脳依紫那は天才である   作:緑川翼

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【御注意】
・作者は文系なため、理系の方からすると検討違いな事を書いているかも知れませんが、ご容赦下さい。
・所々他作品のオマージュネタが入っていたりしますが、二次創作故に笑って見逃して頂ければと思います。
・口田君と黒色君は雄英高校普通科に在籍している設定です。ややこしくて申し訳ありません。


知性に愛された少女

 

「邪魔よ」

 

 少女の、戦場には不釣り合いにも聞こえる呟きと共に、彼女の五つの指先から電気の弾丸が無数に放たれた。放たれた弾丸は複数のロボットに直撃し、それを破壊する。

 

 

 ──ここは雄英高校の実技試験会場。

 

 

 巨大なレプリカの都会の中で、数多の仮想(ヴィラン)ロボットと夢と自信に溢れて()()生徒たちが戦っている場所である。

 

 

「ひっ、ひぃっ…」

 

 ここで腰を抜かしている男子生徒もまた、ここにくるまでは自信に満ちて輝かしい将来を疑っていなかった。

 

 しかし、思い知らされる。学校じゃ一番強い"個性"を持っていたとか、なんたらの大会で賞を取ったとか言う実績は、ここでは持っていて当然。その程度では生き残れないと。

 

 生き残るのはよっぽどの"個性"を持っているか、丹念に"個性"を鍛練した者。もしくは…、()()()()()()()()()だけ。残念ながら、この生徒はそのどれでもなかった。

 

 ロボットが、小さい物と大きい物が2体。男子生徒を仕留めんと寄ってくる。動けない。もう終わりだ。男子生徒は衝撃に備えて目をつぶる。

 

 

「──パウリ・ショック!!」

 

 バリィッ、ガン、ガン!と鈍い音が響き、その後は奇妙な沈黙が残った。

 

「えっ? え?」

 

 覚悟していた衝撃がいつまでも来ず、男子生徒が恐る恐る目を開けると、そこには麻痺して動けなくなったロボットが2体、倒れていた。

 

 

「大丈夫?」

 

 地に伏している男子生徒の上から、一応、心配した風の、冷たい声が聞こえる。

 

「えっ、あ…ありがとう…?」

 

 声の先を向けば、先程まで電気の光線でロボットを破壊していた少女が立っていた。今もまた、少女は男子生徒の方を見ずに、辺りのロボットを掃滅している。

 

 

「周辺に仮想敵ロボットの反応無し…殲滅(せんめつ)完了ね」

 

 腕を下ろし、弾丸の発射を止めた少女が振り向いた。男子生徒はつい息を呑む。美少女だ。複数の瞳孔を持ち、温かみのない冷淡な目をした、肩までうねる黒髪の美しい少女に、男子生徒はついどもる。

 

 

「あ、あのっ!」

「──発見。ごめんなさいね。もう行かないと」

 

 結局、男子生徒の方を一瞥もせずに、少女は消えていった。チラリと、少女の足が地面から浮いているのが見えたが、それで速かったのだろうか。

 

 

「はぁ…」

 

 男子生徒は溜まっていた息を吐く。凄い少女に助けられたものだ。

 

 《電気の光線》に《浮遊》、恐らく《なんらかの索敵能力》まで。恐らく電気系の"個性"なのだろうが、一体どんな"強個性"なんだろうか。

 

「ん‥? ……いやいや‥」

 

 電気、うねる黒髪の美少女。男子生徒の脳裏に、一人の少女の名が浮かんだが、すぐに否定する。そんな筈がないし、そもそも、その彼女は“無個性”だ。

 

 

「……よし!」 

 

 抜けていた腰も戻った。自分もうかうかしてられない。もう合格は望めないだろうが、せめてあの少女に恥ずかしくない結果を残さないと。そう思いながら、男子生徒は行動を再開した。

 

 

──男子生徒は気づいていない。

 

 自分の推測が当たっていることを。

 

──男子生徒は気づいていない。

 

 自分を助けた少女が、"無個性" であることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─とある少女の肖像──

 

 

 その赤ん坊が生まれた時、父親はごくありふれた病院の新生児室にその娘を入れた。

 

 

 大手IT企業の取締役である彼であれば、その娘をいくらでも良い環境に置けたのに。

 

 

 …何故?

 

 

 ──(いぶか)しんだのだ。

 

 

 ()()()()()と、それとは対照的に()()()()()()()()()()()()を持って産まれた、見るからに異形型の“個性”を宿して産まれたその赤ん坊を、本当に自分の娘かと、父親は疑ったのだ。

 

 実際には遺伝的要因による先天異常だったのだが、産まれる前から“個性”を持つ赤子もいる事から、医師も親も、その赤ん坊を異形型の“個性”を持って産まれたのだと判断してしまった。

 

 "個性"の突然変異の例はあれど、両親共に発動型の"個性"であり、元々“個性婚”で夫婦仲が不仲であった結果、不貞の子かと疑われたその娘は、一般的な新生児室に預けられる事になる。

 

 

 

 ──ごく普通の、十数人の赤ん坊をまとめて世話をする一般的な新生児室だったからこそ、消灯前、娘がその小さな手に()()を握っていた事に、誰も気が付かなかった。

 

 

 翌朝、予想外の()()に父親は目を見張らせることになる。

 

 

 ──彼は見たのだ。自分のベッドですやすやと眠る我が子を。

 

 

 何時からか隠し持っていたガラス片で‥己の短い左腕を掻き切った後で!!

 

 

 更に異常であったのは、娘が()()()()()()()()()()()()事だ。つまり娘は…神経を傷付ける事無く片腕を切り落として見せたのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!

 

 

 この事件は、娘が大きな頭部を持っていた事から知能に関する“個性”を有していると判断され、幼少期に起こりがちな"個性"事故として処理される──

 

 

 

 ──筈だった。

 

 

 

 娘は"無個性"だった。

 

 

 異形型の様な容姿でありながら、これ程の事を成す程に高すぎる「知能」を持ちながら、事件後の検査で娘からは一切の"個性因子"が検出されなかった。

 

 

 つまり‥この娘は()()頭部が大きく、()()産まれながら天才だったのだ。

 

 

 

 "個性"至上主義であった父親は娘のその歪さを認められず、有り余る金を使い、()()()()()()()()()

 

 

 母親の消極的な反対により殺す事はしなかったが、娘は産まれて数日後に肺炎で亡くなった事になり、一切の父親との関係を抹消された後、孤児院の前に捨てられた。

 

 

 

 ──大きかった頭部に追い付く程に体は成長し、孤児院で赤ん坊は少女へと成長する。

 

 

 脳依(ノウイ) 紫那(シナ)──と名付けられたこの少女はとある事情から公安に引き取られた時、物語は始まったのだろう。

 

 

 ──1人の天才が‥とても大げさな言い方をするなば‥()()()()()までの物語が。

 

 

 

 これは知性に愛された──とある少女の肖像

 

 

 




脳依紫那(ノウイシナ)
・この小説の主人公。
・肩まで伸びるうねる黒髪と、3つの瞳孔が重なった目が特徴的な美少女。
・オール・フォー・ワンに関係なく“無個性”で、今後“個性”を持つ展開は絶対にない。
・超甘党
・クールな性格だが、“無個性”の単語を聞くと割とすぐにキレる。
・怒り方が実は父親とそっくり
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