吾輩はホロライブのパーフェクトスタッフである   作:ジョ力

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無事乗り越えました。
来年もよろしくお願いします
今年もよろしくお願いします
善良な市民として頑張ろうと思うよ


69 今年もsiちゃんは可愛くて強い

 

吾輩はパーフェクトスタッフである。

 

今年も数時間で終わる。今年も大変で激動の1年であったがなんとか生き延びることができた。不思議と毎年激動の時代だと振り返っている気がする。

そんな吾輩も珍しく明日はお休みなのだ。あらかた事務所内の掃除を済ませ気分良く休ませてもらおう。

 

と思い、仮眠室の布団を洗濯しようと回収していたのだがどうやら寝ていた方がいたらしい。

 

「ゔ……ッ!!」

 

人がいるとは思っていなかったのでそれはもう無慈悲に布団を引っ剝がしてしまった。彼女は急な温度差のせいかうめき声をあげ身体を丸めて完全防御の態勢に入ったが、すぐさま勢いよく起き上がったではないか。

 

「………あぁ?」

 

こんな時間までスヤスヤと寝こけていた奴は誰だとからかってみたが、聞き慣れたドスの効いた声と青髪、星のような瞳が判明した瞬間吾輩は回れ右して帰ることにした。

 

「おう待たんかいワレェ!こらモブさんこれぃ!」

 

ヒュンと後ろから恫喝と金の斧が飛んできたので渋々足を止めた。ちなみに斧は吾輩の髪を掠めて直進し、壁に刺さった。仕事が増えたということだ。

 

「すいちゃんの布団剥いだ挙句持っていくとは何事か。判決4刑です」

 

眠そうに目をこすりながら斧を回収に向かおうとする星街さん押し留めこちらにも言い分があるのだと伝えた。

 

「やだ。やる。対話の必要はありません」

 

なんて強い決意か。ただの殺意かもしれない。そもそもこんな日付変わるタイミングまで帰らずに仮眠室にいるとは何事か。吾輩の最後になるかもしれない叫びに星街さんは動きを留めた。

 

「…日付変わる?えー…うわ!おねえちゃんから凄いメッセージ飛んできてる!ヤバ…寝すぎた」

 

スマホを見つめて頭をガシガシかいて驚いているあたり本当にただの寝坊助さんだったのだろう。吾輩は布団を洗濯してから帰るので、星街さんはタクシー等呼んで帰るように告げた。

 

「待てーい!モブさん車でしょ?桜神社に乗せてってよ。今おねえちゃんに現地集合って伝えたから」

 

なんということでしょう。初詣にこのパーフェクトスタッフを足に使おうとするとは。新年早々にも吾輩は仕事に付き合わされる悲しきスタッフなのだ。せめて洗濯物を干すのを手伝ってもらわねば承服できぬ。

 

「えー…めんどいなぁ仕方ないなぁモブさんは」

 

やれやれ仕方ないなと言わんばかりに肩をすくめて着いてくる星街さん。一瞬の苛立ちを誤魔化すように視線をずらすと先ほど寝ていたベッドの横にポシェットが置いてあった。あれは星街さんの物だったと記憶しているが、そのまま放置で良いのだろうか。

 

「おっと…」

 

“よく忘れ物しますね。やれやれ仕方ないなぁ星街さんは”

 

「…………」

 

一瞬の睨み合いが発生したが、このままでは埒が明かないので吾輩から視線を切り洗濯機の置いてある部屋へ向かった。このまま時間を浪費していてはすぐに年が明けてしまう。後ろからジッと刺すような視線を受けながら布団を洗濯機に放り込むのであった。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

「さて、無事洗濯も終わったし桜神社に向かって運転手」

 

車に乗り、後部席に座る星街さんから行き先を告げられる。場所は電脳桜神社。かの有名なみこさんのしけしけ神社である。基本的に誰も参拝に行っているのを見た事がないし、何を祀っているのかも分からないのに存在できているという神社だ。

それはさておき、星街さんはみこさんが大好きなようで何よりである。仲良きことは善き哉。

 

「うるさいよーさっさと運転せぇ」

 

照れてるのか知らないが軽く座席を叩かれて急かされたのでそれ以上はからかわずに運転することにした。あまりやり過ぎると斧で脳天かち割られかねないのだ。

 

