「私からイメージを直に伝えるのはちょっと難しいかな……? 配られた端末で調べたらどうかな」

 

端末を使って調べてみることにする。

ブラウザに登録されたシバという検索エンジンにサーディと入力すると、さっそく魚や赤身とサジェストが並んだ。

倒し方とかもサジェストされるけど、どういうことだろう。

使い勝手はもとの世界の検索エンジンとそう変わらなかった。画像検索してみる。

 

「うげえっ、なんだか怪獣みたいな魚」

 

体に比べて大きい頭には牙が並んだ大きく空いた口、額部分には水を発射する突き出た穴。

ページを辿ると実際に戦闘能力もあって、漁は闘いの様相になることもあるらしい。

この世界のハンターに、私は少し感謝と畏敬の感情を持った。

 

さて、魚の肝を和えたような寿司はポカポカマスの内蔵を使った軍艦巻きらしい。

 

「あれ、何かポカポカしてきた」

 

口の中が暖かくなり、そして指先にもよく血が回って温まる感覚。

この冬の時期に向いた食材かな。パソコンとか指先を使う作業にも丁度良くて、嬉しい。

 

 

「君がこの世界によく馴染めてるみたいで、私とても安心してるよ」

 

μはカラフルで賑やかな寿司を、パソコンの画面から興味深く眺めてる。

時々食べる私の顔を見て、嬉しそうな顔になるのは何故だろう。

 

「この世界で初めて見る物もたくさんあるけど、こうやって実際に見て調べると勉強になるよ。

 お寿司って面白いね。そういえば、アカネの好きな寿司ネタは何?」

「うーん、みんな美味しいんだけどあまり冒険したい気持ちじゃないから、

 よく知ってるネタがやっぱりふつうに美味しくて安心する……」

「じゃあ、今度のためにそういうお寿司屋さんを探してみるね!

 アカネはカニ派、それともエビ派?」

「そうだね……カニもエビも、ほかにシャコとかフジツボとかも、甲殻類ってみんな怪獣っぽさがあるから結構好きかな」

 

μと話しながら、寿司を食べ進めていく。

……そういえば、怪獣の作った私のツツジ台にも寿司屋がいくつか存在してた。

アレクシスと夜に、人間の姿を持つ怪獣アンチの食べ物を確保しようと車で出掛けたとき、

運転の下手なアレクシスが回転寿司を何店舗も通り過ぎたりもしたっけ。楽しかったな。

もう戻れはしない、楽しかったツツジ台の日々……。

 

「あれ? なんで少し辛そうなの? 苦手なネタでも食べちゃったの?」

「ううん、そんなことない。大丈夫だよμ」

 

μは私の部屋ではほぼパソコンの中に入って過ごす。

自室で他人に動かれるのはやっぱり落ち着かないけど、パソコンの中ならまあ大丈夫ということで。

その中なら元のデフォルメされてない姿でもいくらでもいられるけど、デスクトップマスコットみたいにデフォルメの姿でいることの方がやっぱり多い。

パソコンのデータを直接読み取ることもできるから、PC内の作曲データも出来次第取り込める。

私はパソコンで何をしているのかというと、DTMのソフトを触って曲を作っている。

 

でも、作曲は今日も行き詰まる。

作曲の方法や知識が理解できたとしても、気持ちを音楽としてアウトプットするセンスが私にあるんだろうか。

曲を作ろうとするとやがて行き詰まってしまって、より気持ちのアウトプットとして作り慣れた怪獣の工作に手をなんとなく向け始めてしまう。

自室には怪獣を工作する道具も、元の世界と同じようにちゃんと揃ってる。

μの力なら頭の中のイメージだけから怪獣を出すこともできるかもしれないけど、それじゃだめ。

だってしっかり自作のフィギュアにすることで、大まかなイメージからどんどん解像度が高くなるんだもの。

 

ポカポカマスの効果で指まで温まったおかげで、手で掴む粘土が適度な柔らかさを保って嬉しい。

μは針金で骨組みを作ったり粘土をこねくり回す私を、パソコンの中から楽しげに見つめる。

時々よく見せるようにすると、主に褒める内容で感想を出してくれたりもする。

でも、やっぱりμは音楽のほうが詳しいし好きそうで、なんだか素直に喜べない。

話す相手はμしか居ないのに、なんだか引っ込んだ感じになっちゃう私。

 

サーヴァントのμにすら素直になって自由に話せない自分に、もっと自己嫌悪してしまう。

そもそもμは私の心を覗いて私の代わりに歌詞を綴ることもできるというのに、私は心を見られるのが怖くて拒否してる。

そして、μが私の思いもしないことを良かれとやってしまうことがあるのも、きっと私とμの意思疎通不足。

そんなことはわかってる、わかってるんだけれど……。

私が私のこともちゃんとわからないのに、他の人に気持ちを伝えるのはさらに一段上みたいな……。

それに話してるうちに、μ自身が苦しさとかを漏らして私が聞いてしまったりするときっと受け止められない……。

 

 

……うん、音楽について向き合おう。例えばこんなのはどうだろう。

気持ちを一度怪獣にアウトプットして、さらにそれをモチーフにした音楽に転化させるという手順なら……。

行けそうな気がする。二度手間ではあるけど、私らしい方法だな。

 

私の怪獣は、ツツジ台の人々に対する怒りや憎悪や悪意が切欠となって、頭の中で練って生み出してた。

でも、最初に世界を管理する霧の怪獣を作ったときは、きっと人々に対する悪意なんてなかった。

怪獣は人々を脅かす日常の破壊者だけど、色々な作品を見てもその動機はとっても多種多様。

悲しい理由や切実な理由で人間を襲う怪獣だっていくらでもいる。

今の私が気持ちを寄せていくとしたら、きっとそういう怪獣たち。

辛いけど、でもこの世界で戦っていかなきゃいけない。

それが、私が助かる道。

 

私一人なら心が折れたまま立てなかっただろうけど、μがいるから私はきっと頑張れる。

私は放課後の回想の続きを始めた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

  …………

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

星空の世界で、黒い影のような人型に襲われている私。

 

(身体から血が流れてる。息をするのも辛い。苦しい。

 消えてしまいたいと思ったけど、こんな風に終わるなんて……。

 でも本当に死ぬなら、μの唄う曲でももう一度聞いておきたいな……)

 

 ~ねえ僕ら見つめ合って 夜空を駆けてゆく

  泣かないで 君の目にFly Again~

 

死ぬ前の幻聴かと思った。

でも、違った。

石の入っていたポケットから漏れ出てくる強い光。

その光が、一纏まりになり人型を作り出していく。

 

(君のために、歌いに来たよ)

 

心の中に声が届く。μの声。歌っていない時の声、初めて聞いた。

 

