安定した定職を求めて   作:ごすろじ

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今更感がありますが、バイオレット・エヴァーガーデンの二次創作少なくね、な心境で書き始めました。

こちら処女作のため拙い文章ですがご了承下さい。



1

困まりました…本当に困まりました。

私の名前はアレイダ、前世では誰とも諍いを起こさず八方美人を誇りにする平和主義者でした。

戦火の気配一つ無い国に産まれ、心から平和ボケを享受し娯楽を愉しみ茶を啜る日本人だった…はずなのに。

 

「イケーー ッ!!突撃ィ!」

「帝国兵を一人たりとも通すなッ!死んでも死守するんだ!」

 

後方から聞こえてくる味方の地鳴りのような足音と怒号。

血と硝煙、そこに混じる吐き気を催す肉の焦げた香り。

止むことのない爆炎と周囲の酸素も建造物すら一切合切燃やし尽くす火災。

 

 

 

今の私のを一言で言い表すのなら所謂「転生者」というものでしょうか。

ですが、別段テンプレみたいに神様に合った訳でもなく、長い死という恐ろしい夢から目覚めた瞬間から第ニの人生が始まっていました。

それも、前世の恵まれた日本人ライフとは裏腹に貧民街の孤児という最悪の状況で…。

フフ…前世で言う親ガチャ大爆死とはこう言うことを言うに違いありません。

 

この世に生を受けてからの始めの数年は何度も死の境を彷徨いました、電気も普及していない世界で前世では当たり前の衛生観念なんてものはドブい打ち捨て、女児ボディーを賢明に動かし残飯を漁り飢えを凌ぐに日々。

異世界転生お決まりの自動翻訳機能なんて都合の良いものは無く、食料調達と平行し自力でこの世界の言語を学び。

時にはなけなし残飯を餌に貧民おじさん達相手に会話の練習をしたり…そうしてなんとか、今では簡単な日常会話が成立する程度には成長出来ました。

 

常時栄養失調な劣悪幼少期を過ごしたお陰か、気づけば髪毛の色素は完全に抜け落ちて…真っ白になっていましたが。

偶然窓ガラスに映る自身の姿を見た時の衝撃は今でも忘れられません。

幼少期の記憶なんて殆ど残っていないですから正確な年齢は分かりませんが、恐らく前世であればJK程度には年若い乙女に相当するこの私が…一本残らず白髪。

生え変わりに希望を見出すも、数日後にはその希望も真っ白に消え失せました。

あまりのショックで一日中寝込んだことは記憶に新しいです。

 

幸いだったのは、この一見貧弱に見える身体が素晴らしくハイスペックだったことです。

この身体のおかげで女の身一つで治安最悪の貧民街で生き抜けたのだから感謝してもいいでしょう。

 

これなら前世で読んだ、なろう系が如き「なんかやっちゃいました」系の反応が期待出来ると思いワクテカしていたのですが、未だそういった反応を誰一つ見せてくれません…。

 

貧民おじさんズは私のフィジカル芸を披露したら頭を撫でて褒めてくれたのに、仲良くしてくれるチンピラさん達は一切何も言わず無言のノーリアクションですよ。

 

流石にショックでした、もしかしなくても、この世界基準だと大したことのない能力なのかもしれません、別に魔法でも超能力とかでもありませんしね。

 

ただこの表情筋の死に絶えた常に笑みを浮かべた鉄仮面はどうにかならないものでしょうか、いくら腕っぷしがソコソコ強くてもこんな優しさ全開のアルカイクスマイルを浮かべてたら舐められてしまいます。

 

自慢じゃありませんが割りと顔は良いんですよね、私。

実際人攫いなんかにも何回か遭遇しましたし。

あの時は運良く交流のあるチンピラさん達に助けられなければどうなっていたことか…やはり持つべきものな仲間、友情パワーこそ人生の逆境を覆す真の力なのです。

 

