機動武闘伝Gガンダムヴァンドレッド   作: ノーリ

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おはようございます。どうも、ご無沙汰しておりました。

ようやくプライベートも落ち着いてきましたので、また連載を再開させたいと思います。
…とは言っても、またプライベートが忙しくなってお休みを取ることになる事態になるかもしれません。そうなったらまたお知らせしますが、それまではまた頑張ります。

さて久しぶりの今回は原作第五話の前半部分ですね。一応先にお知らせしておきますが、Second Stageまで書く予定ですのでまだまだ先は長いですが、それも含めましてお付き合いいただければと思います。

では、どうぞ。


NO.08 変化

「この星は…」

「死んじまってるようだね」

 

作戦室。航行中にとある惑星に近接したニル・ヴァーナ。その惑星の全景を見てマグノとブザムが意見交換をしていた。マグノの言葉通り、惑星は一面の黄土色に覆われていて、生命体の確認は難しそうな状態である。

 

「お頭、降りましょう。カリトリに関する、何らかの情報が得られるかもしれません」

 

ブザムがそう進言した。ブザム自信も十中八九得られるものはないと思っているのだろうが、それでももしかしたら何かあるかもしれない。そんな一縷の望みを捨てきれないのであろう。

 

「ふーむ…」

 

その進言を受けたマグノが少し唸り、

 

「BC、あんたは心配ないと思うが、他の子たちがねぇ…」

 

そう、歯切れの悪い返答をした。この場での了承を得られなかったが、ブザムは不満を見せることはない。マグノの気持ちも痛いほどわかるのだろう。ブザムはそのまま振り返ると再びモニターに目を移した。そこに映る惑星の全景は不気味に静まり返っていた。

 

 

 

 

 

「ふむ…」

 

格納庫。ガンダムシュピーゲル内にてシュバルツが各部のチェックをしている。この世界で成り行きに巻き込まれて戦うことになり、今まで二回ほど戦闘に参加した。一度目は最後の一太刀を浴びせただけで、二度目は防衛に回っていたこともあって掠り傷一つついていない。そのため、外見上に何ら変わりはない。が、いつまでもこんな状況が続くという保証もない。それ故に、シュバルツは早めに確認しておきたかったのだ。愛機であるこのガンダムシュピーゲル、そして、その機体を構成しているはずの“アレ”について。

 

「……」

 

コンソールを操作し、内部のシステムを立ち上げ、ログを確認する。膨大な量のログに目を走らせ、それを理解した直後、眉根を寄せた難しい顔で機体の内部に目を向けたのだった。

 

(どういう…ことだ?)

 

結果を受けたシュバルツの頭に真っ先に浮かんだのはこの一言であった。結論から言えばこのガンダムシュピーゲルを構成しているのはDG細胞である。それは間違いない。だが、ただのDG細胞ではない。

もしこの機体の構成要素が従来のDG細胞だったら、とっくの昔にこの艦…ニル・ヴァーナは飲み込まれているだろう。そして、クルーも全員DG細胞の支配下に置かれているはずである。だが、今のこの機体にDG細胞のそういった特徴は確認できない。

無論、DG細胞の最大の機能である三大理論…自己再生、自己増殖、自己進化自体は十全に正常に機能している。だが、言ってみればそれだけである。

 

(これではまるで…父さんと母さんが最初に目指したあの形…アルティメットガンダムそのものではないか。いや、喜ぶべきことではあるのだが…。だが、何故?)

 

シュバルツの疑問は深まる。そして、その深度を増している更なる問題があった。違うのだ、構成要素が。自分の知っているUG細胞、そして取り込まれたDG細胞。この二つは本来ベクトルが真反対なだけで機能は同じものだった。だが、今のこの機体を構成している構成要素の成分は、この二つとは微妙に異なっていた。

 

(何かを取り込んだ? あるいは何かと融合した?)

 

腕を組んでシュバルツが考える。だが、これはあくまでも仮説にすぎない。加えてこの仮説が正しいとしても、次にはいつどこで、何をという疑問が残る。そもそも、仮説が正しいという保証もない。

 

(現状ではわからんことだらけということか…)

 

そして導いた結論に、シュバルツは溜め息をつくしかなかった。判断するにも結論を導くにも、現状では材料が足りなすぎるのだ。わからないものはわからないのだから仕方ないが、それでもとりあえず、もう一度ぐらいは全体的に大掛かりな機体確認をするべきだなとシュバルツは思っていた。しかし、そうとも言えない事情もある。例えば、補給の問題だ。

