脳依紫那は天才である   作:緑川翼

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ようやく学校が始まります。
クラスメートの口調に自信がないので、何か違和感があれば、報告して下さると有難いです。


個性把握テストと興味深い少年

『朝デス!朝デス! 7時ニナリマシタ。速ヤカニ登校ノ準備ヲシテ下サイ! 朝デス!朝デ…』

 

「……ああ、もうそんな時間…」

 

 

 入試試験後に造った遅刻防止用のアラームが数度鳴り響いた後、紫那はようやく作業台から顔を上げた。今日は雄英高校の初登校である。

 

 

 昨晩、唐突に1つ着想を得てから紫那は、ノンストップでこの時間まで実験を繰り返していた。紫那には不眠に耐える機能など付いていないから、普通に徹夜である。

 

 しかし紫那は徹夜の常習犯であり、特製の栄養剤を飲めば3徹までは素面でいられる事を経験則として知っている。

 

 

 登校にかかる時間を考えればあまり余裕はないので、紫那は急いで準備を始めた。

 

 

 

「……制服は…何処に置いたかしら?」

 

 

 栄養剤を飲み、自作の瞬間洗浄機で身体を洗ったところで、紫那は素っ裸のまま首を(かし)げた。

 

 

 数日前に、採寸した制服が雄英から送られてきた筈なのだが、届いたのが実験中だったせいで何処に置いたのか忘れてしまったのだ。

 

 

 紫那は研究に集中すると、その他の事への意識が散漫になる。

 

 

 その癖、考え事をしながら物を持ってフラフラと自室兼研究室を歩き回っては適当な場所に持っていた物を置いてしまうから、酷い時には冷蔵庫の中から科学雑誌が出てきた事まである。

 

 

 故に紫那は、本当に制服の場所が分からない。更に面倒な事に、10数階あるビルの最上階を丸々自室と使っているため、紫那の部屋はだだっ広い。探すのも一苦労だ。

 

 

「間に合わない…? いや、間に合う…わよね?」 

  

 

 ただでさえ研究に集中し過ぎて遅刻ギリギリなのに、これ以上時間を浪費しては初日から遅刻してしまう。

 

 

 こうして徹夜明けの紫那は全裸のまま、制服の行方を探す羽目になったのだった。

 

 

 

 

 結局、制服は何故かベランダに立て掛けてあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何とか間に合った…わね」

 

 

 一般車道の法定速度限界まで車を飛ばして、しかも天才の頭脳で道路の混雑や信号の変わるタイミングまで計算して最短のルートを選ぶことで、紫那はギリギリ予鈴前に校門を抜ける事ができた。

 

 

 最近できた生徒用の駐車場に車を駐め、既に頭に入れてある校内地図に従って紫那は廊下を走る。教師に見つかれば怒られるだろうが、初日の為か廊下に教師の姿は見当たらなかった。

 

 

 ──改造人間(サイボーグ)少女が全力で走っているので、もし()()()()()()()()()()()()()()()()()、まさかそんな事をする奴はいないだろう。

 

 紫那は周囲の注意もそこそこに廊下を突っ走っていく。

 

 

「──見えた!」

 

 

 ユニバーサルデザインなのか、矢鱈(やたら)と巨大なドアと『1ーA』の文字。キーンコーンと既に予鈴は鳴り始めているが、このスピードなら鳴り終わるまでに教室に入れる。

 

 と、思っていたのだが、

 

 

 

「お友達ごっこしたいなら他所(よそ)に、いッ!!」

 

「なあッッ!!!」

 

 

「「「ヒトが吹っ飛んでいったーー!!」」」

 

 

 

 まさか、教室前で寝転がっているヤツがいるとは流石の紫那も思わない。

 

 

 寝袋の男を跳ね飛ばさないよう紫那は寸前で踏み止まり…結果、物理法則に負けて紫那は廊下を吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

「まァ言いたい事は多々有るが…取り敢えず廊下を走るな。高校生にもなって」

 

「……弁解の余地が無いわね」

 

「除名にしたい所だが…今日は初日だから慌ててたって事にしといてやる」

 

「ありがたいわね」

 

