違和感、不審な点が御座いましたら、ご指摘下さるとありがたいです。
「ああ、私が最後でしたか」
紫那が軽食を取り学校備え付けのシャワーを浴び、一日中着ていたコスチュームから制服に着替えてから会議室に入れば、そこには根津校長やオールマイトを始めとした雄英教師陣が座ってた。
ただ相澤先生と13号は怪我の為か、当事者ながら欠席している。
紫那は
その男は紫那の視線に気付き、朗らかに警察手帳を取り出して自己紹介をする。見た目通りの温厚そうな声だった。
「
「……えぇ、よろしく」
チラリと
当然の様にその姿で会議に参加しているが、オールマイトの大怪我は社会一般に秘匿されている重大な秘密事項だ。
教育の業務に関わる雄英の教師達にある程度の真実を知らせるのは仕方ないが、警察相手とは言えこうも気軽に伝えて良いのだろうか。
その紫那の疑問を感じ取ったのか、オールマイトが補足する。
「警察の内でもこの姿について知っているのは彼くらいだ。何故って!? 彼は私と最も仲良しの警察だからさ!」
「ハハッ、何だその紹介。兎に角、私がオールマイトについて何かを言いふらす事はないと誓うよ」
本人の談は別にしても、オールマイトとがそう言うならと紫那は疑惑の眼差しを収める。
「生徒の疑問が解決した所で、会議を開始しようか!」
紫那が空いていたオールマイトの隣の席に座り、根津校長がUSJ襲撃に関する会議を始めた。
しかし生徒への聞き取りは昨日の内に済んでいたらしく、一生徒である紫那には当日の出来事について想定していた程の質問はされなかった。
そして…、
「……では、脳無は『改造人間』ではなく『フランケンシュタインの怪物』だと?」
「ええまぁ…、脳内の電気信号の伝達速度等を見るに、そう考えるのが適切かと」
脳無は生きた人間に改造を施すのではなく死体を寄せ集めて作られた、まさにフランケンシュタインの怪物と言うべき存在なのは間違いない。
最も、独力でドイツ語やフランス語を学んだ原作の怪物に比べて、脳無の知能はかなり低そうだが。
単純な命令に従うだけの知能は、敢えてそこで抑えたのかそこが限界なのか。1度2度視認しただけでは、流石の紫那にも分かる事には限度がある。
「これ以上の詳しい事は研究所で調べなくては何とも言えません。後ほど、被検体を私の
「ああ、分かった…。その様に手配しておこう…」
脳無を捕らえている塚内警部が、深く何かを考えながら答えた。話を聞いていた教師陣も、深刻な表情で話し合う。
「“強個性”ヲ複数持ッタ人造人間カ…」
「
「オールマイト並みの…。あまり考えたくないわね…」
脳無に関する情報の共有が済んだ所で、塚内警部が前に立って警察の行った
昨日今日では分かる事も少ないだろうが、
「主格と思われる死柄木 弔に関してですが、死柄木という名前…、触れたモノを粉々にする“個性”…。20代~30代の個性登録を洗ってみましたが、該当なしです。《ワープゲート》の方、黒霧と言う者も同様です。
「無戸籍かつ偽名か…。個性
「何もわかってねぇって事だな…」
ガスマスクにガンマン風のコスチュームをしたスナイプが気落ちした様にそう言ったが、紫那はそう思わない。紫那は手を挙げ、自分の推測を述べる。
「脳無…。あの“個性”を複数持った人造人間は、一介の人間が
「……つまり?」
18禁ヒーローのミッドナイトが、続きを促す。
「
ヒーローの台頭以降色々と言われている警察だが、その力は本物だ。その調査網に掛からず、何年もかけて計画的に力を溜める
「つまり、脳無を造り出し、それを死柄木に与えた存在が…、連合の裏には強力な
「ええ。恐らくは」
もっと言えば、USJ襲撃の作戦は“個性”に依存しており、計画としては杜撰だった。そんな成功率の高くない計画に脳無を動かしたのだから、脳無は複数体いると考えた方が妥当だろう。
同じ様な予想を立てていたのだろう根津校長が紫那の推測をまとめた。2人の“天才”が意見を合わせた事で、室内の空気が重くなる。
「オールマイト並みのパワーを持った
ブラドキングが、その巨体に似合わぬ落ち着いた声色で言う。それ以上の発言は誰からも出ず、議題は次に…紫那の呼ばれた
「ヴィラン
塚内警部がそう述べる。死柄木、黒霧に続いての情報無し。自然、席に座るヒーロー達の視線が紫那に向く。
「……えぇ、
瓜二つの容姿、USJ内で行ったお互いを知った会話。関連性を疑われても仕方ないし、実際紫那はアレと深く関わっている。紫那は彼女について語りだす。
「自称
「ッ…!! ま、待て! いったい何の話をしている!?」
突拍子も無い内容に動揺したブラドキングが、紫那の話を遮った。紫那は何が分からないのかと、不思議そうに首をかしげる。
「KL-E-Oの
「───ッ!!?」
紫那の衝撃的な発言に、根津校長や塚内警部、一部の教師以外が一様に驚きの表情を浮かべた。紫那はその見慣れた反応を無視し、言葉を続ける。
