機動武闘伝Gガンダムヴァンドレッド   作: ノーリ

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おはようございます。

さて、本作第二話です。アニメの時系列上で言えば同じく第二話の終了までになり、顔見せですがこの作品の主役もお目見えとなります。これからどんな展開にしましょうかねぇ…。

楽しみでもあり不安でもありますが、楽しんでいただける間は是非ともお付き合いいただければと思います。

では、どうぞ。


NO.01 黒の再臨

『もう少し…頭一つ…いや、ほんのちょっと高さが変わるだけで、全然違う景色が見えるはずなんだ…』

 

ヒビキが手を伸ばす。が、それを嘲笑うかのように目の前を何か得体のしれないものが塞ぎそれを阻んだ。

 

『邪魔すんな! もうちょいなんだ…』

 

苛立つようにそれを乗り越えようとするヒビキ。だが、その先に見えたものは先ほどと同じく青い世界。そして同じく、先ほど見た人型の何かだった。その何かが、両肩に搭載されているキャノン砲のようなものを発射する。

 

 

 

ヒビキがそんな状況下にあるのと並行して、他でも状況が動いていた。ムラマサの爆発に巻き込まれた女たちの母艦もその余波を受ける。ショックで少しの間気を失っていたようだが、幸いクルーの身体的なダメージはその程度のようだった。

 

「ーっ! あの世じゃないらしいが、何事だ!」

 

いち早く目覚めたマグノが状況確認を命じた。

 

「すぐ調べます!」

 

ブリッジのオペレーターがそう報告した直後、また艦を振動が襲った。

 

「何だ!?」

 

マグノが自分の目で状況を確認する。と、信じられないことが起こっていた。あの青い結晶が成長しながら自分たちの艦と男側の艦…イカヅチを侵食し、二つの艦を融合させているのだ。

 

「何だいこりゃ、結晶がこの艦を喰おうってのかい!?」

 

長年生きてきたが、それでも自分の理解の範疇を超える事態にマグノは驚きを隠せない。一方、女の駆る戦闘兵器…通称ドレッドで脱出しようとしていた先ほどの女性陣三人衆、ディータ、メイア、ジュラも衝撃で気を失っていたが、ようやく目を覚まそうとしていた。

 

「っ!」

 

最初に気が付いたのはメイアだった。目を覚ました当初こそ頭の中はもやがかかるようなぼやっとした感じだったが、すぐに意識がハッキリしてくる。

 

「ジュラ」

 

視界の中に入ったジュラの名を呼んだ。ジュラはまだ気を失っていたがメイアのその呼びかけが耳に届いたのだろう。

 

「う…」

 

と、眉根を寄せながらもくぐもった声を出した。

 

「! ディータは!?」

「はぁ~い、ここでーす…」

 

自分たち以外のもう一人…ディータのことを思い出したメイアがハッとして叫ぶ。が、すぐに返事があった。振り返ると、ヘロヘロな状態ではあるがディータがゆっくりと腕を振っている。

 

「なんか…ビビビーってきて、ズババーってなりましたよね。エイリアンパワーすごいでしゅ…」

 

ヘロヘロながら一方で満足そうな表情になってディータは気を失った。自分を含めた三人が何とか無事なことを確認したメイアがホッと軽く息を吐きながら周囲の状況を確認する。そこは他と同じく、これまでとは違って青い結晶で覆われた空間となっていた。

 

 

 

「ガスコーニュ、切り離せそうかい?」

 

ブリッジ。融合、浸食を続けている青い結晶についての対応策をマグノが通信である人物に尋ねていた。ウインドウの開いた先にはがっしりした身体で長楊枝を咥えた、『姉御』という異名が実にしっくりときそうな女性が立っていた。

彼女の名はガスコーニュ=ラインガウ。この艦の補給部隊の責任者の女性である。

 

『ビームじゃ無理だね。うかうかしてるとここもすぐ呑まれちまう』

『浸食は、艦全体に広がっています』

『エンジンも死んでて動きません』

 

それを補足するかのようにブザムと、ブザムとともにサブブリッジを占拠した眼鏡と三つ編みの少女からも報告の通信が入ってくる。彼女は、パルフェ=バルブレア。メカニックの取り纏め役といっていい、優秀なメカニックである。

 

「んん、元から断つしかないか。上行くよ。BC、パルフェ、一緒においで」

『了解』

 

マグノの命令にブザムとパルフェがそう答えた。そしてマグノは二人を引き連れると小型艇に乗り換えて融合中のイカヅチの旧艦区に再度向かったのだった。

 

「こりゃまたすごいね…」

 

イカヅチの旧艦区を実際に目の当たりにしたマグノの第一声がこれだった。自分の予想以上に青い結晶が内部を侵食していることを確認したからだ。杖を突きながらゆっくりと中に降りると、そこにはメイアとディータが待っていた。

 

「すみません、お頭。わざわざこんなところにまで」

「あんたが謝ることじゃないよ」

 

マグノがメイアにそう声をかける。

 

「この目で見たかっただけ…ん?」

 

