脳依紫那は天才である   作:緑川翼

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職場体験・前

「1000件って大分多いよな…。聞いたことのない事務所の名前も結構あるし…、どこがどれだか分からなくなってきた…」

「リストはビルボードチャートのランキング順になっているのだから、取り敢えず上位100件から確認すれば?」

「うぅん…、それでも多いな…」

 

 ヒーローネームを決めた日の昼休み、クラスで4番目に多くの指名を受けた尾白が、食堂で箸を片手に相澤先生に渡されたリストを見ながら頭を抱えていた。

 

 その対面に座る紫那も、スプーンを持ちながら自分用のリストに目をやっている。あまりの文字数に目眩すら起こしている尾白と違って、この手の書類に慣れている紫那には、食事をしながらアドバイスをする程度には余裕があった。

  

「なら、知っているヒーロー名をピックアップするのは? 有名なヒーローや地元の事務所から選ぶのも手よ」

「ああ、なるほど…」

  

 紫那は自分用のリストを片手に尾白にアドバイスしながらも、定食のハンバーグを口に運ぶ。学食とは思えないほどに、肉汁が溢れ肉厚だ。

 

 尾白の持つプリントには1200件ものヒーロー事務所の名が書かれており、2日後までに職場体験の行き先を決めて提出しろという相澤先生の無茶振りによって、尾白は折角のランチラッシュの昼食もそこそこにプリントとにらめっこをしている。

 

「えっと、何人か変に聞き覚えのあるヒーローがいるぞ…。脳依さん、ロックロックって何処のヒーローだっけ?」

「ロックロック? 確か、徳島の辺りだったと思うわよ」

「徳島県? TVで観たのか…?」

 

 紫那は自身のリストに目をやったまま、菓子パンの袋を開けつつ尾白の質問に答えれば、尾白はリストに新しくメモを書き込んだ。

 

 1限に喝を入れてくれたお礼をしたいと尾白に誘われた紫那は、奢られた定食(デザート付き)や自分で購入した購買のパンを食べながら尾白の職場体験先の選択を手伝っている。

 

 三千件以上の指名を受けた紫那も個別にリストを渡されているが、量が量だけにまだ軽く目を通すだけに留めている。

 少し見ただけでもクラストやウォッシュなど著名なヒーローの名前も多くあり、決めるのには難儀しそうだ。

 

 メモを書き終えた尾白が顔を上げれば、不意に紫那と目が合った。すると尾白は頬を引きつらせ、言い辛そうに、口を開く。

 

 

「……えっと、色々尋ねてる俺が言うのもどうかとは思うんだけどさ、やる事を1つか2つ減らしたら? その…、()()忙しそうだし」

「そうかしら?」

 

 紫那が菓子パンを口一杯に入れたまま、意外な事を言われたと返事をする。

 

 そう紫那は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 変異細胞をフルに使ったマルチタスクである。その異質な光景に、食堂は混雑しながらも紫那と尾白の周囲には誰も座っていない。

 

「その髪って、決勝戦で使ってたヤツ(触手)だよな? そんな軽く普段使いして大丈夫なのか?」

「身体的な面で心配をしているなら、これは変異細胞による肉体操作の一端よ。なんら問題ないわ。対外的な話をしたいなら…貴方(ヒーロー)達は気にしないでしょう?」

「……まあ、そうだね」

 

 食事をしたまま、喉に生えた口で、何処となく恥ずかしそうにそう言った紫那に、尾白は苦笑いと共に納得を示した。それで会話は終わり、2人は食事とリストの確認を再開する。

 

 

「んー、行くならヨロイムシャかリューキュウの事務所か…?俺なら“個性”よりも戦闘技術とかで選ぶべきだし…」

「そうね貴方なら…」

 

 リストとメモを見つめながらポツリと独り言を呟いた尾白に、パックのイチゴミルクを飲み干した紫那が元から顔にある口で答える──

 

 その寸前──

 

「──ヨロイムシャの方が良いんじゃあないかい? 彼の強みは“個性”その物よりも長年蓄えた経験値だ」

「えっ? な、なるほど…?」

「……尋ねられたのは私だったのだけど、()()()()? 何か私たちに用でもあるのかしら?」

 

