監視者の少女   作:シラネ

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校内見学続編

昨日の交通事故を見てしまった俺は酷く困惑していた。目の前で交通事故。素人の俺が見ても動かない女子生徒。

 

今朝、担任から伝えられたのは、白峰が交通事故に逢い、しばらくの間学校には来れないだろうという事だった。中学1年になったばかりの俺らからすればクラスメートが重体になっていることに恐怖するもののほとんど素性を知らない為か朝会の後ヒソヒソとその話について話し合うだけで特に滅茶苦茶に大きい反響は無かったように見えた。

だが、俺を含めた班内の奴らは周りよりも影響を食らっていた。

 

「昨日まで普通に話せてたのに……。」

「事故とは恐ろしいですね。私たちも気を付けましょう。」

「……。」

「庄田、何黙ってんだよ。お前が事故した訳じゃないんだから、お前が青ざめるな。」

「小坂君……だって、昨日、初めて会ったとは言えども少しは話したんだよ?……しばらくの間って言ったら……期限が決まっていないってこと……だよね?会えなくなってしまうかもしれないって思うと……。」

「お前がそんな感じになっても仕方ねぇよ。」

「そうだよ!庄田まで元気無くしてどうするんだよ!……今は白峰が元気に学校に来れるように祈るしかないでしょ。」

「そう……だね……。」

 

不安になる気持ちは分かる。だが、出会ってほんの少し関わった奴に対して俺らがウジウジし続けるのはおかしい。というか何故なれる。

そんな事を思いつつ自分に嘘をつきながら、今日のオリエンテーションである、新入生歓迎会と部活動紹介の会場である体育館に向かうために準備していた。

 

「意味わかんねぇ。」

 

虚勢を張ることしかできなかった。

 

 

 

「新1年生の皆さん、ご入学おめでとうございます。……」

 

先ほどとは打って変わって歓迎会は活気があった。

在学生代表である生徒会長が新入生に向けた挨拶を行った後、部活動紹介が行われ、その迫力が凄かった。運動系はもちろんのこと、それ以外の部活も新入生勧誘の必死さが丸見えだった。

 

だが、俺は部活に興味を持てず、生徒会長の話もまるで聞く気が無かったが。

 

30分後、休憩の為に教室へと戻り、次の時間に行われる身体測定等に向けて準備することになった。

一通り身体の情報を奪われた後、教科書類が配布され、色々と学習内容、教材の確認を行った。

そして今日も俺たちは早めに帰宅することになるのだった……のだが、

 

「やっぱり、白峰の事が心配だよ!暫くは来れないって言ってたけど、こっちから様子を見に行くことは出来るよね!?」

「お見舞いに行くということ?」

「うん。連絡があったということはどこの病院にいるかってことも分かってるはずだから先生に聞いてくる!」

「ま、待って!皐!」

 

いてもたっても居られなくなった皐は廊下へと走りだし、階下の職員室へと向かっていくのだった。そんな様子の彼女を見て草薙は大きくため息をついた。

 

「あいつ、いつもあんな性格なのか?」

「いつもではありませんが、怪我や病気などで自分の知っている人が入院などするとあんな風に。」

「だからって昨日会ったばかりの奴にあそこまでなるのか……?」

「皐は事故を酷く怖がりますので……。ですが……。」

 

何故か草薙が言い淀み、口に出しづらそうにしていた。

 

「まぁ、西海が事故による何かを怖がってるんだな。言いにくいのなら無理して言わなくて良いよ。」

「……はい。」

 

俺自身も白峰の容態など詳しい事は聞かされていない為、気になることはあるが、気にしても仕方がない事。そのように自分に言い聞かせ、二人を心配する彼らを置いて俺は帰るのだった。

 

 

廊下に出て階段を下る。

一階廊下に出て脱靴場へと向かう。

しかし、その途中にて気になる建物を見つけてしまった。

 

「……なんだ?本館は新しい癖に別館の中でもオンボロ具合が凄いこの建物は……?」

なんとも興味を唆される少し薄暗い雰囲気のその建物は『○室棟』という文字が一部剥がれた看板が掲げられた建物だった。

 

「そういや、オリエンテーションの校内見学のときには俺ほとんど聞いてなかったな。我ながら悪い癖だ。」

 

