吾輩はアルティメットパーフェクトスタッフである。
なにか妙な口上になった気がしたが、体調はすこぶる良いので問題ないだろう。前にこよりさんから仮面を被せられて眩しい光を当てられてから実に清々しい気分で生活ができているのだ。
話を戻そう。本日は仕事でID組のもとに荷物やら書類やら届け雑用をしに行かねばならない。つまり出国である。
というわけで飛行機に乗っているわけだが、
「いやーシオンちゃんちょっと観光したかったんだよね。モブさん感謝して」
勝手に着いてきてなんならフライトチケットまで吾輩に取らせた卑劣な魔法使いに何を感謝すれば良いのか。口には出さずに吾輩は隣の席に座っている魔法使いを睨めつけた。
ちなみに衣装は黒基調に腕部分に紫のラインが入ったスウェットジャージだ。最近はおしゃれなデザインのジャージも多く流行に遅れてしまっている気がする。悔しい。
「可愛いシオンちゃんと海外旅行だなんてモブさん幸せだと思わない?」
たはー!と笑いながらこちらに満面の笑みを見せつけてくるシオンさんの姿にため息をつく。
シレッと後学の為とか言って経費で来ようとしてたのを吾輩は知っている。そもそも吾輩は仕事で来ているのでそこまで観光はできないだろう。
「相変わらずつまんない男だねー。いいよ~だ!シオンちゃんムーナに案内してもらう予定だったから。お土産買って帰らなきゃ」
土産といえば事務所にいたホロメンに今回の海外出張を伝えたところお土産の催促をされた。
特に印象的だったのは星街さん。
ソファーに座りながらスマホを見つつ空いた手を軽く上げ「お土産よろしく。すいちゃんが食べれるやつね」とこちらを一瞥もせずに言い放ったあの貫禄ある姿。さすがの吾輩も何か言い返すことも無く了承してしまった。
「あのすいちゃんの強気な姿勢流石に真似できないかなー」
同意である。
その後もシオンさんの急に方向が変わるマシンガントークを聞き流したり相槌したりしていると電池が切れたかのように寝たので吾輩もぼうっと空を眺めながら空の旅を楽しんだ。
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「着いたー!!あー、お尻痛ーい」
飛行機が墜落するなどのアクシデントもなく無事到着。シオンさんは大きく身体を伸ばしながらストレッチを始めた。ちなみに空港内のカフェにリスさんが迎えに来ているとのことだ。吾輩は合流するがシオンさんはどうするのか。
「んー。シオンもリスちゃんに挨拶してからムーナと合流しようかな」
さいで。では預けていた荷物を受け取って案内板でも探すとしよう。広い空港内で無計画に探すのは時間がかかって仕方がないのだ。
「そんなことしなくても魔法で探せばよくない?」
シレッと横から吾輩を覗き込んでくるシオンさんはそんな事を言い始めた。魔法って便利なのは分かるがそんなピンポイントで分かるものなのか。
「分かるよーシオン天才だもん。こうリスちゃんの気配とか魔力がある方角を探すんだよ。モブさんじゃできないかー」
優秀なのは認めるが相変わらず人を小馬鹿にするのやめたまえ。空気読みを行える吾輩にとって気配を探るくらい出来るはずだ。
「やめときなー黙ってシオンについて来ればいいじゃーん!」
横でケタケタ笑っている小癪な小娘を見返す為にパーフェクトな集中力を発揮する。目を瞑り少し集中していくと空港内の人の動きが把握出来るようになってきた。周囲に歩いている人の気配が鬱陶しいので意図的に除外していく。そうすれば座ってたり立ち止まっている人だけが残るだろう。
「んん?ねぇちょっと?」
“今集中しているので少し待ってください。リスさんを探しているのです”
「……マジでやってる!?」
