ところでまた卒業者が出てしまうようで。魔法使いというこの小説で使い勝手の良い人材が!!寂しー。タイミング見て出すけども。
吾輩はアルティメットパーフェクトスタッフである。
前にこよりさんに変な仮面を被せられ眩しい光を浴びせられてから体調が非常に良いパーフェクトスタッフになったのだ。
IDホロメン達にポストカード書きマシーンになってもらうべく吾輩はバーチャルインドネシアに遥々やってきたのだ。
というわけで本日は予算がおりたのでサテライトオフィス一室を一ヶ月借り受けた。これで心置きなくお仕事ができるというものだ。
「ムーンムーンムーナフィックだよ!」
本日のターゲットはムーナ・ホシノヴァさん。私服のカジュアル衣装がオシャレである。足が驚くほど細い長い。
今日もキビキビ働かせてポストカードへのサイン入れを完成させよう。まずは気分良く仕事をしてもらうためにプレゼントを与えよう。
「なんでいる?」
「ムーナの頑張りを見るため」
「???」
何故かリスさんが着いてきたが、邪魔する様子はないので放置だ。先程から妙に期待しているような目でムーナさんと吾輩を見ている。リスさんがまた今日もサイン入れしたいのだと思っておく。後で追加で記入してもらうことにする。
ひとまずムーナさんにプレゼントのラベンダーを使ったアロマキャンドルを渡す。キャンドル部分が紫や蒼い夜空のようなカラーリングでオシャレに見える一品だ。
『おー!なにこれ素敵!!ありがとうもう既に良い香りがしてくる!!』
『⋯なるほど基本的にこういうやり口なのか』
ムーナさんはプレゼントが気に入ったようで大切そうにカバンにしまっている。作戦通り。リスさんは吾輩の手口を知ったようだがもう遅い。まだまだまだ頑張っていただくのだ。
“チーズバーガーもあります。リスさんの分もあります”
『好きなものが沢山!!この後いくらでも頑張るよ』
『へっ』
ニコニコでハンバーガーを食べ始めたムーナさんのやる気がみるみる上がっているのが分かり吾輩もニッコリ。リスさんはその光景を見て嘲笑していた。では本題の時間だ。
ポストカードへのサイン入れを是非頑張って頂こう。ハンバーガーを食べているムーナさんの前にドスンと山のように重なったポストカードを置いた。リスさんの分もあるぞ。
『んぐ。やっぱりいざ目の前に置かれると圧が凄い』
『さーて、やるかー』
少し気圧された様子でペンを手に取るムーナさんと対照的にササッと書き始めるリスさん。昨日のリスさんからの発狂具合からもう少しゴネるかと思ったが、すんなり作業に入ったことに疑問を覚える。しかし問題なく作業が進むのは良いことだ。少し様子見をしておくとしよう。
「やっほー。シオンちゃんだよーおはおはー」
「「オハヨーゴザイマス!」」
む、吾輩がムーナさんとリスさんのモチベーション管理法を組み立てていると後ろから妨害してきそうなイレギュラーの声が聞こえてくる。今日はイオフィさんと観光だと聞いていたが。
「うん。そうだったんだけどイオフィ急遽予定が入ったとかで夕方から美味しいディナー食べることになったよ。ムーナの家でダラダラしても良かったんだけど折角ならモブさんと一緒にご飯食べてあげるかーと思ったんだー」
ケラケラ笑いながら吾輩の置いていたバッグを物色し菓子パンを手に入れた魔法使いが見えるが、仕事を邪魔しなければ放置で良いだろう。
吾輩の買ったパンを食べて甘~い!と叫んでるシオンさん。やたら分厚くてこんがり焼けたパンケーキにマーガリンの他にチョコとかジャムとか挟む甘~いパンだとか。すぐにお茶飲んでいるあたり相当に甘かったのだろう。良い毒見役である。
『マルタバ・マニスかな?』
『甘くて美味しいよね!』
「まるた?なんて?」
毒見のプロであるシオンさんが来て場が混乱してしまったが、仕事を続けてもらおう。聞いたところによると同じ名前のマルタバだけど全く違う具材の種類があるらしい。実に国の違いを感じる一品である。是非食べてくれたまえ。
「モブさんも一緒に食べよう!仲間なら一緒に苦しむべきだとシオンちゃんは思うのです」
むしりっと音を立てて半分にしたマルタバを吾輩に向けてくるシオンさん。
吾輩の物を勝手に食べた上にそれを半分個して押し付けようとはなんというバッドガールか。マルタバを受け取らずに眺めてたら顔にジリジリと近づけてくる。このままでは顔がベタベタにされそうなので仕方なく受け取る。