 紫那の後ろから現れた物間が、紫那の言おうとしていた内容をそのまま言ってしまった。なにとなく、尾白がメモだらけのプリントを隠す。

 紫那に6つの瞳で睨まれようともどこ吹く風な調子だった物間は、尾白のその行動に対して皮肉げに口を開く。

 

「ナァナァナァ!クラス間抗争でもしてるのかい僕たちは?! 体育祭でしのぎを削った同級生を見かけたから声を掛けた、それだけだぜ?」

「……そうだな、悪かったよ」

 

 煽る物言いでありながら何処か嗜める様な口調だった物間に、尾白は少し申し訳なさそうに警戒を解く。同じヒーロー科といえど、他クラスでは調子が異なるらしい尾白が、露骨に話題を変えた。

 

「えっと…、物間はどれくらい指名貰えたんだ? 体育祭じゃスゴい活躍してたしさ!」

「……まぁ、1000票と少しかな。ウチのクラスだと、後は心操が500で拳藤と塩崎がいくらか指名を貰ってたよ」

「1000票も!? スゴいじゃないか!!」

「……それ、嫌味かい?」

「えっ…!? あ、ゴメンそうなっちゃうのか!!」

 

 素直に尾白は謝る。まぁ、君たちのクラスからしたら少ない票数かもしれないけどね、などと皮肉りつつも、尾白の反応に物間は何処か嬉しそうである。

 

 

「それで物間も一緒に食うか? 見ての通り…席は空いてるけど」

「いや、遠慮しとくよ。轟と先に約束してるからね」

「轟と…? 意外な組み合わせ…って轟とも体育祭で戦ってたっけ」

「それもあるけど…、僕と轟はエンデヴァーから指名を受けているから。その関係でね」

「へぇ! エンデヴァーから!!」

 

 自身の息子である焦凍は兎も角、メディアでの印象では、あまり指名を取るタイプには思えなかったのだが。物間は体育祭でエンデヴァーの必殺技(赫灼熱拳)真似(コピーし)ている。そこが、エンデヴァーの琴線にでも触れたのかもしれない。

 

 そう考察しながら、紫那は食後のデザートにプリンを口に運ぶ。流石はランチラッシュの料理、適度に濃厚な甘さだ。

 

「ふぅん…?」

 

 スッと目を細めた物間が、紫那の髪が変異した触手を観察しながら、言葉を発する。

 

「君の触手…、スピードに誤魔化されてはいるけど()()()()()()()()? 具体的に言えば、何発殴っても爆豪(ヒーローの卵)1人気絶させられない程度には」

「……!!」

「後は、触手の回復は無制限じゃあない。新しく生やす度、それなりに体力を消耗していた。そうだろ?」

 

 質問の形をとっていたが、物間の口調は確信に満ちていた。紫那は愉快そうに口元を歪め、素直に答える。

 

「ふふ…貴方の思案は正しいわ。あの戦いだけで、良くそこまで見抜いたものね。貴方…、私に本気で勝つつもり?」

「負けっぱなしが趣味じゃないだけさ。もちろん尾白くん、きみにもね」

「……凄いな。俺なんて、あの手数を耐えながら力押しするくらいしか考えてなかった」

 

 尾白はそう感心したが、攻略法を考えていた彼も大概である。じゃあ先約があるから。そう言って、物間は去っていった。

 

「俺も頑張らなくちゃな…!!」

「ふふ、まずはリストアップを終わらせなさい、セイテンタイセイ」

「うっ、そうだった…」

 

 当然の事ながら、皆成長している。上から偉そうに観察している暇など、もう残されていないのだろう。紫那はそう思いながら、敢えて目を避けていた『ホークスヒーロー事務所』の文字に目をやった。

 

 

 

 

 

 

──1週間後の月曜日。

 

「コスチュームは持ったな。仮免も持たないおまえらは本来なら公共の場じゃ着用厳禁の身だ。落としたりするなよ」

「はーい!!」

「伸ばすな芦戸」

 