 

 吹き飛んだ後、紫那は無精ひげを生やした小汚い男に正座で叱られていた。

 

 

 男が誰かと思えば、A組を担当する担任(プロヒーロー)だという。教室の前で寝袋に入っていた理由は分からない。

 

 

「彼女って脳依紫那…だよな? 最年少でノーベル賞取ってた…」

 

「吹き飛んでたのに?」

 

 

 後ろからヒソヒソと紫那を勘繰(かんぐ)る声が聞こえてくるが、これはしょうがないと紫那は思う。

 

 

 何処に教師を轢き掛けて吹き飛ぶ天才がいるのか。紫那は自分を客観的に観て、少しだけ情けなくなった。

 

 

 

「……まァいい。お前ら、早速だが体操着(コレ)着てグラウンドに出ろ」

 

 

 お説教を終えた小汚い男…相澤先生は寝袋から体操着を取り出して、そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「先ほどは災難でしたわね」

 

「……貴女は…確か八百万(やおよろず)グループの…」

 

 

 更衣室で体操着に着替えていた紫那に話しかけてきたのは、長髪をポニーテールにまとめた少女だった。

 

 

 八百万グループは紫那の取引先の1つだ。紫那はその縁で何度か八百万グループの主催するパーティーに招待されており、彼女にはその席で何度か話した事があった。

 

 

 何故良い所のお嬢様がヒーロー科にいるのかは知らないが、そんな事を言えば自分の方(天才・無個性)が物珍しいので、紫那に尋ねる気はない。

 

 

「ええ、お久しぶりです。3年間、どうぞよしなに」

 

「ええ。よろしく…八百万さん」

 

「ナニナニいきなり仲良くなったのーッ?!」

 

 

 ハイテンションで紫那らに話しかけてきたのは、ピンクの髪と肌、そして白黒反転した目と触角を持った少女だった。こちらは、紫那が覚えている限り交友は無い…はずだ。

 

 

「私芦戸(アシド)三奈(ミナ)。よろしく! 」

 

(わたくし)は八百万(モモ)と申しますわ」

 

「ワタクシ?! マスワ?! オジョー様みたい!」

 

「ええと、まあ…はい」

 

 

 テンションの高いまま芦戸にソッチはと視線で尋ねられ、紫那は返事をする。

 

 

「脳依紫那。“天才”よ」

 

「吹っ飛んでたのに?」

 

「ソレは、まぁ…」

 

 

 もしかして、コレはしばらく言われ続けるのだろうか。紫那は自身の迂闊(うかつ)な判断をちょっと後悔した。

 

 

「あ、あのさ!」

 

 

 芦戸に続くように少し緊張した様子で紫那に声を掛けてきたのは、三白眼とプラグ型の耳たぶをした女子だった。

 

 

「あっ、私耳朗(じろう)響香(きょうか)。それで、あの、脳依って…アレだよね、この前“万能血液”の発明でノーベル医学賞を受賞した…」

 

「ええ。その脳依よ」

 

 

 紫那はこれまでに様々な賞を受賞してきたが、去年特に一般的にも有名なノーベル賞、それも最年少での受賞した事は今まで以上に新聞やメディアなどで大きく取り上げられ、紫那のインタビューシーンや授賞式の映像が連日連夜テレビに映っていた。

 

 

 

「えっと、ニュースで見て気になってたんだけど、脳依って…“無個性”、なんでしょ…?」

 

「あっ…!」

 

 

 ──バチッと一度、紫電が響く。

 

 

 八百万がハッとした顔で紫那の顔を見るが、紫那は問題ないと冷静な顔つきで首をふる。

 

 

「……ええ。私は“無個性”よ」

 

 

 エェッ!!とでも言いたげな顔で驚く八百万に、そこまで驚く事だろうかと紫那は内心疑問に思う。…確かに、今までの対応的に驚愕の事態かもしれない。

 

 

 “無個性”で天下の雄英高校に入学するのだ。悪意ある記者なら兎も角、無知な同級生相手に忖度(そんたく)を強要するほど、紫那は図々しくなかった。

 

 

 

