監視者の少女   作:シラネ

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監視者

まだ太陽が真上にある時間、ある中学校の格式高い部屋では一応真剣な表情の初々しい1年生と奇妙な笑顔をしている3年生がいた。

 

『我らは陰なる者。

隠世にてその力を把握し、現世にてその力を隠さん。

その力、世を変ずる為に使わず、世を整える為に使わん。

 

この言葉は私が小さい時から聞かされていた言葉で、訓戒として守られ続けられたものである。

自己紹介をしよう。

私は白峰理沙(しらみねりさ)。中学生になったばかりで緊張している。

私には姉が2人居るが、それぞれこの学校におり、私たちは1歳ずつ離れている。

訓戒から分かるように私たちは普通の人ではない。あれだけを見たら一家全体が厨二病みたいな風にとれてもおかしくはないが、私が小さい時から言われていた言葉なので仕方がない。事実、あの言葉を見て、現世で何らかの力を隠しながら世を整える役割をしろって言ってる時点で無茶苦茶だ。そんな影の立役者みたいな事をし続けろって言われても困るし、大体、そんな大規模な事が起きてそれを直そうとする時点で誰かにはバレるだろう。隠すなんて無理だ。

まぁ、無理と私が言っても仕方ないし、バレたらバレたで大騒ぎになるのでバレないように大人しくしておくのが一番だ。

私たちに与えられた役割も動かなければ楽なものだし。』

 

 

……ここまで書いてて思ったのは、私は自己紹介というものが本当に苦手だということだ。

中学生になって直ぐに授業が始まるという学校は多分無いであろう。始めにあるのはオリエンテーションとか、そういう類いの学校に慣れるための時間だ。

私は現在、そのオリエンテーションにて自己紹介文を書いてこいという課題を出された為にこうして書き連ねていたが、軽く見ただけで分かる。何言ってるんだこいつ、と。

 

「いや、無理だわ。正体隠せって言われてる身で自己紹介しろっていうのは致命的なんですけど……。」

「その通りだよね~。私たちにとって自分の正体をさらけ出す事は自殺行為に等しいもんね~。訓戒が滅茶苦茶過ぎて放り出したくなる気持ちも分かる~。」

「……恋理姉。後半部分、心読まないでくれる?」

「ごめんね~。理沙の心は手に取るように分かるから。」

「読むにしても口に出さない方が良い。」

「そだね~。」

 

この語尾に伸びる音が大抵入る彼女は、私の一番上の姉、白峰恋理(こいり)である。

この中学校の生徒会副会長であり、色々と怖い。私自身も嫌いではないが、苦手である。

常に笑顔と言えばその意味は分かる。瞳がほとんど見えない。何を考えているか分からない。更に奔放な性格で色々やりたい放題(自制心はあるみたいだが)という、よく分からない人物なのだ。

短くまとめると、意味不明。

 

「ひどいなぁ~。意味不明なんてそんな悲しいこと思わないでよ~。」

 

こんな感じで私が考えていることも全て見通される。本当に苦手だ。

 

「というか、理沙も他人の考えてる事ぐらい分かるでしょ~?」

「恋理姉、うるさい。」

「ピエン。」

 

マジで苦手。

校内放送で呼ばれ恥ずかしい思いをしながらこの生徒会室に居るのにどうしてこんな窮屈な思いをしないといけないんだ。

 

「そんなの監視者の役割を果たす為に決まってるじゃないの。」

「隠世での任務でしょ。現世ぐらい普通の中学生をしたいんだけど。」

「現世だから、よ。」

「……恋理姉、何かあったの?」

「今のところは何も。」

 

恋理姉は真面目な話になると、伸ばす音が無くなる。その時はニコニコとした気持ち悪い笑顔ではなくなり、緑色の瞳が確認できる程度の少し微笑んだ顔になるのだ。いつもそのようにすれば良いのにとは思うが、彼女曰く、敢えて作っているそうだ。そこは意味がよく分からないが。

 

「……はぁ。役割を果たせって言うんだから何かあったかと思うじゃんか。」

「監視者は理沙だけじゃない。私や理海もそうよ。この世界のはぐれ者同士、お互いを監視しないといけない。」

「それは分かってるけど……だからといって、特に問題ないのにわざわざ私を生徒会室に呼び出す必要はあった?」

「無いよ~♪」

 

いつもこんな調子である。小さい頃から身内に対して微妙に赦せる範囲のイラッとさせる行動が本当に多いこの姉貴。大体、私はまだ成り立てほやほやの1年生。普通ならそんな生徒が生徒会室に校内放送で呼び出されるような事はほぼ無いであろうに……。

 

そんな事を考えていると、部屋の扉が開き、メガネをかけた生徒が入ってきた。

 

「あまりこういう場所でそのような話は止めてくれないか?危ないだろう。」

 

ため息をつきながらそのように注意する彼女、白峰理海(あやみ)はまだ新年度早々なのにも関わらず疲れた目をしていた。

 

「おかえり~。理海。お疲れ様~。」

「全く。誰かに聞かれてたらどうするんだ。」

「聞かれても理解出来ないと思うし、結界張ってるから。」

「そういう問題では無くてな……。」

 

彼女、理海はこの中学校の生徒会長。いつも凛々しい彼女だが、私達と同様に監視者という隠れた任を背負って生きている。

監視者という立場。色々と仕事はあるが簡単にまとめると事件とかは解決し、出来るなら未然に防げみたいなこと。正直、めんどくさい。

 

「なにめんどくさいことをぶつぶつと想いに耽ってるの~?」

「実際めんどくさいでしょ。」

「にしても、私たちは一ヶ所に留まって本当に良いのだろうか……。仮にも私たちは監視者。そのような者達が一ヶ所に固まっていてはあまり意味はないと思うが。」

「私たちはまだ中学生。義務なのをすっ飛ばして飛び回る訳にもいかないでしょ~?あと私たち家族だし。……まぁでも?文字通り飛べるけどね~?」

「絶対にやらないでよ。明日、自己紹介する時に、あ!空を飛び回っていた人の妹!?怖~!化けもんじゃん!とか言われたらアンタのせいだからね!」

「そ~らを自由に、飛びたいなぁ~♪」

「露骨に目をそらすな!歌うな!」

「理沙、姉さんに言ってもダメだ。ああなったら話にならない。耐えてくれ。」

「私は普通の学生として生きたいの!定めがあること自体は生まれから仕方ないにしろ、せめてただの人間として振る舞えるこの時は普通に生きたいの!!」

「気持ちは分かるが……多分無理だ。姉さんは相当やらかしてる。」

 

理海姉の無慈悲な言葉と恋理姉の自由すぎる発言により私は大分落胆した。明日のオリエンテーションが心配だ。……ああ、なんだかお腹痛くなってきた。

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