歩き出しながら艦内のあちこちに目を走らせていると、マグノの視界の端に何かが引っ掛かった。

 

「ディータが追っていた男です」

 

それに気づいたメイアが補足した。そう、マグノの視界の端に引っかかったのはヒビキだったのだ。

 

「久しぶりに見るが、男ってのはこんなに間抜け面だったかねぇ?」

 

気を失っているヒビキに対し、マグノは遠慮会釈のない素直な感想をぶつけたのだった。槍玉に挙がったヒビキはと言うと、失った意識の中で先ほどの青い空間の続きと対峙していた。

 

 

 

『お前はなんだ?』

 

ヒビキに対して問いかけが響く。

 

『俺…俺はヒビキ』

『ヒビキ』

『有機体の呼称か、個体の名前か?』

 

問いかけが次々に増えていく。

 

『何故ここにいる?』

『目的は本能か、義務か?』

『違う! 俺はうんざりしてたんだ! 見た目や仕事のせいだけでバカにされる、そんな境遇から飛び出したかったんだ!』

『理解できない』

『ヒビキとは何か』

『何…って言われても』

『お前はなぜ』

『存在するの?』

『お前が、お前という存在である証は何か』

『証って…そりゃ、見りゃわかんだろうが!』

『その回答は原始的、三次元的』

 

そこで、ヒビキに問いかけていた存在がスーッと消えていった。

 

『ま、待てよ、お前こそなんだ!? ここはどこだ!? 俺はどうしたらいいんだ!? 俺は、俺はっ!』

 

その消えていった何かを掴むかのように手を伸ばした瞬間、ヒビキの頭に激痛が走ったのだった。

 

「っ! 痛ってー!」

 

激痛の走る頭を撫で擦りながらも自分の置かれた状況を確認するために周囲に視線を走らす。そこは、先ほどまでと同じく牢屋の中のようだった。

 

「たはは…また牢獄に逆戻りか」

 

肩を落としながら己の身の上をボヤくヒビキ。が、今回は前回とは違って先客がいた。

 

「気が付いたようだな」

「! だ、誰だ!」

 

自分の独り言に返答があるとは思ってもいなかったヒビキが声のした方に鋭い視線を向ける。そこには、先ほどの医者…ドゥエロの姿があった。

 

「ドゥエロ=マクファイルだ。名前はあるのかな、三等民くん?」

「バカにすんな! 俺はヒビキ=トカイだ。ただの三等民じゃねえぞ!」

「式典で暴れたのは君だな。どうやって潜り込んだんだ?」

 

ヒビキが嚙みつくがドゥエロは意に介さず質問を続ける。

 

「よく聞かれる日だな、ったく…。だから!」

 

答えようとしたヒビキだったが聞きなれない音が耳に入ってきたので一旦回答を中断した。そして音の発信源に目を向けると、そこには最初に脱走するときに成り行きで回収したナビゲーションロボット…通称ナビロボが妙な駆動音を発していた。…いや駆動音というよりは、おかしな話だが言語に近いかもしれない。

 

「?」

 

怪訝な顔でナビロボに視線を向けたヒビキだったが、直後に卵型のナビロボが収納されていた手足を出して立ち上がったのだった。

 

「ピョロッ? ここはどこ? 私は誰?」

「お前そんなだったかぁ…?」

 

頭を掻きながらそんなことを言うナビロボはロボットでありながら実に人間臭かった。ヒビキが呆れるのも仕方ないと思うほどに。同時刻、結晶で浸食されたイカヅチ内の、先ほどまで式典のあった場所にて、一人の男が姿を現した。

 

「ひえーっ…えらいことになったなぁ…」

 

ボヤきながら周囲を確認して出てきた男の名はバート=ガルサス。タラークの食糧であるペレットという錠剤の製造や供給、販売を手掛けるガルサス食品という企業の三代目である。肩書こそ立派だが、軽薄でお調子者な性格に加えて口だけは達者ということもあって周囲の評価は低い人物だった。そのバートが、結晶化している艦内を見渡しながら所在なさげに歩き出す。

 

「どうなっちまってんだよ、この艦は…」

 

悪態をつきながらトボトボと歩くバートのすぐ側で自重に耐えきれなかったのだろう、巨大な結晶が落下した。

 

「わーっ!」

 

すぐ側で落下した結晶の音と衝撃にバートは思わず腰を抜かす。

 

「何だよチクショウ、脅かしやがって!」

 

悪態をつきながらへっぴり腰で立ち上がろうとするバート。が、動き出した先には、

 

「……」

 

押し黙ったまま指に嵌めているリングを自分に向けているメイアの姿があった。

 

「や、やあ、どうもぉ~…」

 

その姿に、バートは表情を引きつらせながらそう返すことしかできなかった。その間にも、結晶による二艦の浸食と融合は着々と進行する。

 

「わぁ…ガスコさん、とうとう中も繋がっちゃいました」

「はぁ…ペークシスってこんなすごいエネルギー体だったとはね…」

 

クルーの報告にコンソールと睨めっこしていたガスコーニュがぼやく。どうやらこの結晶の名称はペークシスというらしい。そして後々、このペークシスが何なのかを知ることにはなるのだが、それは今はともかくとして、