これまでの戦闘は弾薬を使わずに内蔵のブレードや徒手空拳で賄ってきたが、この先もそれだけで捌き切れるとは限らない。それに、機体を動かすには推進剤や燃料とかのエネルギーも当然必要になり、足りなければ補給しなければならない。だがこの機体は三大理論によって、余程短時間で急激に消費しない限りは補給など必要ない仕様となっている。補給不要の機体というのは歓迎されそうなものだが、反面、当然にして疑問も沸いてくる面々がいるはずだ。どうしてろくに補給も受けていないのにいつまでも動けるんだ、戦えるんだといった、当然の疑問が。例えばそうなったときにどう対処するか。

 

(少し、考えておいた方がいいかもしれんな)

 

そんな暇があればのことだが、と心中で付け足し、シュバルツはシステムをダウンさせた。そしてガンダムシュピーゲルから降りる。直後、ドシンという震動音がシュバルツの耳に入ってきた。

 

「ん?」

 

音源に目を向ける。そこには、何故か高所作業用のケージで仰向けになっているヒビキと、その頭上の辺りで立っているディータの姿があった。体勢的に、ヒビキがディータのスカートの中を覗いているようにも見える。

 

(相変わらず…か)

 

変わらないその様子に苦笑しながら、二人に気付かれないようにシュバルツはその場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

医務室。あの後、ディータと別れた(振り切った?)ヒビキがここに駆け込んでいた。前回の襲撃時からの疲労がまだ糸を引いているのか、目の下にクマができ、ゲッソリとした表情でやつれている。褌一丁の姿となっているヒビキの身体の各所には心電図の電極が付けられていた。

 

「ふむ…」

 

ドゥエロがヒビキの身体の状態を確認するために太ももを揉んだり手を滑らせる。疲労で従来より反応が鈍ったが、それに気づいたヒビキが慌てて身体を離した。

 

「だああっ! な、何しやがんだよ!」

「診療だ」

「へ、変なとこ触んなよ!」

 

ヒビキが半ば顔を赤らめながらドゥエロを睨んだ。が、そんなヒビキに構うことなくドゥエロは距離を詰める。

 

「随分消耗しているな」

 

ドゥエロのその一言に、ヒビキははあっと大きく溜め息を一つ吐いた。

 

「そりゃよ、おめぇ、女抱えてドンパチしてりゃ疲れんだろが。俺が護ってんだ」

「ほぉ…」

 

ヒビキの最後の一言に、ドゥエロが興味深そうに呟いた。

 

「お前、女を護ってたのか?」

「つ、つーかよ、俺の方が強いし、女は…弱いし? だから…」

「…女の話はよそう」

 

ヒビキらしくなく語気をすぼませ、両手の人差し指の先と先をツンツンとさせながらモジモジ照れるその様子に、少し呆れながらドゥエロがそう言った。

 

「しかし、こと前回の戦いで言えば護っていたのはお前よりもシュバルツのようだったがな」

「わ、わかってるよ、そのぐらい…」

(ほぉ…)

 

指摘されたことに対してまた噛みついてくるかと思ったドゥエロだったが、意外にもヒビキはすんなりとそのことを認めた。

 

(相手が男だからか、それとも自分ではまだ足元にも及ばないと自覚しているからか…)

 

なんにせよ、ヒビキの見せる反応としては珍しいものであると言っていい。だが、そんなことは勿論表に出さずにドゥエロが診療を再開した。と、

 

「何これ? ゲーム?」

 

パイウェイがひょいっと顔を出して心電図を指差しながら尋ねる。

 

「心電図を知らんのか?」

「いいでしょ、別に」

 

バカにされたと思ったのか、パイウェイがムッとした表情になった。子供がそんな表情をしても怖さは微塵もないのだが。

 

「内臓疾患なら、ジャグジーでも治るもん!」

「ジャグ…ジー…?」

 

耳慣れない言葉に、今度はドゥエロが首を捻った。同時刻、リラックスルームにて。バスタオルを身体に巻いたジュラが複数のエステティシャンによって全身に施術を受けていた。

 

「戦闘って、髪痛むのよね」

「ご安心を。ジュラのビジュアルは、あたしが護るから」

「よろしくね。髪決まらないと、戦う意欲失せるのよね」

 

エステクルーのチーフが頷き頭部へと移動する。そして、何故か今ここにいるピョロがん? といった表情でジュラを覗き込んだ。と、

 

「リーダー、それ以上痩せたいの?」

 

ジュラが顔を横に向けて泡風呂…ジャグジーに漬かっているメイアに声をかけた。

 

「余計な脂肪は戦闘の妨げになる」

「胸なくなっちゃうわよ?」

「ふ、心配はいらん。自己管理はできているよ」

「んー? 人間ってわからないピョロ」

 

二人のやり取りにピョロが首を傾げるような仕草をした。またその同時刻、食堂ではディータが目を皿のようにしてベルト上を流れてくるメニューに目を向けている。そこに、バーネットが通りかかって自分の目の前に流れてきたステーキを取ろうとした。が。

 

「いっただきー!」

 