「やっぱり…その、変な事聞いてゴメン」

 

「別にいいわ。自分が奇異な例である事は理解しているもの」

 

「あっ! じゃあ私からも質問!」

 

「……ええ。どうぞ芦戸サン」

 

「ミナでいいよ! シーちゃんってたまにバチッて鳴ってるの、何の音?」

 

 

 成る程確かに疑問に思うだろうと、紫那は体内に仕込んだレーザー銃を腕から生やしながら、言う。

 

 

「私は改造人間(サイボーグ)よ。その影響で、たまに漏電するの。……ちょっと待って。シーちゃんってもしかして私のこと?」

 

「うん! 紫那(シナ)だからシーちゃんね!」

 

 

 紫那はあだ名を付けられた事がなかった。“百年先を行く少女”だの“ニューロンの申し子”だの二つ名を付けられた事は有るが、あだ名は初めての経験だった。

 

 

「……学校には来てみるものね」

 

 

 そもそも紫那は、サイボーグである事で気味が悪いと疎外される可能性も考慮していたのだが、改造の話はへーそうなんだー、で済んでしまった。

 

 

 流石は雄英の生徒と言うべきか、皆英雄の下地は持っているらしい。

 

 

「あっ…。あの、皆さん」

 

 

 芦戸にヤオモモと名付けられテレていた八百万が、ふと気付いた様に言う。

 

 

「そろそろ急がないと、時間が…」

 

「「「あっ…」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅い」

 

「……弁解の余地がないわね」

 

 

 一番着替えるのが遅れた紫那は、グラウンドで相澤先生に叱られていた。まさかの本日二度目である。

 

 

 紫那は時間通りに行動するのが苦手だ。思い付くと考察に集中したくなるし、今まではそもそも大学での講義だろうとインタビューだろうと相手を待たせればよかった。

 

 

 しかし学校生活ではそうもいかない事を、紫那はようやく思い出した。

 

 

「合格したからって気ィぬけてんのか? いやお前の場合は…。……()()()()()見逃してやる」

 

「ありがたいわね」

 

 

 そこら辺の事情を察した相澤先生に恩赦を貰えたが、本人の言葉通り明日からは本当に追い出されそうだ。そんな()()を、紫那は相沢先生から感じた。

 

 

 

「それで、グラウンドで何をやるんですか? わざわざ体操着に着替えて」

 

 

 尻尾の生えた特徴の無い生徒が、挙手して相沢先生に尋ねる。

  

 

「……今から、個性把握テストを行う」

 

「個性把握…テストォ!?」

 

「入学式は!? ガイダンスは!?」

 

「ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間ないよ」

 

 

 相澤先生曰く、ヒーローの素地を形成する為にまず、自分の“最大限”を知るのが目的らしい。成る程、確かに合理的だ。

 

 

 

死ねえ!!

 

 

 早速ボールを渡された男子生徒──入学試験の際に見かけた金髪のヤンキー少年─が、爆発系統の“個性”と共にボールを投げる。

 

 

 爆風を纏ったボールは遙か彼方まで飛んでいき、700メートルと“個性”抜きではあり得ない数字を叩き出す。

 

 

「705mってマジかよ!?」

 

「なんだこれ!! すげー()()()()!」

 

「“個性”思いっきり使えるんだ!! さすがヒーロー科!!」

 

 

 興奮する生徒の言葉に、相澤先生が待っていたとばかりに反応したのを、紫那は見逃さなかった。

 

 

「面白そう…か。ヒーローになる為の三年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい? よし。トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」

 

「「「……はあああ!?」」」

 

 

 

 ……さて、紫那の目は少々特殊である。

 

 

 二酸化炭素、紫外線、電磁波。様々な物が見えるよう、紫那は己の瞳を改造(カスタマイズ)した。結果、見える物が増えたついでに瞳孔も3つに増えたが、紫那は気にしていない。

 

 

 兎に角その特殊な目と優れた脳により、紫那は1つの()()を持っている。

 

 

 即ち…人体に流れる微細な電流から、()()()()()特技だ。

 

 

