夢見る竜の軌道式〜貧乏魔道具店の魔導師と滅びの姫〜   作:こがれ

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インスミアの光

「最初の問題は、ルイエがドコにいるか」

 

 場所は先ほどと変わらない。

 深海の様に暗い場所。

 しかし枝の光が、先程までよりも輝いている気がする。

 

「ルイエさんがウルヌイエに攻撃できるのは一度だけです」

 

 その一撃でルイエは死ぬ。

 龍装が生成する膨大な龍素に耐え切れずに。

 

「なら確実に、一撃で殺せる場所を目指すはずです」

 

 つまりはウルヌイエの弱点。

 と言っても、生物の弱点など限られている。

 どれだけ大きかろうとウルヌイエも生物。弱点は変わらない。

 

「ウルヌイエの頭部。そこを目指すはずです」

 

 ほかに弱点と言える場所はウルヌイエの炉だが、そこを攻撃してはウルヌイエ全体に被害がおよぶ可能性が高い。

 ウルヌイエの技術を欲してるジュリアスとしては避けるだろう。

 

「加えて相手は大人数。しかもルイエさんは大きな龍装を使っています。通れる通路はさらに限られる」

「大人数で動けば跡も残る。見つけるのは簡単そう」

 

 ルイエを追うことは可能だ。

 しかし、まだ問題は残っている。

 

「そもそも、勝てるの?」

 

 先程から話している通り、相手は多数。

 ジュリアスの部隊。そして龍装をまとっているメイスの男。

 さらには古龍を殺すほどの力を持った闇夜への玉座(アザン=ルフス)

 

 対するこちら側は少女が二人。ソフィアとルイエのみ。

 圧倒的な戦力差。

 普通は勝てない。

 普通なら。

 

「勝てます」

 

 ソフィアは力強く言い切った。

 なぜならソフィアは――

 

「ほのかは、私が何者でも付いてきてくれますか?」

 

 

 何本もの柱が立った広い空間。

 飾り気はないが、どこか神殿のような荘厳な雰囲気を漂わせている。

 

 そこに彼らは居た。

 目覚めの剣。

 

「見つけました。この先にルイエが居るはずです」

 

 彼らはソフィアたちに気づいていない。

 だが道をふさいでいる。

 ソフィアたちを足止めするためだろう。

 

「回り道を探す?」

「いえ、もうあまり時間は残されていないでしょう。正面から突破していきます」

 

 ソフィアは結晶の大砲を作り出し、集団に向けて放つ。

 

「来やがったか!」

 

 ガン!

 それをメイスの男が弾き飛ばした。

 やはりここに居たか。

 最後まで厄介なお邪魔虫だ。

 

「どいてもらえませんか?」

「退くわけねぇだろうが!」

 

 男はメイスを構える。

 それに合わせて後ろに控えた者たちも武器を構える。

 

「お嬢様、先に行ってもいいよ」

「いくら何でも、あなた一人じゃ勝てませんよ」

 

 時間はかかるがソフィアも戦うしかない。

 そう、覚悟を決めたとき。

 

「いえ、先にお進みください」

 

 物陰からぞろぞろと出てきたのは調査隊の人々。

 ソフィアが治療した人たちだ。

 

「よかった、無事だったんですね」

「我々も共に戦います。それに、我々だけじゃないはずです」

 

 調査隊の人は深く息を吸って、叫んだ。

 

「貴様ら! それでもインスミア国民か! ルイエ姫を犠牲にして、国を再興するのが正しいと思っているのか! 違うだろう! 今こそ立ち上がるのだ! 我らの姫のために!」

 

 その叫びに、帰ってきたのは嘲笑だった。

 何を言っているのかと、バカにしたようにせせら笑う。

 そしてメイスの男が呆れたように言い放った。

 

「愛国ごっこなら他所でやりな。こっちにはテメェらの味方なんて――」

「ウォォォ!!」

 

 メイスの男をさえぎって、雄たけびが上がった。

 誰かは分からない。顔も見えない。

 だがきっと、インスミアの人なのだろう。

 

「ルイエ様を死なせるかぁぁ!!」

 

 その声を皮切りに目覚めの剣から、次々と雄叫びが上がる。

 そしてあっという間に敵も味方も分からない殴り合いへと発展していった。

 ルイエは、なんだかんだ国民から愛されていたのだろう。

 まぁ、あんなポンコツ姫だ。嫌いになるのも難しい。

 そして調査隊の人々もそのバカ騒ぎへと突撃していく。

 

「ルイエ様を、お願いいたします」

 

 ソフィアはこくりとうなずく。

 重い物を託された。必ず止めなければならない。

 そしてソフィアは走り出した。

 

「行かせるかよ!」

 

 そこに立ちふさがったのはメイスの男。

 だがそれを邪魔するようにほのかが割って入る。

 

「お嬢様の邪魔はさせない」

「もう一度吹っ飛ばしてやるよ、クソメイド!」

「私の本気はこれから」

 

 ほのかは拳を振りかぶる。

 だが明らかに遠い。届く距離じゃない。

 ゴッ! ほのかの拳がメイスの男を殴りつけた。

 伸びている。手首の先、拳だけが。

 そして伸びたワイヤーによって拳が巻き戻る。

 拳が戻った反動を利用して、くるりと回転しながら飛びあがる。

 回し蹴り。

 メイスの男は避けようと首を振る。速度的には避けられる。

 ガン!!

 ほのかの踵から炎が噴き出て、一気に加速した。

 蹴りが直撃してメイスの男は横なぎに吹っ飛ばされる。

 

「義手と義足。お嬢様からの愛の結晶」

 

 ほのかの右腕と左足は義体だ。

 ソフィアの趣味によって、無駄機能がふんだんに盛り込まれた特注品。

 

「愛は詰まってませんよ!? ロマンは詰まってますけど!」

「ああ、良いから。お嬢様は早く先に行って」

「……勝ってくださいね」

 

 ほのかは右手を上げて答えた。

 そして、ソフィアは走り去った。ルイエを追って。

 

「ガキが、テメェに大人の怖さを教えてやるよ」

 

 ガシャンとメイスの男が起き上がった。

 今までと気迫が違う。

 彼もここからが本気。

 だが、ほのかも負けるわけにはいかない。

 ソフィアにふさわしい従者として。

 

「恋する乙女の強さを教えてあげよう」

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