脳依紫那は天才である   作:緑川翼

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・お久しぶりです。コロナに罹患してダウンしておりました…。皆様もお気を付け下さい。
・残酷な描写があります。ご注意ください。


少女の悪意

 誰もいない隠れ家的な酒場。そこにバシュッと一瞬、青白い光が輝く。その光が収まった時、無人だった筈のバーに、3人の人影が現れた。

 

「ここは…、アジトのバー…?」

 

 黒いモヤを紳士服で包んだヴィラン、黒霧が辺りを見渡しながら呟く。間違いなく、ここは(ヴィラン)連合がアジトに使っているバーだ。

 

 しかしUSJ襲撃の出入り口は自分の“個性(ワープゲート)”が受け持っていた。その自分がオールマイトに取り押さえられ、ワープゲートの展開を封じられて尚、どうやってここまで瞬間移動(テレポート)したのか。

 

「もちろん、ワタシがテレポートさせたのよ。身体がバラバラになってない…ってことは、設定にミスはなかったみたいね。ファストトラベルが成功して良かったわ」

 

 黒霧の、その疑問の籠もった眼差しに気が付いたKL-E-O(クレオ)は気絶している死柄木を持ったまま、その紫那に瓜二つな顔を黒霧に向けて…と言うよりは、黒霧を観察しながら答える。

 

 ……ワープ、そんなこの現代(超常)社会でも考えられないSF技術をこの女は持っているのか? そもそも、この脳依紫那と瓜二つの容姿は何なのか?

 

 様々な疑問が、黒霧の脳内を駆け回る。しかしそれを尋ねるよりも早く──

 

『黒霧は拘束されたのかい? 君がいてくれて助かったよ、クレオ』

 

 ──KL-E-Oの言葉に反応したのは、バーのカウンターに置かれたパソコンの向こう側にいる男だった。

 

 

「2人とも…まぁ無事よ。これで、更に貸し1つね」

『勘弁してくれ。君には貸しが大量に溜まってるんだ。これ以上増えたら破産してしまう』

「あら、それも面白そうね? えェ、本当に興味深いわ」

『おっと、これは失言だったかな?』

 

 男とKL-E-Oは親しげに話す。ハハハ、フフフと朗らかに笑い合う2人から感じる何とも形容しがたい()()に、会話を聞いているだけの黒霧は背筋に冷たい物が走る感覚を味わっていた。

 

『ああそうだ! すまないが死柄木の目を覚まさせてくれるかい? 今回の講評を行わなければ』

「いいわ。大変ね、教師役も」

 

 KL-E-Oはそう言いながら、死柄木の首に指先から電気を流す。ビクッと死柄木は痙攣(けいれん)し、目覚める。

 

「ってえ…。何処だここ…」

「アジトのバーよ。おはよう死柄木クン。ご機嫌いかが?」

「テメこのっ…、クレオォッ!! 何だその(ツラ)は?!」

 

 倒れた自身を覗き込むKL-E-Oを視認した死柄木は勢いよく上半身を起こしてKL-E-Oの首を4本の指で絞める。

 

「ナァおい何だその顔はよォッ!? 何であのチート女にそっくりの面してやがんだ?!」

 

 KL-E-Oは死柄木と初対面の時…彼が先生と呼ぶ人物から協力者だと紹介された時から、覆面で顔を隠していた。

 

 “個性”関係や単純に(ヴィラン)故に顔を見られたくないだけかと思って放置していたが、こうもあのチート女(脳依紫那)に似ているなら話は別だ。

 

 

「別に、隠していたのにはそこまで大した理由はないわ。ただ…紫那には隠せるだけ隠しておきたかったから。ワタシの顔を知ってたら、アナタは(紫那)を見た時に反応してしまうでしょう? えェ、確実にするわね」

「ハァ?アァ…クソッ! 脇腹が痛え…!! アイツ(脳依)に思いっきり殴られたからな…。クソッ! 国家公認の暴力だ…!」

 

 

 紫那へ対する怒りとKL-E-Oへの疑惑で、KL-E-Oの喉に掛けた指へ込められる力が強くなる。後一指触れれば崩壊するというのに、すまし顔のKL-E-Oに死柄木は更に苛立つ。

