吾輩はホロライブのパーフェクトスタッフである   作:ジョ力

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評価バー伸びてるやないかい!!感謝!!
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思わずスクリーンショット撮りました。良いことあります。きっと読んでる人にも。


77 thyキレた!

吾輩はパーフェクトスタッフである。

 

本日は収録のスタジオにもうすぐ発注していたお弁当が届くのだ。それを受け取りホロメンに配る作業である。

なにやら現在、日本全国を使った大規模なイベントが行われており世界中から数多の車種がブイブイいわせているのだとか。その影響かは知らないが出前一つも風変わりなものになっているとかなんとか。吾輩も残念ながら詳しくは知らないが。

 

キキー!!ガタン

 

建物の入り口で待機しているとどうやら出前が届いたようだ。お疲れ様です。と挨拶すると随分と見覚えのある女性が姿を現した。黒を基調とした肩丸出しワンピースで、胸元には鮮やかなターコイズブルーの意匠があり中々オシャレな輪堂千速さんではないか。何故か服も後ろの車もボロボロであるのが気になるが。

 

「…ふ」

 

“ふ?”

 

配達の商品を持ってフラフラと近づいてくる千速さんは急に吾輩を睨みつけると

 

「ふざけんなー!!お、お前の仕業かぁー!!それのせいで!!それのせいでぇ!!!あたしはぁああ!!」

 

半泣きで吾輩の首に掴みかかってきたので、ひとまず配達商品が地面に落ちないようにキャッチした。結果吾輩の首は絞められてしまうが大したダメージにならないので放置しておく。全く近頃の女性はカルシウムが足りてないのかすぐ発狂する。後で牛乳でも差し入れてあげるとしよう。

 

「あ、モブさーん!さっきの出前オーダーに追加オプションあったじゃん?アレすっごいよ!アタシ達の注文した商品さー車でドリフトとか爆速で配達してもらうところ中継してんの!!スマホでも見れるみたい!!」

 

後ろから収録で休憩がてらに食べたいものをまとめて注文してくれたフレアさんが近づいてきた。そんなオプションがあったのか。吾輩もあとで見てみよう。

そんな会話を繰り広げていると吾輩の首を絞め続けていた千速さんが固まり崩れ落ちた。

 

「あぁ。先輩達に楽しんでもらえるならもう…それでイイんです。でも4んだらモブさんの枕元に化けて出てやるからな」

 

「モブさんどしたん?あれ…ちはじゃん。どしたのそんなボロボロで…あれその車さっきまで中継で見てた車な気が…あっ」

 

どうやらフレアさんが頼んだ出前のオプションが千速さんを苦しめていたらしい。今思い出したが、今回の大規模なイベントでホロメンもバイトがてら参加してくると言っていた気がする。まさかこんな形で出会うとは。まるで漫画の悲しい再会のようである。

 

「なんか…ごめんね」

 

「…大丈夫です」

 

フレアさんの謝罪を受け入れた千速さんはボロボロで哀愁を漂わせていた。ちなみにどんなオプションだったのだろうか?

 

「色々あったよ?速度を落とさせずに走ってもらうとかドリフトしながらとか」

 

「命が…命がいくつあっても足りないよぉ!!」

 

「な、泣いてる」

 

どうやらこのイベント中は道路交通法という概念は消えてしまったらしい。情緒が壊れてしまった千速さんは歩道で大の字に倒れ泣き始めた。フレアさんも申し訳なさで頭を悩ませている。

 

「あ、フレアー!ワタシも追加で牛丼頼もうかと思ったらオプションでスピード最速なる早で届けてもらえるって!中継されるって!一緒に見よー!マリンもぺこらも楽しみにしてるよ」

 

「あー!?ノエル!…シー!!今ちょっとマズイかも!!」

 

人の心とかないんか?思わず引き攣った。千速さんのスマホが鳴っている。きっと出前の呼び出しだ。千速さんは泣きながら吾輩達を睨んでいた。

 