目の前でディータがそのステーキをかっさらう。目の前で獲物をさらわれたバーネットが、なあぁ!? といった表情をし、

 

「ディータ! それカロリー高いわよ!」

 

と、脅しなのか再考を促すのかわからない発言をしてきた。が、

 

「いーのいーの。栄養足りないって言ってたもん♪」

 

ディータは一切気にすることなく、はぁ? といった感じで首を捻っているバーネットを置き去りにしてそのまま立ち去ったのだった。

 

 

 

 

 

「惑星上に熱源反応」

「砂嵐がすごくてよくわからないんですが、人工物らしき施設の反応があります」

「降りましょう。何か、見つかるかもしれません」

 

ブリッジ。オペレーターたちの報告を受けたブザムが、再度マグノに提案した。

 

「ふぅ…ウチの台所も火の車だしねぇ…。じゃあ、海賊本来のやり方でいくかね?」

「ありがとうございます。気象観測開始。降下するタイミングを、割り出すんだ」

「了解」

 

提案した方針が今回は採択され、ブザムがブリッジクルーに命令した。続けざま、今度は全艦放送を開く。

 

『パイロット、並びに各クルーに告ぐ。惑星降下に伴い、各員、直ちにヴァンガードのシミュレーションを開始せよ』

「何ぃ!? 女が蛮型に乗るってことかぁ!?」

 

その内容にもっとも強烈な反応を示したのは当然ヒビキだった。そして、そのヒビキを追っかけているディータはというと、ヒビキのために更なる食料をキッチンからくすねようとしたところでタイミング悪く(良く?)その放送を聞くことになって鼓動をバクバクさせていたりするのだが。

 

 

 

「ったく、いくらドレッドじゃ星に降りられないからって、よりによって男のヴァンガードに乗れだなんて…」

 

ブザムの指令を受け、格納庫で腰に手を当ててボヤいているのはバーネット。今はまだメカニッククルーによる調整中のためパイロットは待機しているが、女性だからだろうか、カラーリングは派手派手で、お世辞にも趣味がいいとは言えないヴァンガードが何体かできていた。

 

「ジュラはなんだっていいな。華麗な合体さえできれば」

 

そう言いながら、ジュラは自分用にカラーリングされた赤いヴァンガードに目を向ける。ヒビキの乗っているものとはフォルムやデザインなど細部に違うところが見受けられるが、これはヒビキのものがペークシスに飲み込まれた特別型だからで、一般的なヴァンガードの形はむしろこちらだった。そこに、

 

「皆さ~ん」

 

バートの、いつも通りの軽薄な口調が響き渡った。

 

「質問があれば何なりと僕に聞いてくださいよ。士官学校時代には幾度となくこういった訓練を積み、いわば、蛮型における…どおおっ!」

「そんなところで一人で何してんの! もう、忙しいんだから邪魔しないでよ!」

 

得意満面で宣伝、あるいは媚を売っていたバートだが、その文句を最後まで言い終えることはできなかった。頭上から作業車のエレベーターが下りてきて、頭を強打したからである。そして当然誰にも気遣われることなく、作業を終えたメカニッククルーに文句を言われる始末であった。

 

「ふぅ…」

「やれやれ…」

「はぁ…」

 

メイア、ジュラ、バーネットの呆れとも軽蔑ともつかない溜め息が格納庫に響き渡る。そこに、格納庫の扉が開く音が聞こえてきた。

 

『!』

 

その音に何気なく顔を向けた三人がそこにいた人物を見て固まる。そして、メイアは明確な敵意を、ジュラは気まずさまじりの戸惑いを、バーネットは持て余し気味の逡巡をといった、三者三様の思惑をそこにいた人物…シュバルツに向けたのだった。

 

「何の用だ」

 

メイアが真っ先に口を開いた。

 

「ご挨拶だな」

 

が、シュバルツはその敵意を柳に風と受け流して飄々と答える。その態度がまたメイアを苛立たせるが、シュバルツはやはり気にも留めない。

 

「次は降下作戦とのことだからな。機体の調整だ」

「あら、やってなかったんだ」

 

珍しいといった顔でジュラがシュバルツに目を向ける。

 

「砂嵐が吹き荒れているとのことだったからな。機動兵器のような精密機械には砂がどれほどの難敵なのか、お前たちも乗り手ならばわからないわけではないだろう。念には念を入れてというやつだ」

「ま、それももっともね」

 

シュバルツの返答を受け頷くバーネット。その二人を押しのけ、

 

「お前の力など不要だ!」

 

メイアがそうハッキリと言い切った。が、

 

「それを判断するのはお前ではないな」

 

それに対してシュバルツは取り合いもしない。

 

「文句があるのならば上に直談判するのだな」

「うるさい! お前の力など不要だ! 引っ込んでいろ!」

 

いいようにあしらわれている(少なくともメイアはそう思っている)状況に、苛立たし気にシュバルツに噛みつくメイア。

 

