突如、召喚されたヤマタノオロチから吐かれたブレスを左右に避け、散らばったオレとらんま。オレはすぐさま、剣を構え、らんまは槍を構えた。
「手加減は無用だな……! 本気でいくぜ」
らんまが無鉄砲に槍で斬りかかる。爪装備から槍に武器を変装したのはヤマタノオロチとの距離を保つためであろう。目は真っ赤。胴体は一つで頭と尾は八つ。その全身には苔こけ、ヒノキ、杉が生えており、体の全長は円形フィールドの中央を覆い尽くすほどだ。
らんまが1つの頭を攻撃するも、すぐさま、残りの頭が長い首を活かして、らんまを弾き飛ばした。
「ぐへぇあっ」
円形フィールドの端の水辺に落とされたらんま。ずぶ濡れで這い上がってくる。
「くぅっ、らんま、気をつけろ」
オレはあえて、頭は狙わずに胴体を呪文で狙い打った。
詠唱を行う時間を十分に取れないので威力が半減された電撃しか放てない。
牙を剥き出した攻撃を剣で受け止めても、すぐに火炎ブレスが飛んでくる。
「達也、挟み撃ちだ!」
「おう!」
オレは8つの頭と、16つの目に睨まれながら、剣で相手する。その隙にらんまがヤマタノオロチの後ろから槍で突き刺した。
ズブッ!
悲鳴をあげるヤマタノオロチだが、すぐさま、らんまを強烈な威力の尻尾アタックで弾け飛ばした。どっしりとしたボディに短い四つ足で動きはゆったりとしている。広い場所なら、ヒット&アウエイの戦法も取れるが、この狭く水に囲まれたバトルフィールドでは、こちらがかなり不利だ。
鬼灯のように赤く染まった眼がオレたちを睨みつけた。ヤマタノオロチは全身を這はわせながら、その八つの首を縦横無尽に動かす。
「おい、達也! こいつ、さっき槍で刺した場所の傷が治っていってるぞ」
「はぁ?!自然治癒力もあるのかよ」
自然治癒力といえば、ゲームでも最も厄介な相手。戦闘が長引けば、こちらの魔力や体力が枯渇するだけ。こういう相手にはチクチクとダメージを与えるのではなく、高ダメージを当てて一気に叩かなければ。
「らんま! 螺旋のステップに誘い込むぞ。こいつの闘気を利用しよう」
「了解だ!」
オレとらんまは肩を並べて、8つ首の前へと立つ。オレはあえて、怒らせようとトサカに斬り割いた。怒ったヤマタノオロチがオレとらんまを追いかけ始める。オレは高ダメージを与えるために飛龍昇天波で倒そうと提案した。
飛龍昇天波は元々は女傑族の奥義でシャンプーの曾祖母コロンより伝授されたものだ。熱くなっている相手を螺旋を描くような動きに誘導し、それによってできた熱い闘気の渦に自身の冷たい闘気を纏わせたスクリューアッパーを撃ちこむことで、相手の熱気と自分の冷気の温度差で上昇気流を作り、竜巻を巻き起こし相手を吹き飛ばす大技。威力は相手の強さ、即ち闘気によって変動し、相手が強ければ強い程に威力が上がる。
後ろ向きに移動しながら、8つ首を二人で相手する。
グオオォオオッ!グオオォオオッ!グオオッ!グオオッ!グギャオッ!グオオッ!
「だぁー、こら、うるせぇ、おとなしくしやがれ」
8つ頭がすべて叫ぶと、まるで地震のようにフィールドを揺らした。
オレたちを追いかけ回すヤマタノオロチを螺旋のステップに誘いこんでいく。
「よし、あと少しだ。あと、少しで螺旋の中央だ」
外側から回ってきた足跡で円形フィールドに螺旋の渦を描いた。
「いくぜえ、オロチ覚悟ぉおお!! 無差別格闘早乙女流奥義・飛龍昇天波ぁあああ!」
らんまのスペシャルアップカットが炸裂するオロチの胴体にめり込んでいく。
ズゴオオオオオン!
ここで予定ならば、ヤマタノオロチの身体が場外へと吹き飛ぶはずなのだが。
「へっ……?!」
オロチの巨体が少し振動しただけで、まだ、オレたちの前にいる。
「はぁあ?!これでもダメか、 なんちゅうモンスターだ」
この世のモンスターとは思えないほどの防御力に怯むオレたち。これは撤退も考えないとまずいか。
お返しと言わんばかりに弾き飛ばされるオレたち。
「ちっきしょぉおーー、飛龍昇天波で倒せないなんて……」
「はぁはぁ……らんま。もっとオロチを怒らせないと、オロチの闘気よりも防御力が上回っているんだ」
「なにか、弱点はないのか。こいつに!」
必死に思い出すオレ。ヤマタノオロチは酒に酔わせてスサノオが倒したってことくらいしか覚えがない。今は酒なんて持ち合わせてはないし……。
ヤマタノオロチが首を盛んに動かして、オレたちの息の根を止めようとしてくる。
そのとき、オロチがらんまのことを見て、ニヤリと笑った。笑ったように見えた。
「女が弱点……いや、女好きか。でも、どうすれば」
「ちっ、仕方ねえ、最後の手段だ……。達也、ちょっと時間稼いでくれ!」
らんまが来た道を戻るようにして、円形フィールドから離れていった。
来た扉のほうへと入っていったようだ。
「らんま……なにか、秘策が?!」
オレはひとりで、らんまを追いかけるヤマタノオロチを足止めする。らんまのことを追いかけている、こいつが女好きである事は間違いなさそうだ。親近感は湧かないけど。
「オロチ、オマエの相手はこっちだ」
オレは数度の雷撃呪文をヤマタノオロチの足元に当てて、食い止めた。
数分後。らんまが扉から出てきた……。
「へっ?! ちょ、らんまぁああああ??!」