 職場体験へ向かうべく、A組は朝からスーツケースを手に駅の改札口に集まっていた。B組の姿は見えない。別の場所に集合しているのだろう。

 A組は相澤先生に注意された芦戸を顕著に皆どこか浮ついている。すっかり学校生活に慣れた紫那にとっても、朝のHRの時間帯に教室にいないのは、少し不思議な感覚だった。

 

 

「くれぐれも相手方に失礼のないように! …じゃあ行ってこい」

 

 落ち着きのない生徒達にこれ以上の小言は不合理だと判断したのだろう相澤先生の言葉もそこそこに、各々の新幹線に乗り遅れないよう解散となった。

 

「楽しみだなあ!」

「おまえ九州か、オレと逆だ」

「……」

「……」

 

 それぞれの目的地へと別れたが、何人かは乗る新幹線が同じなのか同じ方向へと進んでいる。紫那の同伴者は、緑谷と麗日に何か言われていたしかめっ面の飯田である。

 

 紫那はクラス委員長である飯田と事務的な会話以外をした経験がほぼ無い。しかしそんな紫那であっても、体育祭の日に飯田の兄であるインゲニウムがヒーロー殺しステインに襲撃され、重症を負ったという噂は聞いている。と言うかネットニュースで読んだ。

 飯田は兄を深く敬慕していたらしく、教室では気丈に振る舞っていたが現在の表情は硬い。親しくもない紫那が何か言うのも(はばか)られ、ホームへ向かう2人の間には沈黙が流れている。

 

「……えぇっと…、雄英の提示した事務所はこっち方面には無かったわよね? 貴方、指名貰っていたのね」

「……何件か頂いていた。もっとも、兄の知名度ありきだろうが」

「あぁ、なるほど…」

 

 無駄に地雷を踏んでしまった。結局、ホームに到着しても気まずい雰囲気が晴れる事なく、2人は黙って新幹線に乗り込む事になってしまった。

 

 

『──次はァ保須市、保須市です。この度は新幹線をご利用くださいましてェ、ありがとうございました』

「む…、俺はここだ。すまない脳依くん、ここで失礼する」

「あら? 貴方も保須市なの? 奇遇ね、私もここよ」

「……なに?」

 

 なんと、紫那と飯田の目的地は同じ保須市だったらしい。どれだけ会話が無かったのかと、紫那は苦笑した。

 

 飯田とはいくつか言葉を交わしたあと駅で別れ、紫那はスーツケース片手に大通りを歩き、指定されていたホテルにたどり着いた。

 

 格式高さこそないが高級感のあるホテルに紫那が臆することなく足を踏み入れれば、天井の高い豪華なロビーに、()はいた。

 

 

「やっ、メカニスト。来てみんさい(いらっしゃい)。待ってたよ」

「えぇホークス。これから3日間、学ばせてもらうわよ」

「ハハッ、よかよ(いいね)。その意気だ」

 

 紫那の古馴染みであり、No.4ヒーロー、ホークスである。既にヒーロースーツを着用しているが、視線は向けれども騒ぎを起こす様な客はいないらしい。

 

 ホークスの活動本拠地は福岡を中心とした九州地方だが、情報収集を目的に日本各国を飛び回っているのはファンの間でも有名な話であり、今回は長期滞在が予想されるため、このホテルを拠点として調査を行っているらしい。

 

「指名しといてなんだけど、正直来てくれるとは思わんかったよ。何か心変わりでもあった?」

「ええそうね。生まれて初めて…、置いていかれたくないと…切迫感と焦燥感と圧迫感に苛まれたからかしら」

「ふぅん…? やっば、変わったね。シーちゃん」

 

 幼馴染みとしての個人的な好感などは、後回しだ。史上最年少でのビルボードチャートトップ10入りを果たしたホークスの元で、紫那は成長する。

 

 

「それで、あの話は本当なの?」

「間違いないよ。先週、KL-E-O(クレオ)を所有するヴィラン連合とステインがコンタクトを取った。状況証拠しかないけどね」

「……あァそう言えば、ホークス貴方、そのタイミングであの阿呆(レディ・ナガン)と接触があったとか?」

 