「ちょっとメイア」

「やめなさいって」

 

ジュラとバーネットは左右からそのメイアを窘めるが、メイアは二人の言葉に耳を貸す様子はない。

 

(やれやれ…)

 

表情に出すことはなかったが、内心で溜め息をつきながらシュバルツはそんなメイアを黙ってジッと見ていた。タラークとメジェールの関係は理解したため、この状況下でも男の扱いがいいとは言えないものであるのもまた理解しているが、それを度外視してもメイアの態度はいただけたものではない。

 

(だが、ただの反抗的な態度というよりは、これは私個人に含むところがある感じだな)

 

同じ起動兵器のパイロットであるヒビキに対しての関係も良くはないが、それに輪をかけてメイアはシュバルツを敵視している。自分たちが男であるということ以上に、シュバルツに対してそうさせる何かがメイアの中にあるのだろうか。

 

(とは言え、それを何も吐き出さないくせに敵意だけ剥き出しにされても困るし、いい加減うんざりだ。少し灸を据えてやるとするか)

 

これまでの態度に少し業を煮やしたというのもあるが、それでもシュバルツには珍しく悪戯を思いつくと、メイアから一度視線を外す。そして、ほんの少しだけ闘気を身体に纏わせると、それを視線に乗せてメイアを見据え直した。

 

『!』

 

その、変化した雰囲気にメイアだけでなく、両隣のジュラとバーネットもゾクッと背筋を震わせる。

 

(な…!)

(な、何よ、これ…)

(身体が…震える?)

 

ジュラとバーネットは幸いにして中てられただけだったからまだよかったのだが、その闘気を真正面から受け止めることになったメイアは全身で冷や汗を掻きながら急速に口の中が渇くのを感じていた。唾を飲み込むものの、まるで口内が潤わない。そして、慌てて右手で左手を押さえつけた。震えが止まらないのだ。

 

(ふ)

 

三人の変化を見て取ったシュバルツが纏っていた闘気を解放した。それによって空気が正常に戻り、プレッシャーに押し潰されそうだった三人が酸素を求めて荒い呼吸を繰り返す。シュバルツが標的にしたのはメイアだけだったが、巻き込まれた形になったジュラとバーネットにとってはとんだ災難と言えた。と、

 

「あ、あなた…」

「一体、何を…」

 

恨みがましい表情になってジュラとバーネットがシュバルツに視線を向ける。それに対し、

 

「吠えるのは結構だが、闇雲に吠えるのは止めてもらおうか。こちらにとってはいい迷惑だ。聞き入れるならよし、さもなくば…」

 

そう言うと、直後、シュバルツは一瞬でメイアの目の前に移動してきた。その目にも止まらぬ早業にジュラとバーネットが驚いて息を呑む。そんな中、一人シュバルツの闘気を真正面から受け止めた影響で顔を伏せていたメイアがようやく顔を上げると、その直後に目の前にいたシュバルツに人差し指を己の額に当てられる。それはまるで、銃口を額に押し当てられたかのようだった。

 

「!」

 

悪寒を感じたメイアが行動を起こそうとしたが、その前にシュバルツがその押し当てた人差し指でメイアの額を軽くツンと押した。直後、メイアはそれがスイッチになったかのように糸の切れた操り人形の如くその場にへたり込んでしまう。

 

「め、メイア…」

「大丈夫…?」

 

ジュラとバーネットが膝を折ってメイアを気遣う。余波で済んだ二人だからメイアよりはまだ余裕があったが、それでも平気なわけではない。それでも気遣うあたりは大した友情と結束力である。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

荒く呼吸を繰り返すメイアを引き続き気遣うジュラ。それに対し、バーネットは自分たちをこのような状態にしたシュバルツに文句を言おうと顔を上げたが、

 

「え…?」

 

そこにはもう、シュバルツの姿はなかったのだった。

 

 

 

そんなことがあったとは知らない格納庫の他の一角。慌てた様子でそこに入ってきたのはヒビキだった。

 

「でっ! がああっ!?」

 

そして目に入ってきた光景に表情を愕然とさせる。そこには、ケージに乗って自分のヴァンガードの目の前に仁王立ちするディータの姿があったからだ。何に使うかわからないが銃器のようなものを持っており、それがヒビキの嫌な予感に拍車をかけた。

 

「宇宙人さんのも、キレイキレイにしてあげるね♪」

 

そして、その銃器らしきものを装填する。その発言内容からどうやら、銃器型の放水用器具のようだった。だが、ヒビキがそれを良しとするわけはない。

 

「だああっ! 待て!」

 

慌ててディータに駆け寄る。そして、ディータが引き金を引いたのとヒビキが己のヴァンガードを身を挺してかばったのはほぼ同タイミングだった。結果、ヒビキはシャワーをたっぷりと浴びることになる。一つ違ったのは、そこから出てきたのは水ではなくピンク色のペンキだったことだ。