 

「ムカつくなぁ…! そのニヤケ(つら)、チリにしてやろうか…!」

「アハッ…! ()()()()()()

「は? なにッ…!」

 

 KL-E-Oは浮かされていた死柄木の小指を掴み、自分の首に接触させた。──しかし、()()()()()()()

 

 馬鹿な、条件は満たしている。だが一向に崩壊が始まらない。死柄木はKL-E-Oの首を握り締めたまま混乱する。

 

「なんッ、でたよオイッ! 何の“個性”だ?!!」

「さあ? 自分で考えてみたら?」

「テメェッ!!」

『──あまり僕の生徒を(いじ)めないでくれるかい、KL-E-O?』

「……先生」

 

 ようやくモニターの向こうにいる存在に気が付いた死柄木は落ち着きを取り戻し、KL-E-Oから手を放す。

 

『手酷くやられたようだね。死柄木弔』

「……脳無は簡単にやられた。クソッ…! なんでバックドロップで爆発音がするんだ? 平和の象徴は健在だった…! 話が違うぞ、先生……!」

『違わないよ。ただ、オールマイトへの見通しが甘かったね』

『うむ…。No.1ヒーローと、その母校をなめすぎたな。(ヴィラン)連合なんちうチープな団体名でよかったわい』

 

 モニターの向こうから、先生と呼ばれた男とは別の、しわがれた老人の声が聞こえた。その老人はところでとKL-E-Oに言葉を向ける。

 

『ワシと先生の共作、脳無は? テレポートで回収はできなかったのか?』

F・T(ファストトラベル)に設定しておかなければ、テレポートできないわ。それに、ワタシはあの()()()()には否定的だったし? えェ、本当に持って帰る気なんて起きなかったわ」

『そう言わないでくれ。君から見れば玩具(オモチャ)でも、オールマイト並みのパワーを持たせたアレは我々の力作だったんだ』

 

 

 つまらなそうに言うKL-E-Oに、男は笑いながらそう返す。

 

 元より高かった男の科学技術は、KL-E-Oの合流によって更に高まった。オールマイト並みにパワーを持たせたと言えども、それを越える()()()()()が見えてきた今、1体2体の損害を気にする必要はない。

 

 とは言え脳無が技術の結晶である事には違いなく、脳依紫那に見られる前に回収出来るのならしたかったのも確かであった。

 

 

「……パワー。そうだ…、1人…、オールマイト並みの早さを持つガキがいたな…」

『……へえ』

 

 KL-E-Oと男の会話をバーのカウンター席に座って聞いていた死柄木が、ふと思い出した様に言う。画面越しにそれを聞いた男は、興味深そうに相づちを打つ。

 

「そうだ…! あの邪魔がなければあのチート女を殺せたかもしれない…。あのガキがっ…!」

 

 段々と苛立ってきた死柄木は、そのストレスを晴らす様にガリガリと首を掻く。ドクターに流されたが、KL-E-Oの謎がほぼ解決していない事も更に死柄木を苛立たせた。

 

 それをモニターの向こう側から察した男は、興味深いその話は後でKL-E-Oから聞くことにして話題の舵を大きく変える。

 

『悔やんでも仕方ない! 今回の襲撃だって決して無駄ではなかったハズだ。精鋭を集めよう! じっくり時間をかけて! 我々は自由に動けない。だから、君の様なシンボルが必要なんだ』

 

『──死柄木 弔!! 次こそ君という恐怖を世に知らしめろ!』

 

 男の言葉を薪に、顔に装着した人の手の間から覗く死柄木の目に秘められた憎悪は更に暗く燃える。それを、KL-E-Oは面白そうに眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──昔は、人間が頭の悪い猿が何かに見えていた。

 

 

『うわー…ひでー…。俺、こんなんされたらもう生きていけないっすわ』

 

 薄い壁に貼られた大量の落書きじみた絵、微妙に薄暗い蛍光灯。──これは夢だ。まだ紫那が孤児院にいた頃の夢。

 

 

 孤児院に似合わぬ黒いスーツ姿の男が、顔を青白くさせて部屋から出てくる。その光景を今よりも遙かに幼い紫那は、()()()()()()()()を弄くりながら眺めていた。

 

