脳依紫那は天才である   作:緑川翼

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・大変お久しぶりです。諸事情によりしばらくハーメルンから離れておりました。今年中にもう1話投稿できればと思っています。
・しばらく筆を取っていなかった為、地の文やキャラの喋り方に違和感があるかと思われます(特に心操君や物間君の口調に自信がありません…)。
・お気づきの点が御座いましたら、コメント等で報告頂ければ幸いです。


雄英体育祭編 本戦③(第2回戦・第1~第2試合)

 

──第2回戦 第1試合

 

 

 

『大胆不敵な選手宣誓から始まり!本戦に至るまで最も目立ったんじゃねぇかこの天才! A組脳依紫那!! (バーサス)! 騎馬戦のリベンジなるか?! ヒーロー科B組、心操人使!!』

「……ふぅ」

 

 小さく息を吐いて、心操は強張った全身の力を抜いた。ここからの勝敗は、あらかじめ立てた計画通り動けるか否かに掛かっている。控え室で物間に言われた通り、余計な緊張はするだけ無駄だった。

 

『レディィィ…!!』

「脳依。騎馬戦と違って、ようやくアンタとタイマンで闘える。今度は…、勝たせてもらうぞ」

「……」

 

 《洗脳》を警戒する紫那は不敵な笑みを浮かべたまま何も答えない。当然その対策を理解していた心操はしかし、口を動かし続ける。

 

「……入試ン時、こんな“個性”で俺は洗脳の効かないロボット相手にどう点数を稼いだと思う?」

 

『スターート!!!』

 

()()()、壊したんだよ」

「──ッ!!」

 

 スタートと同時に距離を詰めた心操のパンチは、鋭く空気を切って繰り出された。ロボットを破壊できる、鍛えられた拳。しかし紫那はそれを、Mr.Device(電磁浮遊装置)を起動する事で水平に移動して回避する。

 

(──攻撃を見てから避けられた…! そんだけ思考が早いのかッ…!!)

  

「意外と動けて驚いたか?! こんな“個性”に生まれたんだ。ヒーロー目指すなら、身体鍛えんのは前提条件だろ!」

 

 紫那の思考速度に驚きつつも、初手の奇襲が避けられるのは想定内。心操は口を動かしつつ、パンチを繰り出した勢いを乗せた回し蹴りを紫那の頭部に向けて放つ。

 

「──痛ッ…!!?」

 

 蹴りは目論見通り紫那の頭に直撃する。しかしダメージを喰らったのは、心操だった。

 紫那は回避せず、蹴りの当たるポイントを金属化させていたのだ。勢いを乗せた分、反動のダメージが大きい。

 

「その金属化も見てから反応したのかよ?! ホント、スゲェなアンタは!」

 

 だが、それも想定の内。痛めた足を落とし、反対の膝で紫那のアゴを打つ。紫那は金属化した腕を差し込んでアゴを守ったが、心操の膝蹴りはその防御ごと頭を揺らした。

 

「ッ…!!」

 

 膝蹴りが直撃した紫那はたたらを踏み、一歩、二歩と後ろへ下がる。それを観察して、心操は推測通りだと笑った。

 

「ハッ! ようやくダメージらしいダメージが入ったな!! なぁ脳依アンタ…、()()()()()()()()()()()?! だから、常人とおんなじ様に脳が揺れた!」

「……」

 

 それは、心操の立てていた1つの予想。根拠と言える根拠はなく、ただの憶測。紫那は何も答えないが、その反応こそが正解だと証明している。

 

 

 ──紫那の全身を構成する《変異細胞》。そのすべてを制御する『脳』と制御するエネルギーを生む『発電機の心臓(リビング・ハート)』だけは、紫那の技術をしても変異細胞に置き換える事が不可能であった。故に戦闘において、()()()()()()()()()()()()

 

 

 だがもちろん弱点1つ見破った程度で勝てるなどと、心操は楽観的に考えていない。強化外骨格(パワーアーマー)を初めとした防御手段を紫那を多数持っている。だがこれで、無に等しかった勝ち筋は見えた。

