吾輩はホロライブのパーフェクトスタッフである 作:きまぐれなるゾ・ョ力
初めてXで投稿報告してみた。脳がおじいちゃんだから合ってるのかよく分からぬ!
吾輩はパーフェクトスタッフである。
なんと今日はお休み。朝からメールを見ても何も届いてなかった。
何をしようかと迷ったが特にやることも思いつかなかった。仕方なしに冷蔵庫を開けて確認すると、中身がスッカラカンなのでまずは買い物だろう。家に帰ってくる日数が増えてきているとはいえ、あまりゆっくり過ごせないのは相変わらずである。
アパートの前に停めてある車に近づくと何やら見覚えのある女性が彷徨いていた。大きなアホ毛に特徴的なフード、両肩にファンがついたオレンジの服。ジャスティスのジジ・ムリンさんであった。吾輩は咄嗟に見つからないように隠れた。
『ん?ンムム!何か私の知っている気配がする?』
キョロキョロと周囲を確認し始めたジジさんに吾輩は唸る。あまり見つかりたくないが買い物には行かないといけない。
何故ここにいる。
吾輩の家の住所を知っているはずはない…はずだ。そもそも、ここは吾輩がホロライブ関係者に極力知られないようにしている。
猛烈に嫌な予感がした。休日が休日でなくなる。これは長年の経験から導き出された確かな直感である。普段は発動しないがこういう嫌な予感だけは当たるのだ。
吾輩は物陰からそっとジジさんを見る。
『うーん……この辺なんだけどなぁ』
どうやら何かを探しているらしい。嫌な予感がする。
『確かこの辺で……あ!』
ジジさんの表情が輝いた。吾輩は反射的に身を屈める。
『この車は!?』
吾輩の愛車は基本的にホロライブ事務所の駐車場に停めている。千速さんのような車に詳しい者、もしくは追跡者と名高いジャスティスの面々なら覚えていても不思議ではない。なぜか星街さんや白上さん達の長年の付き合い組も覚えているくらいだ。そして案の定ジジさんはー
『この車、モブさんが乗ってるやつだ!ナンバーも一緒…』
やはり知っていた。吾輩は静かに目を閉じる。終わった。最悪ここで仕留めるしかないようだ。目撃者は生かして帰さない。もうどうやら、安心して熟睡できないらしい。ただし『今夜』だけだ!心の中で誰かがそんなことを言っていた。
『ってことは……』
ジジさんが周囲を見渡す。
『ここがモブさんのお家ってこと!?』
吾輩は物陰から顔だけを出し、機会を伺おうとした。
『あ!』
あらやだ思いっきり目が合ったわ。
“……”
『……』
“……おはようございます”
『おはよー!!』
満面の笑顔だった。残念ながら機会は訪れなかったようだ。穏便に帰って頂く形にシフトしよう。
“ジジさん、何故ここに?”
『モブさんのお家を探してた!』
“何故?何か用事でもありましたか?”
『知りたかったから!』
“本当になんで???”
『パーフェクトスタッフだから!』
理由になってない、とため息をつき頭を抱えた。これだから本能で動く人達はと呆れた。何故か脳内で妖精フブキさんが「おまいうー!!」と指差して笑ってきていた。
『えへへ!』
ジジさんはロボットのような両手を振りながら笑って誤魔化していた。ここで追い返すのも難しい。吾輩は諦めて車の鍵を取り出した。ジジさんに買い物に行くところだったと言った。あわよくばこのまま好きなお菓子でも買って満足してもらい、帰ってもらえるのが最高だろう。
『じゃあ私も行く!』
ほら来た。とりあえずスーパーに寄るがジジさんの好みはあまり知らない。トマトが嫌いだとカリオペさんから聞いている。最悪叩きつけるとしよう。2人で車に乗ると、
『モブさんの家見つけたって、みんなに教えていい?』
ダメに決まってるだろ!と即答した。トマト案件かもしれない。
『なんで!?』
“吾輩のこれからの休日が終わるからです”
『でもさー!』
ジジさんは人差し指を立てた。
『みんなに教えたい!そしてジジはチヤホヤされるんだ!』
何故それでチヤホヤされるのか。吾輩は首を傾げるがダメだと答えた。これは譲歩できない。
『じゃあどうする?』
小首を傾げてこちらを見てくるジジさん。どうするとは如何?
『私が黙ってるためには何か必要じゃない?』
吾輩はジジさんを見る。ジジさんは吾輩を見る。しばし無言。吾輩は内心ニヤリと笑っていた。やがて彼女はニコッと笑って言い放つ。
『バーベキューしよう!夏だから海で!』
話が飛躍しすぎている。別に構わないといえば構わないが、キャンプキットを倉庫から引っ張り出してくる必要がある。その中にバーベキューするための道具も入っていたはずだが、まだちゃんと機能するだろうか。
『モブさんが美味しいもの作ってくれるなら、私、住所のこと誰にも言わないよ!』
随分と強気な交渉である。だが吾輩は知っている。ジジさんが一度と言い始めた事を止めるのは困難だ。それに買い物した後も休日なので予定がない。ジジさんに付き合うのも悪くないだろう。
ならば。
“構いませんが、後でキャンプキットが問題ないかチェックは手伝ってください。殆ど家に帰れて無かったので機会もなく寝ていた代物でしたから”
『やったー!…というか意外だったのは、噂通りモブさんが帰宅してるという事実なんだけどゴニョゴニョ』
“なにか言ったか?”