「ノロッテヤル!!えぐっひぐぅ!!」

 

「ゴメンゴメンゴメン!!ほらノエル謝って!?」

 

「え、えぇ!?ご、ごめん!!なんかよく分からないけどごめんなさい!!」

 

我等には千速さんを助ける術を持たぬ。意味はないかもしれないが平謝りするしかないのだ。そんな謝罪を聞き入れずヨロヨロとふらつきながら出前用の車に乗って去っていった。

 

「な、なんだったんだ」

 

「カクカクシカジカで可哀想な千速」

 

「アチャーそんな事が」

 

二人でバツが悪そうな顔をしているが、悪気があったわけではないのだ。きっと心優しい千速さんは許してくれるだろう。駄目なときは吾輩の責任として彼女の拳を一発喰らう覚悟はしておこうではないか。

 

「モブさん…カッケェ!」

 

「やっぱモブさんなんだよな」

 

“さておき、折角なら中継見ましょうか。千速さんの運転でどんなワザが見れるか楽しみですね”

 

「「モブさん?」」

 

吾輩がワクワクとしながら中継を楽しみにしている旨を伝えると二人から何処か呆れたような視線を向けられる。良いではないか、楽しめる時に楽しまねば損というものだ。なに、先ほどは拳を受ける等と言いはしたものの、千速さんとて仕事なのだ。なんだかんだ割り切って許してくれるだろう。笑いながら吾輩は千速さんが来るまで3期生組と中継を楽しむのであった。

 

 

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「ちはをみて笑ってたんだろモブさんとて許せん!アターック!!」

 

ガシャーン!!キキー!!ドゴドサ…

 

吾輩は車に撥ねられ宙を舞った。それはもう高く高く舞い、歩道橋にぶつかって落ちた。拳一発どころか車一台分で来るとは思わなかった。流石に効いてしまった。軽い脳震盪のように視界が揺れたが、すぐに治まったのか立ち上がる。

 

「くそぅ!!効いてないじゃん!!良い子は真似しないでくださいみたいな事したのに!!」

 

「いやいや普通は4ぬよ」

 

「団長でも流石にあんな勢いで撥ねられたらもう立てないかな」

 

「撥ねられ方が漫画みたいな飛びっぷりなんだワ。が、ダメ!!ノーダメなんだなー」

 

「寧ろ容赦なく撥ねた千速もだけどアンタ達もこの出来事見てその感想?麻痺してるぺこ」

 

車から降りてきて吾輩を確認した千速さんは悔しがり、フレアノエル船長はお茶を飲みながら談笑し、ぺこらさんは耳をピクピクさせて呆れた表情をしていた。

吾輩が千速さんに撥ねられる原因と言ってもそこまで語ることはないが大凡こんな感じだ。

 

「宅配でーす(半泣き」

 

「お疲れ様でーす」

 

「モブさんも楽しんでたよ」

 

「絶許!!」

 

上から千速さん、吾輩、ぺこらさん、千速さんである。その後歩道際に立っててほしいと千速さんに言われたので立っていたら撥ねられたという流れである。

 

“千速さんの運転は中々凄かったですね”

 

「あぁそうですか」

 

褒めたのに投げやりな返事が返ってきた。

 

「ほら千速がドリフトでかき混ぜたドレッシングつきサラダ美味しいよ?」

 

「あたしはモブさんに苦痛を味わってほしいな」

 

ノエルさんの優しい慰めには歪んだ感情が返ってきた。吾輩は悪くないだろう。濁った千速さんの目を見返すと瞬きもせず、ずっとこちらを凝視してくるではないか。怖い。

 

「ふぅ…まぁ良いや。これが労働だよね」

 

仕事仲間に苦痛を味わってほしいと言ってのける様を労働とは言ってほしくないが、千速さんの目に元の輝きが戻ってきた。

先程の配達で本日のアルバイトは終了したらしく、解放されたー!と背伸びしていた。

 

「じゃ、ちはも一緒に休憩していく?アタシ達も収録終わったからお弁当食べて帰る予定なんだ」

 

「え、良いんすか!?やったー!!」

 

フレアさんの誘いに嬉しそうに万歳して着いていく千速さんを眺め無事一件落着だな、と吾輩は頷いた。

 

「モブさんこの千速の乗っていた車どうすんの?」

 

“え?…さぁ?”