 

「ふふ…」

 

 弱みを看破されたにも関わらず、紫那の顔に焦りはない。それどころか嬉しげな笑みすら浮かべ、様子を窺う心操の前でついに紫那は笑い出す。

 

「アハッ…! アハハハッ!! えぇ、一目見た時から分かっていたわ!! 3年間鍛え続けた肉体と技術! 戦いながら喋り続けるだけのスタミナ! 貴方を突き動かす()()!私は 分かっていたわ!!」

 

 紫那が口を開いた。だが、《洗脳》にかかる様子はない。何故か? 少し考えて、心操は仮定を導き出す。

 

 《洗脳》の発動には問い掛けへの返答が必要だ。しかしいま紫那が喋っているのは、『返答』ではなく『独り言』なのだ。目の前で独り言を呟かれても、心操は洗脳する事はできない。

 

(──このタイミングでの独白…。故意か偶然の産物か…。この“天才”なら意識的にやってても不思議じゃない……)

 

 心操が紫那に注視しつつ頭を回している間も、紫那はバチバチッと興奮冷めやらぬ様子で放電しながらしかし、あくまで冷静を装い言葉を続ける。

 

「でもまさか…、まさか貴方に気付かれるとは思っていなかったわ! その通り、私は脳に手を加えていない! えェ認めましょう! 貴方のその勝利を求める情熱が! 刹那の瞬間、この(天才)を上回ったことを!!」

 

 

 ──だからもう、私は貴方を侮らない。

 

 

天才の電撃手甲(テスラ・ブレイザー)!!」

「──ッ!!?」

 

 最後に何か呟いて、紫那は凝視していたはずの心操が目で追えない速度で背後に回り、電気を纏った腕で心操に強打を喰らわせる。

 

 防御する事も出来ず、心操は流れる電気で失いそうになる意識を必死に堪えて振り返れば、紫那は全身を第1試合で見せた鈍色(にびいろ)に光る金属へ変異させていた。

 

(──あの状態の脳依には《身体強化》の“個性”持ちでも勝てなかった…!! 真面に戦って勝てる相手じゃないッ!)

 

 紫那の追撃を無様にも這うように後転して躱しながら、心操は考える。パワーもスピードも負けている。その上、小手先のテクニックも通用しない。

 出来れば紫那に()()を出される前にかたをつけたかったが、やはりそれは無謀だった。

 

「クッ…」

 

 金属化した事で質量の増した足による蹴りを、心操は再び転がって避ける。振り下ろされた紫那の脚により、コンクリートのグラウンドに(ひび)が入った。直撃すれば骨の数本は容易く折れる威力だ。

 

「──ッ!! しまッ…」

 

 紫那による怒濤(どとう)の連撃から逃げ回る内に、心操はついにライン間際まで追い込まれていた。ジリッ…と後ずさりしそうになるが、もう後は無く、紫那も電気を纏ってゆっくりと迫ってくる。

 

『心操ついに追い詰められたー!! これは進退(きわ)まってしまったかー!!?』

「これで…、終わりね。えェ本当に、存外で不意で意外な素晴らしい成長だったわ」

「ッ…。俺は、まだッ…!!」

 

 

 プレゼント・ マイクの実況が、異様な程に遠くから聞こえる。酷くゆっくりと、紫那の電気を纏った拳が迫ってくるのが見える。唐突に、心操の頭の中に映像が流れた。

 

 

 

 

 

 

 ──皆同じ制服を着た、それなりに広い食堂の中。

 

 

『進路計画表ってもう出した? つか、なんで1年生が書かなくちゃいけねーんだよ!』

『つってもよー、進路希望なんてそりゃ…、ヒーロー科に決まってるよなぁ?!』

 

(──ハハッ、なんだこれ? 走馬灯ってやつか?)

