次を書かなきゃ!
お疲れ様でした。かなたさんの今後を天国に到達する条件を整えつつ応援してます!
吾輩はパーフェクトスタッフである。
本日は天音かなたさんのお別れ会後、家の付近まで送る運転手である。ついでにこのまま吾輩は直帰である。やったね。
「………」
後ろをチラと確認すると後部座席でボーッと窓から外を眺めているかなたさんが見える。車に乗って最初はポツポツ思い出話や愚痴等を言っていたがあるタイミングからお互いに無言に。非常に気まずい状況である。
「あ、この辺でいーよ」
何か話題を出すべきかと悩んでいるとかなたさんが降りると言ってきたので駐車出来そうなポイントで車を停めた。
「んー…はぁ。いやーモブさんありがとね。送ってくれて」
かなたさんは車からひと伸びして吾輩にお礼を言ってきたのでお構いなくと返しておく。これで彼女との仕事も終わりかと思うとなんとも心寂しく思うものだ。
「やーだなーそんな寂しそうな顔しないでよー!これはまぁ仕方ないじゃん?ボクはホロメンの皆やモブさん達の事をこれからも応援してるからさ!!ちょっと天使業をやめるだけだから」
ケラケラとどこか儚げに笑うかなたさんを見てどうにもこの様な空気が苦手な吾輩は頭を軽くかいた。まぁかなたさんは非常に優秀で頭もキレるので大丈夫だろう。体調に気をつけつつ、新天地でのご活躍を心よりお祈りするとしよう。
「おー…ボクに祈ってくれちゃいますか!流石モブさん!!社会人らしいけど天使的には嫌いじゃない返しだね」
それはそれとしてもしコケたら連絡をください。吾輩の下で良ければ仕事が紹介できます。お小遣い稼ぎにどうぞ。
「やっぱオメーはよぉ!!サイテーだ!!それ皆に言ってんの知ってんだからな!!たまに暁メンバーの影見かけるぞ!!祈るなら全力で祈れ!!サブプラン用意すんなよぉ!!」
吾輩へ指を指して激昂する天使様がおられる。良いじゃないか吾輩だって少しは偉くなったのだ。使える手札は沢山持っておきたい。相変わらずキレキレなツッコミを頂きながらも吾輩の考えを伝えた。
「フー…ま、これも縁と思って覚えとくよ。あー…でもモブさんには結構恩があるからなぁ」
ふむとどこか考え込むような動作をしたかなたさんは徐ろに吾輩を見上げると
「よし!モブさんには特別になんかあって天国に来そうになったらボクが直々に連れてってあげるよ!!」
胸を張ってドヤ顔をしているかなたさんだが、これは価値観の違いだろうか。天使的に大事な話なのかもしれないが人間である吾輩からすると、なんというか、非常に無礼なことを言われてる気がする。吾輩4ぬのか?
「ほらモブさんなんか色んな事に巻き込まれるし?ココ呼ぶ鈴持ってるでしょ?ココのじゃれつきにモブさんが巻き込まれて肉体が消し飛ぶ可能性があるじゃん?」
確かにいくら耐久性を上げても人とドラゴンには如何ともしがたい差がある。つまりココさんのお遊びで吾輩が影も形もなく消し飛ぶ可能性はゼロではない。
「そんな時にはボクがモブさんを連れて行ってあげるね。それまで徳を積むのだー」
どこか神々しい柔らかな笑みを浮かべて両手を広げているかなたさん。
初めて天使らしいことをしてるの見た気がする。俗世に染まりすぎた姿しか見てなかったので驚きだ。
しかし一つ疑問がある。
「ん?」
小首を傾げる天使様の折角の厚意?なので天国直送タクシーは使わせてもらうとして、吾輩がもし昇天しそうになったらなにか呼ぶ方法があるのだろうか。
「そりゃもうモブさんとは縁で繋がってるからね。あ、◯んだなってすぐ分かるよ!その時はこんな感じで門開いてお迎えに」
ガコン。かなたさんの頭上から妙に重い金属がぶつかるような音がなったと思い上を向くと、なにやら白基調で細やかな青色の装飾の門が開いていくではないか。どこか神秘的である。吾輩がゲームで力尽きたみたいな事が起きるとこれで連れて行かれるらしい。厳かだね。
「あ、でも自力で天国に到達しようとしないでね?」
突然じっとりとした目でこちらを見てくるかなたさん。吾輩がハラキリでもするとでも言いたいのだろうか。なるべくはしたくないが。
「違う違う。例えば…なんか怪しい言葉言い始めたり…カブトムシとか」
なにやら両手で頭を抱え唸り始めているが、カブトムシは怪しい言葉ではないだろう。
「説明が難しいな!!なんか不規則な言葉の羅列14個言ったり、いきなり新月の日が近いからって海外の特定の地に向かわないでね!」
矢継ぎ早で語り始めるかなたさん。最早何の事やらだが覚えておこう。きっとしてはならないことなのだ。
「アッー!!そうか…言わなきゃ良かったじゃん!!ボクの馬鹿!!なんで余計なことを…モブさん忘れちゃってくれ」
“新月…カブトムシ…14の言葉…天国に到達…特定の場所”
「忘れろっつってんの!!はーい連行しまーす記憶処理しますからねー」
吾輩が記憶に刻み込もうとしていると急に天使様に手を掴まれて身体が宙吊りになっていく。
どうやら門の中へ連れて行かれるらしい。折角なのでチラリと天国なるものでも見るかと門の中を覗き込んだが、やたら物が多く小汚い部屋の中が見える。吾輩は思わず抵抗の為にかなたさんの腕を掴み引き剥がそうとした。
“吾輩はあんな小汚い部屋に行きたくない!!HA!NA!SE!!”
