通路の先は広いホールだった。やつざきアニマル、ソルジャーブル。さらにはキマイラロードまでその中にうじゃうじゃひしめいている。剣を打ち合う音、魔法の火が飛んでいる。
ソルジャーブルの剣が戦士ガルザスの鎧を粉々に砕いた。悲鳴と飛び散るモンスターの血、もうメチャクチャだ。盗賊トゾルは敵にやられてしまったのか、もう姿が見えない。
「達也! 助けないと!」
そう言われても、この中に飛び込んでいくのは危険すぎる。攻撃魔法の援護も、敵味方がごちゃごちゃでは使えない。そうしている間に魔法使いシルドーがやつざきアニマルの爪に引き裂かれた。
「待て! らんま、待て!」
飛び出して行こうとしたらんまの腕をつかんで止めた。
戦士ガルザスも、魔法使いシルドーもその場に倒れた。顔が青い。
オレたちを睨みつけるモンスター軍。
「達也、気つけろよ。手加減は無用だ」
「あぁ、もちろん。わかってる」
「
高い攻撃力を誇る高レベルのモンスターたちに対しての有効技として、らんまは無差別格闘流㊙︎奥義・合体激流猛進をチョイスした。天道道場が道場破りに襲われたときに、道場破りが繰り出す激流のような攻撃を、この技によって打ち破ることができた。乱馬とあかねの合体技だ。
『合体!激流猛進!』
オレとらんまは背中と背中を合わせ、腕を組合い、技名を叫んだ。
「らんまぁ、いいかぁ。ワン・ツー」
『スリー!』
秒読みと共に高く飛び上がる。
「てやぁああ!!」
「つぁあああっ!!!」
モンスター軍の大群に、まるで器械体操の大車輪のようにして突っ込んでいく。防御力と攻撃力を増大させ、やつざきアニマルとソルジャーブルを蹴り飛ばした。
オレとらんまの力。勇者と武闘家の力で蹴り飛ばされたやつざきアニマルとソルジャーブルは壁にその体躯を勢いよく打ち付けられ、ノックアウト。
ここまでは、乱馬とあかねの合体技だ。でも、オレたちは、さらに激流猛進を進化させる。
「いくっぜえええ、らんまぁああ!」
「おぉおぉおおーー!」
一心同体。愛し合う男女ならではの技だ。
さらに密着度を深め、高く飛び上がる。
『らんま&達也、異世界ファンタジー愛の究極奥義ぃ!合体・激流猛進!双龍脚ぅうう!!』
ダブルライダーキックをキマイラロードに放った。
スガドォオオンッ!!
かいしんの一撃。
見事にオレとらんまの異世界ファンタジー愛の究極奥義・合体激流猛進双龍脚が決まり、キマイラローを一撃で仕留めた。
「へへへ、どんなもんでぃ♪」
結果的に許嫁であるあかねかららんまを奪う事になってしまい、心苦しく思うこともあった。でも、今、こうして、らんまと力を合わせ、高レベルのモンスターを倒せたことが心底、嬉しかった。死と隣り合わせのダンジョンでも、傍でらんまがいる事がなによりもの幸せだ。絶対に、このダンジョンで生き延びてやる。オレはそう心に誓い直した。
無惨な死体のなかから先行パーティのガルザスたちを引っ張り出す。確かめるまでもなく全員が死んでいた。
「仕方ないとはいえ……」
どうにもこうにもやりきれない。この世界じゃ死者蘇生の呪文は存在しない。死んだら、そのままだ。登録証や回復薬を回収した。オレ達には、せめてギルドに報告する事くらいしかできない。
「達也……やっぱり、いざ、こうやって、さっきまで生きてた奴らが死ぬとなると怖いな」
珍しくらんまが震えていた。その気持ちはオレにも痛いほどわかる。ガルザスたちはオレたちを裏切ったことにはなるが、それでも、同じ人間だ。生気を失った器を見るだけで、胸が締め付けられるように痛い。
オレは衝動的にらんまを抱きしめた。
「らんま……」
「達也……」
らんまは泣いていたかもしれない。ガルザスたちが死んだことへの涙なのか、恐怖への涙なのかは、聞かなかった。
しばらくしてから涙を拭い、また扉の先へと進んだ。
オレたちは、このダンジョンを攻略する義務がある。
〜つづく〜