 

 紫電を纏う拳が迫る中で、ふと心操は昔の事を思い出していた。これは、そう。中学1年の、夏休み直前の出来事。

 

 食堂で昼食を食べながら雑談に興じているのは、心操と同じクラスの男子グループ。数カ月同じクラスで勉強した仲だが、心操はほぼ彼らと話した記憶はない。

 

『そういやさ、書いてるトコ見ちゃったんだけど…、心操もヒーロー科志望してるらしいぜ。しかも雄英高校の!』

『ハァ!? アイツがぁ?!』

『いやアイツは無理だろ! むしろヴィラン寄りじゃん!俺怖いもん、アイツの“個性”!』

『それな! つか、もう2、3人ヤッてんじゃね? 証拠残んないんだし!』

 

 心操が後ろで聞いている事に気付かず、その男子グループの中で嘲笑が流れた。心操は彼らとはほぼ話した事はない。だが、笑われるのも仕方ない。

 

 こんな、()()()()()()()“個性”でヒーローを目指す方がおかしいのだ。心操はそう、泣きそうな目をぎゅっと閉じる。

 

『あいつ何考えてんだろうな?! 絶対ムリだって! あんな“個性”でヒーローになんて…』

 

『少なくとも、生まれ持った他人の個性を嘲笑するアナタ達よりは可能性があるでしょうね』

 

『───ッ!!?』

『はぁ? 誰だよテメー、 いきなり口出して来やがって!』

 

 心操を援護する誰かの声に、心操はつい振り向いた。そこにいたのは、テーブルに座る男子グループに対してお盆を持ったまま堂々と口を出した、うねる黒髪と白黒反転した目が特徴的な1人の少女。

 

『えっ!? こいつアレだよ脳依紫那!! 噂になってたヤツ! 』

『ハァッ!? なんで“天才”がこんな所にいるんだよ?!』

『あら。書類上、私もここの生徒よ。学食を利用していても、何ら不思議もないでしょう?』

 

 そう言う紫那の持つお盆には、菓子パンとコーヒーと山盛りのガムシロップが乗っている。少しおかしいが確かに、ここの学食で提供されている昼食だ。

 

『それにしても…、人の空想(ゆめ)を嘲笑いながら、プロヒーロー(空想を叶える仕事)を目指す? 随分と…、矛盾した事を言うわ。ねぇ、心操クン?』

『えっ?』

 

 唐突に、男子グループに話しかけていた紫那が振り向いて、心操に言葉を投げかける。それによって、男子グループはようやく心操がすぐ後ろに座っていた事に気が付いた。

 

『あっ…!? し、心操…?! これは、その…』

『えっと……』

 

 悪口で盛り上がっていた男子グループとそれを聞いていた心操のお互いの間に、気まずい空気が流れる。そんな心操の居心地の悪さを知った事かと、紫那はその特徴的な目で心操を観察してから口を開く。

 

『ええ、五体満足で健康状態は良好。病の予兆もないし、肉体も鍛えればかなり上昇するわね。“個性”に関しては…、どんな物かは知らないけれど鍛え方と使い方次第じゃない?』

『はっ…? えっと、何を言って…?』

『あら、分からないの?』

 

 紫那は何が分からないのかと首を傾げてから、言った。

 

 

 

()()()()()()()()()()()

 

『──ッ!!?』

『まァ、結局は貴方の熱意しだいよ。せいぜい頑張りなさい』

 

 

 その後の事を、心操はよく覚えていない。一番欲しかった言葉に堪えきれず、1人泣き続けていたから。

 

 

 

 

 

 

 ──その言葉がどれだけ嬉しかったか、アンタ分かんないだろ。

 

 

 心操の思考が、現実に戻ってきた。目の前には迫り来る紫那の紫電を纏った拳。当たれば、気絶は免れない。しかし心操の頭は、自身でも意外なほど冷静に働いている。

 

 

(──そうだ。俺はヒーローになる。たとえ恩人相手に()()()()()使()()()()()!!)