「小汚い!?人様の部屋になんてこと言うんだ!!暴れるな!!フンッ!!」
“ヌウッ…離れん!”
メキョと吾輩の手が悲鳴を上げている。全力を出せば引き剥がせそうではあるが、ケガをさせるわけにはいかないので思案の為所だ。伊達に握力天使と名高いかなたさん。吾輩の手をいとも容易く破壊しそうな勢いでの握り込みは健在だ。そのおかげで吾輩の手が千切れてしまう可能性もある。
とりあえずチョップで抵抗した。
「痛い痛い!?元はといえばモブさんがボクの部屋を小汚いとか言うからだろ!」
吾輩のささやかな抵抗により、思いの外簡単に離されたので重力に従い落下。そして大の字で床に倒れる。やはりかなたさんの握力は強いがそれ以外はまだ練り上げられてはいないようだ。
「どっせい!」
突如降りてきた天使様は吾輩の腹部に着地したぐわー!かなたさんの重い怒りの思いと垂直落下速度が合わさり吾輩は力尽きた。
「まったくモブさんはもう少し正直過ぎるところを直しな!別に悪いことではないんだけどさ!」
吾輩の壊れた腹筋の上で語るかなたさん。早急に直したい気持ちがあるのだが一旦降りてはくれないだろうか。となんとか口から漏らした瞬間に空からオレンジ色に輝く閃光が吾輩の腹部に落ちてきた。
「うわー!?」
“ぐおおおお!?”
「ヨッと…おいかなた終わったら夕飯食べに行くって話だったのにオセーから迎えに来てやったゾ」
ぼんやりとした意識の中で聞こえたのはココさんの声だ。
やはりドラゴンはあまりに強すぎる。人類では勝てないんだ。
今や彼女の声は随分懐かしい声に聞こえるが、元気そうで何よりだ。吾輩は意識が飛びかけて不思議な浮遊感で気持ちよくなってきた。先に逝くぞ。
「も、モブさーん!?ちょっとココ!退いて退いて!!」
「んぁ?…オオ!?モッピー口から魂出てんジャネーカドウシター!!誰に◯られた!?」
「オメェにだよ!?ほらモブさんの魂掴んで押し込むの手伝って!!」
「それで大丈夫なのカ!?」
“モガモガガ”
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気がつけば霧の深い川の近場に立っており、昔亡くなった爺さんと婆さんが向こう岸で慌てて手をバツにしていたのが見えたような気がした。という話をかなたさんにしたかったのだが、口を抑えられていたので喉だけ震わせて喋るという技で語った。
「妙に器用な技を覚えて…というかヤベー状態だったわ。あぶねー…モブさんが無事でよかったよ。流石に退社と同時にモブさんも連れてったとなったらボクがホロメンに天国送還されかねないし」
「…ウム。問題なし!!ヨシッ」
吾輩の口を何故か抑えているかなたさんも不思議だが、ココさんは何故吾輩の胸に顔を押し付けているのだろうか。鋭利な角がぶつかって非常に痛い。
「心音は安定している。流石のワタシでも気に入った人を踏み潰したとなったら傷つきますカラネー。ドラゴン生で初めての魂掴みだったナ」
「脈拍正常。よしよし。ふー焦ったー」
どこかやりきったといった風に胸をなでおろす二人。吾輩の先ほどまでの記憶が消し飛んだようだが、まぁ久し振りに写真以外の爺さん婆さんの姿を見れたのでプラスだったと思おう。そうでなければやってられん。
「ほんで?かなたはなんで自室にモッピー連れてこうとしたんダ?食べんの?」
「違うわ!!モブさんも急に距離取らないでよ!違うってば」
記憶が曖昧だが食べられかけていたらしい。どの意味でも危険なので距離を置いた。
「カクカクシカジカでボクがイラン事吹き込んじゃったから記憶消そうと」
「なーんだ。かなたんが悪ィんかい。それはそれとして面白そうじゃん折角だからやってみようゼ」
「ふぁ?」
“ふぁ?”
