密会
「叶さん、本気でやるつもりか? 主催がどういうつもりか知らんが、まともにやったら死人が出るぞ。武器も魔法も特殊能力もアリ……いくらVtube業界を盛り上げようたって、殺し合いまでする必要があるのか?」
「嫌なら辞めればいい……僕は戦うつもりだよ。その為に、銃も何挺か用意した。神田くんにも一挺渡しておこうか? 使う事もあるんじゃない?」
差し出された拳銃を押し返すと、神田は研ぎ澄まされた包丁を懐から取り出す。
「なんだかんだ、やる気じゃないですか。まぁ、やるなら本気でやった方がいいですからね。それで、どうします? 計画を遂行するなら、今夜か明日の朝しかないですよ?」
叶は静かに声を出しながら、狙撃銃であるM24に弾を装填していく。
「ちっ、しゃあナシか。しかし、そのCZAって新規のバーチャルライバーグループは本気で私達を崩壊させるつもりなのかな? 郡道さんやアルスをも取り込んでるって、アイツらがにじさんじを脱退するなんて考えられんのだが……」
「待遇が凄く良いって話だしね。僕も信じられないけど、彼女達も含めにじさんじライバーの殆どが大会に参加する。裏がとれているのは2人だけだけど、他にもCZAの息がかかっているライバーがいても不思議じゃない。有望なライバーは引き抜き、邪魔なライバーは公の場で減らすつもりなんでしょ? ま……僕に声をかけないなんて、無能集団なのは間違いないね。環天頂アークなんて会社名、ふざけてるとしか思えない……」
叶の静かな口調は、しかし言葉の節々に苛つきを感じさせる。
「莫大な優勝賞金に、バーチャルライバーの認知度、人気を更に上向きにさせる一大イベント……おまけに、主催がウチの事務所だ。CZAに引き抜かれる可能性のあるライバーを見極めときたいって思惑でもあるのかね?」
「それか、引き抜かれるライバーを既に把握していて、大会を利用して始末しようとしているのか……なんにせよ、利権が絡むと人は悪魔になるって事じゃないですか? にじさんじにCZA……お互いに思惑がありそうだね。とりあえず、白にも黒にも染まりそうなエクスくんはコチラに取り込んでおきたいんですよね。アルスさんと組まれたら、厄介ですから。剣と魔法なんて、相性バッチリですからね」
ふーっと大きく息を吐いた神田は、ゆっくりと席を立つ。
「正直、アルスの魔法は私達の戦闘スタイルと相性悪すぎだ……エクスがやってくれるなら、それに越した事はない。アルスの方は任せていいんだな?」
「ええ、任せて下さい。それと郡道先生の方は、もう一度調査してみましょう。なにかの間違いかもしれない。神田くんも、間違いであってほしいでしょうから……」
神田は頷くと、伝票をさりげなく取って店を後にする。
「ご馳走様です、神田くん。さて……」
叶は紅茶を一口啜ると、黒いタブレットを取り出した。
電源を入れると、黒い仮面を被った人物が映し出される。
「だいたいの準備は整いましたよ。これで……いいんですよね? ブラック・ベルベット」
叶の問いに、画面の中の黒い仮面を被った人物……ブラック・ベルベットと呼ばれた者が静かに頷く。
叶は爽やかな笑顔を見せると、ティーカップを持つ。
「運命を変える……か。こういう挑戦を待っていたんだ……」
叶はもう一度、紅茶を啜った……