石の下から現れた階段。オレが先に降りてみる。続いて、らんまがピクシーと一緒に降りてくる。
「ボス階に近づいたってところかな?」
「ここ何階?」
「えーと……」
よくわからなくなってきた。たぶん23層目かな。
「あの隠し階段が使われていなかったってことは……もしかして、先の連中を追い抜いちゃった?」
「かも知れないな」
オレはもう真っ暗になってしまった階段の穴を見上げた。自動で閉まったらちょっと嫌だけど、どのみち進んで行くしかないのだ。部屋にひとつしかない入口から向こうを伺うと、遠くの方がうっすら明るいような気がした。
「また何か来ないうちに、行こう」
「よし」
強力な魔力を帯びたダンジョンをできるだけの早足で進む。やがて壁の所々に紫色の炎が灯る場所に来た、床も地面じゃなく石が敷かれている。
それまでと景色が変わった。紋様が柱に描かれた神殿のようなダンジョンを歩く。
「これは……いよいよ、かな」
通路の向こうで怒鳴る声と悲鳴、武器を打ち合う音が聞こえた。そして、ライノソルジャーとトロルの集団がこっちに向かってくる。いや、逃げてきた。オレたちに気がついて一瞬立ちすくみ、それから斧やこん棒を振りかざして襲いかかってきた。
もちろん、通路の中だから数が多くても一度に相手をするのは4匹くらいだ。10匹ほど叩き斬って蹴り飛ばすと、また向こうへ逃げて行く。今度はオレたちがライノソルジャー共を追いかけて行く。
少し広めの掘り抜き部屋に出た。いろいろ雑多な物が積み上げられて、粗末なテーブルや寝床みたいなものが並んでいる。そこで、反対側の通路からライノソルジャー共を追い込んできた連中と出くわした。先行パーティだ。さっきの聖女ルーナを残した奴らかもしれない。
重装備の戦士に、赤ローブの魔法使いと、あと一人は盗賊のようだ。盗賊のスキルを使ったから、こいつらは仕込まれた宝箱にひっかからなかったのだろう。
オレたちと連中は互いの存在に気づき、残っているライノソルジャーを全部やっつけた。
「オマエら、2人だけか? どこから来た?」
連中のリーダーらしい重装備の戦士が近寄ってくる。屈強な男。顔はアラレちゃんのせんべい博士。
「真ん中の通路です。やたらにモンスターが出て手こずったけど、隠し階段がショートカットになったようです」
オレはトロルの死体で剣を拭って鞘に収めた。それを見て、戦士も剣を収める。
「ふたつ上の階にルーナって名前の女を置いていったの、オマエたちか?」
らんまが聞く。
「そうだ」
「オークに襲われるところだった。ルーナは邪魔だったからオークは斬ってきたけど、そのあとどうしたのかまでは知らない」
「そっちは、2人か?」
赤ローブの魔法使いの男が聞いてきた。
「そうです。こっちは2人」
「ふーん、オマエたちも仲間を残して、先へ進んだのか?」
「あ、いえ、オレたちは最初から2人で入りました」
「へっ、オマエたちと一緒にするんじゃねえ」
らんまを最後に、ちょっとだけ会話が途絶えた。向こうが何を考えているのか、何となくわかる。この先のアイテムやダンジョン攻略の報酬などだ。
「アイテムの優先権のことは、心配しないでください」
オレは先に言った。
「オレたちはある人の依頼でここを潰すために来ています。だから、あなたたちがラスボスを倒してくれるなら、オレたちはそれでぜんぜん構わないんです」
また、先行パーティの3人が顔を見合わせて、ひそひそと話した。
「ギルド報酬は?」
盗賊が言った。
「報酬金は、すでに貰っていますから、オレたちは見届けることができればそれでいい。一切手は出すつもりもありません」
「そいつは、ありがたいな。俺はガルザス、魔法使いのシルドーと盗賊のトゾルだ」
オレたちは全員と握手した。それで話しはまとまった。
オレとらんまは連中の後ろを進む、ライノソルジャーたちはあそこで退治したので全てだったのか、どこを探してもいない。
「何か……おかしくない?」
らんまが小声で言った。オレは小さく頷く。
「きっとどこかで見張ってて、反撃……」
「そうじゃなくて」
囁くようにらんまが言う。
「あの、盗賊のトゾル。さっきから、ずっとオレたちの様子伺ってる」
そう言われて気をつけて見ると、トゾルは確かに時々、ちらちらとオレたちを見ている。
通路を辿り、いくつかの部屋を覗いたけど、たいした物は見つからない。見つかるアイテムもいらないと言ってあるので、連中が部屋を捜索している間、オレたちは待つしかなかった。
「あ」
いきなり、部屋の扉が外から閉じられた。オレもらんまも一瞬戸惑って、ドアに手をかけて揺すってみた。開かない。おそらくは盗賊のスキルで施錠されたようだ。
「ダメだ、完全に閉まってる」
「やっぱり、あいつら俺たちのこと信用してなかったんだ。ちきっしょぉ」
らんまが悔しそうに言う。
追いかけて行ってケンカになっても意味がない。だがここに置いて行かれるのも困る。オレは攻撃呪文で壁に穴を開けた。
ボロボロと崩れ落ちた壁から通路に出る。その先から戦闘の気配が伝わって来た。
「あいつら、やべーぞ!」