機動武闘伝Gガンダムヴァンドレッド   作: ノーリ

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お久しぶりです、作者のノーリです。性懲りもなくクロスオーバーの連載物に還ってまいりました。そして今回の題材はこれです。

以前連載していた本作品のモデルケースともいえるあの作品の本編の終了時の後書きで、もう一つ兄さんをクロスオーバーさせてみたい世界観の作品があると書きましたが、それがこれになります。

約二十年前の作品と、大分古いので元ネタもわからない読者の方も沢山いらっしゃるかもしれません。もし本作を読んでいただいて興味をお持ちいただけたら、今は便利な世の中でオンライン視聴できるようになってますから、そちらをご覧になっていただければと思います。(一応言っておきますが、ネット動画サイトやサービスの宣伝じゃないですよ。特にリンクも張りませんので)

元ネタがおわかりになる方たちは当時を思い出しつつ、感慨にふけるなりニヤニヤするなり当時を思い出すなりしながら楽しんでいただければと思います。

個人的にこの作品を投稿するのはもう少し後にしようと思っていました。しかし、人の運命なんぞいつどうなるかわかりませんので、書けるうちに書いておこうと今回舵を切った形になります。元ネタの作品はホントに大好きだったんで、頑張りつつも楽しめればいいかなと思っています。今回も完成を目指して進んでいきますので、宜しければまた暫くお付き合いください。

では、どうぞ。


NO.00 Prologue ~蒼の導き~

目の前に光が迫ってくる。

 

私を…私たちを解放してくれる光だ。

 

それが近づいてくる中、二つに分かれてしまった身体同士で目を合わせ、私たちは軽く微笑んだ。

 

ふと、迫ってきている光の後ろ…弟が乗っている機体に目が行った。

 

ここから見えるわけがない。それはわかっているのだが、何故かその弟が大泣きしているのがわかってしまった。

 

(大きくなっても相変わらず、泣き虫な奴だ)

 

死がもう目の前に迫っているのにそれがおかしくて…それ以上に自分たちのために泣いてくれるのが嬉しくて。

 

『ありがとう、ドモン…』

 

ほぼ同時に二人でそう呟くと、私たちは光に飲まれて消えていった。

 

そして私たちは…『キョウジ=カッシュ』と『シュバルツ=ブルーダー』はその生涯を終えた…はずだった。

 

 

 

 

 

時間も空間も異なるどこかの宇宙、そのとある座標。ここに、長年相争う二つの星系があった。

 

一つは、男の星『タラーク』

もう一つは、女の星『メジェール』

 

この二つの星は長きに渡り戦争を続けてきた。きっかけは何か、そして何故戦い続けるのか。そういったものは既にどこにもなく、誰にもわからない状態。ただ男だから、女だからといった理由で戦いを繰り返す昨日、今日、そして明日。この歪な日常の真実がわかることになるのは、まだ大分先の話。そのうちの一つの男だけの星、タラーク。物語はそこにいる一人の少年の小さな小さな意志から始まる。

 

 

 

 

 

「う…」

 

一人の少年が手を伸ばす。名を、ヒビキ=トカイ。男だけの星、タラークの最下層等級の身分である『三等民』の一人である。タラークは厳格な階級制が敷かれており、最下層の三等民は主に単純作業の労働力だった。

そのヒビキはふとしたことで自分たちが製造している部品が搭載された人型決戦兵器…通称蛮型を、それが搭載してある戦艦の『イカヅチ』から強奪してくることになったのだが、その途中で意識を失っていた。

 

(確か…俺は…)

 

朦朧とする頭で意識を失う前のことを思い出す。一度は強奪に失敗して投獄されたものの艦内に混乱が起こったため何とか脱走には成功し、強奪に再チャレンジする途中で近くで爆発が起こってそれに巻き込まれたのだった。それが覚えている最後の記憶だった。

 

(にしても…なんだ、こりゃ…)

 

