吾輩はパーフェクトスタッフである。
本日の業務はイベント日の段取りやお弁当等の注文等を詰める作業である。
またFLOW GLOWの綺々羅々ヴィヴィさんと響咲リオナさんと、ある約束をしていた為その約束を果たすという仕事もある。
ガチャ
「にゃっはろーモブさん聞いて!!今日みこ夢でモブさんに負かされて泣く夢見たんだけど!?」
扉を開けてすぐに話しかけてくるのは私服姿のみこさんであった。今日のレッスンや配信はオフの日だったはずだが、何故ここに居るのだろうか。マネージャーさんに呼ばれたのかもしれないと深く考えないようにして、夢の件は正夢になるだろうと伝えておいた。
「はぁー!?失礼な事を言うんじゃないよ!!みこちゃんは負けないんですケード!!」
ぷりぷり怒って休憩用のソファに座るとお菓子を広げ始めたみこさんを見るに話は終わったようだ。
気を取り直して仕事に戻ろうとしたが、
ガチャ
「おつまーち!モブさんこの手の企画ってどんな風にまとめると見やすいの?」
今度は星街さんが入ってきて企画書のまとめ方を聞いてきたではないか。個人事務所を設立したからか最近特に忙しそうで何よりである。何個か吾輩を意識している点と企画書の雛形を進呈しよう。活用するが良い。
「すいちゃんだー個人事務所どう?偉くなったもんだにぇ」
「充実してるよ?羨ましかろ?こっからガンガン活躍して幸薄体質は卒業するんだ」
USBメモリにデータを入れて手渡そうとしたが吾輩の方見てねぇでやんの。見ないならしまっちゃおうねぇ。と寂しさを紛らわせるために片付けようとしたが、横から伸びてきた星街さんの手によりUSBメモリを奪われた。
「冗談じゃ~ん!ちゃんと聞いてるってば!!しかしこうやって見るとモブさんの優秀さが際立つな。…専属にならない?」
「コラコラすいちゃん。ウチからモブさん持ってくのは困るにぇ」
“…前から星街さんが何かしてるなとは思ってましたけど、急にYAGOO社長に呼ばれ星街さんの詳しい話と可能な限りサポートはするように言われて驚きましたよ”
「本当は引き抜きたかったんだけどね…今後の事を考えると早急かと思って保留。思ったよりモブさんの給料高くて。安月給で馬車馬の如く働いてもらう計画がご破算だよ」
「愛だにぇ。やったねモブさん養ってもらえるかもよ!」
吾輩の心を無視して話が勝手に進んでいるが、どちらに就こうとも結局吾輩のやる仕事は変わらないのだ。調整と雑務。頼られるのは嬉しいが、パーフェクトスタッフは依然変わりなく業務を遂行するのみ。
まぁ長年の付き合いではあるので、星街さんが困ってるなら多少手助けする事は吝かではない。言えば絶対に調子に乗りそうなので言わないが。
ガチャ
「んーーヴィヴィ~!お疲れ様でーす!モブさん用の衣装をスタッフさんから借りてきましたー!!準備ええか?」
「「わー!!待ってましたー!!」」
ついに来てしまったかこの時が。と自分で許可したことだが、少し後悔していた。みこさん達のはしゃぎ様を見るに仕事日でもないのにここに居るのはこれから起こる出来事を見たかったからなのだろう。
「リオナはもう少ししたら来るから先に始めててー!との事だったので始めようと思います!!」
「「わー!!!」」
「モブさん女装で美女にすんでー!!」
「「わーー!!!」」パチパチパチ
3人しか居ないのに凄い盛り上がりだ。気乗りはしてないが、新しい事に挑戦するという事は大事だ。この吾輩の挑戦を見てホロメンや職員の士気が上がるならそれも良いだろう。