 

「間に合った…」

 

身体の左半分をピンクに染めながらズルズルとずり落ちていくヒビキ。ヒビキ自身は間に合ったと言っているが、実際はヒビキが身体で受け止めた部分だけがまるで型抜きでもしたかのように本来のカラーリングを保っていたという、なんとも不格好な形になってしまっていた。

 

「何しやがんだ、テメェ!」

 

某あ○ゅら男爵のように身体の中央でピンクと本来の色合いの二色になってしまったヒビキが当然のようにディータに文句を言った。が、

 

「ピンクの宇宙人さん、可愛~い♪」

 

と、ディータはまるでヒビキの怒気を気にする様子もなく目をキラキラさせている。そんなディータに怒りはあるものの、ヒビキはこいつ…と呆れながら絶句するしかなかったのだった。

 

 

 

 

 

「熱源反応があっても、生体反応が全然ない…」

「ねえ、これまさか例の…」

「カリトリってやつ?」

「観測を怠るな。嵐が止み次第、降下するぞ」

『了解』

 

ブリッジではこのような会話が交わされ、相変わらずデータ収集と降下のタイミングを計っている。そしてシミュレータールームでは、ドレッドのパイロットたち…女性陣がヴァンガードの操縦シミュレートを行っていた。

 

『このっ!』

『やだっ』

『きゃああああっ!』

 

シミュレーター内に悲鳴が響く。同じ起動兵器とは言え、元が人型起動兵器のヴァンガードと戦闘機のドレッドではやはり勝手が違うらしく悪戦苦闘。攻撃は空を切り、バランスを崩し、機体同士が接触するといった何ともお粗末な結果を見せる羽目になっていた。

 

『も~いや! この子ってば、ちょっとはエレガントに振る舞えないのかしら!?』

 

やはりというか予想通りというか一番最初に癇癪を起こしたのはジュラだった。シュバルツの闘気に中てられて少しの間調子を崩していたが、今はもうすっかり復調したようである。

 

『もう止めた』

 

そして、不機嫌な表情と口調のままシミュレーターのシステムを落とす。

 

「ああ~勝手に」

「うるさいの」

 

ピョロが窘めるが、ジュラはさっさとシミュレーターを後にする。

 

「私もブリッジに上がる必要があるな」

 

シミュレータールームのシステムエリアでシミュレーターの経過や結果を見たドゥエロがそう呟く。

 

「だから言ったろ。女なんかが蛮型動かせるわけねえんだよ」

 

ヒビキが頭の後ろで手を組み、呆れたような表情になって小ばかにした。そこに、

 

「口が過ぎるぞ」

 

そう言って、ヒビキを窘めたのはシュバルツだった。

 

「ああ?」

「初見で操縦系統もシステムも違う機体を手足のように操れるわけないだろう。お前とて、ドレッドのシミュレーターに乗ったらあれと同等か、あれ以下だろう」

「チッ」

「揶揄するのはいいが、その前に己を振り返ってからにするのだな」

「フン!」

 

面白くなさそうにヒビキがそっぽを向いた。それでも噛みつかない辺りはシュバルツの戦闘能力、技量の高さを目にしていることと、その言ってることが道理にかなっているからだ。今はどう逆立ちしても勝てっこないとわかっている上に、正論を言われては反論の余地はない。結果、出来るのはこうやって不貞腐れるだけだった。

 

(やれやれ…)

 

どうにも、性格に難のある連中が多い艦だなとシュバルツが思っていると、ドゥエロが何かに気付いてシミュレーターのメインシステムを覗き込んだ。そこには、肩で息をしているメイアの姿が映し出されている。

 

「ふむ…」

 

モニターに表示された各種数値を見ながら顎に手を当てて考えるドゥエロ。ピョロが何? と尋ねたが、それに返答することもなく、引き続きその数値とメイアの状態を確認した。そのメイアだが、直後に攻撃を食らってシミュレート終了になる。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

荒い呼吸を繰り返しながらガンと己の拳をシミュレーターの内壁に叩きつけるメイア。それだけならどこにでもありそうな光景だが、その状態は尋常ではなかった。全身から汗が噴き出し、瞳孔が開きっぱなしになっている。一目で正常ではないとわかるような状態だった。

 

『メジェールに医療特権はあるのか?』

 

それを察したかのように、シミュレート表示後の砂嵐状態のモニターにドゥエロの姿が表示された。

 

『タラークではこういう場合、医師の権限で出撃を差し止めることができる。同意するか?』

「ノーだ!」

『…ならば、視界を全方位に切り替えてみたまえ。少しは圧迫感が薄れるはずだ』

「放っておいてくれ。私は誰の力も借りない。危機を自力で乗り越えてみせる」

(……)

 