一口食べるとマーガリン風味を感じたと思ったらチョコやジャムの甘みが風味を消し飛ばし糖分のみが脳に届いた。これをまるっと1個食べていたら胸焼けしていたかもしれない。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『⋯⋯⋯カキカキ』
『⋯⋯⋯⋯カキカキ』
「⋯ほー」
あれから軽く軽食を摂取し、また作業タイムが始まった。
ムーナさんとリスさんは精力的にサイン入れをしている。シオンさんはなにやら雑誌を見ている。チラと見るとおすすめの飲食店が載っていたので多分ディナーに行く店の詳細を調べているのだろう。
『ふぅ』
『いやー疲れたー!』
『んー、結構集中してたからかこんなに時間が経ってたのね』
ムーナさんの集中力が途切れ軽く体を動かしてストレッチを始めた。リスさんも昨日とは違いゴネる事無く作業していた。やはり仲間がいると頑張れるということか。
『ムーナそろそろ疲れてない?疲労回復にモブさんがマッサージしてくれるって』
『マッサージ?そりゃありがたいけど⋯ちなみにどんなやつ』
『足ツボ』
『痛いやつじゃん!嫌だよ!!』
『却下などないのだー!!私も苦しんだんだからムーナも受けろー!!』
『うわー!!離せー!?』
吾輩が少し目を離しているとリスさんがムーナさんの足に巻き付き抑え込んでいた。吾輩のマッサージはそんな罰ゲームのような物ではないのだが。
『今だー!!モブさんやれー!!』
『やだー!!』
もだもだと二人で格闘しているが、別に嫌がってる人にマッサージをする気ない。リスさんは吾輩の前にムーナさんの綺麗な足を向けてくるがやんわりと断った。
『これが配信のネタになるのに逃げるっていうのか!?』
『うっ⋯』
リスさんの説得によりピタリと抵抗をやめるムーナさん。やはり配信者たる者この手の殺し文句には弱いのだろう。葛藤が見える。何度も潤んだ目でリスさんと吾輩を交互に見ていた。
やがて観念したかのように項垂れ脱力し横になった。
『ヨシヨシ。では、モブさんビシバシやっちゃって』
『おい。なんでまだ足を抑えてるんだ』
リスさんはそのままムーナさんの足の上に横になっている。完全に動けないように抑え込んでいた。なんとも複雑な気持ちでマッサージをすることになったものだ。本来良いことのはずなのに。吾輩はしぶしぶムーナさんの前に座った。
『優しくしてね⋯』
『優しくする必要一切無し!それはもうぐりぐりやっちゃえ!!』
『おーい!!』
仲が良さそうで何よりである。ではこれよりパーフェクトマッサージ施術を始める。
ムーナさんの足をがっしり掴みツボを押していく。
『ウッ⋯痛い⋯けど思ったより苦しくない』
『な、なんで!?手加減してるでしょ!!』
手加減しているわけではなく吾輩が知っている順番通りにツボを押しているのだ。身体の悪いところが痛むのであってムーナさんはそんなに悪いところが今はないのかもしれない。逆にリスさんは悪いところが多かったということだ。
『ぐぅ⋯リスはそんなに痛いところが多かったのか。残念だったね病院行け病院にギィ』
『むむむ⋯モブさん肩こりとかのツボとかないの!?ムーナこんなにデカいの持ってるんだから悪くなってるって!!』
『おいセクハラだぞ!!』
吾輩が反応しにくいこと言うのやめてもらおうか。それにこれは善意のマッサージであって罰ゲームではないと何度言ったら理解して頂けるのか。さておき肩こりに効くツボは足裏にもある。
丁度今そこを押すt『うあーーーーー!!?』このように現代の子は大分腰と肩にダメージを負っているので断末魔をあげやすいのだ。
『カハッ』
『やったーー!その顔が見たかった!!コラコラ暴れるなまだまだ苦しみは続くんだ!!』
「なにー?うるさいなーって、あ。なるほどね~」
陸に上がった魚かのように悶え苦しんでいるムーナさんの足に全身で抱え込むようにしてリスさんが抑え込んでいる。ムーナさんがまるで拷問を受けているかのように悲鳴を上げているせいかシオンさんが煩わしそうな顔でこちらを睨みつけてくるではないか。
一応は頼まれたのであって吾輩は悪くないぞ。
「別に責めてはいないけど凄い状況だ」
『はなせー!!ぐおおおお⋯』
『やだー!!』
ツボを押すたびにアイドルらしからぬ声でじったんばったん跳ねて床を揺らしているが、続けて良いのだろうか。吾輩からは丸まっているリスさんしか見えないのでムーナさんがどんな状況になっているのか分からない。
『うぐぐ⋯た、たとえ身体が好き勝手されようとも仲間の居場所は売らないぞ!!アッーーー⋯ハハハ』
『あ、壊れちゃった』
「ムーナが涙を流しながら笑い始めてなんか言ってる」
“仲間の居場所は売らないとか言ってますね”