その後しっかり一分くらいかけて気配読みを続けていると詳細な空港内の様子や施設の配置もわかるようになった。リスさんらしき人もアタリをつけ最短で向かえる道筋も考えれた。我ながらパーフェクトだ。魔法なんてなくともやれば出来るのだ。
「うーんこの。モブさんが着実に人の道を外してる感じがしてなんかムカつく」
ジト目でこちらを睨みつけてくる魔法使いにドヤ顔で吾輩のパーフェクトさを語った。初めてシオンさんをぐぬらせた気がして非常に気分が良い。吾輩は小躍りしたくなるような気分を抑えながらリスさんの居るであろう場所にナビゲートをした。
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「あっいたいた。なんか美味しそうなハンバーガー齧ってる!!」
『ん!?んー!!ヒオンヘンモモモモモー!!(わー!!シオンせんぱーい!いらっしゃーい)』
「何言ってるかわからーん!良いよ食べ終わってからで」
“ちなみにシオンさんの事をみて歓迎しているようで”
「そうなんだーいやなんで分かる?」
口がパンパンになるだけハンバーガーを詰めて喋るリスさんの漏れ出た言語を翻訳をシオンさんに告げるとシオンさんに引かれた。聞き取ろうとすれば分かるはずなのになんでだ。
吾輩が首を傾げていると食事を終えたリスさんが立ち上がった。ちなみに服装は伝統ぽい民族衣装であった。
「よーこそ日本の皆様バーチャルインドネシアへー!!シオン先輩はこのあとムーナと会うんだよネ!是非サテを食べていってー!」
「ありがとーう!!サテ?サテ…これか。焼き鳥みたいなやつ?」
練習していたのか上手な日本語で喋るリスさんに感動しつつも紹介された料理を何やらガイドブックで調べているシオンさん。色々バリエーションがあるがピーナッツソースメインの焼き鳥みたいなものだと思えば良いだろう。そうシオンさんに教えつつ、吾輩はバックからある物を取り出す。
「へー全然味のイメージわかなーい」
「オイシイヨーってモブさんそれマサカ!!」
吾輩が取り出した物に反応してリスさんが震えて近づいてくる。これが例のブツです。リスさんに綺麗にプレゼントラッピングされた袋を渡した。
「フォオオオ…カンシャ!!」
「なにそれ?」
シオンさんに聞かれ色んなホロメンからのお手紙である。最初はおかゆさんところねさんだけだったが話を聞いたメンバーが合間をぬってメッセージを書いたのだ。
「あー!シオンも書いたあれかー。なるほどなるほどー」
『実質直筆サインみたいなものだから後で全部ショーケースに入れて保管しますヘヘッ』
「なんかテンション高くて聞き取れないんだけどなんて言ってる?」
一頻り大切そうに抱きしめた後持ってきていたバックにしまうリスさん。シオンさんにインドネシア語ですと軽く翻訳しておいた。
そしてまだ他にもお土産を持ってきております。
『他にもあるの!?』
吾輩のトラベルバックからズルリと出したのはポケ〇ンのヤド〇ぬいぐるみである。好きだと言っていたので買っておいた。こっちだと金額がとんでもなく跳ね上がると言っていたので事前に用意していたのだ。
『〇ドーン!!』
案の定リスさんが飛びついて顔をヤドン人形に顔を埋めている。
リスさんがぬいぐるみを抱きしめているところでさらに追加である。何か珍しいキーホルダーが欲しいと言っていたので見つけてきたのだ。
「『ナニコレ』」
その昔その昔手に入れるのが大変だったゴーヤーマンというキーホルダーである。その昔朝ドラで空前絶後の大人気で入手が大変だったのだ。この緑のゴーヤに円らな瞳と物言いたそうにしている口。そして短い手足が実にプリチーである。
「知らねー!」
『思ったよりデカい。最初サボテン〇ーかと思った。どこに付けようかな』
