・まどかと友達
・名前は星風しおり
・先生をオセロで虐待
休み時間。
園児達が静かに食い入るように見つめる先では、先生によるちょっとしたマジックショーが行われていた。
「それじゃあ皆で一緒に手を叩くよ。せーの」
パンッと、軽くまばらに手が叩かれると、先生の持つトランプの束。その一番上のカードが開かれる。
「そうすると……はい、この通り! さやかちゃんの名前が書かれたトランプが出てきました~」
そこには確かに黒のマジックで『さやか』と、歪みながらも一生懸命な文字で書かれたカードがあった。
皆が盛り上がりを見せる中、私の隣にいる美樹さやかも信じられないといった様子で大きく目を見開いている。
「え? 何で? しおり、先生今のどうやったか分かった?」
いや、全然ちょっとしたマジックショーじゃないんだが? 園児にやるにしてはガチすぎるんだが?
お陰で何回か時間を巻き戻すことになったし、最終的に時を止めては確認、止めては確認したわ……。
そして改めて時間を戻して最初から見たけど、先生上手すぎない?
先生の顔を見れば、どうだ分かったかと言わんばかりの表情をこちらに向けている。
えぇ……。大人げないよ、先生。
「どう? しおりちゃんは分かったかしら」
そしてすかさず名指しで質問してくる。
こうなると皆の注目が私に集まるのは必然であり、その瞳は純粋でキラキラと輝いている。まるで「しおりちゃんなら何でも答えられる」と言わんばかりに。
そう、私は星風しおり。転生者であり、今やこの見滝原幼稚園のカーストトップにまで上り詰めた女児。
ここで間違えるような事があれば失望され、その信頼は容易く崩れ去ってしまうだろう。
立ち上がり、私は先生からトランプの束を受け取る。
小さな手には収まらないそれを台の上に置き、さやかの名前が書かれたカードを手に取り皆に見せた。
これから行われるマジックは、種も仕掛けもない。
積み重なったトランプの山。その中央に、見せびらかしたサインカード一枚をそのまま差し込む。
本当は一番上に置いたように見せかける手順が必要なのだが、他の園児にとってそれは微々たる差だろう。
しかし、先生は違う。やり方を知っているからこそ気付く不可解。
この手法では、間違いなくサインカードが一番上に来ない。
先生の表情が理解できないと一瞬歪むも、すぐに笑みをこぼす。
――仕組みが理解できていないのだ。星風しおりは、このマジックができない!
「(最初に何でと思ってしまったのは反省ね。心の中で、しおりちゃんならできてしまうのではと思っていた証拠だわ。さあ、カードをめくりなさい。そこにあるのは何の変哲もない――)」
そして、開かれた山札の一番上。
現れたのは、さやかの名前が書かれたサインカード!
「(そんな!? そんな事があるはずがっ!)」
沸き立つ園児とは裏腹に、山札を取るとすぐさま中身を確認する先生。
しかしそこには何の変哲もない、ただのトランプがあるだけだった。
「おおっ! 凄い凄い、凄すぎるよしおりー!」
興奮するさやかに抱きしめられながら、私は思った。
時を止めて、一番上に置いただけなんだよなー。