 

「後、ガスコじゃないよ、ガスコーニュ!」

 

報告してきたクルーの子にそうやってガスコーニュはすごんだのだった。

 

「ヤバぁ…うちらのコアまでリンクしちゃったよ…。ルート探して! そっちはラインスター粒子を、メインケーブルに注入! とにかく、コントロールできるようにするのよ!」

 

同様に機関部ではパルフェが指揮を執って何とか融合してしまったこの艦をコントロールできるように対応中。そして、

 

『パイウェイ!』

 

おそらくシャワールーム(あるいは除菌室?)と思われる場所には数人の女性が下着姿で医療ポッドのようなものの中に監禁されていた。彼女たちは容赦なく殺菌されている。

 

『ここから出してよ!』

『寒いよぉ…』

 

下着姿のまま医療ポッドのようなものの中から叩いて訴えるのは、バーネット=オランジェロ。先ほどドゥエロに治療を施されていた女性だ。その彼女を筆頭に閉じ込められた女性たちが訴える。しかし、

 

「男菌が無くなるまでダメ~」

 

彼女たちをこのような目に合わせている張本人は涼しい顔でそう答えたのだった。

 

『パイウェイ!』

「かくして、このメッタピンチでもスーパーアイドルパイウェイちんは…」

 

バーネットが再度訴えたものの、パイウェイと呼ばれたその少女は変わらず涼しい顔で日記をつけていたのだった。そんな中、

 

「おら、直してやっから」

 

再びの牢獄では挙動がおかしくなったナビロボにヒビキがそう伝える。が、

 

「バカにすんな、壊れてないピョロ!」

 

ナビロボは手足をブンブンと振りながらそう答えたのだった。挙動が実に人間臭いものになっており、これで壊れていないというのも眉唾物ではあるのだが…。と、その場に近づいてくる足音がヒビキとドゥエロの耳朶を打った。

 

「お、女!? こんなところに突っ込んで何するつもりだ!」

 

ドゥエロは黙って視線を向けただけだったため、現れた女性陣に対峙するのはもっぱらヒビキが行うことになった。

 

「この状況下で、一番安全な場所だぞ」

 

やってきたのはブザムだった。その後ろには平の隊員と思われる二名が先ほどのメイアと同じくリングをヒビキたちに向けている。その仕草から、女性たちが嵌めているこのリングには重火器としての能力もあるのだろう。

 

「んなこと言って、肝喰う気だな」

 

ヒビキがタラークでの一般常識と照らし合わせてブザムたちを睨んだ。が、

 

「肝を喰う?」

「ぷふふ…」

「本気で信じてんぞ…」

 

ブザムは怪訝な表情を浮かべ、お付きの二人はリングを構えながらもおかしくてたまらないとばかりに笑い出したのだった。

 

「…それよりもまず話が聞きたい。一緒に来い」

 

ブザムはそう告げると、ヒビキとドゥエロを連行して歩き出したのだった。

 

 

 

大浴場と思しき場所。ヒビキたちは尋問を受けるためにこの場所に連行されてきていた、しかし何故かヒビキの頬が赤く腫れあがっている。というのも、連行されている途中で女性の丸みを帯びたボディラインが気になったので、すぐ前を行く女性隊員の尻をつついたからだ。その報復としてその女性隊員から平手打ちを食らい、頬が赤く腫れあがっているのである。

 

「レディーに失礼なことするからピョロ」

「わけわかんねーこと言ってんじゃねえ!」

 

そんな掛け合いをナビロボと行っていると、不意に自動ドアが開く音がした。

 

「なんだ、まだいたのか」

 

そこに現れた顔を見たブザムがそう呟いた。そこには頭の後ろで腕を組んだバートが女性の隊員にこの場に連行されてきた姿があった。

 

「はい。プラットホームに隠れていたそうです」

「やあご同輩、会えて嬉しいよ」

「? メイアは?」

 

バートが表情をこわばらせながら力なく答える。その一方で、バートを連行してきた隊員にブザムが尋ねた。というのも、バートを連行してきたのはメイアではなかったからだ。

 

「それが、どこからか通信が入ったみたいで…。私にここまでこの男を連れてくるように指示を出した後、どこかへ行ってしまいました」

「? そうか?」

 

どういうことだろうと思って首を捻ったブザムだが、後で事情を聞けばいいとそれ以上は口を挟まなかった。と、

 

「おやおや…」

 

その場に今度はお頭であるマグノの声が響き渡る。

 

「捕虜っていうから来てみれば、ガキばっかりじゃないか」

 

ガッカリしたようにヒビキたちを見渡すマグノにナビロボが近寄った。

 

「ねえ、尋問するピョロ? 何でも言うピョロ」

「おや懐かしいね。ナビロボじゃないか。まだ動くのが残ってたんだねぇ」

 

その言葉通り、昔を懐かしむようにそう言うマグノ。だがその一言はヒビキたちには聞き捨てならない一言だった。

 

「どういうことだ?」

「こりゃあ、男の艦だぞ」

「そのもっと前は移民船だったんだよ」

 