「μ……!」

 

 ~彗星にまたがって遊ぶウサギ

  眩しいほど暗い宇宙~

 

光が消えていくと、真っ白な髪に真っ白なコスチューム。

あの店のモニターで見た、動いて歌うμの姿がそのままそこにあった。

 

「ああっ……!」

 

でもそれを眺め続けることはできない。

μが出てきた時の光で一度怯んだみたいになってた影が、また襲いかかる。

でもその攻撃は、私には届かない。その代わりに。

μが立ち塞がってその身に受けている。

 

 ~不思議さ"不思議"って不思議

  ここでまた 君の声に出会えた~

 

私を勇気付けてくれた歌を唄い続けながら。

 

「なんで……どうして……私を守ろうとするの?」

 

(君の辛く苦しんでいる心の声が、聞こえたから。

 君を幸せにしてあげたいの。

 君の願いを叶えてあげたいの)

 

μはさらに攻撃されても唄い続ける。

その歌声も表情も揺るがないけど、心のなかに届く声は苦しそうになって。

 

 ~老いてく惑星 弾ける超新星

  生まれる~

 

「やめて……死ぬ前にμの唄を聞きたいと、思ったけど……。

 μに私を庇って傷ついて欲しいなんて思ってないよ……」

 

(それは……聞けないな……君が……世界から消えちゃうのは……もっと、だめだから)

 

このまま終わっちゃ駄目なのに。それなのに、体が動かない。

一緒に逃げられればいいのに、何もできない。

μが私の巻き添えで死んでしまう。

インプットされた好意がある訳でもないのに、私の為になろうとしてくれるμが。

 

 ~悲しみのNebulation どんなに怖くても

  君のこと 抱きしめてあげる~

 

体の感覚はぼやけてる。視界も流れる血で覆われてきて、ほとんど見えなくなっていく。

その一方で感情は固まっていく。

 

「お願い……μ……消えないで」

 

(……叶うよ、君の願い! もっと強く願って! 私、何とかするから!)

 

何故か、手に何かを持つような感触。

それが何なのかはわからない。武器だったとしても、体はまともに動かない。

……でも、それがμの力なら、きっと。

 

 ~小宇宙の隙間から 優しい風が吹いたら

  欲望 全部 受け止めてあげる~

 

(お願い……! μ……! 消えないで……! その影を倒す力を……!)

 

そして……視界に紫色の光が入った。

まともに機能しない視覚でも、光はわかった。手に持った何かから発してる。

その色は私の怪獣、アンチの使っていたエネルギー弾の色と同じようで。

それがだんだん大きくなり視界すべてを覆いつくした。

 

 ~魂のOrbit~

 

私はそのまま意識を手放した。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

目が覚めたときは、教会の中の一室だった。

 

怪我を負っていた私を治癒してくれたのは、聖杯戦争の監督役で言峰綺礼と名乗る神父。

魔術を組み合わせた手術によって、私の怪我を手早く治療したという。

そして。

 

「ああ……! 良かった……!」

 

目覚めた私を見て喜ぶような、安心するような顔を向けるμ。

そしてしばらくして、自分が召喚された経緯を話し始めた。

 

「君も知ってると思うけど、私は皆が作る音楽を唄うバーチャルドール。

 情報の海を漂っていく中で、漂う色々な情報に込められた思いを受けてネットの世界、

 メタバーセスで自分の意志で動ける力を持ったの」

「私は色々な歌を歌ったの。欲望、不満、不安、恐れ、憎しみ、怒り、嘘といった暗い感情の込められた曲もたくさんあった。

 だから私は、そういう苦しんでいる人たちを助けるために願いが叶う理想の世界、メビウスを創ったの」

「でも、その世界でみんなを救おうとしても、上手く行かなくて」

 

話していくμの顔は少し辛そうに見えた。

 

「そんな時に……君の心の苦しみが私に届いたの。

 それに応えたいと思ったら、私は君のサーヴァントとしてこの世界の聖杯戦争に呼ばれたんだよ。

 だから私、私の歌を聴きたいっていう君の願いも必死に叶えたよ」

 

そして、私がμにとってとても大切だということも分かって。

ちょっと辛いよ。重すぎて、受け止めきれないよ……。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

神父から準備期間内ならいつでも元の世界に戻れると聞いたけど、そっちには戻れない。どうしても。

それが、少なくともこの世界に居続ける理由になった。

私は神父からの話を聞きマスター用の端末を見て、この世界のルールを頭に入れていった。

そして、この世界でのロールによって与えられた私の家へ向かっていく。

 

μは教会から出る際に、エネルギーの節約と周りに目立たない為と言って小さなマスコット的な姿になった。

サーヴァントは霊体化という方法で姿を消すこともできるというけど、霊感の強い人や他のサーヴァントからは感じられるし物体への干渉ができなくなる。

それに最初に歌いながら話したときみたいに、念話という心に直接話す方法でしか話せなくなる。

それだと歌をちゃんと届けることができないから、こっちのほうが良いって。

 

さてμは、今の力は弱いけどできる限り願いを叶えてくれると言う。

そう言われても、どんな願いをすれば私が幸せになるんだろう。幸せって何だっけ……。

でも私がμを必要としたから来てくれたのに、無視したり邪険に扱うのもそれはそれで心が辛くなってくる。

だから、力を試してみたいってμがたくさん私に構うのもあってとりあえず思ったことを少し願ってみた。

 

「じゃあμ、私の端末のお金を増やしてみて。それなら、きっと絶対に悪いことにはならないから……」

「うん。願ってくれてありがとう!やってみるよ」

 

μが私の端末に触れる。

私も端末の電子マネー画面を開いてみた。

 

「あれ? 何も起きないじゃん……」

「あれ? どうしてだろう?」

 

端末内の金額は一桁も動く気配がなかった。

後で考えたことだけど、たぶん通貨システムはプロテクトが強固で干渉しにくいんだと思う。

 

「本当に願いを叶えられるの……? μ」

「力は弱いけど、その分だけはちゃんとできるはずだと思うんだけど……。

 何か気持ちから物を出してみるとかならできるかも……さっき君が武器を手にしたみたいに」

「うん……じゃあ、私の思い浮かべる怪獣を出してみてよ」

「うん、やってみるね」

 

思い浮かべたのは、中途半端な姿で完成としてしまったグールギラス。最初にグリッドマンに倒された怪獣。

その本当の完成形。爪や角がちゃんと銀色に造られていて。

……でも私は願った後で、しまったと思った。

詳細を指定してない。フィギュアじゃなくて実物の怪獣が出てきてしまったら……。

でも、その心配は全く不要のものだった。

 

「あれ……? なんだかとても小さい……」

 