そんなこんなの散々な日常を手段を選ばず生き汚なく生きてきた訳ですけど…――今宵私はとうとう名もなき挽き肉として今生を終えるかもしれません。

 

此処は今生で私が産まれ落ちたテルシス大陸、その南に位置するライデンシャフトリヒ北東部。

大陸全体の中でも秀でた資源を産出する鉱山地帯であり、軍備に欠かせない鉄や銅などが眠る重要拠点、この豊かな大地を見回り警護するのが私に与えられた命令…だったはず。

うん、おかしいですね…着任初日の平和な光景は見る影もなく絶賛毎秒人命が散る死地と化しています。

受けた命令は資源の採掘施設周りの警備やら見回りなんかの簡単なお作業だと聞かされいましたが…――まさか、あの兵役求人が此処までの地雷だったとは。

 

 

日夜安定した食い扶持を求め職を探すも、貧民街の孤児、出自不明、国籍不明、おまけに言葉は喋れても文字も読めない学無し、そして終いには薄汚いボロ布纏った私を雇入れてくれる奇特な場所なんてまぁ、ありません。

 

しかし、あの時の私はいい加減廃墟で残飯を貪る生活にウンザリしていました。

無駄に頑丈な身体してる癖に頻繁に熱が出たり、節々が傷んだり、顔には出ませんが控えめに言って地獄でしたし。

選り好みなどしていられる程精神的余裕も無く、そんな時降って湧いてきた兵役の話です、国へ奉仕する精神など欠片もありませんでしたが、衣食住が約束されているのは大変魅力的でした、説明する役員の説明を話半分に聞き流し即行動に移していました。

字も読めない癖にほとんど衝動的に志願してしまうとは…我ながら愚かとしか言いようがありません。

その結果がこれ…現地に到着しての数日後経たずにこの惨状。

今にして思うと…国籍、人種、年齢、問わず求めに応じた者は無条件で国が抱えてくれるなんて違和感しかありません。

私達みたいな貧民街の掃き溜めを士官学校の卒業も免除して正式に…うん、ないですね。

普通に捨て駒、というか此処思いっきり敵の矢面、私は比較的後方の配置ですが完璧な肉壁で草も生えません。

 

まぁ、偶然にしろ故意にせよ私の足りない頭で考えても仕方の無いこと、生き残ることだけ考えましょう。

幸いにも見覚えのある顔もちらほらいますし、何かあればきっと助けてくれるでしょう。

 

 

帝国側の奇襲による砲撃で既に既に名も知らぬ私の同僚達が絶賛肉片となって飛び散りまくっています、背後からは正規の陸軍と思わしき軍勢が砲撃を打ち返し応戦し始める轟音が鳴り響き鼓膜が破れそうです。

 

「な、なんで…どうして」

「巫山戯んな…ッ、戦うだなんて聞いてねーぞ!」

「これ、で、弾は出んだよな!?」

 

よく見れば周りにいる人達は明らかに訓練を積んだ正規兵ではありませんね。

首からは立派な銃がぶら下げられてはいますけど、扱いがおぼつかず、目に見えて狼狽えてますし、とは言え当然ですね訓練なんてまだ一、二回しか碌に出来ていませんし。

 

って、それよりも…よしよし、スローインナイフもどきにマチェーテ…その他の投擲物…うん、全部揃っていますね。

残念ながら今生の私に銃撃の才能なんてものは欠片も期待できません。

銃なんて持つ位ならナイフを一本でも多く持った方がまだ生き残る確率が上がるというもの。

私はたった一回の射撃訓練で全てを悟ったのです。

 

「あ…マズイですね…これは、久しぶりに飛んでしまいます」

 

邪魔な重しは地面に捨ててっと…何やら背後で煩いですが残念ながらもう聞こえませんよ。

初陣のせいか何時もよりもかなり敏感になっていますね。

あぁ…肌を刺す殺意が…心臓が脈打たせて全身に血が巡り…意識が遠のいていきます。

 