マグノの返答にドゥエロの表情が厳しくなり、ヒビキが驚いたように息を呑んだ。

 

「おや、何にも知らないんだねぇ。この艦は地球って星から出発した移民船団の一つさ」

 

ヒビキたちの反応を見たマグノが説明していく。

 

「もっとも切り離す前のやつだがね。お前さんたちの根性なしの爺様たちが、我々から奪って逃げたのさ」

「古い型の戦艦を改造して居住区を足したんだピョロ」

 

ナビロボがマグノの説明を補足した。

 

「期せずして今はその戦艦に戻ったってわけさ」

 

一区切りつき、そこでマグノがニヤリと獰猛な笑みを浮かべた。

 

「私らも商売だから、この艦はいただくとして。問題はお前さんたちをどうするかだ」

「先ほどの男ども同様、捨てますか?」

 

ブザムが尋ねる。

 

「慌てることはないよ、どう料理するかじっくり考えるとしよう」

(やっぱ喰う気だ…)

 

舌なめずりしながらそう言って自分たちを見据えるマグノに、ヒビキは顔を真っ青にさせて小刻みに震えながら冷や汗をダラダラ流したのだった。一方その頃、

 

 

 

「ヤダ、全然一致しない。わかんないなぁ…」

「わかんないかなぁ、エイリアンに遭遇するってすごいことなのに!」

 

ブリッジに女性の影が二つあった。一人は天体球のようなものを覗き込んで現在位置の座標を調査中だが、もう一人は頬杖を着きながら満足そうな表情をしている。一見会話が嚙み合っているようにも見えるのだがその実、二人の会話は全く噛み合っていなかった。

 

「でも凄いね、ただのエネルギー源だと思ってたペークシスが、艦改造しちゃうんだから」

「改造かぁ…ディータもアブダクトされたら…」

 

夢想しながらそんなことを口に出しているのはディータ。その隣で、もう一人が疲れたようにふぅ…と息を吐いた。

 

「エズラどうしたの? お熱お熱?」

 

天体球を覗き込んでいたもう一人…糸目で穏やかな雰囲気を漂わせる女性の名を呼んで調子を伺った。先ほどブザム、パルフェと共にサブブリッジを占拠した隊員である。

 

「ああ、大丈夫。ちょっとみんなのこと思い出しちゃって…」

「そうだよね。ベテランのみんなはアジトに置いてきちゃったし」

「早く帰りたいね」

 

再度ふぅ…と息を吐いたエズラ。と、

 

「あぁーっ!」

 

不意にディータが声を上げた。

 

「え、何?」

「ほらあれ、あそこ!」

「どこ?」

 

ディータが身を乗り出して指差した方向に向かってエズラが天体球を覗き込む。そこには、こちらに向かって蛇行してくる光点が三つ確認できた。

 

「やだ、何かしら…」

 

状況が状況だけに不安がりながら呟くエズラだったが、

 

「決まってるじゃん、UFOよぉ~!」

「え?」

 

ディータは手を合わせながら恍惚とする。そんなディータに、流石のエズラも呆れた声を上げることしかできなかった。

 

 

 

「で、そのロン毛くんはドクターで、ちびっこいのが…」

「アタッカーとのことです」

 

同じ頃浴場では、尋問が始まっていた。マグノがおやつを食べながら三人の役割を確認し、ブザムが補足する。そこに、

 

「ちょっと待て、俺は…」

 

ヒビキが訂正をかけようとしたが、その脇腹にバートの肘が入った。

 

「! テメ…っ!」

 

突然のことにヒビキは睨むが、バートはどこ吹く風とばかりに涼しい顔をしていた。

 

「敵のパワードスーツに乗り込むところをメイアが見たそうです」

「へぇ…」

「ちょ、ちょっと待」

 

再度口を差し挟もうとしたヒビキだったが、それは叶わなかった。突然通信が入ったからだ。

 

『何かが接近しています』

「男の援軍か?」

 

通信を受け取ったブザムが尋ねた。

 

『それが…』

『UFOです!』

 

ディータからのその一言にマグノとブザムの表情が厳しくなった。ディータがUFOと評したそれは、角ばった本体から手足のような触手を伸ばした、およそ形容のしがたい無機物だった。

 

『攻撃が始まりました!』

『エイリアン怒ってる、きゃあ!』

 

悲鳴と共に艦内を震動が襲い、艦内のところどころに亀裂が走った。

 

「今度は何だ?」

 

ヒビキの疑問に答える者は誰もなく、攻撃は激しさを増していく。震動が強くなり、マグノが尋問中に食べていたゼリーを落としてしまった。

 

「ああ、あたしのおやつ…」

「メイア」

『ドレッドで出ます』

「頼む。パルフェ、動かせるか?」

『ムリです、コントロールできません! かろうじてオートディフェンスが動いてるだけです!』

 

落ち込むマグノを尻目に、ブザムが矢継ぎ早に各所に連絡して状況を確認、指示を出す。

 

「バーネット、どこ?」

 