──懐かしい記憶だ。脳依紫那という少女の、始まりの記憶。

 

 

『そんなに酷いの?』

 

 同じくスーツ姿の、ベージュ色の髪を後ろに纏めた女が部下らしいその男に問いた。

 

 この孤児院の責任者に事情聴取を行い、院から紫那以外の全員を退出させていた女は、()()()()を見ていなかった。

 

 

 ──この男と女は、警察でなければこの孤児院の職員でもない。この異様な事件の調査と、()()()()()()()勧誘(スカウト)に来た、公安の人間だった。

 

 3歳の児童でありながら()()()()()()()()()()()()“天才”で、孤児であり何の後ろ盾も持たない紫那を、公安組織へ勧誘するために。

  

 

 部屋の内部について聞かれた部下の男は冷や汗を流し口を引き()らせながら、答える。

 

『酷いなんてモンじゃ…。だってアイツ…、もう()()()()()()()()()()()っスよ…。逆によくあんな状態で生きてるもんだと感心しますわ』

 

 この男と女、そして紫那以外の子どもと職員は、一旦外部に退出している。だから、その部屋を見た者は少ない。

 

 建付けが悪く、男の閉めたドアはまだ少し開いている。そしてその向こうに…人間()()()()が転がっている様子が、ゴワゴワになったマットレスの敷かれた床に座る紫那には見えた。

 

 

──新鮮な人体がずっと欲しかった。だから、誰かがくれたんだと思っていた。

 

 まず逃げないように足の腱を切った。それで叫びだしたから、夜は静かにしなくちゃイケナイと思って、声が出ないよう舌を切って喉に針を突き刺した。それでも暴れるから地面にくっつけた。それからずっと見たかった腕の中身を観察した。皮を剥がして、肉を切り落として、骨を割った。人間の内側にも興味があったから腹を割いて、中身を取り出して、観察した。その頃にはもう静かになったから、色んな所を見た。目ん玉の後ろも、血の通り道も、臓器の内も外も。図鑑でしか見たことの無い所をいっぱい観察した。もちろん殺していない。殺すのがイケナイ事だと、幼くても知っていたから。

 

 部屋に転がっているのは、そのなれの果て。

 

 

──アァ…、楽しかったなぁ、あの時は。

 

 

 始めての解剖。大した道具もなく、今思えば杜撰なやり方だったが、本でしか知らない物事を自分の目で確認するの大切だ。あの素晴らしき経験は、今でも紫那の中に残っている。

 

 

 気持ち悪そうに汗を拭う部下の男に、上司の女は話の続きを促す。

 

『それで?』

『あっ、と。アイツは、例の連続幼児誘拐犯で間違い無さそうっスね。指紋は…指ごと全部無くなってたっスけど、耳は残ってたんで、耳紋は採れました』

 

 後から知った話だが、あの日の昨晩に紫那の寝込みを襲ったのは、女性を中心に姿形の整った児童を(さら)っては外国に売り飛ばす凶悪ヴィランであったらしい。

 

 物心付いた頃から隻腕(せきわん)であった紫那が家電量販店で揃えた道具だけで意志のままに動かせる義肢を作った事が地方新聞に載り、その後々美しく育つであろう姿を見て、ヴィランは紫那に目を着けたのだと、紫那は後々耳にした。

 

 

『聞いた限り、どうして生きているのかが不思議なのだけれど』

『まあ見た感じ、失血死もショック死もしなかったから死んでないって感じっスかね。一応これから()()()()()病院に運ぶっスけど、あれ以上衰弱したらどうなるか…』

『そう…』

 

 世を震撼させたヴィランの末路にしては、哀れな終わりだ。それにしてもと、部下の男が幼い紫那を見ながら言った。

 

『ホントにこんな幼い子がやったんスかね。人間を生きたままバラすなんて…。まだ3歳かそこら辺でしょう? それに…』

『……ここのスタッフの話を聞く限り、この子は典型的なサヴァン症候群の子どもね。ウチ(公安)で保護しているあの子の様に、何の訓練も受けていない子が1人で10人以上を救助してみせた例もある。』

 

『──…“()()”はいるのよ。私たちの狭い常識だけでこの子を判断するのは、危険よ』

 