「…どうかすぐに死にませんように…」

 

遥か前方に殺意を滾らせる敵影が視界に写り込んだ瞬間…――私の意識は暗転しました。

 

☆☆☆

 

現在ライデンシャフトリヒの防衛を担う地方貴族と中央軍の間では慌ただしい動きを見せていた。

ライデンシャフトリヒには天然の港、豊富な天然資源が存在し、長年それを狙い周辺諸国から繰り返し侵攻を受けてきた、ある時には大敗を喫し、首都にまで敵軍が侵攻した歴史を有する国だ。

当然、こうした経験から他国を含む周辺諸国からの牽制には必要以上に神経質になっていた。

 

動きを見せたのはテルシス大陸北部に位置するガルダリク帝国。

以前から南部国相手に挑発めいた行動を見せていたが、ここ数日で無視出来ない程までにその動きを活発化させていた。

その中でも武器・弾薬の製造や保管を主とする軍需工場の維持と稼働に欠かせない採掘地帯を中心とした場所に帝国兵の存在が報告され始め、明らかに今までとは違う帝国の動きに一層の警戒を強いられることになった。

 

帝国の影が確認された場所はどれもライデンシャフトリヒという国にとっての重要拠点ばかり、仮に攻め込まれ占拠されれば今後の戦況は大きく不利になるだろう。

しかし未だ仮定の段階、兵を送り込もうにも辺境伯が管理する常備軍を回せば国境が手薄になり周辺諸国に付け入る隙きを与えてしまう。

安易に兵の数を増やせば、国民の戦火に対する不安を煽る結果に繋がってしまう、現在の段階で世論を敵に回すなどもってのほかである。

 

そこでとある貴族から一つの代案が出された、なにも帝国を牽制するだけならば正式な兵を送り込む必要はないと。

近代に移り変わる時代といえど未だ選民思考を持った貴族というものは実在した。

国の手が碌に行き届いていない貧困街、その更に深くに存在する極貧のスラム街、数だけは存在する、そこから人員を確保しようというのだ。

 

戦力としてではなく、動くハリボテとして――

数に圧倒され帝国が躊躇うのならそれでよし、例え最悪の状況になろうとも、あらかじめ敵軍の進行が予想される場所に配置しておけば、肉壁として機能させ処分も出来る、まさに一石二鳥と言わんばかりの発言。

戦死したとしても親類縁者からの追及もなく、生き残れば傭兵を雇うよりも少ない二束三文の小銭を渡せば満足するだろう、そんな思考の元この非情な案は可決された。

 

無論一部の良識を持つ人物達からは反論の声が出たが、悲しいことに現在の軍事、政治は貴族達を中心として大きな発言力を有するのが現状。

多少罪悪感があれぞ、わざわざ未確定の案件に自身の抱える常備軍を割いてまで反対する者もおらず、過半数が代案に乗っかる姿勢を示していた。

 

そうして、重要拠点各地に動員されたのが中隊規模のハリボテ兵。

しかし期待に反し帝国側は、怯むどころか想定よりも遥かに早い速度で攻撃を仕掛けてくる結果となった。

奇襲の砲撃は行くてを阻むハリボテ達へと向けられ、当初の想定通り肉壁の役割を果たし、背後の採掘施設、控える正規軍には損害は出なかった。

 

そこからは血で血を洗う泥沼の正面激突――

遮蔽物の碌に存在しない戦場、浅い塹壕を弾除けにひたすらの正面衝突。

一見数は同等、しかしいくら兵装で身を固めても所詮は訓練されていない一般人、帝国の正規兵に敵う道理があるはずがない。

 

寄せ集めのメッキが徐々に剥がれその数を減らしていく。

攻勢を強め勢いづく帝国兵相手に、防戦を強いられ始めたその時――

 

敵へと進軍する味方を追い抜き銀の閃光が敵陣に向けて放たれた。

 

☆☆☆

 