自分のドレッドに向かって走っているメイアが通信を開いた。その先で通信を取ったのは先ほどのバーネット。彼女はドレッドのパイロットととしてはかなりの腕前を持つ戦闘の中核を任せられる人材なのだが、

 

『パイウェイに閉じ込められて出られませ~ん』

 

しとどに涙を流してそう返すことしかできなかった。今もまだ、ポッドに閉じ込められて出ることができなかったのだ。

 

「はぁ!?」

 

隣で並走していたジュラが全くもうとばかりに額を抑える。メイアも勿論そんな感情はあるのだろうが、それを表面に出すこともなく違う人物へと回線を開いた。

 

「ガスコさん、そっちは?」

『ペークシスに呑まれて、ドレッドは出られないよ。悪いけど、ウチらも上に移るわ』

「わかった」

『後ね…ガスコじゃないよ、ガスコーニュ!』

 

またも自分の呼称を訂正したガスコーニュ。しかし、そのときにはもうメイアはまた違う回線を開いていた。

 

「ディータ、どこ?」

『プラットホームに向かってますー』

 

その返答を得たメイアが即座に通信を切った。程なく、メイアとジュラの二人は自分たちのドレッドのあるプラットホームに到着した。が、そこにある自分の物と思われるドレッドの姿に息を呑む。

 

「! これは…」

「これ、本当にウチらの?」

「わーおぅ」

 

少し遅れて到着したディータも驚きながら軽口のように茶々を入れた。だが、それを注意する余裕はメイアにもジュラにもない。

何故ならそこにあったドレッドは、自分たちが愛用していたものとは全く外見が変わっていたからだ。カラーリングなどには面影が見えるものの、その変貌した様に驚きを隠せなかった。だが、迷っている暇はない。敵の攻撃は今もなお続いているからだ。

 

「見た目ほどシステムは変わってないな…」

 

搭乗してコンソールを起動させ、シーケンスを実行させながらメイアが自機の状態を確認する。

 

「そっちは?」

『何とか飛べそう』

『ぜーったいパワーアップしてますって。もうドキドキ!』

「とにかく無茶はするな、いいな」

『ラジャー!』

 

ジュラとディータの機体も運用には問題なさそうな返事が二人から返ってきたため、メイアはプラットホームから発進した。その左右を固めるようにジュラとディータも発進する。

 

「わーん」

 

目の前に広がる、攻撃をしてくる正体不明の敵機に対してディータが自機のドレッドを操りながら悲鳴を上げる。

 

「ディータたちはピースフルレイスなのよぉ! 話を聞いてー!」

「っ! ディータ、相手は敵よ…って、あの子あんなに上手かったっけ?」

 

ディータの操縦に首を傾げるジュラ。しかし、それは気のせいではなかった。

 

「なんだ、このレスポンス…」

 

メイアもコックピットで思わず呟いていた。先ほどまで自分が乗っていたものと比較しても、間違いなく反応速度や加速限界などのスペックが増しているからだ。

 

『確かに未知の敵だ、男じゃない』

『わかりました、あいつらは悪い宇宙人です!』

『こいつは…』

 

この状況下でもある意味平常運転のディータにジュラも呆れる他なかった。そうしている間にもこの正体不明の敵は次々に湧いて出てくる。クルミのような形状の母艦と思われるものから正方形の立方体が吐き出され、それが瞬時にバラバラになって先ほどの小型の敵になって襲い掛かってくるのだ。

 

「なんだ、あのシステムは。本当にエイリアンだというのか!?」

 

メイアが敵を睨むが、その問いに答えてくれる者は当然誰もいなかった。そんな状況下、男たち三人の扱いも変化しようとしていた。

 

 

 

「まだまだ安定しそうにないな。敵の攻撃がこの変動を上回ったときが、我々の最期というわけか…」

 

格納庫へ向かう途上、ヒビキを連行しているブザムが艦内の状況を確認しながらそう呟いた。尋問中の攻撃でヒビキたちを連行した女性の隊員の一人が崩れた瓦礫の下敷きとなって怪我を負った。その治療にドゥエロが動き出し、そのことと現状を分析したバートがマグノに停戦と協力を持ちかけた。その結果として捕虜扱いではあるがドゥエロは医者、バートは操舵士、そしてヒビキはアタッカーとしての役割を割り当てられたのだった。と、

 

「なあ」

 

ヒビキが徐に口を開く。

 

「何だ?」

「何となく言い出せないままきちまったんだけど…」

 

振り返ったブザムに、ヒビキが気まずそうな表情でそう呟いた。そして、

 

「白状するよ。実は俺、蛮型の搭乗員でもなんでもねえ。ただの部品の機械工なんだ。騒動の最中に取説も失くしちまって」

 

己の立場を正直に告白したのだった。

 

「ほぉ…では何故ここにいる?」

「それが、俺にもわかんなくて…。ただ、ちょいと下らねえ挑発に乗っちまって…。蛮型をかっぱらってやろうなんて…ったく、冷静に考えりゃ「データが間違っていたようだな」」

 

ヒビキが全てを言い終わる前に、ブザムが無理やりその言葉を遮った。

 