ケタケタ笑うシオンさんにリスさんはゴーヤーマンを持ちながらどこに飾ろうかと考え始めている。うむうむ。吾輩のプレゼントはバッチリ好印象だったようだ。そしてこれが会社からのプレゼントである。そう呟きドスンとプレゼントをテーブルに置いた。
「げ、シオンはムーナに会いに行きまーす。じゃーねー!」
『オー!大きいプレゼント…?あれこれって』
吾輩の置いたプレゼントの中身に気づき逃げていくシオンさんに軽く手を振る。楽しんでくるが良い。プレゼントを見て固まったリスさんに笑顔で告げる。笑顔の時間は終わりだ。
“サイン入れる用のポストカードでございます。こちらがペンです。さぁ書きなさい”
『お、おお…急に仕事をねじ込んでくるのは流石パーフェクトスタッフ…』
“では吾輩はコーヒーでもキメるのでリスさんはどうぞ好きなだけ書いてください”
『おっとさり気なくもう書かせようとさせてくるのかぁ!?』
ひぇえとムンクの叫びのような顔で小さく悲鳴をあげているが、吾輩がこちらにいる間に完成させていただきたいので急がせる所存。ひとまず本日中に500枚程頑張っていただきたい。
『500…?』
明日以降はムーナさん等の同期組からID3期生までも巡りこのポストカード達にサインを入れをしてもらう予定だ。仲間外れは存在せず皆もれなくサイン入れをしてもらう。日本ではこういった作業は缶詰部屋送りになるのだが、流石に吾輩でも異国の地でそこまでは用意できない。この事から比較的開放感のある仕事をしていただくことにしていると目が濁っているリスさんに告げた。
『仲間外れはいない』
ヤドン人形を抱きしめながら渋々ペンを握るリスさん。抵抗なく作業してくれるのは大変ありがたい。捕縛する手間がないのは実にスムーズである。
『捕縛するつもりだったのか』
全く度し難い事だがこの手の作業は地味な上に過酷故に脱走者や手抜きをしようとする者が出てくるのだ。ファンへの大事なメッセージをと思って頑張ってくれるホロメンもいるが要求枚数が多いと積もる疲労感でおかしくなるのがポツポツと。
『先輩達目指してガンバリマース』
リスさんの尻尾が力なくボフォと地面に垂れた。
ちなみに一番酷い過去にあった例ではあるが、徹夜のサイン入れ中に発狂して逃走しマネージャーさんや他のスタッフさんに制圧されてまた缶詰部屋に叩き込まれたホロメンもいたらしい。肉体も心も壊れ誰も幸せになれなかった悲しい事件だ。でも期日があったからね。仕方ないね。
『む、惨たらしい。私もこの空港のカフェで缶詰になるの?』
“流石にカフェ側が可哀想なので何店舗かハシゴする予定です。気分転換になるので良かったですね”
『…ハイ』
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その後のガンバリスさんの様子であるが
『モブさん今私どのくらい書いた?』
“今ので50枚目ですね。10分の1ですね。あ、メッセージ書き忘れてますよ”
『あ、ハイ』
『モブさん手伝って!パーフェクトな書き写しを!!』
“こらこら。何言ってるんですか。ファンへの背信行為は一切手を貸しません。ほらペース落ちてますよ”
『終わらないよー!!多分そろそろ折り返したと思うんだけど!!休憩させて頂けないでしょうか!!駄目ですかね!?』
“あと9枚で折り返しですね頑張れ頑張れ。そしたら休憩しましょう”
『応援されても嬉しくなーい』
『さっき休憩って言ったじゃん!!なんで目の前にポストカード置かれるんだ!!』
“あと10枚書いたらこのデザートをあげましょう。ほら急がないと溶けますよ”
『これがお前のやり方かー!!卑怯者ー!!』
『ひ、ひひひ終わらないよヒィイイン』
“頑張れ頑張れいけるいける!!”