 その特技を持ってしっかりと相澤先生を観察した結果、相澤先生の言葉には()()()()()()。幾らかの含みは有りそうだが、つまり相澤先生は本気で最下位を除籍する気らしい。

 

 

 チラリと緑髪の生徒を尻目に、面倒な事になりそうだと、紫那は小さくため息をついた。

 

 

 

 

「4秒02!!」

 

「…まあ、短距離ならこんなモノね」

 

 

 

 脚に仕込まれたMr.Device(浮遊デバイス)を解除し、紫那は地に足を着ける。

 

 

 体力テストは8種目。天才のプライドとして、紫那は総合成績でトップを取るつもりだった。個々の種目では兎も角、新入生相手に総合1位を獲れなければ、No.1ヒーローなど叶わぬ夢だ。

 

 

 

──握力

 

 

「80…90…すごい100越えた!」

 

「100越えって…そのナリでゴリラかよ…」

 

「女の子にゴリラとか言うなし!」

 

 

 紫那は別に気にしないのだが、失礼な事を言った金髪の男子が耳朗にツッコまれていた。

 

 

 

──立ち幅跳び

 

 

 ここはMr.Deviceの独壇場である。グラウンドの端まで飛んでいき、最高評価を取った。

 

 

 

──反復横跳び

 

 

 またもやMr.Deviceが大活躍したが、紫那の後に跳ねたブドウの様な頭をした小柄な男子生徒の跳ねっぷりには負けてしまった。

 

 

 

 

──そして、ボール投げ

 

 

「ダメだこれすぐ出来るような簡単な話じゃない!皆一つは大記録を出してるのに…!!残りは持久走上体起こし長座体前屈…!もう後がない…!!」

 

 

 ボールを持った紫那の後ろ、他生徒の待機場所でブツブツと1人呟き続ける男子生徒。正直、紫那的にも少々気味が悪い。

 

 

 しかし彼は入学試験の際に紫那が目を着けた少年である。以前0Pロボットを粉砕し片手片足を反動で破壊する程の《超パワー》。紫那としても興味深い“個性”の持ち主。

 

 

 反動を恐れてか、少年──緑谷(みどりや)という名らしい─は今の所、特出した成績を残していなかった。

 

 

 

(──除籍は少し、困るわね。)

 

 

 彼のオールマイトに並ぶ“個性”には関心がある。ここで除籍されてはつまらない。彼には入学試験で()()()()()()()恩があるし、ここで返しておこう。

 

 

 そう決めて、紫那は体内に電流を溜めた。

 

 

 バチバチバチッと音が鳴り響き、会話に興じていた生徒達の視線を集める。その中には、緑谷の視線も混ざっていた。

 

 

 それでいい。私を見ておけ。そんな事を考えつつ、紫那はボールを軽く宙へ上げる。

 

 

 

「≪STEROID(ステロイド)──」

 

 

 

 この技は、紫那がオールマイトの(パワー)を模範して作った技だ。

 

 しかしオールマイトの天候を変えるパンチの威力を100%とした場合、最大出力は精々オールマイトの40%程度。にも関わらず、その超パワーは紫那の腕をズタズタに破壊してしまう。

 

 

 そんなデメリットだらけの技だが、今回はそれが()()。紫那は中指を丸め親指で抑え、

 

 

 

「──SMASH(スマッシュ)≫!!!

 

 

 

 降ってきたボールを、()()()弾き飛ばした。

 

 

 

「……624m!」

 

 

 一瞬の静寂の後、ワッと周囲が騒がしくなる。スゲーだのオールマイトみたいだの、高校生らしい素直な賛辞に、紫那は少し気を良くする。

 

 

 正に『オールマイト並みのパワー』で投げたのだから、当然だ。

 

 

「ッ! クゥッ…」

 

 

 痛みに襲われて指を見れば、指は青紫色に腫れて変形していた。身に余る力を使ったのだから、これも当然だった。

 

 

 しかし、腫れ上がったのは()()()()。力任せに投げるのではなく、ボールを押し出す指先にのみ技を発揮させたことで、腕の破壊を防いだのだ。

 

 