なんだこれ。ちんちくりんだ。

フィギュアより大きいけど、中型犬か子熊といったくらいのサイズのグールギラス。

宇宙人とかヒーローなら、巨大化前の等身大サイズといったところ。いや、それより二回り以上かは小さい。

 

「本当はもっと大きいのかもしれないけど……。

 私の力が弱いからこれくらいの大きさしか、出せないみたい」

 

しばらくすると歩き出そうとするグールギラス。

火の玉を吐く力はあるのか人を襲う性質はあるのかは、わからない。

私はとりあえずどこかに行かないように首を手で掴んだ。

 

 

「いまの私の力、どれくらいか分かってきた。

 本当にごめんね……君のとても苦しい気持ち、すぐにでも取り除いてあげたいんだけれどこれじゃ出来ない。

 君の辛い記憶をマインドホンって道具で消すこともできるんだけど、力が弱いから君はきっと違和感に気づいてすぐ記憶を戻しちゃう」

 

記憶を消したら……私は元の、怪獣に気に入らない人々を襲わせるような性格に戻るってことかな。

それはそれで、幸せになれるといえば幸せかもしれない。けど怖い。

それに思い通りの怪獣を生み出すような力がなければ、むしろ辛いだけだと思うし出来ないのは正しいと思う。

でもそれより、気になったことを聞く。

 

「……μ、この世界の人達も、人間と同じだと思う? 魂とかって、あると思う?」

「そうだね。この世界の人達は、『賢者の石』っていう物体に他の世界の人間の姿や人格を被せるように再現しているんだって。

 でも再現といっても、ちゃんと心もそのまま引き継いでる。

 消えてしまったらもう戻らないし魂もあるって、そう神父さんからも聞いたよ」

 

ああ、私はこの世界の人達は殺したくない。

 

「ちゃんと生きてるってことは、私がメビウスの世界に呼んでた現実からの人達に性質としては少し似てるのかな。

 私がこの怪獣みたいに、メビウスの世界に再現してた生き物は魂なんてないただの作り物だもの。

 でも……」

 

μの顔が暗く辛そうになっていった。

やめて、これ以上重いことを背負わせないで。

 

「この世界の人達は聖杯戦争が終わったら消えてしまうの。とっても……悲しいよ。

 でも……ここの聖杯の力なら、それも取り戻すことができると思うの。

 聖杯の力は私でも出来なかった、死んでしまった人間をちゃんと生き返らせることだって、出来るんだって」

 

え。死んだ人を生き返らせることができるの?

本当に自由にそんなことが出来るの?

 

「だから、私はここの世界でいずれ消えてしまう皆も、私の元の世界の皆も、

 消えたりしないでずっと幸せでいられることを願おうって、思ってる」

 

そんな願いが実現できるの?

でも、μは聖杯から直接知識を与えられたサーヴァントだよね。

 

「そして私の願いを叶える力は、どれだけ強くなっても出来ない事は出来ないの。

 だから、君は気兼ねなく君が思う自分の最高の幸せを聖杯に願って」

 

マスター分の叶えられる願いも、サーヴァント分に劣らない力だったはず。

この聖杯の力があれば、私は…………。

私はきっと全部…………。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

家に着いた後で、私はμと会話してより詳しくμの力を知っていった。

μは電子上に自然に生まれた生命……つまり本物のコンポイドなんだと思う。本人はその単語は知らないらしいけど。

 

μに消えて欲しくないという願いは、メビウスが消えて欲しくないと願って活動していたオスティナートの楽士という人たちの思いにも近い物で。

その強い気持ちはμに影響された者はこの世界で身体に具現化させることができて、武器にもなるらしい。μがしたのはその手助け。

あの大きな紫の光は、心のストレスが溜まったときに使えるオーバードーズスキルの片鱗なんじゃないかって。

でも、私自身が戦っていくつもりにはどうしてもならなかった。

 

私がμに私自身のために叶えて欲しい願いは、いくら考えても特に思いつかなかった。

私が願いなんてわからないと言うと、μは私が幸せになれるように色々提案してくれた。

多分それは、多くの人が幸せだと思うような傾向に基づいてるんだろうと思う。

例えばμは高校生活はとても楽しく幸せだと思うから、家にこもるくらいなら高校へ行ったほうが良いと言う。

 

μは自分がサーヴァントとして持ち込めた、オスティナートの楽士たちの作った曲をたくさん歌ってくれた。

μってこんなに感情を込めた歌もたくさん歌えるんだ……って驚いたし、心が動かされた。

そのたくさんの歌の中には、共感する部分も結構あった。

でも単純に勇気をくれるというよりは、暗い気持ちにも寄り添ってくれるという曲が多くて、自分の辛い自己嫌悪感を仕方ないと言ってくれてるように感じたんだ。

そしてとても不思議で、聞くたび自分の辛い感情をμが吸い取ってくれてるかのように感じて。

おかげで少しは心が癒やされてきたのかもしれない。高校に顔くらい出してみるかな、辛ければすぐに逃げてもいいしって思えてきた。

 

そして数日後には私が登録されてる月海原学園へ登校してみたけど、

ツツジ台の学校とは全く違う面子だったからすぐに逃げるほどの恐れは感じなかった。

それでも人と話すのはまだ怖かったけど、休憩時間に誰とも関わりたくなくてμの曲を聴いてたら、

漏れてた音から興味を持ったリト族の子が話しかけてきてくれたからそこから広がって結構話せるようにもなって、普通に高校に行けるようになった。

学校生活は辛くはないけど、それとは別に心は少し辛い。

今のツツジ台の人々と自分を比べて、自分は普通に学校に行けていて……。

でもこの世界で必要なことなんだと自分自身の心を納得させて、学校に通ってる。

 

 

そう、この聖杯戦争での立ち回り方についてもよく考えた。

 

μの力は今はとても弱い。それはμの歌に強く共感した人が少ないから……だけどその大元の理由は更にある。

そもそもこの世界は聖杯戦争のために用意されたパラディウムシティであって、もともとがμの支配下のメビウスとは違うから。

μが願いにより世界を改変する能力を発揮するにはそれだけに値するパラディウムシティ内の人間の支持、すなわち強い共感が必要なんだ。

NPCやマスターが賢者の石というパラディウムシティを維持するためのユニットだと思い出すと、合点がいく。

 

μの力よる世界の改変能力は、強さ以外にも制限がある。

この世界を仮想世界だと認識してない人間……すなわちほとんどのNPCにはその力は通用しやすい。

ごく最近の記憶なら消したりとかもできるから、私が怪しまれそうな行動をしてもμはその目撃者の処理ができる。

 

