でも申し訳ないですが、今回は外伝でしかもあっさりストーリー。来月頑張る
吾輩はパーフェクトスタッフである。
本日の業務は色々あるのだが、細かく語ると非常に長いので割愛だ。とにかく仕事がいっぱい。今夜は帰れないし眠れないな。そういうことである。
ガチャ
「モブさーん?後で星川来るから来たら〇〇スタジオにまつりいるって伝えてー」
“了か⋯星川?”
吾輩が業務に集中しているとらまつりさんが作業部屋を覗き込むようにしてこちらに話しかけてきた。誰か来ると言ったが聞き覚えのない名前が聞こえた。
「ほら、今日コラボだからここのスタジオ借りるよってスケジュール入れてたはずだけど見てない?」
そう言われれば確かに確認した記憶がある。
星川さんといえばあのにじさんじに所属しているライバーさんでイギリスと日本のハーフとかいう金髪ギャルか。
The陽キャっぽい雰囲気の子を相手にできる気がしないが最悪道案内だけなら問題ないだろう。
「じゃ、よろシコー!!シコシコー!!」
下ネタ爆撃を行ってきた卑劣なまつりさんにあんた最低だと糾弾したが、ははははと笑い声が聞こえてくるのみであった。コラボ相手に非礼がないか実に不安になる一幕である。
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まつりさんが戻ってから三十分程経ち、予定の時刻をほんの少しの過ぎた頃。
ガチャ
「こんちゃー!!星川サラでーす!!まつりちゃんにお呼ばれされて来ましたー!!」
どうやら来たようだ。最初見たときから思ったが、相変わらず凄まじい格好である。タンクトップで良いのだろうか。何でそんな所結んでるんだと聞いてみたかったがやめておこう。吾輩はただスタジオに案内すれば良いのだ。
“お疲れさまです。まつりさんは〇〇スタジオに居ますので案内しますね。”
「はーい!」
このまま特段関わりなく終われば良いと思っていたが、そうもいかないようで。先程から隣でじいっとこちらを見つめ対話したそうにしている星川さんがいるので何か聞きたいことでもあるのかと尋ねると。
「まつりちゃんがよく話してた自称パーフェクトスタッフさんですか?」
と返された。自称ではなく事実なのだが、まつりさんが話してた内容が気になるところだ。
「んー?凄く頼りになる人だって。二十四時間いつでも回答が来るって言ってたけど凄くない?ロボットだったり複数人いたりします?」
星川さんからのまつりさんの評価は高いようだ。これぞパーフェクトスタッフの評価である。吾輩は思わずふんぞり返った。そこから1つ2つ苦労話等差し込みつつ会話をしているとまつりさんのいるスタジオに着いた。ちなみに他にはまつりさんは言っていたのだろうか。
「あとはホロメンにイジられたりボコられて悦ぶ変態だって。すっごい癖がある⋯とか」
少し距離を置いて目線を逸らすように語る星川さん。
吾輩は勢いよくスタジオの扉を開けて風評被害を元凶を発見した。元凶は処理せねばならない。吾輩は手で手刀を作り駆け出した。
“キサマァ!!悪即斬!!”
