レナトゥス!~にじさんじ妄想トーナメント~   作:くろぷり

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SMC組

「しゃちょ~、見せたい物って……コレ?」

 

「ええ……加賀美インダストリアルが新開発したアーマード・モジュール。ヴィヴリオ・マギナス、キミア・ロギオス、ペスニディ・プロエドロスです!」

 

 整った顔立ちに、背筋の良い姿勢……若いが、社長と呼ばれるに相応しい雰囲気を持つ男性……加賀美ハヤトは、モニターに映し出される3体の人型ロボットを意気揚々と披露する。

 

「です! じゃないよ……何を造ってるんですか、社長? まさかとは思うけど、トーナメント用に準備した訳じゃないよね?」

 

「葉加瀬さん、当たり前じゃないですか! 何でもアリな大会に、お2人を生身の身体で参加させる訳にはいきません。何かあったら、どうするんですか?」

 

 葉加瀬さんと呼ばれた綺麗な銀色の髪の少女……葉加瀬冬雪は、神秘的な赤い瞳で加賀美社長を見る。

 

「そりゃあ……確かに、私達は腕っ節が強いって訳じゃないけど……」

 

「けどさ、しゃちょお……こんなロボットでライバー達を殴ったら、殴られた方のライバーが死ぬんじゃないの? ヤダよ……そんなの」

 

 独特なイントネーションで喋る銀髪と黒髪のツインテールの少女……夜見れなも、加賀美社長の用意した人型ロボットに乗るのは躊躇いがあるようだ。

 

「その辺も大丈夫です。ちゃんと相手の力量に合わせてパワーを調整するように造ってありますから。夜見さんも、葉加瀬さんも、今回のトーナメントは甘く見ない方がいい。どうも、きな臭い感じがするんですよね…… 環天頂アークって新規参入したライバー事務所も関わっているらしいですし、用心するに越したことはないですよ 」

 

「って、言ってもねぇ……大会の主催はウチの事務所なんだし、そんな無茶苦茶な事にはならないんじゃないかな? ねぇ、夜見?」

 

 葉加瀬の問い掛けに夜見は頷くが、その視線を加賀美に向ける。

 

「でも……社長は、きな臭い感じがしてるんだよね? なら、私達に何かあったら助けてよね。このロボットさん達も、社長が私達の事を本当に心配して造ってくれたんだと思うから、どこかで活躍させる場を作ってあげたいし……」

 

「そう? 活躍する場面なんて、無い方がいいと思うんだけど……」

 

 そう言う葉加瀬の赤い瞳の奥に映る無機質で冷たい感じのするロボット……アーマード・モジュールも、社長が自分達の身を心配して造ってくれた物だと思うと、何故か温かみすら感じられた。

 

「葉加瀬さんの言う通り、活躍する場面なんて無い方がいい。しかし、今回の大会は訳の分からない事が多過ぎる。SMC組で参加依頼が来たのに、大会本番はソロでの戦いになってる。私の勘が外れてくれてれば、それで良いのですが、やはり備えは必要だと思います。でも、お2人の気持ちも良く分かります。だから……私が危険だと感じたら、問答無用でアーマード・モジュールを送ります。その時は、私を信じてアーマード・モジュールを使って下さい。とにかく、身の安全を最優先にして下さいね!」

 

 夜見と葉加瀬は、加賀美の言葉の熱量に思わず頷く。

 

 凄い熱量が伝わるぐらいに心配してくれている……仕事仲間などではなく、本当の仲間として心配してくれている。

 

 その気持ちがストレートに伝わってきて、2人とも凄く嬉しく、幸せな気持ちになった。

 

「ま……まぁ、社長がそこまで言うなら……ねぇ、夜見?」

 

「そうだね! ありがとー、しゃちょお! 心配してくれて! じゃあ冬雪、私達が持ってきた物も渡そうか?」

 

 忘れてたと、葉加瀬は舌をペロッと出すと自分のバッグの置いてある机に小走りで向かって行く。

 

 そして葉加瀬は、持って来た綺麗に包装された柔らかい物を加賀美に手渡した。

 

「はい! 社長……これ、見てみて」

 

「そんな、会う度にプレゼントを持って来なくてもいいんですよ。って、コレ……なっはっは! コレかぁ!」

 

 渡された包装を綺麗に開けた加賀美は、包まれていた物を見て大きく笑う。

 

「しゃちょお、コレですー! なんだか分かりますか?」

 

「これ、アレですよね? マジックラボのイベントで、お2人が着ていた……」

 

 加賀美は自分のサイズにピッタリであろうTシャツを広げ、柄を確認する。

 

「そうそう。イベントの後に、このTシャツは男性が着ても似合いそうだから、SMCでオソロにしたいねーって夜見と話してたんだ。でも、なかなか渡す機会なくて……でも今回はSMC組もバラバラで戦わなくちゃいけないから、せめてオソロ着て絆で結ばれてるってトコを他のライバーさん達に見せつけてやろうかと思ってね」

 

「なるほどなぁ……そうこれ、イベントで見て、3人で着てイベントとかやってもいいかなって思ってたんですよね。これ、柄も良いですよね。オイラーの等式がオシャレに描かれてて……」

 

 葉加瀬の言葉に相槌を打ちながら、加賀美はTシャツの背面を見て……またしても笑い声を上げた。

 

「これ……えっ、背中の柄って、こんな風になってましたっけ?」

 

「こうなってたんですよー! イベントだと背中見せる事あんまり無いから、分からなかったでしょ? これ、加賀美インダストリアルの会社ロゴにヒヨコが止まってるんですよ!」

 

「ほんとだ! えっ、これ凄いな……それに、マジックラボ用の服に私の会社ロゴ入れて貰えてるのは、素直に嬉しいですね」

 

 普段と変わらない会話、普段と変わらない笑顔、普段と変わらないの2人……

 

 いつもと変わらない、素敵な日常……守らなければならない。

 

 トーナメントで勝てば良いという問題ではない。

 

 このトーナメント戦は、裏に何かある。

 

 必ず暴き、2人に……にじさんじのライバーに害ある物なら、必ず淘汰する。

 

 加賀美は、そう心に決めた。

 

 大切な人を……大切な場所を守る。

 

 その為のアーマード・モジュールであり、その決意を支えるTシャツであろう。

 

 加賀美は貰ったTシャツを握り締め、決意を新たにする。

 

 まだ見ぬ敵に……にじさんじライバーとは違う、トーナメントの裏に潜んでいるであろう敵に鉄槌を下す為に……

 

 

 

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