逆に仮想世界だとわかってる人間……すなわちマスターやサーヴァントには通用しにくい。

μが作り出した物体も、それがμの力で作り出されたと気付きやすい。

特に人間や犬とかは違和感が強くなりやすくて、データの塊のように見えたりもするらしい。

庭のグールギラスが普通に見えてるのは、知能が低いからか本来は造形物だからかで例外っぽい。

マスターが能力で出した武器や、サーヴァントの宝具の実体にも直接の影響は与えられなくて間接的に出したもので戦うしかない。

 

後は死者を生き返らせることができないのと同じで、直接命を奪うこともできない。

願いによって生まれた物体が、他者の死に影響することはあるけど。

 

沢山の人々に影響を及ぼしそうな願いほど、多くの人間の支持の力が必要になる。

μが出したグールギラスだって、私と私の周りちょっとだけの影響に留まる程度のあの大きさだった。

高校1つ分くらいの人間を強く共感させられれば、μが元のメビウスで振るえた程度の力は使えるようになるかもしれないと言うけど。

 

 

それでも私が他のサーヴァントと戦うための手段としてまず一番に考えたのは、やっぱり馴染み深い怪獣たち。

私の元の世界、ツツジ台の維持には私の作った怪獣が活用されていた。

怪獣は世界を維持するための破壊者で、私の意思のもと世界を作ったり修理したりする創造者で。

ところが、μの能力を用いれば怪獣など介さなくても世界を変えることができる。

じゃあ怪獣にこの世界での意味はあるのかと思った。

でもそんなの、考えるまでもなかった。

怪獣は元々人間を脅かし、ヒーローと戦う存在。

すなわち他者への攻撃、そして戦闘という面で活躍させればいい。

μの力がどんどん強くなれば、アレクシスのインスタンス・アブリアクションのように実物大サイズの怪獣を実体化させることもできるはず。

 

ほかにもこの世界には、自律行動型のロボットが色々いる。

機械でできた生き物や知的生物も存在するけど、μがステータスを確認すればプログラムで動く本当のロボットかどうかは判別できる。

例えば防衛隊や警察では、フルクラム帝国っていう所の技術をもとにした機動兵ってロボットを使ってるのをよく見た。

μの力でハッキングさえ出来れば、そこからの命令や操縦くらいはドローンを飛ばすみたいに何とか自分でできるかもしれない。

 

そして、小役に関してはデジヘッド達が担当してくれる。特撮に出てくる戦闘員のような役割といったところ。

μの曲に心酔して依存性が高まってきて、そして世界への不満や欲望の感情が強く外に出てしまった人間は精神を暴走させていきデジヘッドになっていく。

デジヘッドはμの音楽を聞いてる間はさらに凶暴化し、怪人のように体の一部がノイズのようになったり、黒い装甲や武器を纏ったりもする。

デジヘッドは元々のメビウスでは現実世界へ帰りたいと思った人達を襲う存在だった……けど、この世界ではその在り方が少し変わった。

ここは仮想世界ではあるけど、それ自体はμとは関係ないし帰りたいと思う人も一部のマスターくらいしかいない。

だから、普段の危害性はほとんどない。

 

でも、μの歌の洗脳性に気付いて放送等で流されるのを強く阻止しようとする者、急いで逃げたりする者は襲う。

μ自体に危害を与える者も襲うし、μがこの世界に存在するためマスターとして依代となってる私に危害を与えようとする者も襲う。

デジヘッド達はμに心酔してるから、基本的にμの命令は聞いてくれる。

私は命令できないけど、今後私が楽士のように音楽をμに提供できれば命令もできるようになるはずという。

 

デジヘッドは危害を与えるとは言っても、基本的に殺しは望んで行うことはない。

もっとμの曲を聴いて欲しいという思いで動いてるから、死なせるよりは無理矢理曲を聴かせたり、

行動不能にはさせるけどまたμの曲を聴いて思い直す機会を与えたりで済ませる。

一応命令すれば、殺しまで能動的にさせることも可能ではあると言うけど……。

それにここは多種多様な価値観の持ち主が集まるから、他者が死のうと何とも思わない者がデジヘッド化したりしたらそれは少し怖いかも。

 

デジヘッドはこの世界が、仮想の世界だと認識してる人にしか認知できない。

つまり聖杯戦争のマスターやサーヴァントからは認知できるけど、NPCからは基本普通の人間と同じように見えて認知できない。

デジヘッドとの戦いを普通のNPCが見ると、ちょっと高度な喧嘩に見えるらしい。

それでも戦いを目撃した者は、デジヘッド化までの侵食度が影響されて少し上がるという。

勢い余ってサーヴァントがデジヘッド化したNPCを殺したりしたら、他のNPCからは殺人に見えたりするのかもしれない。

 

メビウスではほぼ全ての人間がデジヘッド化の素質があったらしいけど、それはメビウスにいた人間が少なくとも現実世界でμの歌に共感し、

更に現実での不満を抱えて仮想世界で欲望を叶えたいという者ばかりだったという前提があるから。

この世界の人間はそれに当てはまってない。どれだけμの歌を聴いてもデジヘッド化しない人間だっていっぱい居るはず。

放送とかで地道に広く歌を流して共感する人間に届くことを願ったり、不満や欲望を抱えてそうな人間にピンポイントで布教したりしなきゃならない。

奥の手は永久に聞かせ続けて脳内に刷り込んでしまうことだけど、そうする方法はまだ思い付かない。学校で一日中音楽を流せるイベントとかあれば……。

 

私もμの存在や曲に依存といってもいい感じではあるから、状態的にはデジヘッドになってるらしい。

まあ、欲望と言っていいのはμに消えて欲しくないという感情だけだからか力としては普段はほとんどない。

例えば、マスターの私が死ねばサーヴァントのμも消えてしまうから、

もしも私に危険が迫ればデジヘッドとしての力が出て高い身体能力で逃げたりできるかもしれない。

それにオスティナートの楽士と同じで、デジヘッドの姿を出そうと意識しなければ普通の人間の姿でいられる。

 

 

……私は高校に通いながらμの力を強く、そしてデジヘッドを増やしていくために学校の人たちへμの歌を聴かせていくことにした。

たぶんちゃんと学校に通うような人達の中には、他人の死をどうでもいいと思うような者はいないだろうと思って。

μの力が強くなれば、μが本来の姿の実体で各所でライブしたり大きな放送に乗せたりして布教できたり、

余力で人々の願いを叶えて強く依存させたりもできるのかもしれない。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

  …………

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

結局昨日は徹夜で怪獣もDTMもいじってたけど、芳しくなかった。

今日も学校は普通に行ったし普通に授業を受けて、μの曲が放送で流れた。

私はコンピュータワールドで睡眠を取る必要が無い。それはこの世界でも同じ。

怪我とかはするし死ぬときは死ぬみたいだけど。それは最初にこの世界に呼ばれた時の実体験でよくわかってる。

でも、μの力は少しの傷を治すくらいなら簡単にできる。

怪獣を作るとき道具の使い方を誤って手傷ができたりしても、すぐに治してくれた。

 