「今年も大変だったけど概ね満足はできたかな。来年の目標はー」

 

「そういえばまたスバルさん捕まったらしいけどホロライブの警察はどうなってるの?」

 

「そういえばこういう小物って作れる人いる?あ、やっぱりモブさん作れるんじゃーん!見積もりと期間教えてー」

 

等と運転中に色々な雑談を星街さんと続けていると急に「あっ」とだけ呟いて無言になった。チラとバックミラーで後ろを確認するとしきりにスマホをタプタプしている。何かあったのだろうか。

 

「おねえちゃんからだけど歩道の方が混んでるし寒いらしいからどこかで回収来れないかだって」

 

“桜神社への道が!?”

 

「なわけないじゃん!その途中までの道だって。なんとか〇〇通りまで行くから寄ってってーとの事です」

 

流石に桜神社は混んでなさそうである。良かった良かった。あまり人が多いところに行くと気疲れしてしまうので、人が少ない所のほうが好ましい。

 

「その話みこちにしたら激怒しそう」

 

“好ましい点を挙げたというのに不思議なこともあるものである”

 

「うーん…」

 

訝しむような表情で星街さんは考える素振りをしていたが、ま、どうでもいいやみこちだしと呟いて思考を放棄していた。

そんな他愛のない会話を垂れ流しながら姉街さんを回収し、桜神社へ向かうのであった。

 

 

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姉街さんを回収し、桜神社に登ってきた我々が境内を散策したが、誰もおらず。社務所のような建物内をずかずかと突き進む星街さんの後ろを着いていくとある部屋の前で足を止めた。

スパァン!!と勢いよく扉を開けて突入する星街さんを眺めていると声が聞こえてきた。

 

「わあああ!!来てくれたのーー!?星街ぃー!!」

 

「オメェなんで巫女なのに元旦からサボってんだー!!」

 

「だってだってぇ!!誰も来ないじゃんよー!!暇なんだもん!!」

 

吾輩は姉街さんの方を見ると苦笑いで肩をすくめていた。

一応吾輩達もいるぞーと部屋の中を覗くように姉街さんと顔を出した。みこさんがベッドで寝転んで漫画本を読んでいたのか漫画本とお菓子が散乱している。こんな時間になんて不健康な。吾輩は思わず目を細めてしまった。

 

「おー今日はお客が多いにぇ!!モブさんまで来るとは…入って入って!!お菓子食べる?」

 

両手で手招きするみこさんであるが、我々はお詣りに来たのであって遊びに来たわけではないのだ。と断ろうとしたが、星街さん姉街さんが既に部屋に座り込んでいる。3人ともこちらを見ているので言うタイミングを逃してしまった。この中に混じるのはキツいなと思いながら吾輩も部屋の隅に座るのであった。

 

「いやー星街姉妹来るのもビックリしたけどモブさんが一緒に来るとは思ってなかったにぇ」

 

「カワイソーウなみこちゃんの神社が今年も参拝客来なかったら閉じちゃう可能性あるかもしれないじゃん。どうせ今後もシケシケだろうし。神社なくなったらエリートでも巫女でも無くなっちゃってカワイソーウ!!」

 

「失礼な奴だねほんとに!!2回も可哀想言うんじゃないよ!!ちょっとモブさんと姉街こいつ止めてよ!!ひどいよ!!」

 

「まぁまぁ」

 

もう既に泣きが入っているみこさんを見て愉悦する星街さんをそこはかとなく宥める姉街さん。このまま放置すればみこさんがベコベコに凹まされて大泣きされかねないので話の流れを変えるために吾輩は明日、もうすぐ今日だがお休みだと教えた。

 

「……モブさん…やすみ?休むの?」

 

「その反応分かる」

 

「皆この反応なのがそもそも不味いと姉街は思うよ」

 

宇宙猫を背負ったみこさんが理解ができないと呟いているし、星街、姉街さんの反応に頬を引きつらせる事しか出来ない。

確かに常に誰かしらの依頼を片付けるか質問に答えている事が多いが、なんだかんだ最近は休みをとり家に帰ってるのだ。

 

「家…あったんだ」

 

「あー…そういえばすごーい昔にアパート借りてるとか言ってたようなそうじゃないような」

 

「休めてるなら良いと思うけど…でもこの二人の反応って?」

 