 “天才”。人の言葉を知らない紫那も、それを()()()()()()()である事は知っている。だから、幼い紫那は自分を呼んだ黒いスーツの女の方を向いた。

 

『……あれ? その子、こっち見てます? さっきまで手遊びしてたのに…』

『……まさか、私たちの言葉を理解しているの?』

 

 

──喋れなかったのではない。ただ、あの頃は周りの人間が話す言葉を猿の言語だと思っていたから、話す気にならなかっただけだ。理解はしている。“天才”、それは私を指す言葉。そして…

 

『義手作ったりこんな早く言葉覚えたり、天才ってすごいっスね。()()()()()()

 

 

 ──それ(“無個性”)は、私を侮辱する言葉だ。

 

 

『──ッ!! 危ない!』

『えっ? うわッ!!』

 

 幼い紫那は男の腱に向けて腕を振るう。中から、鋭いメスを生やした(義手)を。

 

 異変を察知した女の言葉に助けられ、咄嗟に足を上げた男は、紫那のメスを間一髪で回避した。今までの無表情と違い苛立ちを顔に浮かべる紫那は、仕留め損ねた男を不快そうに見る。

 

『えっ、危な!! なっ、何でいきなり?!』

『……貴方の言葉が、この子の()()でも踏んだのでしょう』

 

 慌てて紫那を取り押さえようとする後輩の男とは異なり、女は冷静に抵抗する紫那を観察する。

 

 紛うことなき天才、しかし…“無個性”。この暴れっぷりからして、“無個性”という単語を嫌っている事は確実。そんな分かりやすい歪みを持つこの少女を放置しておけば、将来何らかの危険思想に取り憑かれかねない。

 

 

『……今の内に、私たち(公安)の手中に取り込んでしまうべきね』

 

 頭の硬い公安上層部も、この少女が結果を出し続ける限りは危険性を理由に非道は行わない筈だ。 その間に、社会常識や世の渡り方を教えられるかもしれない。

 

 この時この女…将来公安のトップまで上り詰める女傑がそんな風に考えていた事を、紫那は勝手に独立した後に知った。

 

 

『……お嬢ちゃん』

 

 部下の男に激しい抵抗の末取り押さえられた紫那の目線に合わせて、女は膝を折る。小さな紫那は、身動き取れずに苛立った表情で女を見つめる。

 

『私たちは公安という組織の人間よ。もし貴女が自分の才能を活かしたいと…いえ、“無個性”だと愚弄(ぐろう)されたくないと思うのなら、私たちと一緒に来なさい』

 

 そう言って、返答が『YES』なら手を取れと、女は紫那の前に手を差し出した 。

 

 男はその言葉に紫那を拘束したまま驚きに目を見張る。わざわざこの気難しい少女に問い掛ける必要など無く、ただここ(孤児院)の職員に話を通せば済む話だからだ。

 

 その意外な問い掛けに、ニュアンスを理解した紫那も驚き、熟考する。そして…

 

 

──結局、この日の選択が正しかったのか、今の紫那にも分からない。

 

 しかしあの時の紫那が、自分自身の選択で女の手を取ったのは、確かな事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…」

 

 

 ──懐かしい夢を見た。

 

 

 紫那が3歳の時の思い出で、流石の天才と言えど曖昧な部分が多くなる幼少期の記憶の中でも特に鮮明に覚えている。

 

 寝起きの心地良い微睡(まどろ)みの中で、紫那は自分が雄英の保健室にいる事に気が付いた。優秀な脳は素早く回転を始め、紫那はUSJで気絶した事をすぐに思い出した。

 体感的にはよく寝た気分だが、閉められたカーテンの向こうから頂点に昇りつつある太陽の光が見える。寝落ちしたのは13時から14時の間くらいの筈で、まさか丸一日寝ていたのだろうか。

 

「ああ、ようやくお目覚めかい? よく一日中寝れたモンだね」

 

 そう疑っていると、閉められていたカーテンが開けられてリカバリーガールが現れた。やはり、一昼夜眠っていたらしい。

 

「……ええ。おはようございます。あの後、どうなりました?」

 

 紫那の記憶が正しければ、紫那が気絶した時にはクレオと主犯格のヴィランは逃げており、また増援の教師(ヒーロー)陣も来ていたはずだが。

 