「男とは誇り高き種族と聞いていたが、まさか、こんなに無様な生き物だったとは」

「!」

 

そのブザムの言葉に、ヒビキが目を見開いた。

 

「理由はどうあれ、お前は自分の誇りのために…いや、己の証を立てるためにここへ来たのではないのか?」

「……」

 

ブザムに諭され、ヒビキの瞳孔の動きが大小を繰り返す。

 

「男も女も関係ない。今この状況下で一人の人間として、一つの生命として、この危機を乗り越えようと必死に戦う者たちがいる中で、お前は身を縮めて最後のときをただ待つというのか? この期に及んで何を繕う、何を誤魔化せるというのだ」

「……」

「どんなに無様だろうが、どんなに醜かろうが、目の前の障壁に怯えていても何も変わらない…変われないまま終わるんだ。そうではないか?」

「でも…」

 

ヒビキの手が震え、その拳が固く握り込まれる。

 

「わかんねえんだよ…自分でも、どうしたらいいのか」

「…余計なことを言ったな。ブリッジへ行くぞ」

 

地に膝を着いてしまったヒビキの脇をすり抜けて、ブザムが自分以外にヒビキを連行している隊員にそう伝えた。

 

「でも」

「心配ない。この男にはもう逃げ場などないさ。そして、我々にもな」

 

ヒビキを一瞥してそう言い残すと、ブザムは隊員を引き連れてブリッジへと向かった。

 

 

 

「何これ?」

 

そのブリッジでは、予想もしなかった光景にバートが顔を引きつらせながら呟いていた。だがそんな感想を抱くのも仕方ない。ブリッジは艦の前方に突き出す形に変形し、眼下には植物が生い茂っていたからだ。

 

「ブリッジがここまではみ出しちまったのさ」

「すごいピョロ」

「さあ、腕前を見せとくれ」

 

マグノがバートの背中を押した。

 

「だあぁ…」

 

情けない声を上げながらバートが真っ直ぐ進む。はみ出したブリッジのその先端部分は中心部分が青く光っていた。

 

「何だいこりゃ?」

 

覗き込んでみるもののさっぱりわからないバート。それもそのはずで先ほどは十八番の口八丁でマグノを説得したのだ。つまりハッタリを咬ましたのである。それによって当座の身の安全は保障されたものの、それと引き換えに己の領分での労働力を提供することになるわけだが、実は操舵士でもなんでもないバートには当然、見ても何もわかるわけもない。あるいは融合前のイカヅチだったら何かしらわかったかもしれないが、見たことない状態に変化しているこの状態では何もわからないのは必然のことだった。

 

「どうした? まさかわからないとでも?」

 

だが、マグノがそれを許すわけもない。後ろからプレッシャーをかける。

 

「はは…何を仰います、これはわが軍の秘密兵器でして…」

 

冷や汗をかき、顔を引きつらせながらバートがおっかなびっくり中心部分に近づいた。

 

「ほほほら、ここをこうやって…」

 

とりあえず警戒するようにその中心部分に足を伸ばしてツンツンと振れる。と、それをスイッチとしたかのように青い光が形を成して伸び、バートをそのままその中に引きずり込んだのだった。

 

「うぇ! ちょ! わあああああっ!」

「おやま、すんごい秘密兵器だね」

「あいつわかってないピョロ」

 

光に呑み込まれたバートに、マグノとナビロボは目を丸くするしかなかった。で、その呑み込まれたバートはというと、

 

「へっ? いっ? わわわーっ!」

 

自分の周りを敵やドレッドが飛び交っている視点に切り替わり、情けない悲鳴を上げている。そして何故だが一糸纏わぬ素っ裸な状態にもなっていた。青い光に呑み込まれたため周囲に人はいないので、その全裸姿を見られることはなかったのは不幸中の幸いとも言えるが。

 

「何じゃこりゃーっ!」

 

だが当人としては、想定の範囲を超えたこの状況はパニック以外の何物でもない。

 

「うわーっ! ひーっ!」

 

防御行動として反射的に自分の顔の前に腕をクロスさせて逃げるように顔を背けた。すると不思議なことが起こった。その行為をトレースしたかのように艦が動いたのだった。バートの行動をトレースしたかのような挙動のためその挙動は機械的なものではなく、実に人間臭いものだった。当然、その挙動は艦内のクルーにも影響を与える。

 

「えっ!」

「きゃっ!」

「おや、動いたよ」

 

突然の挙動にブリッジクルーが戸惑う中、とにもかくにも今までうんともすんとも言わなかったこの艦が動いたことにマグノは驚きの声を上げたのだった。その頃、

 

 

 

「やはり動かないか…」

 

医務室と思われる場所に到着したドゥエロが負傷した女性の隊員の処置をしようとシステムに電源を入れる。が、システムは起動しない。

 

「では私のやり方でやるしかないな…」

「! パイ、どこ、パイーっ!」

 

負傷した女の隊員を見下ろしながら嬉しそうに腕をまくったドゥエロに危機感を感じたもう一人の女性の隊員が慌ててパイウェイに通信を入れた。そのパイウェイはと言うと、

 

