元凶
転機が訪れたのは、今から十年以上前。まだ私が、見滝原幼稚園の先生をやっている時だった。
「先生にまた勝っちゃうなんて、しおりちゃんすごーい!」
視界に映る黒に支配された盤面。
一般的に最後に石を置ける後手が有利とも言われるオセロ。私はそのオセロで後手番にも関わらず、完膚なきまでに叩き潰された。
別に私はオセロのプロではない。けれど学生の頃は『ゲーム部』に所属し、それなりに経験豊富で自信もあったのだ。
そんな私が、たかが園児にボロクソに負けた。
園児の名前は星風しおり。どこか掴みどころのない、変わった子供だった。
見返してやりたい。
我ながら大人げないと思いもしたが、私はこの気持ちと衝動を抑えることが出来なかった。
見返すために選んだのはマジック。一度はプロのマジシャンを目指すほど極めていた時期もある。
これだ、これしかない!
私はトランプを手に取り、あくまでも園児に披露して楽しんでもらうという名目で、マジックを行った。
「どう? しおりちゃんは分かったかしら」
周りの園児達の視線が一斉に彼女に向く。
この時には既に、見滝原幼稚園で彼女の名を知らぬ者はいなかった。
大人は言わずもがな、一般常識すら知らない子供ですら引き付けるカリスマ性と人望。そんなしおりちゃんと言えど、このマジックを見抜くことはできまい。
私はそう確信し、彼女に話を振ったのだ。
しかし、彼女は成功させて見せた。
それも、ただ成功ではない。私にすら理解できない方法でやってみせたのだ。
ありえない。だってそうだろう。彼女のマジックの手順では、絶対に成功など起こり得るはずがない。物理的に不可能なのだ。
なのに、それなのに。私の目の前でそのマジックは間違いなく成功していた。
「おおっ! 凄い凄い、凄すぎるよしおりー!」
格の違いを教えられた気がした。
結果だけ見れば、同じ状況を生み出すマジック。しかしその過程は全くの別物で、理解不能で――私は久方ぶりにワクワクした。
それは初めてマジックを目の当たりにしたあの時と同じ感覚だった。
それから私は、彼女の事をよく観察するようになった。
必ず何かあるはずだ。見ている者を欺く何かが。
彼女に話を振り、また新たなマジックを見て、自分なりに研究する。いつしか彼女のマジックに驚く自分はいなかった。
だって、彼女のやったことだから。彼女であれば何ができてもおかしくないのだから。
彼女が卒園する前日まで研究と
けれど、まだまだ彼女には及ばない粗削り。
もっともっと練習し、完成度を高め、彼女が見せた他のマジックも極めて見せる。
そして彼女の――星風しおりの名を全国に、世界に知らしめるのだ。
私はそう決意した。
〆〆〆〆〆
まだ見ぬスターを発掘する、海外の大人気テレビ番組の収録。会場の客席は満員で、ステージの前には五人の審査員。
その舞台に今、私は立っている。
……いや。審査員と観客からしてみれば、私が何もない空間から突如としてステージに現れたかのように見えただろう。
驚きと困惑が支配する会場。目の前でたった今起きた事象に、誰一人として理解が及んでいない。
しかし、この程度のマジックでそんな反応をされては困る。
私はただ、あの方の模倣をしているにすぎないのだから。
「会場とテレビの前の皆さん、こんにちは」
全てはあの方のために。
まずは私の――自己紹介をしよう。
「私は、星風しおりファンクラブ会員の『
明日の投稿で本当の最後。
取り敢えず書いたけど続きも何もない、面白味もないけど折角だから投稿します。