急な身体の圧迫感を感じ、確認するとココさんの尻尾が吾輩に巻き付いているではないか。やってみるとは何のことだろうか。かなたさんも目をパチクリとさせて理解できてない様子である。
「やるって?」
「えーとどこダ?オーケーG◯◯gle北緯28度24分西経80度36分…てドコ?あ、ココ!!かっ飛んで行けば三時間ですネーってクソゥ次の新月が来年じゃん。おーしモッピー迎えに行くからよろしくナ!!」
「だめに決まってるだろぉ!!」
「ナンデダヨ!!最後にデカい一花咲かせようゼ!!」
「その花見る間もなく一瞬で枯れんだわ!!一巡して世界終わるって言ってんの!!」
ワイワイと天使とドラゴンが言い争いをする様を久しく見てなかった吾輩としてはずっと眺めていたい景色ではあるが、ココさんの尻尾の圧迫感が強くなってきている。会話がヒートアップしてるからだろう。ギブギブと尻尾をタップする。
「沢山の罪人の魂はアレダ。大空警察に捕まった奴等の最後の魂の叫びを代用してミレバいけんじゃネー?」
「ふざけんなー!そんな適当な事でうまくいったら4んでも4にきれん!!」
「折角だからワタシは世界から振り落とされないように挑んでみますカネー!楽しみ!!」
全然聞いてくれません。楽しそうなのは良いがそろそろ吾輩の肋がミシミシと鳴っている。歯を食いしばらねば持っていかれそうですなので声すら出せない。そろそろ危険な予感がするのでかなたさんに目線で訴えかけることにした。
「モブさん…やっぱり突然変なこと言われて困惑したよね。そんな眉間にシワが寄っちゃって。ボクが忘れさせてあげるからね。一瞬で行くよ!!」
「え?おいやめ」
本当に吾輩の意図が伝わったか分からないが急にかなたさんは吾輩の頭を両手で包み込むように掴んだ。吾輩は4んだ。
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「…んー…?…あ、起きた」
吾輩が非常に見覚えのある仮眠室の天井を眺めていると横から声が聞こえるので振り向く。寝癖でぼさついた髪で非常に眠そうな目をしているがちょこさんだ。
「ちょっこーん。酷く魘されてたけどどうかした?」
はいちょっこーんと返すとどうやら吾輩の心配をしてくれてたようだ。もしや何もかもが夢だったのだろうか。かなたさんが卒業して、ココさんに奇襲され、かなたさんに頭を握り潰されるという夢。
「いや、残念だけど卒業は現実…っていうかどゆこと?なんかとんでもないこと起きてない?モブさん頭ギュッギュッされちゃったの?恨まれるようなことした!?」
悲しいが現実らしい。まさか最後の別れは吾輩の気絶で終わりとはなんとも物悲しい。今までのかなたさんとのやりとりが走馬灯のように思い浮かぶ。
「本当に走馬灯じゃないわよね?さっきまで気持ちよく寝てたのに急にベッドから弾き飛ばされて驚いたんだけど。って、ねー!聞いてる?」
“え?あぁ。次の新月の時に吾輩は行かねばならないそんな気がしてきましたよ”
「なるほど。おやすみー」
“うん?尻尾が腕に触れてくすぐった…うおおお!?力が抜けていく!?”
何やらかなたさんを思い出すと脳内に突如湧き上がる存在しない記憶。それはココさんの声に非常に似ていた。それを掘り起こそうとしたが、急にちょこさんの尻尾が吾輩の腕に触れたと思ったら急に力が抜けて眠くなってきた。何事か!!と叫ぶ前に瞼が落ちる方が早かった。
最後に見たのはニッコニコのちょこさんの笑顔であった。
モブ
なにやら後半様子がおかしい。天使の握撃の前にシレッとドラゴンの刷り込み魔法を使われてしまったようだ。今後どうなるのか。それは神にも分からない。
かなた
天使業は卒業する。お疲れ様でした。
でも最後の最後に不安の種を残してしまったので牽制しなければならない。天使とドラゴンのバトル(てぇてぇ)によりそれはもう世界が荒れるのだ。
ココ
折角なのでかなたとご飯食べようと思ってたら面白い話が聞けてニッコリ。デカいことが起きそうなので桐生ココ動きます!やめてください。
ちょこ
モブの仮眠室ベッドを借りていた理由。それは丁度ちょこが寝ようとした時に仮眠室が満杯でモブの定位置だけが空いていたかららしい。太陽光を当ててしっかり殺菌されたような布団で寝心地は良かったとのこと。
最後は様子のおかしいモブから体力をドレインした。おいしかつたですまる