 チラリと緑谷少年を見れは、気付いた様子でブツブツ言っている。それでいい。言葉通り紫那が()()()()()甲斐はあったらしい。

 

 

 2回目は普通に投げ、紫那は痛みに耐えながら()ました顔で列に戻る。

 

 

「……あんま甘やかすなよ」

 

「さあ? 何の事だか」

 

 

 道中相澤先生に釘を刺されるが、紫那としてもこれ以上彼を助ける気はない。紫那がここまでして最下位になるなら、それまでだ。

 

 

 

「お帰りシーちゃん! 凄かったね!」

 

「……大丈夫? なんか、指ヤバい事になってなかった?」

 

 

 列に戻ると、芦戸と耳朗に出迎えられた。芦戸は気付かなかった様だが、耳朗には指先を見られたらしい。

 

 

「問題ないわ。()()()()()()()

 

 

 紫那はそう言って、手を見せる。紫那の指は、彼女の言葉通り既に()()()()()()

 

 

「え! …それも改造なの?」

 

「ええ。そういう造りにしたの、私の身体は」

 

「へぇ… 天才ってすご…」

 

 

 紫那の自然治癒力は限界まで高められており、大抵の外傷は目に見える速度で回復する。これにより、紫那は無茶な改造手術を敢行できたのだ。

 

 

 

SMASH(スマッシュ)!!!

 

「おっ」

 

「やっとヒーローらしい記録出したよー!」

 

「指が腫れ上がっているぞ。入試といい…おかしな個性だ…」

 

 

 調整の効かない、身体を壊す程の超パワーを使うなら負傷は最小限に。緑谷は、紫那の行動(答え)からやるべき事を理解できたらしい。

 

 

「それにしてもあのパワー…やはり興味深い」

 

 

 紫那の目標はオールマイト(No.1ヒーロー)を越えること。そして今、そんなオールマイトに異常なほど似通った“個性”を持つ生徒がいる。

 

 

 オールマイトの“個性”が秘匿されている以上、緑谷とオールマイトの関係は不明だが、無関係という事は無いだろう。

 

 

 それを調べるのも面白いかもしれないと、緑谷に襲いかかる爆豪少年を傍目に、紫那は薄く笑った。

 

 

 

 

 ボール投げは終わり、その後の上体起こし、上座体前屈、持久走も何も問題は起こらずに終了する。紫那としても、可もなく不可もなくといった記録になった。

 

 

「んじゃパパッと結果発表」

 

 

 生徒を集めた相澤先生が手持ちのデバイスを操作する。

 

 

「トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明するのは時間の無駄なので一括開示する」

 

 

 トータル最下位は除籍。ほぼ全ての生徒は自分では無いと確信しているが、していないのは緑谷とブドウの様な頭の少年、後は透明な女子だろうか。

 

 特に紫那と違って腫れた指のままテストを受けた緑谷は酷く緊張していた。

 

 

ちなみに除籍はウソな

 

「「「!?」」」

 

 相澤先生の打ち明けた唐突な言葉に、紫那の眉がピクリと動く。

 

 

「君らの最大限を引き出す、合理的虚構」

 

「「「はーーーー!!!??」」」

 

「おや…?」

 

 

 企業スパイすら見抜く紫那の目に狂いはない。あの除籍宣言は本気だった。

 

 

 それなのに発言を撤回したという事は、相澤先生は緑谷(最下位の生徒)にもヒーローとしての可能性を感じたのだろう。

 

 

「やはり、面白い少年ね…」

 

 

 後で話を聞こうと、リカバリーガールのいる保健室へ向かう緑谷を見ながら、紫那は思った。

 

 

 

 ──ちなみに、総合1位は紫那だった。

 

 




技解説
【STEROID SMASH《ステロイド スマッシュ》】
・オールマイトの『DETROIT SMASH《デトロイト スマッシュ》』を紫那が持てる技術を全て使って真似した技。
・ワン・フォー・オール45%(33巻時の緑谷)と同等の威力。紫那の耐久値など諸事情により、これ以上威力は上げられない。
・紫那の耐久値ギリギリまで威力を上げているため、使うと初期の緑谷同様腕がバッキバキに折れる。
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