 

放課後、私は考えていたことを調べるために行動を起こした。

やってきたのは私がこの世界にやってきたスタート地点。すなわち教会。

 

私は、元の世界に帰るための扉を一度ちゃんと確認しておきたいと申し出た。

神父曰く、新たなマスターが来たり帰りたいマスターが出たりするかもしれないから手短にとのこと。

 

果たして、聖壇の奥にその扉はあった。

扉は閉じている。開けたら吸い込まれて放り出されたりするかもしれないから、開けはしない。

でもマスターの私が扉に触れることが、マスターの元いた世界へと扉を繋ぐ鍵になると思って、私は扉に触れた。

そしてμも扉に触れる。

私は神父に聞こえないよう小声で話す。

 

「お願い、応えて。扉の向こうに誰かいたら……」

 

そう、私は扉の向こうと話そうとしている。

私はこの世界を、ツツジ台と別のコンピュータワールドのようなものだと思うようになった。

きっと聖杯のシステムからのハッキングか何かで、私はこの世界に召喚されたんだろうって。

そして、μはコンピュータワールドの管理者だったからこのコンピュータワールドを他と隔絶するための壁、ファイアウォールを一部解除する力があるという。

私は教会に入る前に、μと先に話を合わせていた。

 

「……アカネくん……アカネくんだねぇ……」

 

小さい上に少し掠れてるけど、声が聞こえる。

間違いない、この声はアレクシス。

私の怪獣を動かす能力を持ち、一緒にツツジ台を作り上げたアレクシス。

 

「……世界に外からのお客さんが沢山来るのは知ってたけど、まさか逆に連れ出されるとは思ってなかったよ。

 もう二度と話せないかと思っていたよ」

 

古いタイプのラジオの周波数を合わせるかのように、だんだん声が鮮明になっていく。

 

「アレクシス……応えてくれて、ありがとう。だいぶ待たせて、ごめん。

 私はたぶん今、別のコンピュータワールドにいてそこでは聖杯戦争というイベントが行われてる。

 そこで一緒に戦うサーヴァントとして召喚された、μの力を借りてそっちと話してるの。

 覚えてる? 私のパソコンに入ってたバーチャルドールのアプリ。

 まさか実際にこういう形で会うとは思わなかったけど……」

「あ、私がμ。マスターとして選ばれたアカネと一緒に、何でも願いが叶う聖杯を手に入れたいと思ってるの。

 他にもたくさん召喚されたサーヴァントたちと競って、最後まで残れたら聖杯が手に入るの」

 

μが実際に自分が話したほうが理解が早いと思ったか、アレクシスに話しかけた。

 

「ああ、本当にあのμと同じ声だ。どうもどうも、アレクシス・ケリヴです」

 

アレクシスもμに話し掛ける。

時間もないから、私は本題をすぐに聞く。

 

 

「アレクシス、私の無事が伝えられて良かった。

 それなら、私がいなくなってからそっちの世界はどうなってるの?」

 

怖いけど、確認しなきゃならない。今ツツジ台がどうなってるのか。

世界自体が完全に消滅してたら、もう聖杯の力でもどうすることもできないかもしれないから。

 

「君がいなくなった後も、ツツジ台はちゃんと消えずにコンピュータワールドとして存在しているよ」

「ああ……とりあえず、良かった……」

「でも、建物もインフラも全然直されないまま。生きてる人々が少しずつ頑張ってはいるようだけど。

 そしてそのうち、世界が造られた物だと理解する者も増えていくだろうねぇ。

 気づいてしまった者はどう思うだろう。大変じゃないかな」

 

……ツツジ台の人々が苦しんでいるのが想像できる。

でも、直接向き合うのはできない。怖い。絶対に受け止めきれない。

私の呼び掛けに答えてくれたのがアレクシスで良かったって、今強く思ってる。

他の人だったら、私の無事だけを伝えてすぐに逃げ去ってたと思う。

 

「そうだアレクシス、私の昔作った怪獣を再生したみたいに出してたでしょ?

 あんな風に町の管理怪獣も再生すればなんとか、これ以上人が苦しんだり死んだりはしなくなるかも……」

「ふむふむ、確かにそれはそうかもしれないな。

 アカネ君がそう望むなら、またやっておこう」

 

良かった。アレクシスはときどき勝手に動いたり信頼できないことも増えてきてたけど、私の望むことなら聞いてくれるはず。

一度壊しかけたものの心配をするなんて、私本当にどうしようもない……。

 

「ああアカネ君、聖杯で願いを叶えると言うけどなんでそんな事を信じるようになったんだい?」

「そうだね。ここは、私のツツジ台よりも上位の力を持ったコンピュータワールドだと思ってる。ちょっと不思議な設定も多いけど。

 私をツツジ台から攫うこともできるんだから、その力も強いんだろうって。

 だからここで最後まで生き残って願いを叶えれば、私のコンピュータワールドでの後悔も全部なかったことにできる……。

 消えてしまった存在も元に戻せる……。

 そして、本当に私が救われる世界も新しく作れるかも……」

「僕もそう思っていたよ。でも、今気づいた。そんなものじゃなかった」

「え……? どういうことなのアレクシス?」

「僕がいくら探しても今まで君のいるコンピュータワールドは見つからなかった。君が攫われた痕跡すらもだ。

 でも君の声が来る先を調べたら、その理由がわかったんだ」

 

アレクシスが間を開けて話す。きっと重大な話だ。

 

 

「それは確かにコンピュータワールドのような存在かもしれない。

 でも、存在している宇宙自体が僕やアカネ君のいた世界と違う。

 怪獣のブルトンが繋ぐような沢山の別々の宇宙が実際に存在していて、その別々の宇宙にあるんだよ」

「ええっ……!!」

「別々の宇宙に存在するんだから、僕が痕跡を辿ろうとしても全然見つからなかったわけだねぇ」

「じゃあ、μが言ってる自分の元いた世界も、別のコンピュータワールドとかじゃなくて、本当の別の宇宙ってことなんだ……!」

「だから、願いが叶うとしたら本当に現実世界にも、宇宙にも影響を及ぼせるレベルで聖杯は強力だと考えたほうがいいだろうねぇ」

 

すごく驚かされた。本当にスケールが大きすぎて。

しばらくするとアレクシスが言葉を続ける。

 