 

 

 あの走馬灯モドキは、心操に危機回避の方法こそ与えなかったが、彼の原点(オリジン)を思い出させるには充分な働きをした。

 

 心操は敢えて不敵に笑い、呟く。

 

「ホントに凄えよ、脳依サン。()()()()()()()()()()()

「──ハァ?」

「……返事をしたな」

 

 心操の口を動かしただけの声にすらなっていない小さな罵倒に、反応してしまった紫那の目から意志の光が抜け落ちる。

 

 絶対に返事をする、まさに紫那への“殺し文句”。ズルい手だ。出来れば使いたくなかった。だが、負けるよりは良い。

 

 

(──楽に誘導できただろ? この為に、この位置まで()()()()()()()()()!!)

 

 

 場外ぎりぎりまで追い込まれた心操のすぐ後には白線がある。心操は速攻で、紫那の伸ばされたまま固まった右腕を掴んだ。

 悠長に命令して場外させるつもりはない。どうせこの天才は、《洗脳》の対策もしている。

 

(──油断はしない。このまま場外へ投げ飛ばす!!)

 

 バチンと一瞬彼女の身体に紫電が走り、当然の様に紫那の目に光が戻った。だが、紫那の行動よりも心操が投げる方が速い。

 心操は伸ばされた紫那の右腕を掴んでもう片方の腕で懐を握って一本背負いを仕掛けた。だが──

 

 

「──は?」

 

 カクンと、まるで力が抜けた様に、紫那を持ち上げた体勢のまま心操は膝から崩れ落ちた。

電気を流されて痺れたのではない。単純に、紫那が()()()()()()()()()()重たいのだ。

 

「ええ貴方なら…、その手を使うと思っていたわ。だから、脳波が1秒以上止まった場合、電気ショックを流すよう設定していたの」

「グッ…!!」

「物理的に防音して貴方の声を聞き取れなくしても良かったのだけれど…、それは不公平でしょう?」

 

 意識を取り戻した紫那は、種明かしをしながら自分を抱えたまま崩れ落ちた心操をグラウンド中央まで投げ飛ばす。

力の差もあり、容易に投げ飛ばされた心操は素早く立ち上がりながら事情を理解して後悔する。

 

 

(──考えりゃ違和感は幾つもあった…! 金属化するんだ、この可能性も…、クソッ…、想定しておくべきだった…!!)

 

 

 起き上がる不安定な体勢を狙われ、紫那によって再び転倒させられた心操が今までの記憶を振り返れば、不審な点が何点もある。

 第1種目の障害物走、第2関門の大穴(ザ・フォール)に橋として掛けられた太い縄を、重量オーバーで(きし)ませていたのは紫那だけだった。

 また今思えば、騎馬戦でパワーある2人を騎馬としながらも、最後の数分になって前騎馬(砂籐)が“身体強化の個性(シュガードープ)”を発動させるまではほぼ動かなかなかったのも、同じ理由故だろう。

 

 

「……脳依さんアンタ、今…()()()()()?」

 

 

 倒れた心操の胸部に両手の握り拳を当てて行動を封じる紫那に、しばらく抵抗していた心操が諦めた様に動きを止めて尋ねれば、紫那はあくまで独り言として答える。

 

心操が最後の抵抗として《洗脳》を発動させている事に気付いていたらしい。

 

  

「フッフッフッ…。私を構成する“変異細胞”は筋肉の10倍以上の密度を持つ。今は……600㎏前後かしら? 貴方達とは、肉体の密度が違うのよ」

 

 

 肉体の変異や再生にはかなりのカロリーを使用する。第1回戦でボロボロになった内臓を再生させた為、紫那の体重はこれでも100㎏ほどは軽くなっている。

 

 だがそれでも異形型の人間よりもよっぽど重く、現に紫那は全く力を込めていないにも関わらず、両手の握り拳で上半身を抑えられただけで心操は一向に抜け出せる気配がない。

 

「なるほどな…。あァクソッ…、考察も対策も足りてなかった…!!」

「追い詰められたフリをして一発逆転の機会を狙う…。言葉にするのは簡単だけれど、幾重(いくえ)にも練られた良い策だったわ。気落ちする必要はない。ただ、相手が悪かっただけ」

「……」

 

 紫那の傲慢なフォローモドキに歯噛みする心操に対し、紫那は心操の胸を両拳で抑えたまま、さて、と冷酷な目をして口を開く。

  