「うわー!!?な、なになにモブさんどーしt⋯星川何話しぁ!?」
「ウェ!?いやまつりちゃんが言ってた事をそのまま⋯」
「バカヤロー!!」
「バカヤロウ!?なんでー!?」
まつりさんが星川さんに飛びかかりその後を吾輩が追うという形であえんびえんな状況となった。
一悶着あったが、その後まつりさんから土下座の謝罪を受けたので今までの風評被害は水に流すことになった。
しかし、更にその後女性を虐めて悦ぶサディスト野郎とまた風評被害を流すフェスティバル娘がいたそうな。それはそれは素晴らしいドケザンという名の騙し討ちであった。
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場所を変え、今回の仕事はコラボの最中。楽屋で休憩中の白上さん達のお弁当を買ってきたので配りに来たのだが、吾輩は絶句した。
現在楽屋内には、にじさんじタレントとホロメンが同室となっている。真ん中にそこはかとない仕切りを作り、念の為分けていたのだが見るに堪えない惨状になっていた。方やキャッキャと笑い声が絶えず聞こえており、方やスマホ、寝てる会話一切無し。会話一切ない方が我等がホロメンだって。信じられない。
「あ、モブさんだー」
どろっと溶けたような顔で白上さんが弁当を求めて手を伸ばしてきている。他にもかなたさんとぺこらさんが居るのだが、机突っ伏してスマホを見ている天使。そして寝てるぺこらさん。少しはお隣さんを見習って会話をしなさいよ。
「いやー今更話すことないし」
軽く頬をかきながらあっはっはと笑う白上さんの姿に思わずため息が出た。
これだから陰キャのキャキャキャは。まさかお隣さんの第1第2第3皇女より喋ってないのが我が社のタレントだとは思いもしなかった。
「陰キャのキャキャキャ!?」
「おーい!?シレッと罵倒されてる!?あとそれは兄上で別人だぁ!!」
吾輩の一言にショックを受けた白上さんは白目を剥きながら身体を仰け反らせている。そんな中でも気にせず天使とネムネム兎さんは弁当群の中から寿司を奪い取って行った。
そして仕切りから顔を覗き込ませるように皇女様がこちらを見ていた。随分と良いツッコミである。吾輩と目が合った皇女様はハッとしたような表情をして目を逸らし、そのまま仕切りの奥へ消えてった。
「モブさん何リゼちゃん虐めてるの!?」
「リゼ虐められたんかー!!」
「モブさんサイテーだ!!」
「いや、そういうわけじゃなかったんだけど!?」
「「おりゃーカチコミじゃ(だ)ー!!」」
「なんだなんだ!!」
「やんのかこらー!!モブさんを盾にして進めペコ!!」
吾輩は何もしていなかったはずなのに白上さんからの濡れ衣を着せられ、結果的ににじさんじ組から襲撃され仲間のはずのホロメンからは盾扱いにされるという地獄な状況になってしまった。
一頻り暴れるタレント達はリゼさんのマネージャーさんが誕生日ケーキをサプライズで渡すまで続いたが、なんだかんだ怪我人もなく収束した。
「ところでモブさんボク達放置してにじのスタッフさんやマネージャーさんと楽しく話してたね」
「あーん?白上達放置で自分は楽しくお話してただとぉ?」
「許せねぇぺこ!!」
「あ、私のマネージャーがホロには凄いスタッフさんが居るとかって言ってたけどモブさんのことだったんですね」
「星川もそんな話結構聞いたよ。面白いスタッフさんだって」
「ほーん。随分とウチらのスタッフさんとも仲良くしてるみたいやなー」
“情報交換なり周りと仲良くしておくのは普通ですが”
「「「我々が普通じゃないって言いたいのかー!!」」」
暴徒(ホロメン)襲来第二幕の始まりであった。これも口は災の元ということなのか。吾輩は飛び掛かってくる3人を堰き止めるのであった。
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ある日の昼下がり。
多少の事務仕事を手伝ってもらったのでマリン船長に昼食を奢った後の出来事である。視界の隅に珍しいシスター服の女性が歩いている姿が映った。
「あれ⋯あの人って確かにじさんじのクレアさんでは?」
“おお。明らかに本物のシスターだ”
「どういう意味?マリンもシスターやってたやろがい!」
隣で喚くコスプレ女性を嗜めつつ歩いていたシスターの方を見ると思いっきり目が合ってしまった。一瞬気のせいかと思ったが、ガッツリ目線が合ってお互いに固まっている状況になった。
吾輩とは直接の面識はなかったはずと思い至ったので船長に気付いたのかと納得しているとシスターが急に焦ったような顔に変わっていた。