 自身の作品(KL-E-O)を盗んだナガンの話題が出た途端、紫那の表情に怒気が現れた。しかし紫那はそれ以上怒りを表面化させず、ホークスに続きを促した。KL-E-Oが関わる以上、素早く行動を起こしたいのは紫那も同じだ。

 

「お上としても放置できない案件だからさ、ここしばらく共同で調査をしてたんだけど、ステインとヴィラン連合が合流した可能性は高いと思う」

「……思うって。貴方達をして、確実な証拠を掴めなかったのね」

 

 紫那はそう言うが、連合にはテレポートを可能とする人材が最低でも2人はいる。情報を得ただけでも、ホークスと公安委員会の調査能力は優れたものだ。

 

「で、ステインはここ保須市でターボヒーローインゲニウムを皮切りにヒーロー連続殺傷事件を起こしている」

「クレオや、例のAFOとやらがこの街に現れる可能性は高いってことね。ステインとヴィラン連合が行動を共にしている確証は?」

「そっちはあるよ。ほら」

 

 ホークスが提示してきたのは、2枚の写真。それに映っているのは、人目に付かないが見晴らしの良い建物の屋上やビルの貯水槽の上に立つ、全身に“手”を張り付けた男と、モヤを纏った紳士服の男。ヴィラン連合の死柄木弔と黒霧である。

 どちらの写真も空の上──具体的には、連日のヒーロー殺傷事件の取材をしている報道ヘリから撮られた物だろう。

 

「この一週間でステインによるヒーロー殺傷事件は2件。これらの写真か撮影されたのはどちらもステインによる犯行が行われていたタイミングだし、彼らの向く方向には当日の犯行現場がある」

「……奴らの結束を裏付ける程度の根拠はある、と言う事ね」

 

 あくまで状況証拠でしかないが、約一週間前に接触したとして、()()()()()()()()()()()()()()()()、ステインとヴィラン連合が徒党を組んだ可能性は極めて高いと公安は推測しているのだろう。

 

「ステインは出現した全ての街で必ず4人以上のヒーローに危害を加えている。保須市でやられたヒーローは、これで3人」

「この街にまた現れる可能性は高そうね」

「そゆこと」

 

 ステインを捕らえる事が出来れば、そこから芋づる式にクレオ、AFOと捕らえる事が出来るかもしれないと、ホークスは気炎を上げる。

 軽薄な顔の下で人一倍、人々の平穏を求めるホークスが気合を入れているのにも頷けるし、紫那としても、いち早く危険なKL-E-Oを回収してしまいたい気持ちは同じだ。

 

 

「てな訳で、今何より重要なのは情報収集! 相棒(サイドキック)には既に動いて貰ってるから、メカニストは俺とパトロールに行こうか」

「了解よホークス。職場体験中は貴方の指示に従うわ」

「んじゃ、シーちゃん用の部屋を取ってあるから、そこでコスチュームに着替えてきんしゃい」

「あら、別室なの? 気心知れてるのだし、貴方と同室でも構わなかったのに」

「いやヒーローがJKと同室は事案やけん。俺にも体裁ってモンがあるんよ」

 

 ホークスのツッコミを聞き流しながら、紫那はルームキーに書かれた部屋番号を頼りに自室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「……つまらねぇな」

「はい?」

 

 曇天の寒空の下、雑居ビルの貯水タンクの上に、死柄木と黒霧は立っていた。神経質に首筋を掻きながらポツリとぼやいたのは、死柄木である。

 

「“ヒーロー殺し”…。あの野郎、あれだけ偉そうに語っといてこの一週間やる事はヒーロー相手に草の根運動かよ。健気で泣けちゃうね」

 

 あるいは馬の合わないKL-E-O(クレオ)以上に、死柄木はステインの事を嫌っていた。危うく殺されかけた事も原因だが、ヒーローを憎む死柄木と理想視するステインではまず根本的に思想が合わない。

 

 ステインのやる事なす事全てが、イライラする。先生が止めるから、殺すのを我慢していただけだ。だがそれも今日までだと、死柄木は“手”の下で笑う。

  

 バシュンと青白い光と共に、KL-E-Oが現れた。

 