…最悪だ。

何?俺が誰かだって…ただの糞の肥溜で育った名前もないチンピラさ。

眼の前の悪魔みてーな女に、絡んだのが運の尽き、こんな血生臭い地獄に引っ張り込まれた哀れな大馬鹿だよ。

 

この女と出会ったのは貧民街の俺らが根城にしていた廃墟の一角だ。

見なりは悪りぃボロ布一枚まいクソガキが俺らの飯を食い尽くしてやがった。

当然周りの連中は殺気立ち、中でもガタイのデカいリーダー格の奴は、楽しみしていた肉を食われて大激怒。

 

まぁ、別に珍しい光景でもない。

弱肉強食の世界、弱い奴が悪いってだけだ。

 

俺は別にそこまで気にしていなかった。

ただ、プラチナブロンド靡く髪、温和な笑みを浮かべた整った顔立ち、十代前半の儚げ系美少女…人攫いいヅテに金持ちの好事家共に売り渡せば、良い金になるのになるだろうな、なんて呑気にクズいことを考えていただけだ。

 

激昂した男は角材を持ち出し、周りは「大人気ねー」などとゲラゲラと笑っている、これを見世物に楽しめるんだから、此処の連中はどうしようもなく精根が腐ってやがる。

まぁ、俺もその一人だが。

 

あいつも二、三発ボコせば満足するだろ、やんわり仲裁に入ってその後は少し愉しませて貰った後、売りさばけば良い…まったくボロイ商売だぜ。

 

おいおい…大の大人がガキ相手に四五人で取り囲んでリンチを始めようってか。

はぁ~こりゃ、売値が大幅に下がるな、最悪顔だけは残してくれれば助かるんだが。

 

得られる金がどんどん減っていく光景など愉しめるかっての。

俺は溜息混じりに奴らから視界をそらした。

 

ギチ、ギチ、ィ゛…

 

あん…?なんだこの音。

肉が軋むみてーに――ゴトッ

 

は?

 

なんだこれ…頭?え、これってアイツだよな。

いつも図体も態度もデケーが実力は本物で…おかしいだろ、アイツは今角材握りしめてガキを嬲ってる筈。

そのアイツの顔が、恐怖に彩られた絶望の表情と目が合った。

 

俺は呼吸も忘れ急いで奴らの方へと視界を戻した。

其処には頭を無くし、首から噴水のように血を拭き上げるアイツだったモノと数人の男が地面に横たわっていた。

 

俺は反射的にガキから見えない位置へと身を潜めた。

なんだ、一体何が起きたッ!?

 

ぎゃぁぁ゛ぁ゛~~!!?

 

今度はなんだ!?バレなよう遮蔽物から覗き込む様に視線を向ければ。

男の胸元にガキの細腕がめり込んでやがるッ。

 

男の手にはナイフが痛いほど握り込まれており、俺とは違い反撃に打って出たのが伺える。

おいおい…冗談だろ、なんだあのガキ。

 

メギィ゛――ズ、るるるゥ゛~~~ッ

 

肋骨を握り潰してヘシ折やがった。

その上抜き出した骨を心臓に突き立て――グチャぁ

 

俺はそこまで見た瞬間地面に汚物をブチ巻け、身を潜めた。

物音一つ立てず柄にもなく神に祈りまで捧げてガタガタ震えて…。

ガキの気配が無くなっても恐怖は消えず、同じ様に生き残った仲間が声を掛けるまでずっと恐怖に打ち震えていた。

 

それから、最悪なことに偶然例のガキ…いや化け物と再会する機会が訪れた。

再会した時、俺たち全員は生きた心地が全くしなかったが、奴は俺らの顔を覚えていなかった、あの時は心底安心したぜ。

 

本当に忘れているにしろ、見逃されたにしろ、こんな化け物相手にしたら命がいくつあっても足りやしねぇ…。

俺はもう二度と関わるのは御免だと早足でその場を逃げた。

だが、他の奴らはどうやら違ったらしい。

 