ちなみにこの企画?を聞いてこよりさんが性転換出来る薬あると伝えたらリオナさんが猛反発したらしい。何故だかは分からないが凄い反発と説得により、こよりさんが引き下がった形だったそうな。
「というわけでモブさんこっち来てー。ウィッグ、化粧品とメイク道具…衣装…良し。男性特有のガッチリした肩幅…はさておき…いくでー」
「お、最後のひと言で怪しげな匂いがプンプンしますねぇみこさん」
「にぇ。化け物になっても綺麗になっても美味しいにぇ。撮影準備OK!後で全職員に共有してYAGOOにも送ろ」
“ヴィヴィさん。男に二言はないのです。故に、吾輩はここで真のパーフェクトスタッフとして!プロ根性を見せて果てる!!介錯はよろしくお願いします”
「モブさん!?待って待って!!上手くいくかもしれんやん!!いや!ウチがモブさんこと変えたるから!信じてーな!?」
本日、吾輩は勇姿と恥を社内に晒す事が確定したので今後の予定は切腹し果てる事にした。ヴィヴィさんが何やら両手をワタワタと動かして止めようとしてくれるが、吾輩の心は固い。とりあえず手早く切腹せねばならないので早急に女装メイクをしてもらうようにヴィヴィさんに頼んだ。
「あ、はい。仏みたいな穏やかな顔をしてるやん…え、えーとまずはスキンケアから。お客さんちょっとお顔触りますねー…お、意外に肌艶はええみたいやね。普段スキンケアとかするん?」
“毎日やってるわけではありませんが、たまにスタッフさんとか貴女達が肌に合わなかったとかでくれるお試し用保湿液等があるので塗るくらいですかね”
「それだけでこの肌艶かぁ。羨ましい。肌に合わないとかないんかなぁ」
「ね。あんなに残業とかオールしてるのに全然体調崩さないし、肌艶良いとかズルだよね」
「まぁ、こよの研究成果だもんにぇ」
「どゆこと?すいちゃんの知らない間に改造人間なの?ガン〇ム世界みたいに強化されたりしてんの?」
「それよりもっと原始的というか…スピリチュアル?というか」
「なぁんか、みこ先輩もすいせい先輩も凄い怖い話してんで?」
雑談を続けながらも手を動かし続けるヴィヴィさんにより、ペタペタぬりぬりと顔に色々塗られている。もう既に飽きが来ているので女性って大変だと再認識した。
「さて、少し乾かしたらメイクする準備はええで!という訳でその間モブさんには着替えてもらおか!このドレスに…」
「おぉかわいー!前に衣装スタッフさんが作ってたのこれかぁ!!」
「服の肩幅見ただけで広いの面白いじゃん。衣装スタッフさん頑張ったんだにぇ」
ワイワイと楽しそうに談笑しながらドレスを見てる3人。衣装スタッフさん達が前に吾輩に隠れて何か画策しているのは把握していたがこれだったとは思わなかった。余計なことを、とため息を漏らした。
「はい!モブさんドレス。そこのパーテーションの裏で着替えてきてな。衣装スタッフさんは上から被るようにすれば着れるって言ってた」
“さいですか”
ヒラヒラと揺れるドレスを持ちながら用意されたパーテーションの裏へ向かう。言われた通り簡単に着替えられたので軽くシワがないかを確認した。
詳しくはないが数々の衣装を見てきたので問題なく着れている。衣装の違和感はない。着ている人物の違和感は否めないが、ここからどう新しい自分になるのかヴィヴィさんに期待である。
という訳で軽く手をあげて登場してみた。
“お待たせ。待った?”