『ギィイイ』
大凡女性が出していけない声で壊れ始めたリスさんがいるがちょっと気分転換で違う店に行くとしよう。ファミリーカラオケとかフリータイムで使えばまだまだ戦えるだろう。そうリスさんに伝えるとウナギみたいにニュルンニュルンと逃げようとするので引っ掴んでカフェを出る。
『へへへ、明日ムーナも苦しむなら私は苦しむ顔を見に行くんだ。その横で美味しいデザート食ってやる』
ホロメンでもたまにこの現象が起きる。あまりの苦痛に性格が歪んでしまう症状だ。少し待てば元に戻るので心配は無用である。
そんなこんなであの手この手でリスさんに限界突破してもらい550枚程のポストカードにサイン入れしてもらったのだ。
じゃ、明日以降もこの調子でよろしくね。
『もう疲れて言い返す気力もない…帰る』
“お可哀想に。体力回復させるマッサージくらいならできますが”
『なんか変なことしようとしてない?』
“その昔船長にやって回復させた実績があります。なんでも野球がうまくなったような気がしたとか”
『なんで、野球。怪しすぎる』
というわけで吾輩のパーフェクトマッサージをくらえーという気持ちでリスさんの両こめかみに人差し指を突き刺した。
『ぐえぇえ!!?なにすんの!!ってあれ…なんか視界が開けたような…お目々スッキリな気持ち』
意識せずともその人のツボが見えるくらいまで昇華した吾輩のパーフェクトマッサージ術。今なら足ツボマッサージすればどんな疲労感も癒せる。そんな確信に満ちた自信が湧いてくる。是非吾輩に任せてやらせてほしい。
『言い方なんか悪いよ?ここ個室だし…まぁでも効果は凄そうだしちょっとだけ任せようかな?』
リスさんは御御足をこちらに向けてさぁやれと言わんばかりに脱力している。少し眺めているとツボの位置が的確に見えてきた。これなら問題なさそうである。では参る。
『ぎっ!?え、痛い』
少し押しただけでビクンと痛みを訴えるリスさん。目をかっ開いて涙がじょばっと出ているあたり本当に痛いのだろう。どうやら相当に身体にダメージが有る様子。吾輩も本腰を入れなければなるまい。慎重にそして勢い良くツボを押し込んでいく。
『イダダダダァダア!!?足!?私の足とれる!?』
『オ゛ォ゛ォ゛オ゛ォ゛オグッ!?』
『ギヘェエ!?あ、ひぬ!?なんか空の上にいるようなかんじぉいいいいい!?』
『あふん』パタッ
完璧に成功したデース!何やら泡吹いて気絶してしまったリスさんがいるが確実に身体は癒されているのが見える。少しやる気が下がったように見受けられるが体力は全回復したし姿勢矯正効果も出た為か身体能力もほんのちょっぴり上がっているようだ。パーフェクトな仕上がりである。
吾輩は満足感に包まれてゆっくりとカラオケボックスでサイドメニューを食べるのであった。
『あれ?私こんなとこで何をやってたんだろ?何かひどいことされた気がするけど…あれー?』
モブ
また海外へ。今回は仕事で自力で来た。
魔法少女連れて。
これから仕事とマッサージの悪魔と言われるモブの新ステージが始まるのだ。どんどん人間離れが止まらない。
シオン
モブにひっついて来た。しばらく遊び歩く予定。
実は前にモブのマッサージを受けたことがある。足が壊されると思って魔力全開蹴りで事務所ごとモブを粉砕した。
リス
壊れちゃった。
帰宅後明日はムーナがこの苦しみを味わう番だと思い出し見に行くためにモブと落ち合うカフェに着いていくことに。
同期の絆は喜びも苦しみも共有すべき大切なものだと考えている。悪い笑みでヤドン人形を抱きしめているのだ。
ゴーヤーマン
ちゅらさん。ヘルメットかぶったゴーヤ。
とても人気だった。懐かしい。
作者が掃除中に発掘したので登場させてみた。