「今から、()()()()()()1()5()()()()()。勿論障がいが残ることはしないけれど、身体に良い事でもない。今の内に、ギブアップする事を勧めるわ」

「ハハッ! 脳依さん、俺の答えは分かってるだろ?」

「……ええ。一応、聞いただけよ」

 

 短い問答。心操の心意気を感じ取り、主審のミッドナイトもこの危険行為に何も言わない。紫那は、再びバチリと紫電を纏う。

 

 

「せいぜい死なないように気張りなさい!──天才の衝撃(テスラ・ショック)!!!」

 

「───ッ!!?」

 

 

 バチィッ!!と紫那の両手の握り拳から心操の胸へ紫電が(ほとばし)り、数度(もだ)えた後に心操は沈黙した。

 

それを充分に確認してから、紫那は気絶した心操に背に歩き出す。

 

「心操くん気絶! 脳依さん第3回戦進出!!」

「……たった3年間で、良くここまで成長したものね。きっと、貴方はいいヒーローになるわ」

 

 爆発の様な歓声を浴びながら、紫那は満足そうに笑った。

 

 

 ──心操人使 ベスト8敗退

 

 

 

 

 

 

 

『お互い1回戦はソッコー勝利!! 今回もそうなるのかぁ!? ヒーロー科A組 轟焦凍 対 同じくヒーロー科B組 物間寧人!!』

 

 紅白頭と左目を覆う火傷痕の目立つ男子生徒と、眠たげな眼差しとくすんだ金髪が特徴的な男子生徒が、グラウンドの中央で相対する。

 

「やあ轟クン。折角同じグラウンドに立ったんだ。悔いの無い、良い勝負にしようじゃあないか!」

「……」

 

 わざとらしい笑顔でそう抜かす物間を、轟は無視した。物間が《洗脳》の“個性”を《コピー》している可能性を危惧している…のではなく、ただ轟に会話をする気がないだけだ。

 

「無視するなよな。これもミッドナイト先生の言う、青春の一幕だぜ? まァ…」

 

白々しい笑みを消して、物間は構える。

 

 

『──START!!』

 

「仲良くする気がないのは、僕も一緒だけどさぁ!!」

「……どうでもいい」

 

 スタートの宣言と共に《コピー》狙いで突撃してきた物間に対し、轟はそう一言呟いて瞬時にドームを越えるサイズの氷壁を形成した。

 

『物間との接戦を嫌がったのか、いきなり轟がかましたぁ!!!これはさっそく勝敗が決まっちまったかぁ!?』

 

 第1回戦と同じ攻撃。だが何の“個性”も《コピー》していない物間に、この氷壁をどうにかする手はない。勝利を確信した轟は氷壁の形成に使った左手を下ろし、ミッドナイトの勝利宣言を待つ。

 

 ──だが……

 

「こんな狭いフィールドで視界を狭めるのはァ!! 愚策じゃあないかい!?」

「──ッ?!!」

 

 自身の形成した氷壁の影から現れた物間により、轟は無警戒の状態で頭部に強烈なパンチを喰らった。

何が起こったのか分からず混乱する轟に対し、物間は追撃せず得意そうに自身の行動を語る。

 

「《コピー》頼みの奴が無策で突っ込んで来たんだ。万が一にでも《コピー》されたくない君が第1回戦と同じ行動に出るのは、クレバーに考えれば予想がつくだろ?! なら、その裏をかくのは難しい事じゃあないさ!!」

「ッ…!」

「ああどうやってあの氷壁を躱したかって?! 単純に、形成される前に避けたんだよ! さっきの試合で心操…、僕の友達が言ってただろう? こんな“個性”でヒーローを目指すんなら、身体を鍛えるのは前提条件さ!!」

 

 そして…、と物間は()()()()()()()()()()()()言葉を続ける。

 

「これで、本当の意味で同じ土俵に立ったワケだねェ!!」

「このッ…!」

 

 炎の熱によって溶けていく氷壁を見ながら、轟は熱さ以外の要因で一筋の汗を流した。

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