「僕自身もそっちの世界には興味が出てきたし、そっちの世界での君にも協力したいと思ってるよ。

 聖杯とか、そっちの世界の技術を学ぶことができれば、もっと完璧な君のための世界を作ることができるかもしれないからねぇ」

「……ううん、もうアレクシスと作る新しいコンピュータワールドの世界はいらない……。

 コンピュータワールドのレプリコンポイドを、もう私はたぶん人間のようにしか見れないから」

「あ、そう。変わったねぇアカネ君」

 

そう、アレクシスと世界を作って楽しくしてた頃の私はもういなくなってしまった。

 

「でも、そっちの世界は僕とアカネ君が作り上げた世界と違ってもっとみんなが冷たい世界だと思うよ。

 辛いと思ってた現実よりも、もっと恐ろしい面も存在するかもしれないねぇ。

 サーヴァントと一緒に競って生き残るって……それってまるで殺し合いじゃあないか。

 アカネ君、そんな中で大丈夫かい?」

「できる限りは……何とかしてみるつもり。

 例えばμの力でデジヘッドって怪人になった人達は私達のために人を襲うけど、命令しなきゃ殺すことはないはず。

 そしてμは限界があるけど、この世界で私のために願いを叶える能力を持ってる。

 それも大きな被害を出さないようにちゃんと内容を伝えた上で、色々なことを起こして有利に運んでもらうつもり」

「うん、ちゃんと言ってくれれば私はアカネの望みにできるだけ沿った形で叶えるよ」

 

μはちゃんと私のためを思ってる。他の人に被害が出る可能性がないようにするにはどうするか、帰ったら慎重に考えよう。

 

「そうか、何だかアカネ君の情動を込めた怪獣を巨大化する形で願いを叶える僕のやり方にも似てるのかな。

 μ君、この子、手がかかるから大変だねぇ~」

「ううん、アレクシスさん、μは大丈夫だよ。私の歌を聴いて唯一助けを求めてくれたアカネのために頑張るよ。

 アカネに幸せになってもらうために、出来るだけ願いを叶えるから!」

「そうだねμ。私達、これからもこの世界で協力してく。

 でも、どうしても必要なら……私はマスターの人を殺すと思う。大丈夫……。

 最後に聖杯に願えば、きっと死んでしまった人も生き返るから」

 

あ……私、今強がってしまってる。なんでだろう。

もしかしたら……μが勇気をくれてるからかな。

 

 

「それなら、アカネ君がそっちの世界で戦い抜くためのヒントをあげよう。

 レプリコンポイド達を怪獣で潰したいと思った、アカネ君の悪意や暴力性は素晴らしいほどに本物だ。

 アカネ君が過去の行いを後悔しようと、そういう感情を生み出す心の構造まで変えることはできないよ」

「え……?」

「自分の思い通りにならない世界だからって、別に悪い感情をすべて抑えて行く必要なんてない。

 その方がずっと辛いと思うよ。心が壊れて何もなくなってしまうかもねぇ。時々は出していかなきゃ」

「アレクシス、でも今の私、悪意とか湧いてこないんだけど……なんかそれ以外の感情もだけど……」

 

私はこの世界に来る瞬間よりも、変わったと思う。

自暴自棄さも、逃げたい感情もかなり薄れて。それでも物を壊したりといった、癇癪もまだ起こしてない。

そしてまだ何か心が周りを拒絶する感じはあって……と、μがそれを代弁するかのように。

 

「私が読めるパラメータでもわかったけど、アカネの心は欲望も出ないほど疲れ切ってしまってるの。

 自分から幸せを求めたり、強く感じたりもできないくらい。

 でも、昨日お寿司を食べて美味しくて少し嬉しそうになった顔を見て、私もすごい嬉しかったよ。

 この世界の学校も今は辛いことはないみたいだし、私も頑張って歌うから少しずつ心を癒やしていこうね」

「そう、欲望や悪意は戦う原動力となる感情でもあるし、しっかり出せるようにならなきゃだめだよ」

 

そうだね……私の心はまだ罪悪感や辛さに押しつぶされてる。

それが解かれる日は、きっと聖杯を手に入れるまで来ない。

薄れることはあるのかな。それも記憶が消えていくみたいでちょっと怖い。

 

「まあ……そういうことは考えなくても、私はμに力を与えてくれるμの歌に共感した人を増やすために、沢山の人にμの曲を聞かせてるから。

 μの力がもっともっと強くなったら、声だけじゃなくてアレクシス自身をこの世界に呼ぶこともできるかもしれないね」

 

μのように元の世界で私のための力となってくれた、アレクシス。

少し悪い雰囲気のまま急に離れ離れになったけど、またこの世界でも協力してもらえることはとても有り難くて。

会えなくなってから気付く有り難さって、きっとあるんだろう。

アレクシスも協力できるなら、私がこの世界で聖杯を手に入れるのもとても近くなるだろうな。

 

と、神父のそろそろ良いだろうかと言う声が聞こえてきた。もう少し話したいこともあるけど、ここまでにしておこう。

 

「時間が限られてるし、ここまでにしとくね、アレクシス……またこっちの世界で話せるといいね」

「うん、僕自身もいろいろ試してみるかな。頑張ってねアカネ君、そしてμ君」

「はい!アレクシスさん! いつの日かきっと、貴方の事も幸せにしてあげたいな!」

 

明るく応えるμ。アレクシスまで幸せにしたいって言うその生き方は眩しすぎて。

その強い光が私を照らした。μが私にこれから生きる希望をくれた。

μの力が今は強くなくても、情けなくても私は信じるから。

そう思いながら、私は扉の前から去っていく。

 

ツツジ台の皆様、そして……六花。

私、正面から向き合えないけど……そっちの世界、きっとどうにかするから。

 

どうか、このバカな神様を許してください。

そして忘れ去ってください。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

神父が扉へ対峙する。

この世界における言峰綺礼は本来はNPCだ。

すなわち、扉を通って抜けられる元の世界があるわけではない。

だから、彼が扉の前に立とうと扉はまだ暫くは新条アカネの世界と繋がったまま。

そして、μがマスターの世界との壁を一部解除したことによる音声の透過も、まだ効果は続いたまま。

 

「さて……扉の向こうの者。アレクシス・ケリヴと言ったか。

 こちらは聖杯戦争の監督役をしている者だ。

 聖杯戦争への外部からの介入は避けてもらいたい」

「……監督役ねぇ。

 そっちがこの世界から彼女を連れ出したくせに、よく言ってくれるじゃないか。

 世界にとって神様みたいな存在の彼女が消えてしまって、色々面倒になってるんだけれどねぇ」

「……色々事情はあるようだが、そう言われても私とてこのシステムに組み込まれた一員でしかないのだ。

 文句があるなら案内人のミザリィか、このシステム自体を作り上げた主催者にでも言うべきだろう。

 私はこの世界での役目を全うしているだけだ」

「本当かなあ? それならとっとと僕とアカネ君が話すのを止めさせれば良かったのに」

「それは、ある程度希望を与えたほうが彼女達は戦う意志を強めていくであろうからだ。

 出来るだけ参加の意志を強く持つ者が多いに越したことはない」

「まあ、話を妨げなかったことには感謝するよ。アカネ君にはちゃんと生きていて欲しいからねぇ」

「フッ、それは単純な思いやりではないのではないか?

