吾輩はホロライブのパーフェクトスタッフである 作:きまぐれなるゾ・ョ力
今回の交流者、こんるるー!三馬鹿カーニバル。
モブは死ぬ!!2ポンド賭けても良いよ。
吾輩はパーフェクトスタッフである。
本日の仕事は終わっているのだが、星街さんのマネージャーさんから、星街さんが忘れてったポシェットを届けて欲しいと言われたので帰宅途中に寄る流れである。
ここがあの女のハウスね(ダンスレッスン場)と心の中でふざけながら部屋の中に入ると、随分と見覚えのある人達が見えた。とりあえず挨拶はしておく。
「ん、お。モブはんやないの。お久しぶりー」
「はぁ…はぁ。う、腕が。腕が折れたぁ」
「………」
「コホッ…あれ?モブさんじゃんどうしたの?」
おっとりとしたような話し方をしているのは戌亥とこさん。何故か頭にたんこぶが出来ており、氷嚢で抑えていた。次に何やら腕が折れてしまったと泣いて膝をついているのはリゼ・ヘルエスタさん。三人目の返事がないただのしかばねのようだ、はアンジュ・カトリーナさん。いつもやたらとグイグイ話しかけてくる彼女も見るからにボロボロで沈黙している。そして我等が星街さん。なにやら苦しそうな顔をして胸を抑えている。とりあえず彼女の忘れ物を渡して何事かと聞く。
「おっと。無いと思ってたんだよね。ありがとう。まぁあれを見てよ。見れば分かる」
見ればわかると言われ星街さんの指を向けた先には、ダンスレッスンのコーチさんと2人の女性がいた。一人は鈴原るるさん。もう一人は我等がホロライブの轟はじめさんだ。パッと見コーチさんの掛け声と共にダンスの振り付けを学んでるようにしか見えない。
「今はエエの。もうすぐ始まるんよ」
「この次のパートからが凄いんだから」
そんな満身創痍になるほど激しいダンスなのかと二人のダンスを固唾を飲んで見守った。事が起きると一瞬だった。全くテンポの合ってない鈴原さんのキレのあるポーズが、結果的にはじめさんの顔面に肘鉄を喰らわせる形になった。はじめさんは悲鳴も上げずに吹き飛んだ。
“おあー!?は、はじめさーん!!?”
「ありゃー痛そう」
「はじめでも流石に無理かぁ」
吾輩が驚き叫んでいると戌亥さんと星街さんが呑気な顔をしていた。なんて非情なんだ。吾輩は倒れているはじめさんに近づくと、はじめさんは虚空に震えながら手を伸ばしていたので思わず掴む。
「うっ。も、モブしゃ。バックダンシャ(バックダンサー)は、動きじゅれる(ズレる)と、すごく…めだちゅ(目立つ)んだよガクッ」
それだけ呟くとはじめさんは動かなくなった。へーそうなんだ知らなかった。と吾輩は思った。はじめさんを部屋の隅に寄せ、星街さんと戌亥さんの元へ戻る。
“して、なんでこんな事に”
「思ったよりるるちゃんがリズム感が無かったぽいんよ」
「身体能力が高いから何とかなるかと思ったのに、それが裏目に出てる。」
「け、怪我人が続出だよぉ!!」
戌亥さんは氷嚢を外しながら遠い目をし、星街さんは胸が消し飛んだかと思ったと咳き込み、リゼさんはまだ泣いていた。これは酷い。吾輩は未だにキレのある動きを続ける鈴原さんに思わず唸った。まるで演舞のようだ。
「折角だからモブさん隣で踊りなよ」
“何故?”
「面白そうだから。モブさんも同じ苦しみ味わってほしいし」
星街さんはそんな事を言い出した。なぜ吾輩がと思ったが、先程まで静かだったアンジュさんが起き上がった。
「え?モブさん踊れんの?」
「結構覚えればなんとかなるっぽいよ。ビビデバ完コピしてるし」
「ほー。意外!」
アンジュさんの問いに星街さんが答える。そして戌亥さんは耳をピコピコと動かして興味深そうに吾輩を見てきた。さっきまで慟哭していたリゼさんもキラキラした目を向けてくる。まずい。この流れは逃げられない。
「コーチさん!ちょっと選手こうたーい!!」
星街さんの言葉にコーチさんは振り返ると吾輩と目が合った。少し考えるような素振りをするとこっちに来るように手招きした。吾輩は嫌だと首を振ったが、星街さんにお尻を蹴られた。セクハラだ!!