「…ングブフ!?」
「すいちゃん!?汚いにぇ!!って…ピャー!!ハハハハハハ!!モブさんその挨拶違う人のあはははははは!!」
ガチャ
「おつリオナー!今どんな感じダハハハハハハ!!」
星街さんは水を飲もうとしていたらしく吾輩の姿を見て口からキラキラを撒き散らした。油断しているからそうなる。みこさんは吾輩を指差して笑い、丁度部屋に入ってきたリオナさんは吾輩と目があった瞬間に笑う始末である。ちなみにヴィヴィさんの方を見ると顔を手で覆って震えていた。
「ゲホッ…ンン゛!待ってないよ……ブフッフフフ…」
「持ち直して王子様風に返せたの凄いけど」
「耐えれなかったにぇ。モブさんピースして!写真撮ろう!!」
“ピース。…ところでヴィヴィさーん?どうしてお顔を隠してらっしゃるのかしらー。顔見せなさいよ”
「…………やめてー!?女口調嫌やー!!フヒュ」
「「あっははははは!!!」」
「ック…フフフ…ふぅーー!おいふざけるなよヴィヴィ!!話が進まないだろ!!」
「すいせい先輩!?ウチ悪くないやん!!?」
吾輩が地声を少し低くして女口調で喋れば場はとんでもなく盛り上がっていた。みこさんとリオナさんは笑い過ぎて地面をドンドンと叩き、星街さんは吾輩と目線が合うたびに吹き出して悶えている。ヴィヴィさんはとばっちりだが未だに顔を見せようともしない。メイクが終わってもいないのにこの笑い方は終わった頃には事切れてしまうのではないだろうか。
星街さんの言う通り話が進まないので椅子に座り、ヴィヴィさんにメイクのお願いをするのであった。
“ほらヴィヴィさん吾輩をホロライブイチの美人にメイクなさい(裏声”
「「ピャーッ!!し、しぬ!!笑い〇ぬ!!」」
「髪ふぁさって靡かせるの嫌すぎる!!」
「ひっひっふー!ひっひっふー!!…よし!!さぁモブさんのメイク初めんでー!!」
何やら過呼吸で死にかけてる二人がいるが、問題ないだろう。星街さん、ヴィヴィさんも大分落ち着いたようで何とか呼吸を落ち着けている。呼吸法についてはあえて放置することにする。何か喋る度に更に笑いを呼び込んでしまっては話が進まないのだ。
ちなみに撮影していたみこさんは床に突っ伏しているが、スマホはしっかりと机のスマホスタンドに立て掛けていた。凄まじい執念である。
「さて、どんな感じのメイクがええんかな?肌の色とかけ離れすぎないようにー」
“折角のこのフリフリ衣装ですからね。…ふむ。ビビデバの星街さんより美しくする感じで”
「おい対抗しようとすんな!?」
「そうなるとアイメイク重要だにぇ」
「折角なんでつけまつげも着けましょうよ!」
「ふんふん…じゃ、その要望に合わせてメイクすんでー!」
メイク道具を両手いっぱいに持って目をキラリと光らせるヴィヴィさんの姿は非常に頼もしく見える。彼女程の技術で化け物に変貌してしまったとするなら、それは吾輩という素材が悪かったということだろう。あとは全てを託し結果を待つのみとなったのであった。
と、待っている間吾輩が何もできないのを良いことに心悪しきホロメン達が動き始めてしまっていた。
「折角だから色んな人に見てもらいたくね?」
星街さんの一言で大拡散祭りが始まった。
「パシャー。よし、この画像あくたんに送ってみよ」
「おー!?それ良いじゃん!!みこも送ってみよかなたんとココちゃんに送ろー」
「先輩達凄い行動力!!モブさんが睨んでるのに怯みもしないや!!」
あまり表情を変えるとメイクの邪魔になりそうで動けない吾輩は、悪しき者達を止めれず凄まじい速さで拡散される情報に抗えないのであった。
「あくたん既読ついた。はやっ電話かかってきた!?はいもしもしー…え、いや現実現在進行系。AI編集してないってば!!」