文句だけ聞けば立派だが、強がりにもなっていないのは明白だった。そして、二人のやり取りを聞くことになってしまったため、先ほどの格納庫での一件を思い出したシュバルツが複雑な表情になって眉を狭めたのだった。

 

「えっと…十特型刀剣の盾の使用法は、操縦者の意志に従い…」

 

そんな状況下でも、ある意味いつもと変わらずマイペースを貫くバートは今更ながらにヴァンガードのマニュアルを読んでいる。この様子を見ると、さっき格納庫で自信満々に喧伝していたことは本当かどうなのかという疑問も浮かんでくるのだが、幸か不幸か、そのバートに絡んでくるものは誰もいなかった。

 

「ふあ~ぁ…」

 

飽きたのか疲れが抜けないのか、ヒビキが大欠伸を掻きながら伸びをする。

 

「お、電光粒子砲と同時使用は…? お! 出来んじゃん!」

「バカか…」

 

相も変わらずマニュアルに噛り付いていたバートに対してそう呟くと、ヒビキは踵を返して歩き出した。

 

「あ?」

「一生やってろ」

 

バートに対して呆れた視線を向けていたヒビキがそう吐き捨てると、バートに向けていた顔を戻す。その直後、その顔が左右から柔らかく温かいものに包まれた。

 

「んぐっ!」

 

温かく柔らかいものに包まれただけでなく呼吸困難に陥ったヒビキの頭上から、

 

「いいこと? 次合体するのは、ジュラとだからね。そのつもりでいてちょうだい」

 

いつの間にここにやってきたのか、ジュラがヒビキを見下ろしながらそう言ったのだった。身長差から、ちょうどジュラの胸元がヒビキの顔の高さに収まる。そのため、ヒビキの顔を左右から包んだ柔らかく温かいものは言うに及ばずジュラの胸だった。

が、タラークとメジェールという関係性からかそのことをさして気にする様子もなく、言いたいことだけ言うとジュラはそのままその場を後にしたのだった。

 

「ぷはっ! …な、何だよ、ありゃ…」

 

ジュラの胸から解放されたヒビキが大きく息を吐く。今言ったその、『何だよ、ありゃ』の『ありゃ』の部分は、ジュラの胸のことか、ジュラの発言内容のことか、知るのはヒビキ本人だけだった。

 

 

 

「君の心拍数の急激な変化は、心因性のものらしいな。心当たりはあるのか?」

「心配だピョロー…」

 

シミュレータエリア内部。シミュレーターマシンから解放されたものの、マシンに突っ伏したまま変わらずに荒い呼吸を繰り返すメイアの許にドゥエロがピョロを伴ってやって来た。そして、メイアに尋ねる。

 

「フン、誤診も甚だしいな、ドクター。これは単なる過労だ」

 

頭から否定するメイア。シミュレーターから解放されたことで少し余裕が出てきたのか、そう言ってかたくなに認めない。もっとも、メイアのこの状態を目にして尚、それを信じる者は一人としていないだろう。

 

「ムキになるところを見ると、かなり重症だな」

「過労だと言っている!」

 

ドゥエロの指摘に再度反論するメイア。ドゥエロが冷静だからこそ、余計に反発したくなるのかもしれない。シミュレーターから身体を起こし立ち上がって歩き出したが、すぐにバランスを崩した。

慌ててその身体をドゥエロが支えるが、触るなとばかりにその手を弾く。

 

「余計な詮索は迷惑だ」

 

そしてキッとドゥエロを睨むと、そう言い残してシミュレータールームを後にする。その際に視界の端にシュバルツの姿を目に留めてしまい、メイアの表情は更に頑ななものになったのだった。

 

「ん~…どうして人間は無理ばかりするピョロ。わからないピョロ」

「だから面白い。そう思わんか?」

 

メイアの頑なな態度が理解できないピョロが思わず口に出した疑問に、自分なりの回答を示すドゥエロ。

 

「別に」

 

だが、その回答に機械のピョロが納得するはずもない。

 

「本能に逆らったり、欲望を抑えつけたり、そんな行動をとるのは人間だけだ。興味深い生き物じゃないか」

「あのね…えっとね…」

 

そのピョロを、更にドゥエロが自分の回答で諭す。それに対してどう返答していいかわからず、ピョロは機械らしくもなく言葉を詰まらせることしかできなかった。

 

「フ…」

 

そんなピョロに対して微笑を浮かべるとドゥエロが戻る。未だ先ほどのドゥエロの回答に対する答えが見つからずに納得できない感じでその後をついていくピョロ。

 

「シュバルツ」

 

だがドゥエロはそんなピョロは気にも留めず、シミュレータールームのシステムエリアに残っていたシュバルツに声をかけた。

 

「ん?」

 

シュバルツが返事を返す。今までその必要がなかったからか、よく考えればここに来て初めて己の名前を呼ばれて内心でビックリしたのは内緒である。

 