 

「見て見て!!モブさん撥ねたときの跡!ベッコリ凹んでるよ!!」

 

「うわー!?スッゲェ!!これどうすんの!?」

 

“…さぁ?”

 

弁償は残ってそうである。

 

 

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「このお弁当量少ないけど美味しいー。どこの?」

 

「△△屋だって。確かお肉料理が美味しいって有名だったはず」

 

「はぇー。他にはどんなお弁当があるのかなー」

 

ノエルさんと千速さんが雑談しながらお弁当を食べている様子をBGMにしながら仕事を進める。なにやら各地でトラブルが発生してしまったようだ。吾輩は思わず頭を抑え呻き声をもらした。

 

「どったの?」

 

マリン船長が心配そうな顔をしてこちらに近付いてきたが、事が事なだけに伝えるか迷った。迷っていると、社会経験豊富なマリン船長に任せなさい!と胸を張っていたので伝えてみた。

 

“先程みこさんが配達アルバイトで車をコンビニに突き刺したらしいです。それはもう真正面からの追突だったのでみこさんは包帯ぐるぐる巻で回収されました”

 

「なんでみこち運転しちゃってんの?ヤバいじゃん」

 

“既に我等が社長が記者会見中です”

 

「可哀想」

 

“続報でロボ子さんがレースイベントで運転していた大型ロボットがショートして動かなくなってしまったとか。道を塞いでしまっているようでとんでもない事に”

 

「だはははは!!やってんなーロボ子先輩」

 

腹抱えて笑っている船長だが笑い事ではない。これは皆で馬車馬の如く働くしかないだろう。とりあえずみこさんとロボ子さんはラムベガスでの地下労働といったところだ。1050年地下行きっ……!

 

「えー!?マリンもかよぉ!?」

 

「どったの?」

 

「カクカクシカジカ」

 

「なんとぉー!?」

 

「みこちロボ子さんのバカタレー!!」

 

「…え゛…つまりあたしまたアルバイト?」

 

あえんびえんである。悲鳴を上げたマリン船長から話が伝わり、労働という言葉に皆発狂した。我々はチームだ。一緒に苦しみを分かち合い労働しようじゃないか。そう語るも皆の士気は落ち込んでいた。特に千速さん。

 

「そりゃ仕事大好き強メンタルモブさんは良いかもしれないけど、あたしそんなに労働できるような性格じゃないしー。なんならさっきまで神経すり減らして運転してたんだよ?もう無理ー!」

 

「「「「ワタシら(ぺこら)もー」」」」

 

吾輩も労働が好きというわけではないが、ここで士気が地の底まで落ちるのはよろしくない。

パーフェクトスタッフたるもの、仲間達のメンタルケアも仕事のうちである。

 

“ふむ。では頑張った皆さんにご褒美でも用意しましょうか”

 

「ご褒美!?」

 

「お?」

 

「なになにー?」

 

「お金?」

 

先程まで聞く耳持たずと各々うだうだスマホ弄っていたのに一瞬で食いついたではないか。現金な連中である。

 

“例えば高級なお菓子とか。少し良いお弁当とか。打ち上げ代わりに食事会とか”

 

「却下」

 

「却下かな」

 

「却下です」

 

「却下ぺこ」

 

「却下ー」

 

上からマリン船長、フレアさん、ノエルさん、ぺこらさん、千速さんである。吾輩の鉄板士気上げ技が全会一致で却下された。取り付く島のない程の反応で流石の吾輩も引き攣った。

 

“…なぜ?” 

