「いよいよ明日は、にじさんじトーナメント戦の日ですね! それぞれのライバーが配信を予定していると思いますので、応援よろしくお願いします! それではー……次回も、よろしくお願いします!」
「リゼルル~レッスンー!」
「リゼルル~レッスンー!」
2人の女性の元気な声がスタジオに響き、プロデューサーからOKサインが出る。
「はー、終わったねールルちゃん! お疲れ様!」
「リゼ様、お疲れ様でした! 今日の放送も楽しかったですね!」
スタジオの外にあるソファーに腰掛けて、2人はラジオ放送での疲れを労った。
「それでルルちゃん、明日からのトーナメント……本当に参加するの?」
「もちろんです! ライバーさん達が本気で戦うなんて、ワクワクするじゃないですか! 普段の配信だと、なかなか本気で戦う事なんて無いから楽しみです!」
普段のおっとりした口調より僅かに早口になる鈴原ルルの言葉に、銀髪少女のリゼ・ヘルエスタは不安を感じる。
透き通る様な笑顔に、可憐な佇まい……戦うなんて言葉すら似合わない。
しかし、その容姿とは裏腹に……負けず嫌いで鋼のメンタルの持ち主でもある。
武術の心得の無い、負けず嫌いで鋼のメンタルを持っている可憐な女性が、なんでもアリの大会に出ようとしているのだ。
普通の人なら、身の危険を感じたらギブアップする。
たが……鈴原ルルに、ギブアップの文字は無い。
あるのは、チャレンジする心……ひたすら前に進む力のみ。
目を輝かせるルルを目の前にして、リゼは説得を諦めた。
「じゃあさ……ルルちゃん。ヘルエスタ王国の由緒正しき神社のお守り……これを持ってて」
「ありがとうリゼ様! これ、しず……」
「ルルちゃん!?」
なにか地名がルルの口から零れそうになり、慌ててリゼが言葉を被せる。
「あはははは! ごめんなさい。つい、やりたくなってしまうの。ありがとうリゼ様……大切に持っておくね。でび様からも、お守りだって髪留めを貰ったし……そんなに心配かけちゃってるのかな? わたし……」
「そりゃーねぇ……ボロボロになっても、無駄に立ち上がりそうで怖いんだよねー。ゲームじゃないんだから、無理しちゃダメだよ」
リゼから貰ったお守りと、でびでび・でびるから貰った髪留めを見詰め、ルルは小さく頷く。
「本当に心配だよ……あ、そうだ。ルルちゃん、私に今付けてる髪留め貰ってもいい? お互いに無理しない。そして、来週……またこのスタジオでラジオを一緒にやる。お互いが渡した物を見て、心を落ち着かせるようにしよう。そうすれば、お互いに無茶しないでしょ?」
「もぅリゼ様……無理矢理、感動物語を作ろうとしてません? そういう展開、リゼ様好きそうですもんねー」
ルルは笑いながら髪留めを外し、でびでび・でびるから貰った髪留めを同じように結わえた。
「そんなんじゃ無いよ! 本当に心配してるんだから……」
ごめんなさい……悪戯に笑いながら、ルルは外した髪留めをリゼの手の上に乗せる。
「でも、今日一日付けてたから汚いんじゃないかな? 明日で良ければ、綺麗なの持って行くけど……」
「ジップロックに入れて持ち歩くから、大丈夫! これなら、大会中持ち歩いてても汚れないし!」
ジップロックに入れられた自分の髪留めを見て、ルルは複雑な表情を浮かべた。
「なんか……なんか嫌だなぁ……リゼ様、さっきの仕返しですか?」
「そんなんじゃないよー。えっ? ジップロック、ダメ?」
2人は目を合わせ……そして吹き出した。
「もー、リゼ様と一緒にいると楽しいなー。だから絶対、来週も会おうね! この場所で、必ず!」
「うん……」
笑顔のルルちゃんを見ていると安心する……でも、やはり不安が残る。
最高の仲間が……友人が傷つく姿など見たくない。
「ルルちゃんの事、守ってね……」
ルルに渡したお守りを頭に思い浮かべながら、リゼは小さな声で呟いた……