「頼みがある」

「何だ?」

「うむ…」

 

そして、ドゥエロがシュバルツにある頼みごとをしたのだった。

 

 

 

 

 

『婆さん、いるか!』

 

ブリッジ。通信が開き、いつものようにヒビキが威勢よく気勢を上げた。

 

「ここに一人いるよ。何だい、おチビちゃん」

『あいつらに蛮型イジらせんな! ったく、うっとおしいったらありゃしねえ。とにかく『あ~、いたいた!』ゲッ!』

 

うんざりしながら文句を吐いていたヒビキだったが、誰かに見つかり慌てて通信が切れた。

 

「んん?」

「ふふ、皮肉なもんだ。男が来てからずいぶんと賑やかになったねぇ」

「はぁ…?」

 

途中で通信が切れてしまったことにブザムは首を捻っていたが、マグノはお見通しとばかりに悪戯っぽい笑みを浮かべてそう言ったのだった。そのヒビキはと言うと、

 

「だああっ…今度は、何だ?」

 

己を探し当てた人物…ディータに壁際に追い込まれていた。これまでのことがあるからか、恐怖の対象でしかない…とまでは言わないが、苦手になってはいた。と、

 

「はい」

 

ディータがお弁当の包みを差し出してきた。

 

「食べて。好きでしょ? 女の食べ物」

 

この話の流れから、ディータが差し出してきたそれがお弁当だとわかったヒビキは息を呑む。直後、艦内テラスに移ったヒビキは、お弁当にがっついていた。勿論、側にはディータの姿もあり、ニコニコしながらお弁当にがっついているヒビキを見ている。

 

「……」

 

お弁当にがっつきながらも視線が気になるのか、ヒビキは後ろを向いて食事を続けた。が、すぐにディータもヒビキの視界に入る位置に移動してくる。

 

「な、何見てんだよ」

「だって、見てたいんだもん♪」

 

手を重ねて小首を傾げながら恥ずかしげもなくそう言うディータにヒビキは呆れるが、とはいえ邪険にすることもなく食事を続けたのだった。流石にお弁当をもらっておきながら邪険にすることは気が咎めたのだろう。

 

「そんなふうに食べてくれると、幸せ感じちゃうな~♪」

 

文字通り、ヒビキの食べっぷりを幸せそうに見ているディータ。その二人から離れた木陰の中で、その二人の記録を残すかのようにカメラのフラッシュが焚かれた。

 

「パイ、チェ~ック!」

 

そう言いながら姿を見せた、カメラで撮影した主はパイウェイだった。その後、パイウェイはジュラの許へと向かった。そして、

 

「でねでね、二人してゴザ広げちゃってさぁ!」

 

先ほどの一件をジュラに報告していた。ジュラ自身はシャワー中だったのだが、そんなのはお構いなしといった感じである。パイウェイに一連の行動を依頼したのがジュラなのか、それともジュラに話を持っていくのが一番面白いことになりそうだとパイウェイが判断したからかはわからないが、とにもかくにも先ほどの一件はパイウェイからジュラに伝わっていた。

 

「あの男、お弁当一つですっかりディータの言いなりって感じよ」

「ふーん、そ」

 

有益と言っていい情報に、ジュラがシャワーを浴びたまま微笑んで答えたのだった。

 

 

 

「だからって、何であたしが料理するのよ」

 

キッチン。ぶつくさ文句を言いながらステーキ肉を焼いているのはバーネットだった。ジュラに頼まれたのだろうが、それでも文句タラタラながら頼みを聞いて料理をするところはバーネットの人の良さというべきか、甘さというべきか。

 

「合体のためよ。バーネットも、綺麗なジュラは好きでしょ?」

 

で、その依頼したジュラはと言うと優雅にマニキュアを塗っている。傍から見ればいいご身分ではあるのだが、これで関係が破綻しないあたり、二人の関係性はずいぶんと深く強固なのだろう。が、バーネットとしてもこのまま唯々諾々と従うのも面白くない。そんなとき、コンロのすぐ側にあるものを見つける。それはタバスコの瓶だった。

 

「ふ~ん♪」

 

そのタバスコの瓶を見たバーネットが何かを企んだ表情になり、料理を続けた。そして暫し後、

 

「ハイ、出来あがり」

 

遂にバーネットの自信作が完成したのであった。そしてそこに、間が良いのか悪いのか気配を消しながら近づく人影が一つ。バートだった。

 

「大好きよ、バーネット! 早速あいつを呼び出しましょう」

 

賞賛したジュラがすぐに用意を整え、キッチンカートを押すバーネットと肩を並べてキッチンを出ていった。

 

 

 

「にひひ」

 

二人がいなくなり、キッチンに人影がないのを確認したバートがひょこっと姿を現す。そして先ほどまでバーネットが調理をしていたフライパンへと近づいた。

 