 

「だってそれご褒美じゃなくていつものやつじゃん」 

 

吾輩が首を傾げるとフレアさん達が呆れたように言う。

 

「収録の時も差し入れあるし」

 

マリン船長が苦笑しながら語り、

 

「ライブの時もあるし」

 

フレアさんが前に吾輩が買って渡したのど飴を気に入って買っていると笑い

 

「イベントでもあるし」

 

ノエルさんはいつも感謝してるよ。と微笑んでいた。

 

「なんならモブさんたまにお土産とかで買ってきてくれるし」

 

千速さんが指をくるくる回して思い出したかのように話し。

 

「ありがたいけど食べ物で釣られる時代は終わったぺこ」 

 

ぺこらさんに打ち砕かれた。

何ということだ。

吾輩の良かれと思っていた差入等が充実し過ぎて感動が薄れている。

 

“ではグッズとか”

 

「スタッフがホロメンにプレゼントするの?」

 

「逆では?」 

 

「というかモブさん、グッズとか確かにあるかもだけどプロト版みたいなの団長達にくれてるじゃん?何か他にあるの?」

 

「あれとか…モブさんの女装権とかどうよ?」

 

「それはヴィヴィが喜ぶだけぺこ」

 

「いや、あたし意外と好きだったよ」

 

「フレアたまに撮影された動画見てるもんね」

 

却下であった。吾輩の女装はさておき、彼女達の喜ぶ物がパッと用意できなさそうである。では次の案だ。

 

“旅行券”

 

「最近休みがない」

 

“ゲーム”

 

「遊ぶ時間がない」

 

“現金”

 

「社長に怒られそう」 

 

“金塊”

 

「なんで急に犯罪の匂いしてきたの?」

 

吾輩は天を仰ぎ沈黙。静かに敗北を認めた。

ご褒美とは難しい。彼女達の士気をあげることは不可能だ。

 

「つまりだねモブさん」

 

マリン船長が肩を叩いてきた。振り向くとニッコリと聖母のように笑っていた。

 

「我々が欲しいのは休暇」

 

「「「「休暇(ぺこ)」」」」

 

“吾輩も欲しい”

 

吾輩のひと言により、ぴゅーと冷たい風が吹いた気がした。全員が遠い目になった。

吾輩の一存では無理である。今まさに事件が起きている最中なのだから。出来るとしてもダンスレッスンくらいしか削れなさそうである。案件もあるし、打ち合わせ、人によってはライブとかもまとまった休日なんてとてもとても。

 

「交渉は決裂だ。解散!!」

 

「解散だねー」

 

「働きたくないので帰ります」

 

「じゃあぺこーらも」

 

「おつりんどー!」

 

そこからはあまりにも早かった。

五分前まで世界の終わりみたいな顔をしていたのに、帰れるとなった瞬間に蜘蛛の子を散らすように去っていく。しかも、しっかりとお弁当の類は回収していった。

 

“薄情者共め……”

 

「だははは!みんな逃げんのはえー!じゃあねーお疲れ様でしたー!」

 

最後に残っていた船長すら笑いながら帰っていった。

またたく間に部屋は吾輩と千速さんだけである。

ぴゅーっと風が吹いた。この部屋隙間風多いなと悪態をついた。

 

“さて。では吾輩は大好きな労働に戻りますが”

 

「ん?」

 

千速さんが首を傾げた。

 

“千速さんも帰らないんですか?”

 

「え?帰るけど」

 

そう言いながら千速さんが椅子から立ち上がる。

しれっと残っていたので用事でもあるのかと思ったが帰るようだ。そう思った矢先。

 

「モブさんどこ行くの?」

 

“経理部です。色々今回の事もありますが、精算するものが多そうなので”

 

「ふーん」

 

他人事な反応であった。吾輩を撥ねた車がどうなるとか考えてなさそうな顔である。千速さんもラムベガス送りかもしれないと伝えると逃げ出しそうなので言わないが。

 

 

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社用車で千速さんを連行し、経理部に向かった。なんと、今回のイベントで壊れた車は気にしなくて良いとの事だった。吾輩の常識が崩れてしまった。ちなみにロボットはダメらしいのでロボ子さんはラムベガスで労働が待っている。