あの化け物が、どういうわけかこの肥溜で長年住んでる奴らも知らねーような裏稼業持ちと頻繁に会い始めるようになった。

一見その辺にいる薄汚え爺さん共だが、あれでも裏の仕事に関しては凄腕のヤベー奴らだ。

掃除屋に暗殺者、運び屋…日に日に化け物の交友関係は徐々に広がり始め、ここら一体で奴には逆らえない妙な空気が出来上がってきた。

 

が、俺の周りの奴らは本気であの化け物を殺そうと考えているらしい。

馬鹿じゃねーのか、爺さん共とコイン遊びだとか言って、飛ぶ鳥をコインを弾いて撃ち落としたりしてるバケモンに敵うわけねぇーだろ!

 

と、思っていたが、あいつらは割りと建設的な作戦を用意してきた。

いくら化け物でも巨大な猛獣を殺処分する猛毒を与えられればひとたまりもないだろう。

成る程、確かにな…どんな猛獣だろうと内側から毒に侵されて抵抗出来る生き物などいないはずだ。

 

 

奴は野生の獣のみてーに殺意に敏感だ。

俺らが行けば感づかれちまう、正直不安だが、その辺のガキを雇って毒入りの飲料を手渡させた。

そうして、奴は――それを飲みやがったッ!

 

この日の夜俺らは盛大な祝勝会で互いの健闘を称え合った。

くくッ…最早あの忌々しい恐怖の根源を消え失せた。

明日からは再び大手を振って出歩けるというものだ。

 

――あら、チンピラさん何か良いことでもあったのですか?

 

翌日、奴は髪の色が全て抜け落ちた以外なにも変わらずピンピンしてやがった。

あの、表情が抜け落ちた不気味な笑みを貼り付けた化け物が。

 

それからというもの、天然の猛毒を持つ蜂、蛇、鰒、果には科学薬品まで試せるものは全て試した…だというのに奴は死ぬ気配一つ見せない。

おまけに、毒を盛った翌日には最近肩が痛いだの、腰が痛いだの態々俺たちの前に現れて言ってきやがる。

天然のよく効くきつ~い()とか…心当たりありませんか?――なんて、普段の変わらない調子で聞かれた時は、背中から冷や汗が止まらなかったぜ、薄っら開いた瞼が俺を見つめてくる。

全身に虫が這うような名状しがたい恐怖が駆け巡らせてきやがる。

 

奴はとっくの昔にに気づいていやがった。

元々気狂いだとわかっていたが、明らかに俺らが毒を盛ってることを遊び感覚で愉しんでやがる。

 

最早完全に敵愾心など削ぎ落とされた、あるのはあの化け物への絶対的な恐怖だけだ。

その日以降、俺達は奴を害する行動の一切を止めた。

 

それからは憑き物がとれたみてーな平和な日常だ。

 

過去何度か俺達と繋がりのあった、ガキを金持ちを相手に売りつける闇商人が久方ぶりに現地調達とばかりにスラム街に現れた。

ご丁寧なことに屈強なガードマンに銃まで携帯してやがる。

マンハントの気取りか知らんが此方に迷惑掛けないなら好きにやれ、邪魔する意味もない。

 

なんて思ってたら、早速ヤらかしやがった!

糞どこだ!?確かこの辺り…いやがった!

 

「うんうん、いいなぁ、身形こそ薄汚い下賤のソレだが、雪の様に白い髪、傷一つ無い陶器のように滑らかな、そう、まるで芸術品のような肌、顔も良い…愛想よく客に振る舞えることも商品価値を高める一つだ、ふふふ…とんだ掘り出し物だ。おい、この最後はこの子供だ。今回の目玉商品だからな丁重に連れてい――ぐゥ!?

 

こいつらの口を急いで塞ぐ。

銃や国の裁きがどうした、俺らはお前の連れてきた図体のデカい馬鹿が化け物に触ろうとしてることの方が怖いわ!