『ナンデモナイヨ』
急にモゴモゴと口をもごつかせたジジさんに首を傾げる。いつもハキハキ元気に喋るのにどうしたのだろうか?運転の合間に表情を見ようと目線を向けると口笛を吹いて目を逸らされた。怪しい奴め。
吾輩は思わずため息をついて運転に集中することにした。
“……では買い物に行きましょうか”
『レッツゴー!』
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2時間後。太陽がずいぶん張り切って地表を焼いている。吾輩はバーベキューキットを持って砂浜に立っていた。地味にバーベキューキットも太陽の恵みを受けて熱い。
『海だー!!』
全く元気なことである。ジジさんはあんな厚着なのに気にせずにはしゃいでいた。服のファンのおかげなのだろうか。ジジさんが砂浜を駆け回っている。
吾輩はその横で黙々と炭に火を入れていた。野菜を焼き、肉を乗せ、肉をひっくり返し、ジッと焼けるのを眺めた。するとニュニュニュっと横からジジさんが生えてきた。
『モブさんって本当に何でもできるよねー』
“バーベキューくらい誰でもできますよ”
『でも準備が早い!』
“慣れです。ホロライブサマーでたまに屋台やってますからね”
『火もすぐ付いた!』
“慣れです。ホロライブサマーでキャンプファイヤーしたりしてますからね”
『焼き加減も完璧!ウマウマウマ!!』
“慣れです。いただきますと言え”
「イタダキマシタ!」
「イタダキマス!」
「“???”」
まるで子供を相手にしているかのようなやり取りである。ジジさんは過去形でアイサツをした。そんな中、突然声が増えた気がする。吾輩の分を取り分けた皿からお肉を食べ始めている不届き者がいた。薄い紫色でキラキラした鉱石のような髪が太陽光を浴びて更に輝いて見える不届き者だ。
『ムムム!!お前は古石ビジュー!!このジジ様の目の前で勝手にモブさんのご飯を盗むとは!!』
『……ムグムグ、ゴクン。やぁ。来ちゃった』
ビジューさんは少し無言で咀嚼してる間、ジジさんと返事を待つ。そして飲み込み終えると、そんなことを言った。そうではない。何故ここに居るのか理由を聞いているのだ。しかしビジューさんはそんな吾輩達の視線も気にせず焼け始めた肉を見つめている。
『これ食べていい?』
『こーれだから脱獄犯は!!好き勝手してやがる!!』
ジジさんはイライラした顔で体を震わせていた。吾輩はどっちもどっちだと評価する。とりあえず焦げたらお肉が可哀想なのでビジューさんに好きに食べるように告げた。
『やったー!ンムンム。ほらジジも食べたら良いと思うよ』
『ぐぎぎ』
ビジューさんは勝ち誇ったように笑い、お肉を口に放り込み、ジジさんを煽る。ジジさんが珍しく顔に影の掛かった表情をしていた。振り回してる側のイメージが多いが振り回されてる姿を見るのは新鮮である。
『モブさん、これすごく美味しい!』
『む。本当だ美味しい!もっと焼いて!』
“はいはい”
結局、吾輩は二人分の食事を焼くことになった。
ジジさんはちょくちょくビジューさんを睨みながらも、共に肉を食べていた。落ち着いてきた頃に吾輩も肉を食べる。海風が吹き、波の音が聞こえる。思っていたより悪くない休日であると言えよう。
食事を終え、吾輩が炭の火を消していると急に雰囲気が変わった。
『よし!さぁビジュー逮捕の時間だ!!食らえロケットパーンチ!!』
『へへへ!ノーコン!!当たらないよー!!』
ジジさんは拳を何度も何度も射出していた。原理はどうなっているのか分からないが次から次へと発射されている。そしてそれを意外に綺麗なフォームで走り、避けて煽っているビジューさん。流石は脱獄した者なだけあり、普段と違う本気の避けっぷりであった。
でもご飯食べてすぐに激しく動くとお腹痛くならないのだろうか?グレムリンと結晶体だと身体の作りが違うのだろう。と吾輩はその逃亡劇を眺めながらバーベキューキットを片付けていた。
『アイタタタ。おのれビジュー!!』
『おなかいたーい』
ダメみたいですね。吾輩は浜辺で転がっている二人を回収し、二人仲良くブルーシートの上に寝かせた。砂掛けて蒸し風呂状態にしてやろうかと思ったが、スコップの類がないのでやめた。
『ねー、モブさん』
ジジさんは横で丸くなって腹痛に悶えているビジューを尻目に片付けを続ける吾輩を見ていた。どうかしたか、と聞くと。
『この後、モブさんの家行っていい?ゲームやろうよ』
“ダメです”
即答した。
『なんで!?』
“吾輩の家は立入禁止区域です”
『なんで!?』
“休日だからです”
『じゃあ平日は?』
“もっとダメです”
『えー!』
ジジさんはぶーたれていた。全くなんという執念なのか。一緒にゲームやりたーい!と駄々をこねるジジさんに今度スタジオでなら付き合うと告げた。ビジューさんが腹痛から復帰したのか、ジジさんに転がりながら近づいて何かを耳元でつぶやいていた。二人が顔を見合わせる。
“???”