 

「なんもなくて良かったー!」

 

気持ち晴れ晴れー!とバンザイしている千速さんに頷く。まぁどちらにせよロボ子さんのロボット大破に、みこさんのコンビニアタックしているので何も無かった訳では無いが最悪の事態は免れたと思おう。

 

「って、モブさんどこ行くの?」

 

“倉庫です”

 

「ふーん」

 

倉庫の片付けがまだ途中なのでそちらを先に片付けねばならないのだ。吾輩は足早に向かった。

 

 

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倉庫での片付けは何故か着いてきた千速さんが手伝ってくれたので早く終わった。やはりマンパワーは全てを解決する。

倉庫での作業が手早く終わったので、空いた時間で第二スタジオに向かわねばならない。

 

「モブさんどこ行くの?」

 

“第二スタジオです。みこさんとロボ子さんが収容されているようなので事情聴取兼ラムベガス送りに”

 

「ほう!」

 

さっきまでの適当な返事ではなく少し興味がありそうな反応をした。これから起こる事に救いはなさそうなのに少し楽しそうである。何故だろうと疑問が浮かんだ瞬間、千速さんの性癖を思い出して考えるのをやめた。パラス狂いだったんだこの子。

 

 

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「やめろー!!4にたくなーい!!4にたくなーい!!!」

 

「あーん!!ロボ子頑張ったのにー!!ハンドルから手を離さないようにしてたのにー!!」

 

「おらー。ラムベガスで地下労働じゃー。わためのラムベガスの有効活用だぁー!」

 

「先輩達頑張ってー♡」

 

包帯ぐるぐる巻きの2人がわためさんに連行されていった。みこさんのネタ懐かしいなと苦笑していると、吾輩の横でニッコニコで笑っている千速さんがいた。愉悦しているのだろうか。あまり近づかないでほしい。えんがちょ。

 

「でもこれあたしが好きな救いのない話とちょっと違った」

 

聞いてもいないのに急にこちらを向いて語ってくる様子に吾輩は距離を取った。えんがちょえんがちょ。

冗談はさておき、仕事に戻るべきだろう。油断しなくても仕事は溜まっていくのだ。いつもの作業場に向かおうとしたのだが

 

「で、モブさん次はどこ行くの?」

 

“まだまだ楽しい労働にって…ところで何故ついてくるんです?”

 

「え?」

 

またもや千速さんに向かう先を聞かれた。何故ついてくるのか聞いたのだが、逆に何を言っているんだコイツみたいな顔をされた。確か帰ると言ってなかっただろうか。

 

「帰るよ?」

 

“なら何故?” 

 

「交流」

 

“交流?”

 

「交流」

 

全く分からないが交流らしい。千速さんは豊かな胸を押し上げるようにして腕を組みながら頷いていた。

 

「ほらさ。あたしモブさんとちゃんと話す機会あんま無いじゃん」

 

“まぁ確かに。最近は特にそうなってきてますね”

 

「だから折角だし」

 

“ふむ”

 

「ほら、先輩の皆さぁ…モブさんと仲良いじゃん」

 

“そうですかね”

 

「そうだよ」

 

即答だった。表情を見るに真面目そうな顔をしているので嘘をついている訳ではなさそうだ。そんな千速さんは少し考えるように視線を上へ向ける。

 

「だからそのー……あたしも仲良くなっとこうかなって」

 

“車で撥ねてきた人の発言とは思えませんね”

 

「まだ言う!?だってモブさん効いてなかったじゃん!」

 

“だからといって撥ねていい理由にはならないが”

 

「ぐぬぬ」

 

反論できなかったらしい。過ぎたことにネチネチ言う気はないのでこの辺にしておこう。本人が意欲的に着いてくるというのなら好きにさせてあげようではないか。なんなら一緒に大好きな労働を楽しんでもらうとしよう。

 

「仕事は手伝わないからねー」

 

先んじて釘を差されてしまった。凄まじいドヤ顔をかます千速さんに内心毒づきながら吾輩は仕事に戻ることにした。

 

結局その後も。

 

書類を作成する時も。

 

スタッフさんと打ち合わせをする時も。

 

絵師さんと納品物を見ながら雑談する時も。

 

千速さんは吾輩の後ろをついて回った。子鴨か何かだろうか。

 

「へぇー。モブさんってこんな感じで仕事してたんだ。パーフェクトスタッフって感じじゃん」

 

“むしろ何だと思っていたんです?”