「もー! 怪我するの禁止ー!」

 

大量の怪我人にキレ気味に怒鳴っていたのだった。

 

 

 

「うえぇ!? ちょっと、くんな!」

 

ブリッジに呑み込まれたバートが情けない声を上げながら自分に向かってきている(ように見える)謎の敵に向かって手を払う。すると、そのバートの意思を忠実に読み取ったかのように融合艦が発進しだした。だが当然のようにその後を敵は追撃してくる。

 

「敵本体、追ってきます」

「間にメイアたちが入って援護してますが、効果ありません」

「逃げ切れそうですか?」

 

ブリッジに到着したブザムが戦況を尋ねる。

 

「さあねえ、全く見当もつかない」

 

マグノが正直なところを話した直後に艦内をまた震動が襲った。

 

「左舷エンジン被弾! シールドが持ちません!」

「立て直そうにもこうテンパってちゃ…」

 

さてどうしたものかとマグノが頭を捻っていると、

 

『おい、聞こえるか』

 

不意に通信が入った。その先にいるのはヒビキである。そして、

 

『こいつを外してくれ。これじゃ身動きとれねえ』

 

そう訴える。

 

「どういうことだい」

「お任せください」

 

怪訝な表情をしたマグノだったが、状況がわかっているブザムは不敵な笑みを浮かべた。

 

「なんのつもりだ」

『決まってんだろ、俺も戦うんだよ』

「戦う? お前が?」

 

揶揄するようにブザムが言う。

 

『確かに俺はみっともねえよ、カッコ悪いよ。ただ、もうそんな自分にうんざりしたんだ!』

「男の意地か? それとも開き直りか?」

『違う! 少なくとも今はもう違う! 強くなるために、そして、俺が俺である証を立てるためにだ!』

 

そのヒビキの決意を聞いたブザムは満足そうに微笑むとヒビキの手錠を解除した。

 

「よし! いっちょやったるか!」

 

拘束を解かれたヒビキの表情は今まで見たことがないほど明るく晴れ晴れとしたものだった。他方で状況は変わらず、男と女が乗った融合艦は敵艦から逃げるものの敵艦並びに敵機は振り切られることなく執拗に追撃する。

 

『敵のレスポンスが上がってきてます。我々だけでは防御が精一杯です』

 

現状から状況を判断してメイアがブリッジに報告する。

 

「今援軍が行ったよ、何しでかすかわかんない奴がね」

『援軍?』

 

マグノのその言葉にメイアは首を傾げた。

 

 

 

「待たせたな、相ぼ…」

 

同時刻、その援軍であるヒビキはプラットホームに辿り着いていた。しかしそこで驚きに一瞬固まる。そこにあった自分の蛮型はディータたち三人のドレッドと同じく外観が変形していたからだ。

 

「相棒…確かにおめえだよな…」

 

変貌を遂げた自機を撫でさすりながら語り掛けるヒビキ。見覚えのある傷が入っているためにこの蛮型が自機であることに間違いはない。だが、戸惑っていたのはここまでだった。

 

「おめえも変わったんか…じゃ、俺も変わんなきゃな!」

 

今まで良く見せていたふてぶてしい表情に戻ると、ヒビキは勇んで蛮型に乗り込んだ。

 

「チクショウ、このまんまじゃ終わんねえぞ。動かし方知らなくても、気合で動かしたらぁ!」

 

機械工とは思えない無茶苦茶なことを言っているが、そのヒビキの雄叫びに呼応するかのように突如として蛮型に火が入った。そして、次々と起動シーケンスが起動して蛮型が立ち上がる。

 

「何だよおい、いけんじゃねえか! 今までのツケ、一気に返させてもらうぜ!」

 

そしてヒビキは宇宙へと発進したのだった。誰でもない、己の意思で。

 

「う、うお、うおおおおおっ!」

 

が、意気込みは勇ましくてもそこは実際は戦闘要員ではない機械工。現段階ではかろうじて操縦ができる程度の技量でしかなかった。敵を撃墜などできるわけもなく、逆にすぐに取りつかれてしまう。

 

「よるな、あっちいけ! この! このっ!」

「何よあれ…」

「リーダー見ました? 絶対あの宇宙人さんですよ!」

「あれが…援軍?」

 

三者三様の感想を抱くドレッドのパイロットたち。まあ仕方のないことだと言えるが。

 

「ヤロー、好き放題やりやがって…」

 

対してヒビキは宇宙に放り出されたことと初の戦闘で目を回していたが、それを振り払うように顔を激しく左右に振った。

 

「よっしゃ、だんだん慣れてきた! 喰らえ、電光飛翔拳!」

 

大きく振りかぶって拳打を打ち込む。が、ただの拳打が虚しく空を切るだけだった。そして四方から敵の攻撃を受ける。

 

『あぁ…』

 

その様に、ジュラとディータが絶句しながら硬直する。援軍がこれでは、こうなるのも仕方ないと言えるが。

 

「てな武器はねえ。…なら、こいつだ!」

 

ヒビキは今度は蛮型に備え付けのブレード…通称二十徳ソードを抜いた。そして敵機を斬り捨てながら敵艦へと迫る。

 

