「いや~しっかし、理沙もピカピカの1年生か~。早いもんだね~。」
「そうだな。そして、早く書類を片してくれ。」
「はいはーい。」
妹であり、生徒会長である理海の言葉に従い、鼻歌を唄いながら書類作業を片していく恋理。
(真面目にやると仕事が一気に進むんだが……毎回こちらから言わないと動いてくれないんだよな……。)
「聞こえてるよ~。」
「聞こえるように言ったんだ。」
「むぅ、いじわる!」
「何が意地悪なんだ……。」
そう話し合いながら生徒会室で2人、山のように積もっていた書類はその高さを減らしていった。
「さて、今日はここらで切り上げよ~!」
どっこいせと言いながら立ち上がり、背伸びをする恋理。
「そうだな。理沙も待ってるだろうし、早めに切り上げよう。……さて、家に帰る前に買い物に行かなくてはな。」
「そだね~。理沙はお昼は自分で済ましているだろうし……夕飯の材料を買いに行こっか。」
「何を作ろうか……店に行ってから決めようか。」
「そうだね~。」
私たちは現在、あるマンションの一室に3人で暮らしている。
両親が仕事の関係で遠く離れた場所にいるため、私たちは自分達で色々な事をやらないといけない。お金は余裕あるし、保護者は叔父夫婦となっているが、その叔父夫婦も仕事が忙しく、あまり私たちと過ごすという事はない。
「私たちには親とか保護者とかいなくても十分に暮らせるけどね~。」
「保護者は要る。法律的にも、世間体的にも必要だ。」
「ん~?恋理、難しいこと分かんなーい。」
……私よりも賢い姉さんがそんな事を言わないでほしい。
ため息が出る。
鞄を持ち、部屋から出ようとすると、外から走り音が聞こえ、目の前の扉が勢いよく開いた。
「白峰さん!いますッおわ!?」
現れたのは事務室の職員だった。息は絶え絶え、まだ涼しい春なのにも関わらず汗をかきまくっていた
「どうかしましたか?とりあえず落ち着いてください。」
「はぁ、はぁ、はぁ……白峰、理沙さんが、交通事故に逢いました……!」
「「な……!?」」
「詳しい、状況はまだ分かりませんが……。病院に直ぐに行って下さい……!」
「分かりました。向かいます。」
その後、理沙が搬送された病院の場所を教えてもらい、私たちは
病院に着いて、部屋を聞き、訪ねるとベッドで包帯だらけになり寝ている理沙がいた。
「理沙!!!」
恋理姉さんが呼び掛けても目は開かないし、声も出さない。
担当医の話によると事故の際に頭を強打した事が原因で昏睡状態になってしまったそうだ。しかし、脳に損傷は見られない為、事故の強い衝撃で意識を失ってしまったと考えられると言われた。そして、目を覚ますのがいつかは不明と言われた。
「……!なんでこんなことに!」
泣きながら理沙と呼び続ける姉さん。私は担当医に連れられ、別室にて詳しい状況、これからのことを聞かされることになった。
暫く泣きながら項垂れていた恋理。
目を赤くさせ、視界をぼやかしながら代わる代わる見に来ていた看護師に声をかけた。
「……ごめんなさい、看護師さん。申し訳ないけど暫く2人だけにしてくれますか。理海が戻ったら理海も入れてください。」
「分かりました。何かありましたらコールを押すなど、直ぐに私たちにお声かけ下さい。」
扉がゆっくりと閉まり、部屋には恋理と寝ている理沙だけとなった。
ハンカチを取り出し、目元を拭き、涙を取る。
そして、恋理は、
部屋中にフィンガースナップの音を響かせるのだった。
「これで良しっと。……ねぇ、そろそろ起きたら?理沙。」
そのように呼び掛けても患者は全く動かない。
「……えい!起きろー!」
患者の耳元でそう叫ぶ恋理。
『あー!うっさい!静かにして!』
「お、起きたね~」
『少しは自重しなよ……動かないからって叫ばないで。」
「だってその方が面白いじゃん?」
『何が……!あと、私の事なんて全然心配してなかったでしょ。』
「まぁね~。」
部屋には1人の明るい声だけが木霊していた。
『泣いてたのも全部演技だし。』
「渾身の泣き真似だったんだけどなぁ……」
『指パッチンなんてわざわざやって……私に聞こえるようにわざとやったでしょ。』
「正解~♪防音結界と侵入妨害結界ね。理沙と安心して会話できるようにするためにね~。」
『ホント、苦手だわ……。アンタのこと。』
「むぅ!恋理お姉ちゃん、そんな事言われると本当に泣いちゃうよ!」
『三姉妹の中で色々一番強いのになに言ってんだか。』
「強いよ?……だって貴女達のお姉ちゃんだから!」
その後も恋理は独り言を話し続けた。
「……そっかぁ、理沙はちゃんとその男の子を守れたんだね。偉い偉い♪」
患者の頭を優しく撫でる姉。
『そんなことされるような歳じゃない。……男の子をメンタルケアすることや運転手の男性を守ることは出来なかった。』
「そうね。……運命を直接変えることは出来ない。変える為には理沙が何かしらのアクションを未確定の状況から変える必要があった。でもそんな事はしてはいけない。」
『……正体をばらすきっかけになるからでしょ。』
「その通り。私たちは普通には生きてはいけない存在。そして、私たちは影響を大きく与える事が出来る存在。……人間誰しもがその可能性は秘めているけども、私たちは人間ではない。」
『生まれのせいで一生辛い想いをしなければいけないって……エグいよ。』
「でも、それを守らないと、常に追いかけられる身になってしまう。……ばらさずに常に隠れるか、ばらして常に追いかけられるか。既に犯罪者かテロリストか何かみたいな存在だけど、事実そのような感じだから、仕方ないよね。……ごめんね。やっぱ辛いよね。」
『……いや。そういう存在なんだって割りきるしかない。』
「本当に強くなったね……。」
『……うっさい。』
病室にクスクスと1人の笑い声がした。
「……さて、そろそろ帰るね~。理海と一緒に夕飯の買い出しに行くの。……じゃ、1週間後、一緒に学校に行こうね。」
『りょーかい。……おやすみなさい。』
「おやすみ~。」
笑みを浮かべながら恋理は立ち上がり、病室を後にした。
その後、恋理は話が終わった理海と合流し、お互いの情報を交換しながら食材の買い出しに向かうのだった。