「警察の調査で何も分からないのも当然の事。アレに家庭などなく、知人などいるはずもない。捜すべき過去など…、もともとアレには存在しません」
あらゆる倫理に反する悍ましい研究を、紫那はさも当然の様に語る。ゴクリと、誰かが唾液を飲み込んだ音が会議室に響いた。
この日、ただの子供だと何処か甘く見ていた
「……では、何故そのクローン体が
比較的
「……当時の私が行っていた研究は、脳内電気信号の複写──つまり、
時折勘違いされるが、人のクローンを作成したとしても複製されるのは身体的特徴のみであり、性格や記憶までは複製されない。しかし紫那は、記憶まで複製されたクローン、つまり『自身の完璧なコピー』を造ろうとしたのだ。
「私の遺伝子を
自身と同じ脳へ、自身と同じ情報を
ある個体は紫那の持つ情報量に耐えられず脳死した。ある個体はアイデンティティを維持できずに発狂、その後に自殺した。
紫那と同一の遺伝子を持ちながら、造り出したクローン達の脳では紫那の脳には届かなかったのだ。
「……その中での成功例が、クレオだと?」
「10年分の
「……その、欠点とは?」
「反社会パーソナリティ障害とでも言いましょうか。あれは決定的に、
「──っ! つまり、クレオはサイコパス…なのか?」
「まあ、俗に言えば」
紫那が公安に育てられる中で身に付けた社会的道徳や遵法意識、TPO。クレオはそれを持っていなかった。
「アレには心理的なブレーキがない。目標達成と愉悦の為に人を害する事になんの
「君と同じ知性を持ち、罪悪感は持たない
「えぇ、その危険性が判明した時点でKL-E-Oは冷却保存、実験も破棄しました」
本当はKL-E-Oも破棄してしまいたかったが、
冷凍ポットで長期間冷凍睡眠させる実験はKL-E-Oの拘束に丁度良く、冷凍したKL-E-Oを入れたポットは公安本部のビルに保管され、人体の冷凍保存の影響を観測しながら死ぬまで放置される…筈だった。
「しかし3年前、ポットで眠るKL-E-Oを
心底腹立たし気に、紫那はそう述べる。その頃には公安所有の施設から独立して自分の造った研究所に住んでいたから、紫那はそれを知るのが遅れてしまった。
初期対応がもっと早ければ、打つ手はあった。紫那にとって大した物は無いからと公安にある保管庫に監視の目を置いてなかった事を、少しだけ後悔している。
「公安本部に潜入…?そんな無謀な…、いや、黒霧の“個性”なら可能か?」
「あ、いえ…、これは
「内部犯…? 公安で、3年前…。──!! まさか…!」
「……。この事に関しては、無許可で話す訳にいかないので」
あの傲慢な元公安委員長を殺したのはどうでもいい。紫那もその内こっそりと始末するつもりだったのだし。だが、紫那の所有物を盗んだのは許せない。
だとしても、紫那が勝手に彼女の情報を語るのは、よろしくなかった。
「ふむ…。逃亡資金の為に脳依くんの作品として盗んだのか、それともクレオの危険性を知っていて脅迫等の目的で盗んだのか…。何にせよ、『彼女』も連合に所属した可能性は高そうだ」
「……それにしても、
USJでの、紫那の発した皮肉への反応。そして去り際のセリフ…。
「KL-E-Oの目的は…、十中八九私への下克上でしょうね」
「ホウ…? ソウ言イ切ル根拠ハ?」
「アレは明らかに、自身が失敗作である事にコンプレックスを
基本的に紫那とKL-E-Oの思考パターンは同じだから、KL-E-Oの行動を予測するなら自分がどう行動するかを考えればいい。
「そしてアレは、その劣等感を
紫那を殺すことができれば、KL-E-Oが紫那を越えた…、KL-E-Oが紫那の模範に失敗した欠陥品ではない証明となる。
些か飛躍した論理でありながら、紫那はその理屈で納得していた。つまり、KL-E-Oもそう思っているだろうという事だ。
「そしてその殺害方法は、私…KL-E-O自身が認められる正当なやり方でなくては意味がない」
まるで騎士の一騎打ちの様に、卑怯でない方法で。KL-E-Oが勝ったと納得するには、アレが本来持たない潔さが必要だった。そうでなければ、紫那が負けたと納得しない、つまり、KL-E-Oが上回ったと認めないから。
「脳依少女との決着がつくまで、クレオは積極的に一般人の人々に被害を加えない…か。根拠は薄いが、信じるに足る情報だね」
No.1ヒーローであるオールマイトがそう話をまとめた事で、全体の雰囲気がそちらに流れた。故意か無自覚か、何となくオールマイトなら分かって助けてくれた気もする。
「USJ襲撃についての情報は粗方出揃ったね。では、次の議題に移ろうか。まずは体育祭の警備について…」
紫那を交えて、会議は続く。
・紫那によって造られた、紫那の記憶と性格を
・人格の転写に失敗した結果、倫理観や遵法精神を持たないサイコパスとなったらしい。
・KL-E-O自身は
・紫那を殺す際の補助を見返りに、
ようやくリメイク前のエタッた所まで追いつきました…。書ける限り、続けたいと思います。