 

「たまに現れて仕事片付けて消える妖精」

 

“ふむ。妖精に労基法は適用されますか?”

 

「されなさそう」

 

「…可哀想!!」

 

種族が妖精にされたうえに勝手に可哀想がられた。口を抑えて本気で泣きそうな顔をしている。労働妖精なんて夢のない話なので本当にやめていただきたい。吾輩は人間なのだ。

遠い目をしながらガチ泣きしてしまった千速さんをあやしつつ、本日の労働を片付けるのであった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

数時間後。

ようやく残務処理を終えた頃には外も暗くなっていた。

 

“では本当に帰りますよ”

 

「おー。やっぱり帰るんだ」

 

“吾輩にも家はあるのですよ”

 

「シラナカッタナァ」

 

白々しい反応だ。ようやく吾輩が自宅に帰っているという噂話が現実として受け入れ始めているというのに。何故か頬に温かいものが伝っていく感覚を味わった。

 

吾輩が謎の感情に呑まれ肩を震わせていると千速さんは大きく伸びをしながら語りかけてきた。

 

「とりあえず皆がモブさんの事頼るのが分かった気がする」

 

“さいですか。さいですか。千速さんも何か困ったら連絡くださいな”

 

「それそれそういうの!」

 

“?”

 

「困ったら気兼ねなく言える!じゃ、早速ちはを家まで送って!!さっきモブさんがぶつかった車が足だったんだよね。もう動かなくなっちゃったし」

 

“なぬ?”

 

なんと太々しい奴だ。吾輩が車にぶつかったみたいな言い方をしおってからに。要は足が無いから吾輩が帰る際に送ってもらおうという算段だったのだ。太いのは太ももだけにしてもらいたいものである。

 

「オイコラオイコラオイコラー!!」

 

あらやだ本音が漏れてしまった。憤慨した様子の千速さんは吾輩の鳩尾目掛けて何度も拳を打ち付けてきた。彼女の指には多数の指輪が付いているからか多少の痛みは感じる。だが効かぬ。

 

「くそぅ!!力…力が欲しい!!」

 

“力が欲しい?ホローズブートキャンプをオススメしよう”

 

「営業やめてね?あれマジでキツイって」

 

己の無力さに蹲りながら嘆く千速さんにホローズブートキャンプを勧めたが不評のようだ。前にFLOW GLOWの皆さんが参加したこともあったが、その後から幽霊部員となってしまったのだ。

 

その後、帰宅途中の車の中で如何にホローズブートキャンプが素晴らしいかを語ったのだが、「そのうち行くよそのうち」としか言わなくなった千速さんは家の付近でそそくさと車を降りて去っていった。解せぬ。




モブ
相変わらずの防御力激高スタッフ。人望はあるようでない。
能力は高いけど休みはない。悲しきパーフェクトスタッフ。
ホローズブートキャンプは休まず行っている様子。

千速
地獄のアルバイトをしてキレて観察してキレた。後日ホローズブートキャンプに参加してまたキレた。後からトレーニング数を増やすな!太ももがまた太くなった。

3期生
労働が嫌なので散り散りになって逃げた。

みこ、ロボ子
1050年地下行きっ……!カイジみたいな地下労働が待っている。ポンで地下が崩れるまで。

ラムベガス
遊ぶよりも地下の労働施設の方が稼働が多いとかなんとか。不思議だね。わためは悪くない。
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