「ん?あ、モブさんだ。こんるるー。お久しぶりですー」
瞬き一つせずにこちらを見てくる鈴原るるさん。その昔何回か会っているので既知なのだ。少女の姿をした怪物とにじさんじのスタッフさんから教わったのが思い出深い。吾輩はお辞儀をした。
「一緒に踊る?なるほどー。一度やりあってみたかったのでちょうど良いかな」
胸の前でムンっと腕を握り込んだ鈴原さん。踊るだけのはずなのに何故こんなに冷や汗が止まらないのだろうか。
「えーと、一緒に踊る為に振り付けお教えしますね?」
そう言って鈴原さんはコーチさんと一緒に吾輩に振り付けを教えてくれた。確かにテンポを間違えると衝突事故が起こりそうである。練習の時くらいもっと距離空ければ良いのに。
「タン…タン…タン……タン?」
コーチさんの掛け声と共に鈴原さんが踊る。凄まじい風切り音と共にキレのある振り付けを見せてくれた。少しだけ音が置き去りにされてるような気がする。あ、鈴原さんがワンテンポ速く動いたからズレた。衝突事故確定である。
「んん!こ、こんな感じです。やりましょう」
コーチさんからズレてると指摘され赤面して咳き込みながら彼女はやろうと言ってきた。嫌である。絶対に痛い思いするではないか。止まる時に止まってないからさらにズレていたのが見えたぞ。3,2,1,アウ!の後は止まるのだ。
「えー…」
「モブさんやりなさい。パーフェクトスタッフでしょ」
しょんぼりした鈴原さんに同情した(わけない)星街さんは吾輩に事故られろと命じた。彼女は悪意に満ちたニヤニヤ顔だった。吾輩がパーフェクトスタッフなのは揺るがしようもない事実ではあるが、もう退勤しているので今はただのモブである。
「ここで帰るなんて芸人じゃない!!」
「すいちゃんがモブはんのことなんて思ってるか分かった気がするわ」
芸人ではなくパーフェクトスタッフであり今は一般ピーポー。
なんと言われても帰るという強い意志があったが、そこでリゼさんがポツリと呟いた。
「はじめちゃんの仇討たないの?」
という言葉にピタリと足を止めた。確かにこのままはじめさんが吹き飛ばされたままでは報われないだろう。仕方あるまい。はじめさんが弱いと思われる訳にはいかないので吾輩が一肌脱ぐ事にした。
「モブしゃはじめちんで(4んで)なもがががが」
「はーい。はじめ今良いところだから静かにしてようねー」
「モブさんめっちゃ義理堅いやん。それを利用しようとするなんてリゼひでぇよ!」
何やら遠くでリゼさんが悪どい笑みを浮かべ、アンジュさんが慌て、星街さんがはじめさんの口を塞いでいた。吾輩は鈴原さんの隣に立った。動きはある程度把握しているので問題ないだろう。
「では折角なので一度合わせてみましょう。せーの!」
コーチさんの手拍子が部屋に響く。
吾輩は鈴原さんの隣に立ち、教わった通りに足を運ぶ。
タン、タン、タン、
ここまではお互い問題ない。心なしか後ろから星街さん達の期待に満ちた視線を感じる。嫌な期待である。
「そこ!腕を大きく!」
コーチさんの声に吾輩は右腕を振る。
同時に鈴原さんも振る。
そして。
「あ」
ワンテンポ早かった。いや、鈴原さんが。
吾輩が気付いた瞬間にはもう遅い。
ゴッッッ!!