「今日は休校になったよ。被害については…緑谷のボーヤの他に大怪我をした生徒はなし。イレイザーと13号も、大怪我はしたが命に別状はなかったさ」

 

 具体的に言えば、13号が自分の“個性(ブラックホール)”で背中から上腕にかけて(えぐ)ってしまって重症を負い、イレイザーヘッドが脳無に握り潰された両腕を粉砕骨折したが、どちらも()()()()()()()()()()()()()()()()らしい。

 ついでに聞くと()()()()()()()()()()()()()()()らしいが、いくら衰えたとは言え彼がそう簡単に傷付くとは、紫那にも思えない。

 

 情報を整理しつつ、紫那はベッドから下りる。ヒーロー基礎学の授業中に寝落ちしたので当然なのだが、ヒーローコスチュームを着たままだった。

 

 紫那がを寝返りを打たず寝汗をかかないように身体(からだ)を作り変えておかなければ、結構酷い事になっていたかもしれない。

 

 ベッド脇に置かれたパイプ椅子に座って、紫那はリカバリーガールに新しい疑問を尋ねる。

 

「こちら側については分かりました。では、(ヴィラン)に関しては?」

「逃がした主犯格の3人以外の(ヴィラン)は例の脳無含めて全員逮捕されたよ。残った3人も既に調査は始まっているね」

「……なるほど」

 

 そう相づちを打ったタイミングで、紫那のお腹がクゥ~と小さく鳴った。紫那とリカバリーガールの間に、ちょっとした沈黙が流れる。

 

 ……紫那の身体を形成する『変異細胞』は、あらゆる細胞に変異する万能の細胞である。しかし変異には当然相応のエネルギーが必要であり、腕を2度生やすという荒技には莫大なカロリーが求められた。

 

 

 つまり紫那は今…、とても空腹だった。

 

「……すいません」

「ま、丸々一日寝てたらお腹も減るかいな。何か持ってくるからそれまでペッツをお食べ、ペッツ」

「……ええ、いただきます」

 

 ヒーロー型の容器から出された甘酸っぱいラムネだかキャンディだかを舐めながら、紫那は(ヴィラン)連合について…、特にKL-E-Oについて考える。

 

 何時かは相見(あいまみ)えると思っていたが、良く分からない連中と一緒とは。さて、どうなるか…。紫那はその優秀な頭脳を回転させ、今後の展開を予想する。

 

「ほれ、足りないかもしれないが、取り敢えずこれをお食べ。美味くはないが、栄養にはなる」

「……! シュガーボム!!」

 

 渡された皿に盛られていたのは、一食で一日の糖分摂取量の100%を賄えると謳うシリアル(砂糖爆弾)だった。確かに、体力を消費させるリカバリーガールの《治癒》と相性は良いかもしれない。

 

「甘すぎて口に合わないかもしれないけれど…」

「いえ、問題ないわ。すべて頂かせて貰います」 

「ああ、そう…」

 

 何か言葉を言い切る前に(さえ)った紫那に、リカバリーガールはその甘党っぷりに呆れる。

 

 実際、エネルギー不足とはいえ天才…、高校生らしからぬ勢いでシリアルを(むさぼ)る紫那は、誤魔化しようもなく甘党であった。

 

 

「ああそうだ、それを食べたら──」

「やあ! そろそろ目覚めたかい?!」

「……根津校長」

「YES!! ネズミでもキツネでもないその正体は…校長さ!」

 

 保健室の扉を開け表れたのは、ネズミの様な見た目の根津校長だった。根津校長はリカバリーガールへの挨拶もそこそこに済ませて、紫那に言う。

 

「すまないが脳依君には準備ができたら会議に参加してもらう! 今回の件に関する重要参考人としてね!」

「ええ、まぁ…著明で自明で明白ね」

 

 USJ襲撃の主犯格と見られるKL-E-O。その関係者として、紫那は知ること全てを明示する責任がある。どう説明したものかと、紫那は面倒くさそうに最後の一口を口に入れた。

 

 




紫那の過去話に登場した誘拐犯はタルタロスでステインに斬り殺されたヴィランのイメージです。
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