 

き、貴様は確か――が、はぁ゛!?

 

喋んな、奴にお前と繋がりがあるなんて邪推されたら溜まったもんじゃない。

大人しく、そこの化け物を孫可愛がりしてるおっかない爺さん共にでも沈められてろ。

 

よ、よし!気を失ったか、取り敢えずこいつらは隠して、明日爺さん共の所へ運ぶとするか。

 

――翌日、目を覚ました時には死体は消えていた。

血痕も無く闇商人が此処に来た痕跡も一つ残らず消え失せていた、奴からは礼を言われた。

 

危ない所でした…危うく()()()()()()()()所でした。

 

何言ってやがるこの化け物は…こいつがこんなか弱い貴婦女全開のセリフを字面通りに吐くはずがない、逆に攫って殺すのはお前だろう――

 

いや、待て…こいつ、まさか!?

「ま、待て!奴から何を聞き出したかは知らねぇが今回のは無関係だ!」

 

こいつだ…闇商人の奴らが消えた原因は間違いなくコイツの仕業だ。

必死に弁解を試みるも、奴は首を傾けトボけてやがる。

話を聞く気はないらしい…一体何が望みだ。

 

そうでした、今日は先日のお礼に素晴らしい仕事先を教えて差し上げようと思いまして…こちらです、如何ですか。

 

なんだこりゃ…、条件だけ見りゃ破格だがキナ臭い臭いがプンプン香ってきやがる。

こんな怪しいモンに引っかかるのは、それこそ極貧で死にかけてる奴くらいだろ。

この紙切れに書かれた裏をちょっと深読みする頭がありゃ、どれだけ危険な仕事か一目瞭然だ。

最低限度の衣食住なんかと釣り合うかっての。

ま、血に飢えた異常者なら喜んで行くん、だ、ろうが、な……――

 

如何ですか、素晴らしいとは思いませんか。

 

嘘だろ…まさか、行くのか。

 

勿論です、如何ですか。――

 

どうやらYES以外の答えは許されないらしい。

 

ドォォォォッン!

突撃ぃぃぃッ!!

 

案の定戦場と化したな。

いや、この化け物が引き起こしたと言うべきか。

 

はぁ~…んで、武器はこの使い古しライフル一丁とナイフ一本かよ。

せめて拳銃と手榴弾くらいは寄越せよな。

 

さてさて、頼りになる頼みの化け物様はどんな様子だ――

 

おいおい嘘だろ…街角で転がってる鉄屑で作った暗器なんかでヤるつもりか。

げッ…マジか、後ろで兵隊さんらがガン見してくる中武器を捨てんな!

 

「おい!貴様、今すぐ銃を拾え!女といえど兵役に志願した以上敵前逃亡並びに降伏は重罪だぞ!」

 

ほら来たよ面倒くさいのが…おい馬鹿、重罪なのはお前だ。

 

「銃を拾えと言っているだろうッ!」

 

や・め・ろ・ォッ!

戦場で血の気が立つのは分かるが、ソイツに敵意とか向けてんじゃねぇッ!!

 

ギチ…ギチギチぃ…――グルン

 

ヒゥ、油の切れた金属のように筋肉を軋ませながら、奴が此方を向いた。

その瞬間、先程まで怒鳴っていた兵士の言葉が止まった。

 

「あ…あが…あ、あぁ゛」

 

何か言葉を発しようとするが、息は荒れ、全身から脂汗が吹き出ている。

恐怖により言葉が言葉にならないのだろう。

 

見る者に全てに言い知れない不安と恐怖をを与える不気味な微笑み。日頃から糸のようにに薄く開かれた瞼は、ギョロギョロと完全に開ききっており、濁りきった光一つ映さないドロりとした赤黒い血の玉石が此方を捉えて離さない。

 

いつ見ても慣れない、あの目に捉えられた瞬間に感じる濃密な死の気配。

根源的恐怖を無理矢理叩き込んでくる血に飢えた化け物の目。

 

――バタン

 

チッ、情けねぇ兵隊さんだ…気絶しやがった。

よかったな、今のこいつは敵意と殺意に反応する獣だ、あのままだったら帝国兵なんかより真っ先にお前が殺されてたぞ。

 

――ガチャ

 

っと、そろそろ行くか?