意識が次第にハッキリしてくる中で伸ばした手が掴んだ不思議な感覚に戸惑っていた。柔らかく、温かく、ハリがあり、そして不思議と不快な感覚にならない。そんな、自分が手にしようとしているものの正体を確かめようと目を開いたヒビキを見下ろしていたのは、

 

「……」

 

自分に覆い被さっている女の姿だった。顔は見えないが、その無機質な姿は伝え聞き、映像で見たことのある女そのものだった。

 

「うわあああっ!」

 

一瞬で目が覚めたヒビキがその女を押し飛ばす。女は短い悲鳴を上げて後ろに吹き飛んだ。そのまま逃げようとしたヒビキだったが、

 

「ちょ、ちょっと、待って!」

 

女が引き止め、ビックリしたヒビキが思わずその言葉に従って動きを止めてしまった。と、女がマスクを脱ぐ。そう、そこにいた女はいわゆる宇宙服のようなものを着込んでいたのだ。そして、

 

「わぁ! 本物の宇宙人だ!」

 

現した素顔は何とも可愛らしいもので、無邪気な少女のものだった。『女』というものを知っていたらそう判断できただろう。が、女を知らないヒビキには

 

「う、宇宙人…?」

 

怪訝な表情をしながらそう返すのが精一杯だった。スーツを脱いだその少女はヒビキに向かってちょいちょいと手招きして軽く手を差し出す。ヒビキがそれに応えるように同じ動作をすると、

 

「やったぁ、通じた! ファーストコンタクト!」

 

と、身を捩らせて頬を染めながら大喜びしたのだ。が、ヒビキにはそれが理解できるわけもなく、

 

「は、ははっ、サヨナラ」

 

それだけ言い残し、脱兎のごとく逃げ出したのだった。

 

「ああん、ちょっと待って、写真まだ!」

 

半分まで脱いだスーツを脱ぎ捨て、その少女はヒビキを追いかけだしたのだった。場違いな二人組がそうしている間に、状況は刻々と変化していた。ヒビキたちが今いるこの場所、男側の戦艦イカヅチの旧艦区が女の襲撃を受けて次々に占拠されていったのである。

 

「ほらそっち、一箇所に固まれ。妙な真似をしたら撃つ!」

 

そう言って、捕虜にした男たちを誘導する女。

 

「消毒剤とはいえ、相変わらず馴染めないわ、この匂い」

「ディータは?」

「ビームぶっ放して、壁に突っ込んでいった。おかげでこんな…っ、痛ったいなもう! デリケートなお肌なんだからね!」

「しょうがないでしょぉ?」

「何言ってんの!」

「だって~」

 

そんなやり取りが聞こえる中、捕虜となった男たちは引き続き誘導される。手当てのやり取りを見て一瞬進めていた歩みを止めた男がいたが、女に促されてすぐに歩みを再開した。同時攻、別の女の一隊がイカヅチのブリッジの占拠を試みる。

 

「なあにこれ? 全然使ってないじゃない」

「ここは、メインブリッジではないようだな」

 

そう言った、いかにも司令官然とした佇まいの女性が通信機を取り出した。

 

「お頭、こちらブザム。男どもは船を封印して脱出。サブブリッジを確保しました」

 

通信し、状況を報告しながらコンソールを起動させる。しかし、そこに浮かんできた文字は女には読めない文字体系だった。

 

「あらまあ」

 

おっとりとした顔の女性がコンソールに走った文字を見て頬に手を当てて眉を顰める。

 

「どうしよう、全然読めない」

「任せてといて、こんなこともあろうかと、このインタープリッコを…」

 

もう一人、眼鏡をかけた女性が己の発明品らしいものを取り出したが、通信機で通信している女性…ブザムは苦も無くそれを解読しながら通信をしている。

 

「副長、読めるの!?」

「さすがエリートね」

「ちぇーっ、せっかく造ったのに」

 

己の発明品の出番が少なくなったことに眼鏡をかけた女性が不満げにボヤいた。そのような感じで艦内の状況が慌ただしく変化しているが、相変わらずヒビキは先ほどの少女に追いかけられて追いかけっこを続けていた。

 