更に思考と意識を宇宙に飛ばしたみこさんが目をかっ開いて固まってしまった。星街さんは額に手を当てて記憶を掘り起こして唸り、姉街さんはじっとりとこちらを見ている。基本的にそんな話す内容ではないが普通のことが理解されないのは悲しいことである。

 

「ま、まーね!モブさん休めてるのは良かった!!今度ホロメン内でアンケート取ってみよう」

 

「モブさんがアパートを借りてるし帰ってる事があるのを知っているかイエス・ノーって?いや、ここはモブの家はホロライブの事務所であるイエス・ノーでいこう。これは(回答が)割れそうだ」

 

「だそうですけど」

 

“あまりの現実に涙が止まりませんね”

 

真顔で語る内容ではない。そんなことの為にアンケートなんてしなくて良いのだ。ただでさえ多忙の人が多いのに。提出物が中々揃わない恐怖。来年もずっと感じなければならないとなると陰鬱な気持ちになった。

 

「えほんえほん…やめよ。モブさんが凄い渋い顔してる。それよりすいちゃんモブさんの事大好き過ぎかー?年末年始一緒に居るなんて。彼氏じゃん!」

 

「はあー?そんなんじゃないんですけどー?こちとらアイドルぞ!ってそういやモブさんホロメンの誰かとデート行ったとかいう噂を聞いたんだけど。しかもクリスマスに」

 

「はぁ!?ちょっとそれはギルティなんですケード!!?」

 

「えー!そうなのー!?」

 

“なんのことやーら”

 

話の流れが変わり、3人の会話を聞きながら年始の挨拶まで空気になっていようと思ったが急に鉾がこちらに向いてきてしまった。ホロメン2人はじっとりとした視線、姉街さんはウキウキしながら興味津々といった表情だ。

さて、デートとは男女が日時を決めて会うことらしいが、別段日時は決めてなかった突発イベントだったし、財布になっていただけである。美味しいものを食べ歩いて役得ではあった事は認めるが。

 

「「ギルティー!!」」

 

「おー」

 

各々武器を片手に飛びかかってくる獣二匹を押し返しつつ、何か現状を打開する物はないかと室内を見回すと時計がもう日付が変わる瞬間であった。

 

「んー?あ、すいちゃんみこちゃんもうすぐ日付変わるよ!?」

 

「てりゃー!!」

 

「おりゃー!!天誅!!」

 

“ぬわー!!”

 

吾輩の視線を追って時計を見た姉街さんが日付を変わる事に気付いて声をあげたが、獣たちの牙が吾輩に突き刺さるほうが早かった。吾輩は地に伏せた。

 

「日付変わった!!」

 

「え?モブさん倒れた瞬間に年越し?」

 

「倒し納めかー」

 

そんな納めがあってたまるか。そう憤りながら喜ぶ3人を尻目にゆっくりと立ち上がる。服装を整えて挨拶をしなければならない。挨拶は大事。

 

「「「“あけましておめでとうございます!”」」」

 

「それはそれとしてモブさんすいちゃんが居るのに他のホロメンとデートなんて良くないにぇ」

 

「どゆことみこち?」

 

「モブさん大好きなすいちゃんの事をみこ見た!この前モブさんが仮眠室で寝てるのにモブさんのブランケットを奪い盗ってから作業室のソファで丸くなって寝てた!!」

 

「…んー?まったく記憶にねぇ」

 

“あぁ吾輩が寝てた時に消失したブランケットがありましたが星街さんに盗られてたのね”

 

「ん?じゃ、私今日起こされたのってやり返された?」

 

“いやいやいや今日知りましたよそんな事実”

 

吾輩の中の未解決事件がここで明かされる真実。シレッと今日の出来事を報復だと勘違いした星街さんは斧を取り出したが姉街さんがそっと止めてくれた為に何事もなく済んだ。

 

「まーモブさんは私の奴隷なので気にしないでしょう。モブさんの物は全部私のだから問題ないんだよ」

 

“暴君め!!”