死なねぇようにしっかり辿っていくとするか…バケモンが作る死体の道を通るのが一番の安全地帯だろうしな。

 

 

☆☆☆

 

敵陣に向け放たれた砲弾が着弾すると同時に、ライデンシャフトリヒ所属の陸軍兵がGew9を抱え敵軍に向け走り出す。

 

その後方、砲撃による目を潰すような眩い閃光が一面を照らす。

せの極光がナニか反射しドロリと紅い光り輝いた瞬間――

 

ドンッ

 

地を蹴りつける足音が鳴り響く。

砲撃により舞い上がった土煙の中を迷いなく突き進み、戦線を維持する兵士を悠々と追い抜き敵軍へと肉薄していく。

その速度は到底人間のものとは思えない人外の挙動。

獣のように身を屈め、機関車と見紛う速度でジグザグと的を絞らせず突き進む。

 

敵陣までの距離残り数キロ、瞬き一つせず瞳孔をギラギラと輝かせる獣は、ズボンのポケットから無骨な鉄の板、掌に収まる薄い正方形であり角を研いだだけの粗末な鉄屑を取り出し投げつける。

通常であれば驚異にすらなりえないお粗末な攻撃手段。

しかし――

 

ド、ちゅ゛

 

人外の膂力を発揮する化け物の手から放たれたそれは、遥か数キロ離れた帝国兵の目玉へと回転を伴い抉り込む。

そのまま眼窩の骨ごと肉を切り裂き脳味噌まで到達し暫く漸く止まった。

 

続けざまに連続で投擲。

戦線の弾幕を形成する敵兵の左目、頸動脈、口内のへと滑り込ませ頸椎の神経完全に破壊する。

 

投擲した数は30枚、その全てが帝国兵へと致命の一撃となって襲いかかる。

この間たったの数分、その一瞬で帝国の勢いづいた戦線は崩壊した。

 

右手にはマチェーテを握り、左手には鉱山から零れ落ちた小石をポケットに詰め、握りしめる。

そして再び敵陣目掛けて走り出す。

再び戦場に一筋白銀の閃光が流れ落ちる。

 

 

ガルダリク帝国側は訓練された動きで敵を迎え撃とうと銃剣の切先を向ける。

 

「どこだ!?出てきやがれッ!!怯むな!敵は女一人――なッ」

 

自軍を鼓舞するように、兵士のド号が土煙吹きすさぶ戦場に木霊する。

超低姿勢のまま接近を悟られず敵兵の前に姿を現すアレイダ、帝国兵が眼前に捉えた瞬間、勇敢な兵士な顔青白く血の気が引き恐怖に彩られた。

 

その様子に反応することもなく無慈悲にマチェーテを淀みない動作で軽く首に滑らせ、そのまま速度を落とすこと無く突き進む。

後には、胴体と頭が切り離された物言わぬ肉塊が転がっていた。

 

心臓が痛い程に脈打錆びついた機構に油を流し込むように全身に循環する。

その身に宿る本来のスペックが徐々に引き出されていく。

全身の筋繊維に伝わる電気信号まで完璧に連動させ一切の無駄を無くし地を蹴り首を刈り取る。

 

「馬鹿なッ!?一人であの戦線を突き抜けてきたのか!」

「前線の奴ら何やってんだ!」

「集中砲火だッ゛!なんとしても食い止めろ!戦線を崩したのその女だ!」

 

言語、倫理観、道徳、善悪、人間である全てを切り捨て獣の世界に身を投じる。

研ぎ澄まされる五感の中で感じ取れる、数多の兵士達から向けられる激しい憎悪殺意――

 