「宇宙人さん! ねえ、お話ししようよ!」

「うわっ、女って怖え!」

 

まあ傍から見れば平和なやり取りではあるのだが、時間は止まってはくれない。自分たちの船であるイカヅチの旧艦区を乗っ取られた形のタラークの首相が、イカヅチを撃墜するための準備を進めていた。

 

「集合魚雷ムラマサ、発射準備!」

「まさか、旧艦区を破壊するおつもりですか!」

 

側近のその指摘に首相の表情が歪んだ。が、

 

「むざむざ海賊の手に落ちるぐらいなら、いっそこの手で…」

 

首相の決断は変わることはなかった。そうしている間に、捕虜となった男たちは脱出艇に乗せられて宇宙に放り出される。その様子を目の当たりにした側近がメジェール側に和解を申し入れるよう進言する。しかし、首相の判断はやはり変わらなかった。そんな状況下、イカヅチの旧艦区ではまた状況が動こうとしている。

 

「大物だっていうからチョー期待したのに、ガラクタばっかじゃん」

 

長い金髪でプロポーション抜群の女性がやってられないとばかりに今のところの戦果をボヤいた。と、

 

「ジュラ」

 

その女性を誰かが呼ぶ。声の主は青い短い髪で、左目の辺りにスコープのようなものを装着した厳しい雰囲気の女性だった。

 

「ディータを探しに行く。一緒に来て」

「もー、だから見習い連れてくんのは嫌だったのよ!」

 

金髪の女性…ジュラが不満げにそうボヤく。それに対し、青い髪の女性が鋭くジュラを睨み返す。彼女の名はメイア。立ち位置や雰囲気そのままに、命令を出す側の優秀な指揮官である。

 

「ただでさえ手が足りないときだ。反対するならもっと前に言うべきだった」

「わかったわよ、もう。行きゃあいいんでしょ」

 

メイアに睨まれ、ジュラが仕方なしとばかりにその場を動きだした。そして今二人の会話に上がっている“ディータ”というのが、先ほどからヒビキと追いかけっこしている少女なのだが、それはまた別の話。一方でサブブリッジではタラーク側が自分たちをロックオンしたのを察知した。

 

「まあ、大変。ミサイルにロックオンされた」

「何!? パルフェ。船の方は動かせるか!?」

「ムリですよぉ! まだエンジン死んだまんまだし」

「お頭!」

 

サブブリッジのブザムが通信機で指示を仰ぐ。

 

『こっちもモニターしている』

 

その相手。ブザムからお頭と連絡を受けた人物はそう答えた。彼女の名はマグノ=ビバン。この女たちの海賊艦の文字通り長の立場にある女傑である。

 

『大物は惜しいが…みんな、ずらかるよ』

 

その一言で慌ただしくイカヅチ旧艦区からの撤収準備が始まった。

 

「了解。メイア、聞こえた?」

「ディータをロストしました。見つけ次第ランデブーしますから、皆さんは先に…」

 

そう状況を報告しているメイア。だが直後、そのロスト対象を発見したのだ。先ほどまでと何ら変わらない、ヒビキを追っかけている少女、ディータの姿を。

 

「寄るな、触るな!」

「なんでよぉ!」

「ディータ!」

「見た? 男追っかけてるよ」

 

メイアは苦々しく、ジュラは呆れ顔でその様子を目撃したのだった。同じ頃、違う場所では先ほど連行されるときに足を止めて様子を見ていた男性が一人の女性の傷の手当てをしていた。

 

 

 

「これでいいだろう」

 

処置を終えた彼はふむ…と顎に手を当てながら何か考えている。彼の名はドゥエロ。医者ということもあり、今回の処置を買って出たのだ。本来ならば敵対する相手にそんなことはしないものだが…。

そんな中、ドゥエロのその視線に気づいたのか、

 

「な、な、な、何よ。面白いもんじゃないでしょう?」

 

と、処置を受けた女性が牽制するように身を捩って距離を開けたのだった。

 

「いや、面白い」

 