「モブさんさっきからどしたの?まさかシスターが癖ですか!?けしからん!!罪深いですよ!!」
横で何やら喧しいのが騒いでいるので少し気絶させるべきかと手刀を作った瞬間、脳内にビビッと危険を知らせるような感覚を察知した。
咄嗟に後ろに手刀を振り抜くと凄まじい衝突音が発生し、腕全体掛かる衝撃に吾輩は少したたらを踏んでしまった。
「うわ!?なになにって⋯あー」
「ほう。この私の殺気に気づくとは。なかなかやるではないかホロのスタッフとやら」
何やら船長の納得するような声に顔を上げ、攻撃を仕掛けてきたであろう下手人の姿を視認すると少し後悔した。
キャラが濃い。エルフなのは耳で分かるがガタイが良い。筋肉ムキムキメイド服のオカマエルフ。前に少し交流した社築さんがクレイジーマンと言っていた花畑チャイカさん御本人である。
「ではこれは防げるかな?」
「あの人何でやる気なんですか?モブさんなんかしたの?」
追撃とばかりにコオオォと変な気を溜めている花畑さんに一先ず迎撃態勢を整えるが、横からマリン船長がそんな疑問を投げかけて来た。全く身に覚えがない。だが向こうはやる気なのだから折を見て逃げたいところだ。そんな事を相談していると視界の端からスススっと先程のシスターが花畑さんに近づいて肩を掌で叩いた。
「チャーイちゃーん?なーに人に迷惑かけてるのー?」
「アイタッ⋯嫌だってうちの社君からホロには面白いスタッフがいるって聞いたからさ?ノリが良いって聞いたしちょっと私も遊んでもらおうかなーって「何で人に迷惑掛けてるのって聞いてるんだけど?怒るよ?」はーいスミマセンでした!」
シスターがゴゴゴと凄みを感じさせつつ何度か花畑の肩を叩いている。どうやら少しずつ威力が上がってきているようだ。ついにパアンと良い音を奏で痛かったのか花畑さんが呻き声をあげた。肩を押さえ謝罪の声が聞こえるとシスターは1つため息を付いた。
「凄ぇ。あんな穏やかに怒ってますアピールマリンなら出来ない。フヌー!!ってなる」
思わず感嘆の声を漏らすマリンさんに同意である。もう怒っていたのが素で分かる圧と行動であった。気のせいか最後の一瞬掌ではなく拳だったようにも見えたが吾輩の見間違いだろう。
「あのーすみません。うちの花畑がご迷惑かけてしまったみたいで。お怪我はありませんか?」
「あぁ、大丈夫ですよ。うちのスタッフはタフなので」
「タイヘンモウシワケゴザイマセン」
なにはともあれ謝罪を行ったシスターとムキムキエルフに問題ないと告げようとしたが、何故か先にマリン船長が応えた。別に問題はなかったので良いのだが、吾輩の意思を先に聞け。
そして現在花畑さんはシスターに頭を鷲掴みにされて頭を無理やり下げさせられているように見えるがそれも気の所為なのだろう。クッ!とかコノッ!とか花畑さんの抵抗する声が聞こえてくるのも気の所為なのだ。怖い。
「何かお詫びでも」
「あ、本当に大丈夫です!お互いに忙しい身ですのでこれからも頑張っていきましょう!」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
吾輩としても同意見なので首を縦に振る。確かに吾輩としてもまだ仕事が残っているし、何より今のこの状況すごく怖い。このまま立つ鳥跡を濁さずの精神で帰らせていただきたい。先程から動きがなくなった花畑さんは力なく項垂れているのも気になるのだが、突っ込んではならない気がした。
「では何かありましたら、えにからに伝えてもらえれば。大変申し訳ありませんでした。ほら行くよチャイチャイ」
そう言い花畑さんを引きずって行くシスター・クレアさん。やはりあちらも濃いメンツは多い。実に恐ろしいシスターとエルフであった。胃もたれした。
「でもあーいうシスターが一番神とか信じてなさそうじゃない?」
マリン船長それ以上言うのやめようか。信じることで救われることはあるのだ。帰路につきながら一言漏らした。
「でもそれ信じてるって言うより現実逃避だと思うんだ」
吾輩は何も語らず足早に帰り始めることにした。
「なんか言えって⋯早い早い!!」
その後事務所で仕事していると夕方に社さんからメッセージが来ていた。内容は花畑さん襲撃の件の謝罪と面倒な男だが面白い所もあるので嫌いにならないであげてほしいとフォローのメッセージだった。良い仲間の連係のようで少しほっこりしつつ了承の旨を返すのであった。
モブ
ついに異文化(というわけでもないが)交流も果たす。特に何か変わるわけでもないのだが、しばらく交流するメンツが更に濃くなって胸焼けのような症状が続いたとのこと。