「敵の本体が動きを止めました」

「ヴァンガード、向かっていきます!」

「ありゃあ、長生きしそうにないねぇ…」

「はい。でももしあの男が生き抜いたときは、我々の常識がひっくり返されるときかもしれません」

 

ブザムが不敵に笑う。再びそこに通信が入ったのはその直後だった。

 

「おらおらおら!」

「すごいすごい!」

 

二十徳ソードが折れてしまったがお構いなしに猪突猛進で敵艦へ突っ込むヒビキ。その姿に歓喜の声を上げながらディータがヒビキの後を追った。

 

『ディータ、戻れ』

 

メイアから退却命令が出る。が、

 

「心配ないです。あの宇宙人さんはきっとやってくれる。ディータ、わかるんです!」

『ディータ!』

 

ディータは聞き入れずその後を追った。

 

「俺は前に出るんだ。誰にも邪魔はさせない!」

 

そうしている間にもヒビキは着実に敵艦との距離を詰めていく。そしてその後を追うディータ。

 

「ディータ!」

 

メイアが再度叱責するもののディータは止まらない。そうこうしているうちに敵艦がまた口を開いた。その餌食とするかのように敵機がヒビキに取り付いてその進行を妨げた。

 

「後少し、もう少しで届く。力が欲しい! もう一歩踏み出せるだけの力が!」

「宇宙人さん!」

「俺は負けねぇ!」

 

直後、ヒビキのいた地点で爆発が起こった。そして、その爆発にディータの機体も巻き込まれる。

 

「っ!」

「あの、バカ…」

 

その光景にメイアは表情を歪め、ジュラはそう吐き捨てた。

 

「奇跡は…起きなかったようだね」

「クルーの脱出は…」

 

ブリッジのマグノとブザムもその光景を見届けてやりきれない感じで声を上げた。が、直後にその光景を見ていた者たちの度肝を抜く事態が発生する。爆発の中から腕が現れたのだ。当然蛮型の腕と思われるが、爆発が収まった後にその場に現れたのは蛮型とは似ても似つかぬ人型の起動兵器だった。

 

「あれは」

「何?」

「あれも、男の秘密兵器なのかい!?」

「あれが…これが奇跡なのか」

 

周囲が呆然とする中、その人型起動兵器は敵艦に向かって突っ込む。先ほど蛮型…ヴァンガードを押さえた敵機だったが、それも叶わずに弾き飛ばされた。それもそのはずで、この人型起動兵器はヴァンガードよりも二回りから三回りほど大きいからだ。その威容に敵艦は何かを感じ取ったのか口を閉じる。が、その人型起動兵器はその口を無理やりこじ開けると、背部に収納していたキャノン砲を展開させて両肩にセットした。そしてそれを敵艦の内部に向けて発射する。キャノン砲は敵艦をいともたやすく貫き、間を置かずして爆発炎上したのだった。

 

 

 

(届いた…へへ、やっと届い…えっ!?」

 

夢現だったヒビキがゆっくりと目を開けたが直後に固まってしまう。何故ならヒビキは女性の手の上に自分の手を重ねていたからだ。もちろん、その女性はディータだった。

 

「ええっ? はあっ? ど、どうなってんだ、こりゃ!?」

 

状況が飲み込めずに忙しなく周囲を確認するヒビキ。

 

「宇宙人さんって、すごいんだから…」

 

そのディータはと言うと、未だ気を失っているが、非常に満足そうな表情をしていたのだった。

 

「これが、俺の証なのか…?」

 

まさかこんなことになるとは思わず、ヒビキが呆然とする。が、その状況に打ちひしがれている直後だった。

 

『危ない!』

 

不意に通信が入る。条件反射的に周囲を確認すると、何とそう遠くない場所に敵艦がもう一隻あるのを見つけてしまった。

 

「いっ!?」

 

一難去ってまた一難、何とかヒビキが立ち向かおうとするが、この人型起動兵器は先ほどまでと違ってまるで動かなかった。

 

「な、何でだ!? おい、起きろ!」

 

状況を打開すべくディータを起こそうとするヒビキ。が、

 

「う~ん…ムニャムニャ…」

 

ディータは相変わらず幸せな夢の中なのか、満足そうに気を失っているだけだった。

 

「ディータ!」

「ちょっと、それは反則じゃない!」

 

慌ててメイアとジュラがヒビキたちの許へ向かう。が、そのときにはもう敵艦が口を開いていた。

 

(ッ! ダメだ、やられる!)

 

己の死を覚悟したヒビキ。だがそこで、もう一度奇跡が起こった。口を開いた敵艦に一筋の縦線が入ったのだ。そしてその直後、敵艦はその縦線にそって真っ二つに両断されたのであった。

 

「えっ!?」

「なっ!?」

「ウソ!?」

 

両断された敵艦は先ほどと同じく爆発炎上した。それを呆然と見つめるヒビキたちとクルーたち。そして爆発炎上が収まった後にその場に現れたのは、宇宙の闇に溶けてしまいそうな漆黒のカラーリングの人型起動兵器だった。

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