「これが女の食い物か…」

 

そして、指でフライパンに残ったソースを掬って味わった。ヒビキが絶賛していたことと、単純に女性の食糧にも興味があったのだろう。褒められた行為ではないが悪いことではない。だが、サンプルにしたモノが悪かった。

 

「からーっ!」

 

味わって一瞬の後、タラコ唇になって口から火を噴くことになったのだから。さて、同じ目に遭う予定のヒビキはと言うと、ジュラとバーネットに両脇を抱えられて連行されていた。奇しくも場所も、先ほどのディータと同じくテラスである。

 

「何だよ! お前ら、何のつもりだぁ!」

 

ジタバタするも両脇を抱えられているため逃れることはできず、ヒビキはそのままバーネットが運んできたキッチンカートの前に座らされた。そして、バーネットがクローシュ(よく豪華な料理にかぶせてある、半月状の銀色の蓋のこと)を開ける。そこには、ホカホカと湯気を立てているステーキがあった。但し、その味はと言うと、先ほどバートが火を噴いたような激辛であるのだが。

 

「合体するなら食べてもいいわよ?」

 

その、バーネットの悪巧みを知らないジュラがヒビキの耳元に口を寄せる。

 

「じゃ、じゃあいらねえ」

「死ぬほど美味しいわよ?」

 

提示された交換条件に一度はそっぽを向いたヒビキだが、ジュラの悪魔の誘惑にゴクリと生唾を飲んだのだった。一方キッチンでは、バートが激辛の後味から逃れるためにコップに水を注いで飲んでいた。そこに、

 

「宇宙人さーん、いる?」

 

ディータが入ってくる。その両手にはヒビキと一緒に食べようと思っていたのか、コーンに乗った三段重ねのアイスクリームがあった。

 

「! か…か…か…」

 

咎められたわけではないのだが、いきなり声を掛けられたことに驚いて振り返るバート。口にした単語が意味のある言葉の形を成していないのは、未だに口の中が辛味で刺激されてまともに喋れないからだ。

 

「あら運転手さん。どうしたの? その顔」

 

ディータがタラコ唇が治まっていないバートに尋ねた。

 

「いいっ!? ひひゃひひ…」

 

ワタワタしながらなんとか言い訳してこの場を誤魔化そうとするバート。が、まだまともに喋れないためそれはできない。と、片方のアイスが溶け始め、形が崩れた。

 

「あ」

 

それに気づいたディータが眉を顰め、そして、

 

「食べる?」

 

と、バートに差し出した。が、つい先ほどの経験があるバートがそれを歓迎するわけはない。

 

「だーっ!?」

 

大袈裟に叫び声を上げながら額に脂汗を浮かべ、

 

「しゃっ! しゃばっ! しゃばっとっとっけけ! しゃよならーっ!」

 

最後だけはなんとか意味の通じる単語を伝え、キッチンをダッシュで後にしたのだった。その態度の意味がわからず、ん? と首を捻るディータ。そこに、再度キッチンの扉が開く。現れたのはエズラだった。

 

「男って変わってるよね~コッソリ入ってきて、お鍋舐めてたわよ」

 

両手に大量のレモンを抱えたエズラがそう言いながらディータに近づいてきた。入ってくる途中でバートとすれ違ったのだろうが、バートの行動を逐一知っているところから、ブリッジで監視映像に引っかかったのかもしれない。

 

「エズラ、何してんの?」

「最近酸っぱいもの欲しくてね」

 

そう言いながらレモンをかじるエズラに、ディータはそうなんだ、と苦笑することしかできなかった。

 

 

 

 

 

「惑星表面、安定しています」

「降下は今しかない。各パイロット、降下スタンバイ!」

 

ブリッジ。継続していた観測により、ようやくタイミングを得たことを確認したブザムが指令を出す。直後、出撃を指示するアラームが全艦放送で艦内に響き渡った。

 

「っ! こんなことしてる場合じゃねえ!」

 

ジュラの用意した、バーネットお手製の特製激辛ステーキを今まさに食べようとしていたヒビキは、後ろ髪を惹かれながらもフォークを投げて格納庫へと走り出した。ヒビキは預かり知らぬことだが、先ほどのバートの惨劇からすれば、この判断は九死に一生を得たことになっていたのだが。

 

「わわわわわっ!」

「ちょっと! 約束守んなさいよ!」

 

投げたヒビキのフォークをキャッチするためにアワアワ慌てているバーネットと、ある意味確約を取れずに先送りにされて怒号を発するジュラ。バーネットは更に、ヒビキが特製激辛ステーキを食べなかったことにもガッカリしていた。

そして格納庫では、

 

「……」

 

一人静かにモビルトレースシステムを起動させ、ガンダムシュピーゲル内で待機するシュバルツの姿があったのだった。

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