レナトゥス!~にじさんじ妄想トーナメント~   作:くろぷり

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トーナメントAブロック5

(禰古末ノ神始か……懐かしい顔を拝めたモンだ。儂も本気を出してやろう。こ奴の身体……悪魔の力とヘルエスタの加護を受けた身体ならば、儂の力に耐えられるだろう……)

 

 髪止めが朱く輝き……その光が、鈴原るるの背後に巨大な魔法陣を描き出す。

 

 魔法陣の輝きと共に、ブースターのエレメントが開放されていく。

 

「何あれ? 聞いてないよ! 美大生、髪止めを捨てろ!」

 

 試合を観戦していたでびでびでびるは、その異様な光景に慌てながら勢いよく空に舞い叫ぶ。

 

 米粒程に凝縮された悪魔の種とブースターのエレメント……その2つが互いを補完しながら徐々に大きくなっていく。

 

 悪魔の種……禰虚末ノ神焉を封じ込めた種は、微弱なブースターの力を借りて、その力を少しずつ取り戻し……そして魔法を制御できる程の力を取り戻すと、次はブースターのエレメントを封じる鍵を開け始める。

 

 こうなってしまっては、再び終焉の神を封じる事は困難だ。

 

 両の瞳を朱色に染めた鈴原るるは自らの腕を斬り裂くと、再び血の弾丸を神の姿となった渋谷ハジメに浴びせ始めた。

 

「くっ……寄生主の命はお構いなしか! 私の力で、彼女を救えるのか?」

 

 指を鳴らすと、渋谷ハジメの身体を中心に地面から竜巻の如き疾風の盾が立ち昇る。

 

 その風に血の弾丸は絡み取られ、勢いを失い空へ飛ばされていく。

 

「その力……凄いですね。こう……かな?」

 

 鈴原るるも指を鳴らし、風の鎧を纏う。

 

 そのまま、渋谷ハジメを覆う風に突っ込んだ。

 

 ぶつかり合う風と風……

 

 耳をつんざく様な激しい音……そして、少女の身体は宙を舞う。

 

 上昇気流に巻き上げられ、観客席よりも遥かに飛び上がった細い身体は、風の影響を外れた瞬間に凄まじい勢いで落下する。

 

 バァァァン! 

 

 短く激しい爆発音が、絶望を運ぶ。

 

 身体が粉々に砕けてもおかしくない高さからの落下。

 

 地面の敷き詰められたコンクリートが割れて、ヒビが走る。

 

 人の身体では、とうてい逃しきれない衝撃が走った筈であった。

 

 それでも……鈴原るるは立ちあがる。

 

「痛かったぁ……でも、分かりました! こう‥……ですね」

 

 再び鳴らされる指……そして轟音と共に、鈴原るるは強大な風の渦の中にその身を隠す。

 

 客席に落ちていたゴミや観客の荷物が風に絡め取られれ、人ですら何かに掴まっていないと飛ばされそうになる。

 

「く‥……この規模の風の力では、客席を巻き込むぞ! 分かっているのか!」

 

 渋谷ハジメは、観客席の前に風の防壁を築いていく。

 

 風と風が勢いを相殺し、観客席に吹く風は収まっていった。

 

「先輩‥……勝負を投げちゃったんですか? 全力の先輩と戦いたかったのに‥‥残念です」

 

 襲いかかる強烈な風圧に、今度は渋谷ハジメの身体が宙に浮く。

 

 回転しながら巻き上げられる身体……しかし、それだけでは終わらない。

 

 高速で回転する身体が、逆の回転軸に巻き込まれた。

 

「ありえない……‥逆方向の風を起こすなんて……力を相殺させた風を見て、それだけで出来るのか……こんな事が!」

 

 普通の人の身体ならば、一瞬でバラバラになっていただろう……

 

 神が宿った渋谷ハジメだからこそ、不規則に襲いかかる力を辛うじて逃していく。

 

 だが、渋谷ハジメの身体を守る……神ですら、それが精一杯だった。

 

 ジグザグに煽られて上昇していく身体は、先程の鈴原るるが落ちた高さより更に高く持ち上げられて……急に発生した下方向の風に飲み込まれ、大地に叩きつけられる。

 

「じょ‥……場外! 勝者、鈴原るる!」

 

 鈴原るるは笑顔で会場に一礼すると、渋谷ハジメの元へ向かおうとはせず舞台を降りた。

 

「ル……ルルちゃん……」

 

「あ、リゼ様! 見ててくれました? 渋谷先輩に勝てちゃいました! 最後は全力で来てくれなかったから、ちょっと残念でしたけど……まだまだ、これから!」

 

 控えめにガッツポーズをした鈴原るるは、少し恥ずかしそうな顔をしながらリゼの前を通り過ぎる。

 

「ルルちゃん……どうしちゃったの? 今は普段のルルちゃんの様には見えたけど……」

 

 担架で運ばれる渋谷ハジメの姿を横目に、リゼは呟く。

 

 対戦中は全力で戦うだろう……でも、試合が終わったら、敗者の心配はするだろう。

 

 少なくとも自分の知っている鈴原ルルならば、敗者にだって手を差し伸べる。

 

「あの状況で、手を抜いたって思ってるの? お客さんの命も危なかった、あの状況で……」

 

 本当に手を抜かれたら、性格的に確かに怒るかもしれない。

 

 ただ自分の力で他人を巻き込みそうになった時、それを止めてくれて人に感謝できない人じゃない事をリゼは知っている。

 

「やっぱり、何かおかしい。あの力が、でび様の力であったとしても……」

 

 リゼは嫌な胸騒ぎを感じていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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