それに対してドゥエロはそう答えると、立ち上がる。敵対しているとはいえ初めての女の身体に医者としての興味を抑えられなかったのだろう。それが今の発言にも表れているようだった。

 

「礼は言わないわよ」

「構わんよ。さて、私も引き上げるか」

「五人触った、五人触った」

 

その後ろで、そんなことを呟きながらメモる看護師のような出で立ちの少女。直後、震動が周囲に響き渡った。襲撃してきた女性たちの母艦がクルーの回収に来たのである。

 

「右舷後方が破損!」

「海賊船、旧艦区に接近中!」

「ムラマサは!?」

「燃料充填がまだ!」

「もう十分だ。目標旧艦区、撃てーっ!」

 

それをモニターしている首相の号令で、ついにムラマサが発射される。ここからは時間との勝負。母艦がイカヅチの旧艦区に接舷し、クルーの収容を開始する。

 

「クルー回収開始!」

「ミサイル到達まで後300秒!」

「BC!」

 

マグノがブザムに通信を入れて状況確認を行う。BCというのはブザムの通称である。

 

『私以外は脱出完了。メイア以下三名がまだです』

「奴らはドレッドで還らせよう。BCも戻れ!」

『ラジャー』

 

そこで通信を切ってブザムも撤退した。時間との勝負の中、残った三人と一人、ディータ、メイア、ジュラとヒビキもようやく脱出に入る。

 

「到達まで、後150秒」

「メイア、何処!?」

『三名とも無事です。ドレッドですぐ出ます』

 

女性陣三人が自分の機体に乗り込む中、ようやく自由になったヒビキも自分の相棒を探していた。

 

「俺の蛮型…いた! やったぜ相棒!」

 

自分の物である証明として、一目でそれとわかる傷をつけた部品を使用してある蛮型を見つけたヒビキはそれに乗り込んだ。

 

「よっしゃあ、一気にずらかるぜ! …って、どうやって動くんだ、これ?」

 

乗り込んだものの、致命的なことを思い出したヒビキの表情がどんよりと曇った。そう、操縦方法がわからないのだ。そうしている間にも時間は刻々と進む。

 

「到達まで後25秒」

「直撃は免れません!」

「当たるも八卦、当たらぬも八卦…」

 

祈るようにそう呟くマグノ。その祈りが通じたかのようにメイアとジュラの機体は動き出した。が、

 

「ディータ!?」

「ふぇーん、引っかかって出られませーん!」

 

半泣きになりながら報告するその言葉通り、ディータの機体は突っ込んだためにガッチリ艦体に刺さっており、いくらエンジンをふかしても動けなかった。しかし、容赦なくムラマサは迫る。

 

「後13秒」

「動け、動け!」

「ディータ!」

「もう待てないって!」

「誰か助けてーっ!」

 

そして、クルーの回収のため接舷した女たちの母艦が離脱した直後、旧艦区にムラマサが着弾したのだった。吹き飛ぶイカヅチ旧艦区。三人と一人の生存は絶望的に思えた。が、ヒビキはその中で青い光に包まれていた。そして見たのだ、己の目の前にそびえ立つ人型の何かを。

 

「な、何だ、てめえは…」

 

その人型の何かから返答があるわけもなく、そして、

 

「うわーっ!」

『きゃーっ!』

 

その青い光に吸い込まれるようにヒビキと三人の女性陣、ディータ、メイア、ジュラも光の中に落ちていった。

本来ならばそこで終わるはずのこの一連の奇跡。しかし誰も知ることはないだろう、そのあと収束するはずのこの青い光が収束せずに静かに明滅を続けたことを。まるで、心臓の鼓動のように鳴動を繰り返し、そしてその繰り返す明滅、鳴動が少しずつ何かを象り始めたことを。

その象り始めたものとは、先ほどヒビキが見たような人型の何かだった。だが、ヒビキが見たそれとは決定的に違う。そのカラーリングは全てを呑み込むような漆黒の黒。最初はボンヤリとしていたその人型が青い光の明滅、鳴動と共に少しずつ少しずつその姿を為そうとしていた。

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