鈴原さんの肘が、吸い込まれるように吾輩の顎を正確に打ち抜いた。
綺麗だった。
芸術的だった。
まるで熟練のボクサーが何千回も打ち込んできたストレートのような閃光が放たれ、一切の無駄なく、顎先だけを捉えていた。肘鉄なので反則である。
“ぐげぇ”
情けない悲鳴が部屋に響く。吾輩の身体は一瞬その場で硬直し。視界が上を向く感覚を味わいながら白目を剥いた。
膝から崩れる。糸の切れた操り人形のように。
トサッ
と、なんとも締まらない音を立てて前のめりに床へ沈んだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「あっ」
鈴原るるは慌ててモブを見た。
「モブさん大丈夫ですか?」
返事はない。モブは前のめりに崩れ落ち、お尻を上げた状態で倒れていた。
首が横に曲がっており、白目を剥いたまま小刻みに痙攣していた。
人ってこんな綺麗に倒れることができるのかと胸がときめいた。
「…………」
部屋が静まり返っていた。その沈黙を破ったのは。
「んー」
鈴原るるだった。自分の右肘をさすりながら、何度か曲げ伸ばしをしている。
「ちょっと痛かったです」
“……”
「久しぶりかも」
“……”
「痛いって思ったの。あ、ほらちょっと赤くなってる。モブさんすごーい。」
その一言でリゼ、アンジュ、とこ、三人の時間が再起動を果たした。
「…………え?し、シンダンジャナイノォー!?」
「うそじゃん。ひ、酷すぎる尊厳破壊だ!興奮した!!」
「アハー!ちょ、ちょっと待って」
鈴原るるは悪気など一切ない笑顔でモブを揺する。脳震盪で気絶した人を揺するのはご法度だ。
「モブさんすごいですねぇ。あ、ジワジワ痛くなってきた。こんなに肘が痛くなったの初めてかもしれない。とっても丈夫!凄い!!もう一回やりましょう!!」
「なんだこの人。いや知ってたけど。知ってたけども!!まっずいモブさん泡吹いてる!!」
リゼは本気で引いた。アンジュも口を半開きにしている。とこは耳を完全に寝せて、前世どんな事をしたらこんな地獄を味わうのかと現実逃避を開始していた。
「泡吹いてるマ!?モブさん!?」
「おっとぉ流石に助けな!?」
三人が慌てて吾輩へ駆け寄ろうとしたが、足を止める。こんな状況下にあるというのに静かな星街すいせいはどうしているのかと気になり振り向いた。
「くっ……あっは……!」
肩を震わせていた星街すいせいは笑いを堪えていた。スマホを片手に恍惚とした表情で撮影をしていた。ちなみに轟はじめは口を抑えられてモガモガと呻いていた。
「良い。とても良い。やっぱモブさんの倒れ方は芸術だなぁ。今日はこれ見ながら寝れそう」
「え、サイコパスじゃん」
「すいコパスって言われる理由これじゃんね」
「すいちゃん怖い」
星街すいせいはスマホに保存した動画をもう一度再生してから満足したとつぶやきながらポケットにしまった。3人はこれがホロライブ…とドン引きした。もう1人のホロライブのタレントは解放されないので考えるのをやめた。
「あ、満足したから助けに行っていいよ。」
「しかも助けに行かない」
「「凄い」」
「うわーモブしゃー!!」
にじさんじ組に戦慄走る。轟はじめはモブの元へ駆ける。星街すいせいはその光景を他人事のように眺めていた。リゼは自分の残酷なひと言で起きた凄惨な事件に罪悪感でメソメソ泣いた。モブははじめに仰向けにされて脈を測られていた。まだ生きてたらしい。
モブは白目を剥いたまま、痙攣していた。その様を一人の女性は不思議そうに見ていた。
“…………”
「モブさん?」
鈴原るるは瞬きもせず首をこてんと傾げる。
「……疲れて寝ちゃいました?」
「「「違うわ!!」」」
三馬鹿のツッコミだけが、レッスン場に虚しく響いた。
余談だが、最終的に鈴原るるのダンスレッスンは成功した。恐ろしい身体能力で他の人の動きを見てからトレースするように動けば良いと理解したようだった。これには流石のスターの原石であるすいせいも苦笑い。化け物だと称賛した。その後ろでモブは猫又おかゆに回収されてホロライブの仮眠室に運ばれていった。
めでたし?
モブ
や、やられたぁ!!久し振りの気絶。油断はしてなかったけど尊厳を失うほどに惨たらしい敗北をした。本人の記憶は一切ない。何故か家に帰れなかったという真実に震えた。
仮眠室で寝ていたちょこに“あ…ありのまま 今起こった事を話すぜ!吾輩は家に帰っていた筈なのに事務所で寝ていた…な…何を言ってるのかわからねーと思うが吾輩も何が起きたのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだった…”と話した。たぶん疲労だろうと言われ魔法で眠らされた。
すいせい
これで今夜もくつろいで熟睡できるな。とどこかの殺人鬼のようなことを言いながらご満悦で帰る。スマホで撮影した動画は大切に保管している。
はじめ
この世の色んなものに恐怖した。強くなければこの世界は生き残れない!ホローズブートキャンプに向かった。モブの話を聞いたいろはとぼたんは少し引いた。
リゼ
暫くモブに会ったら色んなものをプレゼントした。何故かモブに対して非常に優しくなった。
アンジュ
たまにモブに怪我はしてないかとか体調悪くないかと心配するようになった。何故かモブに前に比べてやたらアピールした。当たり屋だ。
とこ
たまにモブに会ったらお菓子を差し入れした。何故かモブに対して非常に優しくなった。
鈴原るる
心技体全て強い。その内ホローズブートキャンプに参加すると心に決めた。貴様は何を持ち得ないのだ!!リズム感かもしれない。