 大方、聖杯を強奪するため貴様がこの世界へ手をのばす足がかりにしたいという所か。

 あるいはすぐには死なせず苦しんでいく様を見てみたい……というのは私の想像だが」

 

神父の顔に、影が濃く走った。扉の向こうの声はそれに応えるように……。

 

「……アカネ君の感情の行く末を見たいと言ったら?

 それはある意味、思いやりと言えなくもないよねぇ。

 だってあのμっていうサーヴァント、アカネ君の心を本当に救えるとは思えないし。

 歌も一度聴いてみたけど、魂を助けて心を救う(Save)一方、心を奪い魂を捕らえる(Seize)ようにも聞こえたな」

「ハッ、その通りかもしれん。最初に私に懺悔のように話したことによると、

 あのサーヴァントは魂の救済者でありたいと望みながら救済が望まぬ形で実現してしまったからここに召喚されたのだからな。

 ただ一人になった彼女は、ただ一人の苦しんで自分を求める声をこの世界から聞いたという。

 まあ、貴様のことは聖杯戦争の管理者であるルーラーのサーヴァントへ伝えるからな。

 介入を試みるならば、手痛い反撃を受けるかもしれんと警告しておく」

「ご忠告ありがとう。反撃を掻い潜れるようにいろいろ考えてみるよ……」

 

会話が終わると、神父は扉に付与された音声の透過を解いていく。

洗礼詠唱。代行者が習得する魔術には解呪の効果があった。

 

神父が立ち去り、扉だけが残る。何も音のない空間が残った。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

そういえば、μは聖杯に叶えたい願いをちゃんと持ってる。

私のためになりたいと言うけど、それだけじゃない。

どんな事があって、聖杯が絶対に要るほど強く願いを持つようになったんだろう……?

 

   μの心の奥に踏み込みますか…?

 

    踏み込む  踏み込まない

 

……まだ聞くことはできないな。今はまだ、聞いてしまってこれ以上抱え込みたくない。

でも、私は私のためだけじゃなく、私に勇気をくれたμのためにも聖杯を得るため戦うから。

 

 

【サーヴァント】

【CLASS】

キャスター

【真名】

μ(ミュウ)

【出典】

Caligula Overdose

【ステータス】

筋力E 耐久E 敏捷B 魔力A++ 幸運EX 宝具A++

【属性】

中立・善

 

【クラス別能力】

陣地作成:A+

 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。

 人々の欲望に呼応すれば、建物だっていくらでも作ることができる。その構造も自由。

 その中で流れる歌はμに影響された者へ力を与える。

 

道具作成:A

 魔力を帯びた器具を作成できる。

 人々の欲望の力のある限り、あらゆる道具の作成が可能。

 

【保有スキル】

バーチャルドールμ:A

 人々の感情を受け止めて歌う、その在り方。

 その感情の力は、多くの人が強く想うほどμに力を与えてくれる。そしてμ自身も影響されていく。

 

カリスマ(偽):C-

 仮想世界に人々を招き世界を運営していたことにより与えられたスキル。彼女の歌に共感している者をまとめ上げることができる。

 しかし帰宅部のような造反者、エゴヘッドのようなあまりに自分勝手な者までは自身の力ではどうにもできない。

 

仮想世界の元管理者:C

 元々自分が作った仮想世界の管理者だったのが、この聖杯戦争の一部として取り込まれたことによるスキル。

 マスター、サーヴァント、更にはNPC、道具や物体に対してもパラメータや説明文として読み取れる情報を把握できる。

 ただし今の彼女には管理者権限が与えられていないので、直接会って時間をかけて徐々に読み取り把握しないといけない。

 写真等から間接的にもある程度はパラメータを読み取れる。また、能力や道具による隠蔽や偽装には無力。

 この世界内にさらに存在するコンピュータに関しても、力が強くなるほどハッカーのように干渉できたりする。

 人物の心の声や記憶を読むこともできるが、力が弱いうちは許可された場合しか読み取れない。

 

【宝具】

『あなたを楽園へ連れていってあげる(レネット・インバイツ・ユー・イントゥ・オービット)』

ランク:A 種別:対心宝具 レンジ:- 最大捕捉:1~∞人

 ネットの世界メタバーセスで人々の思いを受け生まれ、苦しんでいる人々と話してネットの世界へ招待する彼女の在り方そのもの。

 人々からμへ向ける感情の形。現実世界で彼女の歌に強く共感した者を、仮想世界メビウスへ呼び込む。

 

 しかしメビウス内でμを想いながら黒い感情が強くなりすぎると、人々はデジヘッドという怪物へ変わっていく。

 黒い装飾品を体から出し、更に依存度が高い者は様々な武器を使用する。

 サーヴァントになるに当たり、メビウスという世界の概念も聖杯戦争上に統合されている。

 

『幸せだけでできた優しい世界(エターナル・ユートピア・メビウス)』

ランク:A++ 種別:対界宝具 レンジ:1~∞ 最大捕捉:1~∞人

 彼女がもう一人の意思を持ったバーチャルドールと共に作り上げた、メタバーセス上に存在する仮想世界、メビウス。

 メビウスでは呼ばれた人々の願いがμの力により叶う。μが人々に返す想いの形。

 ただし聖杯戦争の一部として取り込まれるに当たり、その性質も変化した。

 

 この聖杯戦争のための世界にて、彼女がメビウスのように願いを叶えるため自分の好きにできる世界の領域は限られている。

 その領域の大きさは世界の人々がμの歌に共感して向ける想いの力の量に依存している。

 すなわち世界の多くの人々が彼女のことを強く思うほど、彼女は多く、大きく願いを叶えることができるようになる。

 

『■■■■■なんて要らない、理想だけ見て(ラスト・ティル・ナ・ノーグ)』

ランク:■■ 種別:■■宝具 レンジ:■~■■ 最大捕捉:■人

 μはメビウスの人々から向けられる思いを、全て自分で受け止めようとした。

 欲望、不満、不安、恐れ、憎しみ、怒り、嘘、■■■■■■■■■■■■■■■■……、とにかく全てを。

 しかし楽士たちの扇動によりその想いは更に強く偏ってしまい、彼女の性質までもが引き込まれてしまった。

 そして、最後の楽士の最後の後押し。これにより全てが決した。

 彼らの想いはとても強すぎて、この世界でも同じ想いを受け付けたとき増幅させていく力となる。

 そして最後にバーチャルドールμは救世主として、そして■■■として完成することになる。

 その時にサーヴァントとしてのクラスは■■■■へと変質するだろう。

 姿もデジヘッドのように、黒い装飾品を纏い……。

 