「お、かなたん来るって!!焦ってるのか凄い誤字してるにぇ!!」
「なんか凄いことになってきたぞ。あ、私もニコたんに送ろ。元気になーれパシャ!」
今まで無いほどウッキウキの彼女らの魔の手によって同窓会のような雰囲気になってきてしまった。
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ガチャ
「おつしゅばー!!滅茶苦茶おもろいことしてるやん!!あ、ちなみにさっき仕事だったのかういママ居たから連れてきたよ。ほぼホロメンみたいなもんだし良いよね?」
「お疲れ様でーs…うわマジじゃん!!ヤダー!!出来る社会人だと思ってた人の裏側見ちゃった気分…モブさん仕事選んで良いんだよ!!貴方にはそれだけの力があるはずでしょ!?」
スバルさんは後で吾輩と切腹をしてもらうとして、後ろからコソコソとやってきた「ういビーム!」の開発者?であられるしぐれういさんは吾輩を視認するなり発狂し嘆いた。頭を抱えて「イメージがぁ」と叫んでいる。吾輩とてこのような姿を好んで晒している訳ではない。
ガチャ
「モブさんどゆこと!?どうして女装しちゃってんの!?」
「お疲れ様デースおっ…ホホホ…ホホホホホ…ピャー!」
かなたさん、ココさんまでやってきてしまった。急に事務所が狭くなってきたではないか。パジャマ姿でスッ飛んできたかなたさんは吾輩の姿を見るなり「どうしてこんな事に」と錯乱し、ココさんは満面の笑みでスマホを取り出していた。
「HEY!ちょっとモブさん!こんな面白いコト、してるなら呼んでよ」
「モブさんヴォコヴォコにする!あそ…えぁ?」
「おっとカリオペにビジューまで。ワラワラやって来ちゃってまぁまぁまぁ」
「すいちゃん凄い悪い笑みしてるにぇ。うーん…凄い集まってきちゃった。みこちゃんが共通のDisc〇rdに送ったのが悪いんだろうけど…えへ。モブさん愛されてるじゃん」
急に事務所の一室がガヤガヤと煩くそして狭くなってきてしまった。ニヤニヤと笑う星街さんとみこさんに吾輩にできることは睨みつけることだけであった。
「あっははははは!!ひははははは!!やだーん!!!似合ってるじゃ~ん!!」
「うわー…モブさん…アハハハ似合ってる似合ってる。暫くスマホの待ち受け画面にでもしようかな。良いこと起きそうな気がしてきた」
「おっほー!モブさんこの写真にじさんじの人に送って良い?」
案の定湧いて出てきた紫咲シオンに爆笑され、湊あくあさんは写真を撮ってとんでもない事をしようとしている。そしてまつりさんは更に拡散をしようとしているのでやめるように告げた。
「もう送るね。星川とやしろんに送る!」
馬鹿この!と吠えるもずっとニヤけ顔でタプタプとスマホを操作しているのでもう無駄なのだろう。吾輩は本日何度目か分からないため息をついた。ウイルスのように拡散されないことを祈るばかりである。
「おし、完成やー!!会心の出来となりましたお客様!!鏡をご覧ください」
ある程度理解していたが、メイクとはこんなにも時間が掛かるのだと再認識してぐったり気分を味わった。そんな中、ついにヴィヴィさんに肩を叩かれ鏡を見るように促されたので目を向けると
“これが、吾輩…思ったより悪くないのでは”
「意外に悪ないね。いやー会心の出来やな!」
「「「「「「モブさーんこっち向いてー!!」」」」」」
ヴィヴィさんに軽くお礼を言うと、つま先から頭の天辺まで観察するように見た彼女は一つ満足そうに頷いた。やはり相当に自信があるのだろう。吾輩は胸を張りこっち向いてコールのした方へ振り向いた。