「余裕そうじゃない?続行で」
『シオン先輩!?』
シオンさんからストップ指示が下されなかったのでそのままツボを押していく。やめてくれー!!とつま先で器用に意思を伝えてきているが気のせいだろう。助けを乞う声とドタバタと揺れているのも気のせいなのだ。
「ねーモブさんすっごいよ!ムーナのすんっごい揺れてる!腹立つくらい!!もごうかな」
シオンさんがとんでもない事を口走ってるが本当に反応しづらいのでやめて頂きたい。何が?とは聞かないようにしよう。少し見たい気持ちもあるが集中しているのだ。ミスれば致命的な能力値ダウンが起きてしまう。ここで気を緩めるわけには行かない。
『うあー!!い、イオフィは〇〇マンションの〇〇室に⋯いる。ガクッ』
『あ、死んだ』
「なんて?」
“イオフィさんの居場所を吐きましたね”
「仲間売っちゃったかー」
リスさんはそそくさと離れ。シオンさんは吾輩にマッサージの結果は?と聞いてきた。久し振りにパーフェクトに成功したと言えよう。今や彼女の体力は全回復し野球がうまくなっているはずだ。安らかな顔で事切れているムーナさんを観ながら満足気に応えた。
「なんでこのマッサージすると野球上手くなるのか。シオンちゃんの魔法を使ってもまるで分からない。不思議だなぁ。それよりムーナの目元が涙の流れた後が痛々しい。心なしか煤けてる」
『カワイソウに誰がこんな酷いことを』
白々しい事を言うリスさんがいるが全体重をかけて足を抑え込んでいた奴が何を言う。さぁリスさんも休憩は終わりだ。ポストカードにサイン入れを続けるのだ。
『はぁーい』
「あ、モブさんムーナ起きるよ」
『⋯⋯⋯』
『「⋯⋯⋯」』
リスさんを作業に戻そうとしているとシオンさんが吾輩の袖を掴み揺すってきた。どうやらムーナさんが起きたのだろうと思い目線を向けるとムクリとゆったりとした動作で起き上がっていた。調子はどうだね?無言怖い。
『凄い身体が軽い!!けどとんでもない苦痛を味わう夢を見た気がする。というか何してたんだっけ⋯』
頭を抑えてぶつぶつ言い始めてしまったムーナさん。身体は元気になったが精神に異常をきたしてしまったようだ。間違ったかな?
『モブさんあれ大丈夫なの!?』
「記憶ないなったしたみたいだけどあれ施術失敗じゃないの?」
『なんか野球したくなってきた』
突然バットを持ったポーズで素振りを始めたムーナさんを見て二人から責めるような目で見られる。しかし、あれは時折吾輩のマッサージを受けると起きる症状の一つだ。すぐに正気に戻る。
さぁ各々作業に戻るのだ。
『えぇ。あれ大丈夫なんだ』
『明日イオフィの所行くなら私も行くよ。そうしなければならない気がする。足を抑えなければならない使命感が』
「あ、素振りやめてる」
急にグリンとこちらを向いてきたムーナさんは明日イオフィさんの所に行くという使命感に囚われていた。こうやって連鎖していくのか。明日も誰からも感謝されない悲しみのマッサージさせられるのだろう。
ポストカードへのサイン入れをしてくれるのならば何でも良いが。
『とりあえずまたポストカード頑張ろ』
「よーしガンバロ!あ、シオン先輩明日一緒に回りましょうね!」
「お、リスちゃんが案内してくれるの?やったー」
どうやらシオンさんの明日の予定も決まったようだし。このままリスさんもムーナさんも作業継続する気のようだ。折角のやる気に水をささないように吾輩は邪魔せず夕飯でも買ってくるとしよう。
明日はイオフィさんなのでついでに何かお土産を買ってこねばならない。
宇宙人の好きなものというのはなんだろうか。
吾輩は考えを巡らせながらバーチャルインドネシアの街へ繰り出すのであった。
モブ
贈り物作戦が得意。ホロメンのモチベーションをあげるためにある程度好みは把握しているらしい。
マッサージ炸裂今回は大成功したらしい。次は宇宙人を相手にする事になりそうだが効くのかどうか不安。
ムーナ
モブの拷問(マッサージ)により野球が上手くなり体力が回復した。心は負けたのでつい仲間の居場所を売った。
記憶は苦痛から消えた様子。
・筋力+25
・技術+25
・敏捷+25
・精神+25
・ミート+5
・パワー+5
・走力+5
・肩力+10
・守備力+20
・最大体力+10
・体力+45
・(野球の)センス◯になる
明日はイオフィにも同じマッサージを受けさせると魂に刻んだ。
リス
他人の苦しみを見に来た悪いリス。心が晴れやかになった。
明日はシオンと一緒に遊びに行く。
シオン
今日の夜はイオフィと夕飯、明日はリスと観光。
意外に楽しんでいる。