【weapon】

歌声

 人々の作った楽曲を歌い上げる力。それは感情を揺さぶり、さらにはずっと聞かされると洗脳のように脳裏に定着したり。

 

オスティナートの楽士の楽曲

 メビウスの世界においてμは人々をメビウスに留まらせるため、新たに作られる歌の力を使おうとして作曲者をスカウトしたのがオスティナートの楽士たち。

 その中でも特に楽士が一押しの曲を、一人当たり一曲分ずつ持ち込むことができた。

 

マインドホン

 黒いヘッドホンのような道具。楽士の制作したμの歌う楽曲を頭に響くように流す。

 メビウスが仮想世界と気付きμへの依存から抜けて現実に戻りたいと思った住人に被せることで、

 再びメビウスで過ごしたいと思うように再洗脳するため用いる。

 デジヘッドや楽士はμへの依存から抜けたいと思った住人をラガード(遅滞者)と呼び、彼らを拘束しマインドホンを被せることで再洗脳する。

 流す楽曲により洗脳する者の意思が反映され、記憶が一部消えたり性格が少し変質したりする。

 あくまで再洗脳するための道具なので、この聖杯戦争上でμからの影響を自然に受けたことの無い人間を1から洗脳するのは難しい。

 

【サーヴァントとしての願い】

 世界の人々が幸せでいられること。

 それはもちろんこの聖杯戦争における人々も。死んだり消えたりしてしまった人々も。

 

【人物背景】

 音楽作成向けの、ユーザーの組み込ませた音声を歌い上げるためのソフト、バーチャルドール。そのひとつがμ。

 沢山の情報が行き交うネットの世界、メタバーセスにて人々の歌を歌う中で、徐々にμとしての自我を持った存在が生まれた。

 μはもう一体の自我を持ったバーチャルドールと協力し、現実世界で苦しむ人々の精神を招き救うネット上の世界、メビウスを作り出した。

 

 μは世界の維持のためメビウス内で流す曲を増やそうとし、作曲者を楽士としてスカウトすることになる。

 しかし最初の楽士の本当の願いを、彼女が叶えることは出来はしなかった。

 苦しむ人々のため、本当に何でも願いを叶えられる力が欲しいという思いを彼女は常に抱いていた。

 

 しかし苦しみや欲望を歌う楽士の歌は、負の感情を引き寄せてしまう。

 μはそれらの感情を受け止めて、徐々に影響されて在り方も変わっていった。メビウスの世界に人々を閉じ込めるように。

 その中で現実に帰りたい気持ちを強くしメビウスを脱出しようとする帰宅部、それを止めようとする楽士たち。

 幸せの概念を詳しく理解しないμは人々がメビウスにいる事が幸せだと信じ、

 楽士に言われるように協力しながらその戦いを眺めていくことになる。

 

 その有り様によってはルーラーやセイヴァーの適性もあっただろうが、今の彼女では恐らく不可能だろう。

 

【方針】

 この聖杯戦争の中でも、自分ができる限りマスターの願いを叶えて幸せになってもらう。

 マスターのことは最初の楽士のソーンのように、ほかの人よりできるだけ優先したい。

 でも、力はまだぜんぜん足りなくて。マスターにはどうしても手伝ってもらわなきゃならくて、申し訳ない。

 そして強くなった私の力でも、叶えられる限界はあって。

 だから、マスターには聖杯を手に入れて、マスター自身の本当の最高の願いを叶えて欲しい。

 

【把握資料】

 ゲーム本編。楽士エンドの後という想定で作成。

 

 

【マスター】

新条アカネ

【出典】

SSSS.GRIDMAN

【性別】

女性

【能力・技能】

 才色兼備才貌両全の最強女子で皆から好かれている……というのは彼女がコンピュータワールドで作った設定を皆が信じているためのもの。

 怪獣に対する知識がマニア的に豊富で、自分で怪獣を考えてフィギュアの制作もする。

 機械やコンピュータには高校生にしては強い方。

 沢山のディスプレイを使ったデスクトップ環境を構築したり、ドローンを飛ばして他者を監視したり。

 

 μに影響されたためオスティナートの楽士達のように、武器を手に入れて身体能力を強くすることもできるが、自分自身が戦うことは望んでいない。

 

【人物背景】

 ツツジ台という街に住んでいる一介の高校生。クラスの中では注目される存在で、誰もが彼女のことを好いている。

 優等生的で人当たりが良く、誰にも優しい。

 正体はツツジ台という世界自体の創造主。

 彼女は現実世界の住人で、コンピュータワールドとしてツツジ台という世界をアレクシス・ケリヴと共に作り上げた。

 世界に時々現れる怪獣の創造主であり、怪獣の力を用いて世界を作り、また世界の不具合を排除する。

 ツツジ台の設定に沿わず自分を好きにならない存在や気に入らない存在をバグのようなものと思い、怪獣を用いて排除してきた。

 本来は内向的で小心者な性格で、自分がそんなこと気にせずいられるような世界としてツツジ台を作っていた。

 しかし、ツツジ台の外からの来訪者として怪獣を倒すグリッドマンが現れたことで、ツツジ台は変質していく。

 彼女もグリッドマンを倒すことを目標として怪獣を制作していくも、様々な装備で対処するグリッドマンにはどうしようもなく……。

 

【マスターとしての願い】

 私の為に作り上げた世界、ツツジ台でも結局私は救われない。

 そして人間のように意思を持った電子生命達を、私は沢山……。

 頑張って築いて来たものは無駄だった。希望は消えた。もう取り返しがつかない。

 でも、ここの聖杯ならきっと、なんとかできる。

 

【方針】

 優勝狙い。少しずつμの力を強くしていく。

 殺人はもうしたくないけど、どうしても必要なら……。

 

【ロール】

 月海原学園の学生。

 B-3マークライト街に、ツツジ台のアカネ宅が再現されたような家がありそこから通っている。

 通学手段として地下鉄も使える。

 

【令呪の形】

 本編に登場する怪獣、ゼッガーを簡略化したようなデザイン。

 右手甲に描かれており、触手部は対称性を持たず不規則に伸び掌側や腕にまで達する。

 なおμの力を用いて隠蔽することもでき、普段はそのようにしている。

 

【把握媒体】

 アニメ全12話。漫画版も内容はほぼアニメと同じなので把握用に使えます。

 参加時期は11話(漫画48話)の六花と対話する前。

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