ニ ッ チ ゛ァ~~

 

化け物は心底愉しいと言わんばかりに、口角は釣り上がる。

それを見た兵士達は皆一同未知の恐怖に顔を引きつらせた。

 

「う、撃てェ゛!!」

「死にやがれ化け物がッッ゛」

 

――ジャリ

 

向けられる銃口は軽く数えただけでもニ桁に登る。

が、アレイダは怯むことなく敵陣の中へと猛スピードで接近。

左手に握り込んだ小石を指の腹にセットすると親指の爪で弾くように打ち出した。

 

銃弾と紛う勢いで射出された小石は吸い込まれるように兵士の眼球を穿ち脳味噌の中枢まで肉を轢き潰しながら突き進む。

 

「な!?おいどうしたッ!―ぐっあ」

「巫山戯るな!なんであんな化け物がこんなところに―ぐッ!?目が、ぁ゛」

 

敵陣を縦横無尽に駆け巡り娯射を誘うように立ち回る。

小石により眼球、喉、口内を人間の急所を執念に叩き潰す。

 

目指すは指揮官の首。

殺意を向けてくる相手は全て等しく肉の塊へと変えていく。

後に続くのは帝国軍の死体で舗装された道を進むライデンの兵士達。

アレイダが引き起こした惨状を目の当たりにし、困惑と恐怖に顔を歪めながらも自身に課された使命を全うする。

 

速度をまるで落とすこと無く、廃材から生み出されたスローインナイフで急所を穿ち。

時にはアキレス腱を抉り首を切飛ばすし前進する。

 

それから約数十分後、ガルダリク帝国の指揮官が討ち取られた知らせと共に、ライデンシャフトリヒの中央軍部に防衛の成功と勝利が知らされた。

帝国軍の夥しい死者数と共に。

 

 

 

 

 

 




主人公 
名前:アレイダ。
ライデンの極貧スラム育ち、転生者。
元の髪の美しいプラチナブロンド、幼い頃の劣悪な環境&毒盛られまくって雪のような白髪化。
目元も、口元もニンマリ不気味な微笑みを崩さない。見る者に不安を抱かせる不気味な微笑みを貼り付けた鉄仮面フェイス。糸のようにに薄く開かれた瞼からは、濁りきった光一つ映さないドロりとした赤黒い血の玉石が見える。

性格
比較的楽観主義者。
戦時中とは思えない程度には前世の能天気な性格を引きずっている。
一度死を経験したことにより割りと自身と他者に拘わらず生死感がガタガタ。
ただ別に好き好んで殺したり、死にたい訳ではなく、可能なら平和に穏やかに暮らしたいと思う程度には狂ってない。
ちなみに字は読めないし書けない。

能力
ファンタジー系チート虚無のフィジカルお化け。
見かけは中背中肉の美女だが、生まれながらに筋骨密度がエゲツナイ強度を誇り、体重は軽くひゃく(グチャ
エゲツナイ五感。
日常的に力をセーブしている為、普段の力は全力を出してもチンパン程度。(筋肉使用率50%)
異常に進化した肉体性能故に原始本能にも忠実、向けられた殺意と敵意対し過剰とも言える防衛反応が現れる。(筋肉使用率100%)
殺意+本人が危機敵状況に追い込まれた瞬間、完全に本能に飲み込まれ意識も記憶もブッ飛ぶ。敵味方判別せず殺意を向けてくる相手はスべからず皆○し(筋肉使用率120%)


武装
造船工場付近に廃棄された鉄屑、辺を尖らせたちょっと分厚い鉄の板(手裏剣もどき)
ハサミとか色々加工した鉄屑(スローイングナイフもどき)
石ころ(ただの石)
マチェーテ(スラムの爺から貰った)
ナイフ(支給品)
銃(捨てた)


反応あれば続き書くかもです。
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