少し目を離していたとはいえ、スタッフさんやらマネちゃん達も集まってきており、非常にこの部屋の人口密度が高い状態になっているではないか。一瞬顔が引き攣りそうになったが、今の吾輩は何処に居ても恥ずかしくない美女なのだ。一番前に居た星街さんに中々悪くないだろうとキメ顔をしてみた。
「や、やるじゃんヴィヴィ」
「おー!!モブさんきれーだにぇ」
「意外だ。肩幅はさておき、悪徳令嬢みたいになってる!!」
「「「「モブさんこっちに視線向けてー!!」」」」
何やらものすごい盛り上がりである。星街さんは何とも形容しがたい表情でこちらを見ているが、概ね好評である。観衆?に向けて軽く手を振ると凄まじいシャッター音が聞こえて来た。まるで人気アイドルにでもなったかのようである。小心者の吾輩からすると少し辟易してしまうが。
“さて、この後は切腹するので白装束に着替えようと思いますが「待って待って早い早いって!?」”
吾輩がぼちぼち切腹するかと思い着替えに戻ろうとしたが、ヴィヴィさんに呼び止められてしまった。
「折角だからもう少しなんかせん?たとえばー…あ!アレや!!ビビデバ繋がりですいせい先輩と踊ってみるとか」
「え、あたし?このモブさんと!?」
「おー!やりなよすいちゃん!!動画は撮っておくにぇ!!」
「マジで言ってる?えー…ならいっそあたしが着る王子様風の格好良い衣装頂戴よ」
「衣装スタッフさんなんかある?」
吾輩が踊ることになっているらしい。他のスタッフさん達も何かあったかと頭を捻っているが、無いなら無いで良いではないか。そんなに悩む必要はないだろうに。
そんな事を思っていると横からスススっと近づいてくる影が見えた。
「オー…思ったより似合ってますネー!ちなみに下はどうなってんダー!!アイター!?つええ!!?」
「何やってんのココ…流石にダメでしょそれは」
「ぐぬぬ…なんて鉄壁なんダ」
吾輩のドレスの裾を引っ掴もうとする不届きなココさんが居たのでヘッドバットの後にダブルラリアットで吹き飛ばしておいた。
転がったココさん呆れ果てるかなたさん。彼女達も変わらず、いつも通りのようである。どこか安心した気持ちになっていると軽く手を叩かれたので視線を向けるとニヤニヤした魔女っ子とこちらを凝視している元メイドの姿が。
「やっほーおひさー!シオンがいない間にこんな面白いことしてるなんてダメじゃ~ん!せめて事前に許可取ってくれないと。…ぷは!いやーん見れば見るほど似合ってるからやだー!あはははは!!」
「わぁ…うわぁー…なんか…ちょっと綺麗なの…なんかやだぁ。モブさんどうしてこんな…」
相変わらず大したメスガキっぷりを見せながらスマホで撮影をしてくるシオンさんに吾輩の周囲を回りながら隅々まで凝視して眺めてくるあくあさん。シオンさんは大層ご満悦だが、あくあさんは何か大事な物を失ったかのような顔をしていた。あまりにも可哀想な姿の為、パーフェクトなお姉ちゃん演技で慰めてあげるべきだろうか。
「慰めなんて要らねぇんだ!!というかモブさんなんでノリノリなの!?あてぃしそんな一面知らない!!」
「ひはははは!!良かったじゃんあくたん抱擁でもしてもらえばー?あの硬そうな胸に泣きつきなよ」
ヤダー!!と叫び頭を抱えるあくあさんを見て爆笑するシオンさん。こちらもあまり変わってないようで何よりである。
未だ興奮冷めやらぬ様子の観衆へチラリと視線を移すと
「ひゃははははははー!!モブさんかわいいー!!似合ってる!みこみこ!?今年笑ってはいけないホロライブやろう!モブさんに出てもらおうよ!!学園物で校長とかやってもらおう!!」
「ダメだよころね!そんなんしたらみこちゃんのケツ壊されるの確定じゃん!!今でも…ップフダメだいつものモブさんのイメージが違い…すぎて堪えられんふふふはは!ピャー」
みこさんところねさんが何やら画策しており、
