レナトゥス!~にじさんじ妄想トーナメント~   作:くろぷり

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トーナメントAブロック2

「叶先輩、その話……どこまで本当なんですか?」

 

「さて、どこまでだろうね? でも、エクスくんが鍵を握っている事は間違いない。僕達にじさんじライバーの未来……その一歩目の鍵をエクスくんが握っている。そして、その鍵を導けるのはアルスさんしかいない。そう言う事です」

 

 叶はそう言うと、タブレットを閉じてアルスの控室から出て行こうとする。

 

「ぼくは、本気でえびおと戦えばいいんだよね? それだけで……いいんだよね?」

 

 出て行こうとする背中目掛けて問い掛けられたアルスの言葉に、叶は足を止めた。

 

「ええ……エクスくんには、神田くんが策を弄しています。アルスさんはエクスさんの質問に、ただ肯定して戦ってもらえればいいです。後の事は任せて下さい」

 

 そして、叶は静かに歩き始めた。

 

 その口元に僅かな笑みを浮かべて……

 

 

「師匠! CZAと手を組んで、にじさんじを潰そうとしているって……本当なんスか!」

 

「いや……ん? そういう事になってるのか? って、ちょっと設定が雑過ぎだよ、叶先輩」

 

「何をブツブツ言っている! 師匠、どっちなんだ? 別に、にじさんじからCZAに移るってんなら止めやしない! けど、にじさんじを潰すってんなら話は別だ!」

 

 エクスの本意気の言葉に、アルスは溜息をついた。

 

「まったく……真に受け過ぎなんだよなー。馬鹿と言うか純粋と言うか……でも、だからこそ希望になり得るって事なんだろうな……いいよ、叶先輩。ぼくが人柱になる。それで、最悪な未来が換えられるならば……」

 

 アルスはエクスの言葉を無視して、魔法の詠唱に入る。

 

 エクスの頭上……天空からの閃撃。

 

 雷が光と共にエクスを襲う! 

 

 ガガガガガァァァァァァァァ! 

 

 雷撃と地面が焼けて破壊される激しい音が、決戦会場に響き渡る。

 

 エクスは聖剣を避雷針代わりにして、後方に跳んで雷撃を避けた。

 

「やってくれたな……師匠! 今のが答え……って事でいいんだよな!」

 

 エクスは怒りで拳を作る。

 

 アルスから貰った聖剣は地面に突き刺したまま、エクスは足に力を入れた。

 

 どんな理由があれ、大切な人を傷つけたくはない。

 

 しかし自分にとって大切な場所を潰そうとしているなら、話は別だ。

 

 考えが変わる程度には……いや、強制的にでも話を分からせる為には……

 

 素早い動きで間合いを詰めたエクスは、アルスの小さな身体目掛けて固く握った拳を叩き込む。

 

「えび先輩、ぼくが魔法使いって忘れてないか? ぼくの魔法は、防御だって出来る!」

 

 力一杯繰り出されたエクスの拳は、アルスの周りに網状に張られた電流に絡みとられた。

 

「だあああああぁぁぁぁ!」

 

 周囲の電流が電撃となり、エクスの身体を焼きながら弾き飛ばす。

 

「くそっ! 師匠、本気なんだな! 本気で俺を倒そうって事でいいんだよな? そう思っていいんだよな!」

 

「あー、もぅ……本当に単純……でも、先輩達の言っている事が本当で、その先の為に戦う必要があるのなら……えび先輩ゴメンね。これから先の戦いは、ぼくよりズッと辛い戦いになる。でも……頑張れ……」

 

 誰にも聞こえない声で呟いた後、アルスは右手を天空に掲げた。

 

「英雄さん! 本気でいくよ! ぼくの最大魔力を使った電撃を……くらえっ!」

 

「ちっ! 俺なんかに最大魔力なんか使うんじゃねぇよ! 絶対にぶん殴って、目ぇ覚まさせてやるよ!」

 

 エクスは意を決して、素手のまま電撃の嵐に飛び込む! 

 

「何やってるの! 剣で電撃を防ぐんだよ! もぅ……世話の焼ける……」

 

 そう言いながら、アルスの顔は笑っていた。

 

 そう……これがエクス・アルビオだ。

 

 頭が悪くて単純で……でも優しい……

 

 どんなに怒っても、どんなに憎らしくても、一度信頼した相手には本当に傷つける様な事はしない。

 

 たとえ、自分がどんなに傷つこうとも……

 

 アルスは魔法で、剣をエクスの前に落とす。

 

「本気で来なよ! そんな逃げ腰で、ぼくに勝てると思ってるのか? にじさんじを……大切な場所を守りたいなら……本気で来なよ!」

 

 電撃が降り注ぐ嵐の中、エクスはアルスから届けられた聖剣を握り締めた。 

 

「こいつは、師匠を刺す為に貰ったんじゃない!」

 

 そう言いながらも、エクスは聖剣を持って走り出す。

 

 ひょっとしたら、アルスは誰かに操られているのではないだろうか? 

 

 若しくは、弱みを握られて引けなくなっているとか……

 

 どちらにしても、本気で戦わないといけない状況なのかもしれない。

 

 ならば、戦いの中で真実を見極めるしかない。

 

 英雄と呼ばれる自分なら出来る! 

 

 エクスは心の中で、そう信じながらアルス目掛けて走った。

 

 網状に張られた電流を確認し、エクスはアルスの腹部を狙って聖剣を突き出す! 

 

 先程と同じ様に、電流に絡めとられた剣を通して自分は弾き飛ばされる筈……

 

 その瞬間に見極めてやる! 

 

 エクスの覚悟を纏った聖剣は、しかし電流に絡めとられる事はなかった。

 

 柔らかい物に突き刺っていく感触を、エクスの両手に聖剣は伝えてくる。

 

「な……師匠、何やってんだ! さっきは完全に防御しただろ!」

 

「だって……ぼくは、えび先輩に負けなきゃいけなかったんだ……ぼくは、大切な場所を守りたい……大切な人達も守りたい……その為に、えび先輩の力は必要なんだ……」

 

「そんなの……師匠がお願いしてくれれば、いくらでも力を貸したさ! なんで師匠が命懸けで……」

 

 腹部を剣で突き刺され、力無く倒れていくアルスの身体を支えながら、エクスは叫んだ。

 

 朦朧とした瞳……力の抜けた身体……

 

 今アルスが口にしているのは、本当は口止めされている事なのではないか? 

 

 力無く動く口を見て、エクスは感じた。

 

「俺と師匠を戦わせて、何をさせたかったんだ!」

 

 アルスが守りたいと思っているモノ……それは、新興勢力のCZAではない筈……

 

 黒幕が必ずいる……手がかりは、師匠を裏切り者扱いした神田か……

 

「救護班! 早くしてくれ! 師匠が本当に死んじまう!」

 

 エクスは小さく軽いアルスの身体を抱いて、自ら救護室へと急ぐ。

 

 小さな身体から流れる血液を少しでも減らそうと、エクスは剣の刺さった傷口を抑える。

 

 自らの指が剣によって傷つき、血が流れた。

 

 その微かな痛みが、エクスの怒りを増長させていく。

 

「俺が刺した……その罪は消えない。けど、必ず後悔させてやる。俺を本気で怒らせた……覚悟しておけよ、神田ァ!」

 

 その怒りの咆哮は、まるで野獣のソレの様であった……

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