興味が無いことだと全て聞き流す。本来有益な情報だとしても不要だと感じればシャットダウンするかのように流してしまう俺の悪い癖。嫌なものではあるが使い方によれば強いものだと感じているが今回のようなケースは痛いものだった。

 

「……帰ろ。」

 

そう言いつつ、やっぱり無視して帰宅しようとする。

 

すると、

 

「あれ~!勇気無いね~!君!」

「!?」

 

後ろから高い且つ軽い女の声がした。

振り返ると誰も居ない。

 

「き、気のせいか?」

 

そしてもう一回振り返って入口の方を向こうとすると、居た。

目の前に。

 

「君~ダメだよ?後ろから声を掛けられたからって振り返ったら?振り向いた瞬間に後ろから刺されたら何も出来ないまま終わっちゃうよ~?」

「……どういう状況なんだよ、それ。」

 

目の前に居たのは俺よりも小柄……いや、普通の中1女子よりも背の低い笑顔の女子だった。

 

「お前、誰なんだよ?」

「あれ~?初対面なのにお前~?君、口悪いね~?」

「いや、いきなり物騒な事言っている奴に言われても……。」

「これは、恋理ちゃんがしっかりと導かないといけないですな~?」

 

なんなんだこいつは。

いきなり話しかけては物騒。そして気味が悪い笑顔をしながらイミフな事ばかり話してくる……気持ち悪い。

 

「あれ~?君、色々と失礼な事考えてるよね~?ねぇ、そうでしょ?君の顔、失礼だよ~?」

 

失礼なのはお前だろ!?

 

「ま、いいや!それじゃオリエンテーションの時に不真面目にしていた君を導いてあげる!」

「いや、けっこ……」

「それじゃ行くよ~!」

 

その女子は俺の手首を掴み、その古い建物に強引に引きずり込む。

 

「おい、離せよ!……って力強!?全然離れねぇ!?というか振ろうとしてもビクともしねぇ!?」

 

結局俺はそのワケわからない奴に校内見学続編を強制受講させられるのだった。

 

 

 

「とりあえず、ここは部室棟って言うの!ほとんどの部活の部室があるよ~!」

 

薄暗い中、幾つかの部屋があり、それらの扉の横にはバスケ部やら卓球部などの運動系部活、科学部や吹奏楽部などの運動系じゃない部活の名前が書かれた札が貼られており、色々と部室があった。

 

「活動している所は大抵違うけどね~。ここは倉庫として使われる事が多いよ~。」

 

だから薄暗いのか。ここで活動するわけでも無いため、本館と同じように明るくしなくてもあまり問題は起きないということか……。いや、ボロボロなのは直せよ。というか帰りたいんだが、ずっと腕を掴まれて放してくれない。

 

その後も色々と部活の説明を聞かされた。興味が出てくるような部活は無かったが、執拗に「ねぇ、聞いてる?」と言ってくるのでうざかった。

 

そして、部室棟1階最奥の部屋に連れていかれた。今まで見てきた所の中でも最も暗く、恐くも感じる場所だった。2階、3階は部活に関係無い部屋で椅子や机などを置く部屋なのだそうで1階しか説明されていない。まぁ、それは良いとして、最奥の部屋の看板にはこう書かれていた。

 

『生徒会』

 

「おいおい、一番暗い所にあるのが生徒会室かよ……。」

「そだよ~!」

 

笑顔で頷くこいつ。何故誇らしげなのか。

 

「流石にこの部屋は倉庫だよな?大抵の他の部室と同じように。」

「ううん。ここが所謂『生徒会室』。ここで活動するんだよ~。」

 

……マジか。

唖然とするしかない。こんなに暗くひっそりとした所にあるのが生徒会室だなんて。あくまでイメージなのだが、生徒会室って学生の役員が集まって色々な事務作業をするような感じじゃないのか?小学校にも委員会というのはあったし、それに類するものじゃないのか?

 

そんな事を思っていてもお構い無しにそいつは俺を引っ張って

 

「それじゃあ~入ってみよっか!」

「は?」

 

と言いながら引きずり、思いっきり『立入禁止』と書かれたその生徒会室の扉を開けるのだった。

 

「……ようこそ。生徒会執行部へ。」

 

さっきの声とは全く異なった雰囲気の声が聞こえたが、部屋には誰も居なかった。

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