『ん?なんでもないよ!』
『うんうん!』
二人とも笑顔。吾輩は疑いの目を向けた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
そしてジジさんをビジューさんの家に送り届けた。また逮捕だ逃げろだのと一悶着が起きていたが、放置して吾輩は帰る。自宅の玄関を開けた。
『オイッス!』
『アイス頂いているよ!』
“おぎゃー!?”
手洗いうがいをして自室に戻ると、机にジジさんとビジューさんが居た。驚いて吾輩は後ろにひっくり返り一回転した。
『珍しいモブさんの動きだ。美しいリアクションにグレムリンとしての血が騒ぐ気がする』
『ビジューは何回かツルハシになって侵入してるしね。モブさん疲れてて気づいてなかったりするから。』
ジジさんはどこか恍惚とした表情をして震え、ビジューさんは衝撃の事実を吾輩に語った。全然知らなかった。
『ちなみに男の人がよく隠すというベッドの下の箱には』
『ほう!箱には?』
『季節外の服が綺麗に箱に入れられてる。この前は冬服とかが丁寧に畳まれてた』
『んー!!ツマンナイね』
早く帰りなさいよ。そう思いながら談笑するビジューさんとジジさんを睨みつけたが、まるで気にした様子が無かった。ビジューさん達が棚を見る。そこはホロライブのグッズが集められている棚である。
『おおーそういえば聞きたかったんだけど、これ何?』
“ロボ子さんの腕です。壊れてます”
『こっちは?そら先輩もある!ッハ!?足にサイン書いてる!!』
「ぬいぐるみ達ですね。買ったのもあれば貰ったものもあります」
『凄い』
『すごっ』
ジジさんは吾輩のパソコンを置いてある場所に近付いていく。
『このパソコンはそこそこ年代を感じる。壊したくなってきた』
『なんで?』
ジジさんのそんなセリフに吾輩は羽交い締めにする。ビジューさんの首を傾げて疑問を口にするとジジさんはグレムリンについて語り始めた。なんでも各家庭に1匹ずつ住み着き、夜中の内に機械を壊したり、調子を悪くしたりすると信じられていたとかなんとか。邪悪じゃん。吾輩はそのままジジさんを家の外に放り出そうとした。
『やだー!!!』
『モブさんの家はセコム沢山あるから無理だと思うよ』
暴れるジジさんをそのまま投げようとしていると、ビジューさんは机の下を覗き込んでいた。何故かスンスンと鳴くような女の子の声が聞こえてきた。そして壁に飾っている緑の服を着た金髪の少女の絵が満足そうに笑っていた気がした。
『バッチリだって』
『なんてメルヘンな家なんだ。私の存在が霞む霞む』
うむうむと頷くビジューさんに、メルヘン的な存在筆頭のジジさんが何やら宣っていた。なんのこっちゃ。
『じゃ、ビジューは配信あるので帰ります。いつでも来れるし』
『じゃあジジも帰ろっかな。いつでも来れるし』
来るなよぉ!!と吾輩は叫びながら頭を抱える。聖域が壊れてしまったと吾輩は崩れ落ちた。
『じゃあ次はみんな呼ぶ?』
“絶対にやめてくれ!?安息の地が無くなる!!”
『えー!』
『なんで?可愛い女の子が来てくれるかもよ?』
“吾輩は家に休みに帰ってきてるのです”
『はぁん』
ジジさんはよく分かってないような反応をしていた。
そして二人は顔を見合わせる。
『まぁ許してやろう』
『ビジューはまた暇な時に来るね。モブさんの近くに湧けるし』
ジジさんに許された。ビジューさんは湧くな。吾輩は二人を玄関まで押し出した。
『じゃあねー!』
『またねー』
扉が閉まる。吾輩は深く息を吐いた。……静かになった。妙に疲れた気がした。しかし、これでようやく休める。
こうして、吾輩の聖域は聖域ではなくなってしまったのだった。
モブ
ついに家にグレムリンも出没するようになる。すごくメルヘン。パーフェクトスタッフにはセーフゾーンなんてないよ。なんなら前から無かったのだ。
ジジ
なんとなく手持ち無沙汰になったのでパーフェクトスタッフの噂が本当かと探っていた。やっぱり家に帰っていたという事実に衝撃を受けた。なんだかんだジャスティスのメンバーにモブの家の場所は教えなかったが、凄い事実だとチヤホヤされた。満足グレムリン。
ビジュー
実はちょくちょくモブの家の中に湧き出るらしい。基本的に冷蔵庫の中に何も入ってないので、ホロメンのグッズやゲーム機が沢山あることしか魅力を感じない。それならばモブのところに直接飛んでご飯を奢ってもらうのだ。ふてぶてしい結晶体。