「何この騒ぎ!?って……モブさん!?…な、なんで!?罰ゲーム!?誰かにやらされてる!?モブさんにこんなコトさせてるの誰!?」
「「「「ヴィヴィがやりました」」」」
「嘘やん!?」
すごい剣幕で吾輩に近づいてきたそら様は吾輩が無理矢理女装させられていると勘違いしてしまったのか、ギロリと観衆を睨みつけていた。その結果一瞬でヴィヴィさんが売られてしまった。
そらさんがヴィ〜ヴィ〜?と黒いオーラを撒き散らしており、このままではヴィヴィさんが物言わぬ姿で見つかりそうなので止めることにした。
「……え…じ、自分から女装を!?Why!?新しい事に挑戦って別に女装じゃなくても良いんじゃないかなぁ!?」
軽く事情を説明すると、そら様はお目々ぐるぐるさせて身体をふらつかせていたので、怪我をする前に椅子に座らせて事なきを得た。珍しく焦燥した様子だったが、ぺこらさんが近づき吾輩の女装写真を居るかと尋ねると「いる」とだけ即答で答えていたのでもう彼女達は駄目かもしれない。
そら様のマネージャーさんにメンタルケアの休日が必要だと伝えねばならないようだ。
「ハニー!待った?」
壊れゆくホロメンを眺めていると、星街さんの戯けた声が後ろから聞こえたので振り返る。
何故か白基調の男性貴族風衣装を着て長かった髪も後ろでローポニーでまとめていた。後ろで衣装スタッフさんが頑張ったと満足そうな笑みを浮かべていた。なんて無駄な労力なのだろうか。
謎の一体感に呆れつつ、ひとまず星街さんに返事を返さなければならない。妙にノリノリな星街さんに合わせてそれっぽく返すことにした。
『ハァーイ。ダーリン待ち焦がれたわ!(裏声』
「グギッ…スゥーー…ウヴンふぅ…ふぅ。ック…じゃ踊ろうかハニー」
一瞬ニヤけ、歯を食いしばり、堪えすぎて涙目になり、深呼吸をした星街さんはなんとか堪えきったらしい。今の一瞬でなかなか見られない星街さんの表情の数々が詰め込まれていた。ちなみに吾輩のダーリン呼びをした際に観衆から大爆笑の渦に包まれた。最初からずっと笑い続けているみこさんやリオナさんは酸欠で顔が青くなってきている。後で助けないと大変なことになりそうだ。
「で、ビビデバ踊るってことでいいの?」
“それで良いのでは?社交ダンスも出来ないわけではないですが、あれはあれで一朝一夕で出来るものではないですし”
「…ふーん、社交ダンス踊れはするのね。誰かと踊ったことあるのか…じゃ、音楽流してー!モブさんに踊れんのかなー?エスコートはしてあげるけどあまりに酷いと助けきれないよ?」
前奏が流れ始めるとどこか馬鹿にしたような表情の星街さんが手を伸ばしてくるのでその手に吾輩は手を重ねた。彼女は吾輩がロクに踊れないと思っているようだが、それは砂糖菓子のように甘い思考だと教えてやろう。
“ダーリン”
「地声でダーリンやめてね?…なに?」
“吾輩は星街さんのようにコケないというところをお見せしましょう”
その後滅茶苦茶パーフェクトに踊りきった。
ビビデバを踊りきった吾輩達は盛大な歓声が浴びせられた。
所々星街さんと吾輩の息が合わなかったところがあったが概ね問題はないレベルであった。
「……なんでそんなに完璧に踊れんの?」
“ふむ。吾輩はビビデバの収録の際に着いていきましたが、その時に振付師さんと話する機会があったので色々と語っていたら親切に教えてくださいましたね”
「そーいえばモブさん一時期作業用BGMビビデバだって言ってたし鼻歌歌ってたりもしてたね。あずちゃんなんかモブさん鼻歌歌うくらい機嫌がいい時あるんだって驚いてたし」
「そ、そんな事が…知らなかった…」
そういう事である。そら様とAZKi様に前、鼻歌を聞かれていた際に尋ねられたので気に入っている旨を伝えたことがある。吾輩だって気分がいい時くらい鼻歌はするのだ。