「言って下されば、私が《ワープ》させましたのに…」

「ごめんなさいね、黒霧。研究施設の場所をアナタ達に教える訳にはいかないのよ」

「KL-E-O…、てめぇ一週間も待たせたんだ。用意は出来たんだろうな?」

 

 いつも通りの全てを見下した笑みを浮かべるKL-E-Oを、死柄木は苛立ちげに睨む。一週間前ステインを仲間に加えて以降、死柄木が行動を起こしていなかったのは、KL-E-Oが原因である。死柄木は事の発端である、バーでの会話を回想する。

 

『先生、脳無の在庫は残ってんだよな? よこせ』

『……ほう。何故?』

『ヒーロー殺しが気に入らないからだよ! 気に入らないモノはぶっ壊していいんだろ、先生!』

『……いいだろう。だが、数日待ってくれ。丁度試したい物がある』

 

 先生、ドクター、KL-E-Oの3人による合作。この機会に、それの試運転を行うのだと先生に言われては、死柄木は黙るしかなかった。

 そしてその試作品の最終調整を行っていたKL-E-Oがここに来たという事は、ようやく壊せるという事だ。チューニングに時間を取られて5日寝ていないKL-E-Oは、いつも以上におかしなテンションで捲し立てる。

 

「待たせたかしら? えェ、本当にひどく調整に時間がかかったわ! もうアレに何一つ問題はない。さァさァ初のお披露目としましょうか!! 脳無ニアハイエンド…“ロボブレイン”を!!」

 

 KL-E-Oのハイテンションな声と共に青白い閃光を裂いて現れたのは、3体の脳無。USJ襲撃時の個体と異なるのは、剥き出しの脳を保護ガラスが被い、筋肉質な身体と何らかの機械が混じり合っている事。

 

 機械の上に肉体が溶ける様に融合しており、脳無に機械を組み合わせただけではないことを伺わせる。胡散臭げにロボブレインを見る死柄木に、KL-E-Oは興奮気味に解説する。

 

「脳無の欠点は“個性”を複数個持たせた弊害として脳機能が低下している事よ。このせいで戦闘が単純化し、“個性”とスペックによる力押しが基本戦術になってしまう。それではオールマイトに通じないわ。なら、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 共同研究していたドクターは肉体性能を更に上げ、戦闘慣れした凶悪なヴィランを素材とする事で脳無に高い戦闘力と自立思考能力を持たせようと画策していたが、KL-E-Oのアプローチはその真逆。

 素材の長期・短期記憶を全て消去する事で、素材の脳を“優秀なCPU”として使用するのだ。

 思考能力を持たない為自立した行動は出来ないが、そこはKL-E-Oが戦闘プログラムを作成した事で解決した。そこらのヴィラン以上に、ロボブレインは喧嘩慣れしている。

 

「ロボブレインの利点は、()()()()()()()。使う素材を厳選する必要がない分、()()()()()()()使()()()()()()()!! 」

 

 これこそが資源の有効利用だと笑うKL-E-Oの目は、悍ましい狂気と愉楽に歪んでいる。……自身の愉悦と理想達成の為だけに動く、出来損ないの模造品。それがKL-E-O(クレオ)。その底知れない狂気に、黒霧の背筋はぶるりと震えた。

 

「ハハッ! いいね、じゃあ全部脳無にしちまうか、いけ好かねぇ奴(ステイン)も、この世のゴミ(ヒーローども)も!!」

 

 しかしその狂気も、同じくイカレた死柄木には届かなかったらしい。新しく与えられた面白い玩具(オモチャ)に、死柄木ははしゃぐ。

 

 

「さァ大暴れ競争だ。あんたの面子と矜持潰してやるぜ、ヒーロー殺し」

 

 その一言と共に、3体のロボブレインは解き放たれた。




ロボブレイン
・先生の“個性”、ドクターの医療技術、KL-E-Oの生物化学が合わさって作成された脳無のハイエンド種。
・脳無を徹底的に“道具”として扱う事をコンセプトに発明された。 人の死体を素材としているが、自我を持たない兵器。
・戦闘力は高いが特筆すべき点は個体同士での情報共有能力である。
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