 

「ジャイアリズムどころか人権すら与えてなかった妹は私の遥か上をいってる!?」

 

髪をふぁさとなびかせてとんでもない事を宣う星街さんに吾輩はひと言吐き捨てた。みこさんと姉街さんは苦笑いである。

 

「まーまーモブさんそんな事すいちゃんに言ったら悲しんじゃうじゃん!」

 

「いや別に?」

 

「すいちゃんの小さいお胸が悲しんでるのが見えんのか!」

 

この言葉を聞いた瞬間、咄嗟に吾輩と姉街さんの体は動き、星街さんを羽交い締めにした。

ヒュボッと残像が残る勢いで星街さんの純粋な殺意がみこさんに向かったが、間一髪防いだようだ。

 

「ご、こめんにぇ。つい出ちゃったにぇ」

 

星街さんの手刀のはみこさんの首元ギリギリで止まっていた。偉いぞ吾輩達。だからみこさんは火に油を注ぐことは言うな。ドンドン力が強くなってきていて抑えきれなくなる。

 

「モブさん離してみこち◯せない」

 

淡々と語りながら吾輩の足を踏みつける星街さんの痛みに耐えながらどうどうと落ち着くように言いつつ抑え続ける。

 

「フーッ…で、何の話ししてたっけ?」

 

「おねえちゃんとしましてはモブさんのデートの話詳しく聞きたい」

 

「あ、それだギルティだ!」

 

「にぇ」

 

なんでこちらは被害を最小限に収めようとしているのに刃を向けるのか。猫のような目をした姉街さんに思わずため息をついた。

 

「で、みこ誰とデート行ったのか知らない誰!?」

 

「そーだそーだ!!噂は本当ならとんでもない事だぞキリキリ吐け!!」

 

「時間はまだまだあるよ!!さあさあ!」

 

吾輩は思わず空を見上げた。

社の天井越しにあるはずの夜空は見えないが、それでも今この瞬間、年が静かに切り替わったのだろう。どんな事があろうとも時間は変わらず流れ続けているというのがヒシヒシと感じた。

 

 

“……まぁ、いいか”

 

諦観とも悟りともつかない言葉が口をついて出た。

元旦早々、事情聴取めいた追及を受けるのも、武器を構えたアイドルに囲まれるのも、考えてみればいつもの延長線上である。例年と違うのは、年が変わったという事だけなのだ。

 

“デートの話はそのうち機会があれば、ということで”

 

 

「逃げた!」

 

「逃げたにぇ!」

 

「えー!!」

 

 

三方向から一斉に指をさされる。

だが吾輩は構わず立ち上がり、軽く埃を払った。

 

 

“それより初詣でしょう。せっかく来たのですから”

 

一瞬の沈黙。

そして次の瞬間。

 

「あ、そっか!」

 

「そうだった!お賽銭入れてけー!!」

 

「願い事しなきゃ!」

 

空気が一気に緩み、三人はぞろぞろと本殿の方へ向かっていく。その背中を見送りながら、吾輩はほくそ笑んだ。どうせ彼女らはすぐに忘れる。

吾輩は最後にもう一度だけ室内を振り返った。散らかったお菓子、漫画本、そして騒がしい年越しの余韻。

 

今年もきっと、平穏とは程遠い一年になるだろう。

だがこうして笑って年を越せたのなら、それで十分なのかもしれない。

 

二礼二拍手一礼。

控えめに、しかし確かに願う。

 

どうか来年も、皆が無事でありますように。

そしてできるなら、吾輩にもう少しだけ平穏を。

 

背後から聞こえる「ねえモブさーん!写真撮ってー!!」「早く来るにぇ!」という声に、吾輩は小さく肩をすくめた。結局今年も、仕事始めは元旦かららしい。

吾輩はこれからもパーフェクトスタッフである。




モブ
年末からギルティ判定で軽く処された。
ひっそりとクリスマスにデート?(68話)を見られて拡散されていた。
どうやら未だに家に帰っている事が知られていない。

星街
今日もパーフェクトスタッフに仕事を与えている。
まだモブからデートの話を詳しく聞いてないことを姉から聞き後日聞き出しに行く。リア充されると腹が立つタイプ。

姉街
パーフェクトスタッフの交友関係に興味津々。でも星街がとられるのは嫌。初々しいリア充の話を聞くのが楽しいタイプ

みこ
リア充絶許。モブが家に帰ってるという話が納得できずアンケートを大々的にとった。

悲しみのアンケート
パーフェクトスタッフの家がホロライブの事務所である。イエス・ノーで社内で行われた。全職員の42%がイエスと答え、そのうちホロメンに絞ると半数がイエスと答えたとか。モブはショックで仮眠室で寝た。
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