その話を聞いた星街さんはニヤけたような引き攣ったような不思議な表情をしていた。
「いやーエエもん見れたわー!モブさんありがとー」
ニッコニコで吾輩の手を掴んでブンブン振ってくるヴィヴィさんに吾輩も礼を返した。メイクでここまで時間をかけるとこんなにも人は変わるのだと知れたのは素晴らしい学びであった。最悪成れの果てになってしまう可能性も捨ててはいなかった。
「踊ってる最中のすいせい先輩とのやりとりもおもろかったし「おいヴィヴィ」なんでもないでーす」
踊ってる最中、星街さんが吾輩の腰に手を回すのが体格的に難しく少し振り回されたり、吾輩のスカートを思いっきり踏みつけてくれたので“ダーリン踏んでますー”と告げたら星街さんは笑い始めてリズムが狂ったりと些細なミスが発生したのだ。
「は、ハニー!お前の胸厚いから腰に手を回し辛いんじゃぁ!」
「「「「あははははははははは!!」」」」
顔を赤らめながら震えて叫ぶ星街さんに“あらやだセクハラかしら”と言った場合、確実に斧が呼ばれて飛び出て吾輩の胴を切り捨てるだろう。吾輩は肩をすくめる程度にすませた。
さて、やるべき事はやったし観衆たちの中にも笑い過ぎて天に召されかけている人達も散見されている。ぼちぼち切腹するかと思い衣装スタッフさんに白装束を持ってくるように告げようとしたが、星街さんに腕を掴まれた。
「リベンジ!もっかい!!」
負けず嫌いが過ぎるのではないだろうか。気炎万丈素晴らしいことだが、ここで使う気力ではない。と言っても最早曲をかけてと他のスタッフさんに声を掛けている星街さんを止めることは叶わないだろう。仕方ないので諦めるまでこのまま何度でもパーフェクトな踊りを見せつけてやるとしよう。
その後パーフェクトな踊りを続けたのだが、5回戦目にて星街さんが組んで踊る瞬間に大内刈で吾輩の足を払い投げ技に移行するという卑劣な荒業で舞踏会は武闘会に様変わりしたのであった。
観衆達は血肉沸き踊る戦いにこれ幸いと参加してきており事務所は倒壊してしまいましたとさ。おわり。
モブ
初めての女装が超拡散された。意外に好評だったが好んでやる気はない。しかしネタになるのならば渋々やってくれるし女装したならキャラを作る。プロ。
星街某との心を摘む戦いに初手から勝っていた。しかし最後に物を言うのは容赦ない力には屈した。実はホロメンのアルバムは全部買ってたりする。ビビデバは特にお気に入り。
すいせい
モブの女装を楽しみにしてた人。しこたま笑ったし腹も立ったので最後は力で解決した。よく見たらモブの履いていた靴は室内用スリッポンだったので、転ぶわけないだろヒール履けとキレた。なんだかんだでモブがホロメンのアルバムや歌を聴いてると知って嬉しいやら恥ずかしいやら妙な気分を味わった。
みこ
笑い4にしかけた。しっかり撮影して拡散フィーバーしたし動画編集して後日全職員に配った。怒られた。
ヴィヴィ
モブに女装させメイクを施した。暁と呼ばれるホロメンも呼び寄せる事態を作り出したので一目置かれる存在にランクアップした。次回があれば別のメイクも試したい欲がありチャンスを伺う。
リオナ
笑い4にしかけたその2。幸せな時間だったと呟き酸欠で気を失った。後日みこが撮影した動画を見て疲れた時に見る用のフォルダに入れた。次は年末かもしれないと思いを馳せながら楽しみにしている。
性転換の薬について猛反発した理由
モブが性転換した場合、リオナはもし美人だったら癪。またもし惚れてしまったらどうするのかという熱弁にどこかの博士も同意する気持ちがあったため永久封印となった。その後総帥がこっそり持っていったとかなんとか。