吾輩はホロライブのパーフェクトスタッフである   作:きまぐれなるゾ・ョ力

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今年の秋は穏やかに過ごせると思ったら台風コラァ。まぁ、ワシには長期の休みなぞありませんが。グゴゴゴゴ


82 究極の笑いを求めてnkと行く!

吾輩はパーフェクトスタッフである。

 

本日の業務はほぼ終了している。残りは、あるホロメンが企画を考えてきたので、その確認である。予定の時間はもうすぐではあるが、先程吾輩が後輩スタッフ達に指示出ししている際、扉を開けてこちらの様子を見ていたので、時間ぴったりに来るだろう。というか今も扉の近くでスタンバっている気配を感じる。

 

ガチャ

 

扉を開けて視線をずらすとスマホを見ながら、隅っこで体育座りしている女性がいるではないか。黒を基調とした衣装に、鮮やかな黄色と金色の装飾が映え、大胆に肌を見せた軽快なデザインの服を着ている自称虎の女性。虎金妃笑虎さんである。何もそんな隅っこで縮こまってなくても。本人の真面目さと気弱さの本質が垣間見える姿である。

 

「ん!?あ、お疲れさまです!モブさんもうさっきのやつ終わったの?」

 

顔を上げた笑虎さんは吾輩に気づくとパアッと笑顔になり立ち上がって近づいてきた。ほんのちょっぴり吾輩より視線が高く、見下される。ここでは少し珍しい経験である。

さておき、作業室に招き入れた。

 

「お邪魔します。…本日はお時間いただきありがとうございます。今回、えー…私が企画を何個かお持ちしたので、出来そうか判断して頂ければ、はい。お願いします」

 

急にニヤッと笑いながら語るその姿。胡散臭さが満載である。しかし彼女の笑いに対する真摯な対応は本物だ。是非確認していこう。

 

吾輩が机の上を片付け、椅子を引く。笑虎さんも向かいの椅子に座った。そして鞄から一枚の紙を取り出す。紙が机の中央に置かれたので目を向けた。妙に丁寧な動作だった。

 

「まずはこちらです」

 

「『ホロメンが!スタッフもしくはマネちゃんと行く、知らない街ぶらり旅』」

 

“……”

 

吾輩は紙を見る。一度目を瞑り、もう一度見る。笑虎さんを見る。これはどういった趣旨だろうか?当てもなく旅に出ると?

 

「そうです!そのままです!」

 

“旅で何をなさるつもりで?”

 

「それを移動しながら決めるんです!グダるぞー。素と芸人力が試されますね」

 

芸人力。グダるのだけは一番恐ろしいのだがあえてそれをネタにすると。最悪一気に今までの株が消し飛ぶ可能性もあるので却下にしたいところではある。特に陰キャのキャキャキャ達が耐えられるわけがない。無言配信の未来が見える。簡単に予測できる未来に唸っていると、笑虎さんは両手を机につき、身を乗り出した。

 

「でも面白そうじゃないですか!昔AZKi先輩がサイコロでぶっ飛んで行くやつ見て、あれやりたがる人いるんだと感動したんですよね!それと同じじゃなくても良いからぶらり旅で当てもなく行ってみるのも良いのではと!」

 

“ふむ。サイコロでもぶらり旅でもある意味、面白そうではあります”

 

「じゃあ!」

 

期待するような顔をしているところ申し訳ないが、仕事として成立するかどうかを考えてもらおう。一応そこはかとないアイドル達が何の目的もなく動き回り素をさらけ出す。色々と危険極まりない。そして大抵それに付き添うのは吾輩だ。嫌である。笑虎さんが固まった。数秒後、ゆっくり椅子に座り直す。

 

「……嫌ですか」

 

“嫌ですのぅ”

 

「顔シワシワのお爺ちゃんになるほど嫌なの!?…じゃ、じゃあー!ならいっそまたサイコロの旅にしてみるとか。好評だったって聞いてたけど?」

 

あまり他所様の企画を真似るのも、という気持ちもあるがまず経験者に聞いてみるのが良いだろう。発案者はあのお方だったのだ。

 

「経験者…AZKi先輩に…?」

 

というわけで早速スマホで通話をかけてみよう。スピーカーにして。

 

「そんな簡単に!?」

 

驚いた笑虎さんに無視し、電子音が響いて数秒ほどするとガチャと反応した音が聞こえてきた。お疲れ様ですAZKi様と挨拶をしておく。

 

「す、すごい。こんな簡単に連絡を取れる!これがパーフェクトスタッフ」

 

《はい、もしもしー。お疲れさまですモブさん。どうしましたー?もしかして私なんかやっちゃってます?》

 

“いえいえ、そういうわけでは”

 

カクカクシカジカで笑虎さんと企画打ち合わせ中で確認したいことがあるので連絡した経緯をAZKi様に伝えた。

 

《へーなるほど。あんまり力になれるか分からないけどこのAZKiさんで良ければ何でも聞いてよ!!》

 

“サイコロのた《ブツ…ツーツー》”

 

吾輩が言い終わるよりも先に無慈悲な機械音が室内に響く。笑虎さんが顔を上げる。点になった目が合った。通話を切られたようだ。もう一度掛けてみる。ツーツー音しか聞こえない。ダメだ着拒だ。

 

「えと、じゃあ、この話は無かったことにして次の企画を聞いてもらいましょうカネ…うん」

 

“はい”

 

今度は笑虎さんが二枚目の企画書を取り出した。

 

「一日徒歩でどこまで遠くに行けるか選手権」

 

“却下”

 

「早い!」

 

“いや、待ってください。ホロメンでスマホ持ってやる分には良さそうですけどね。健康のためには歩かせるのは悪いことではありませんが、それにスタッフさん達を随伴させるのはちょっと無駄なリソースかなと。番組ではなく話のネタが良いところだと”

 

「んー!正論」

 

笑虎さんが指をパチンと鳴らし納得したような顔をしていた。目的、撮影場所、配信時間。さらにスタッフさんの数や移動時間、これらがある程度予測できる形にする必要がある。申し訳ないが、これだけでは企画として通すわけにはいかぬのだ。笑虎さんが小さく唸る。

 

そして彼女は再度企画書の束を机の上に並べた。まだまだあるようだ。厳選したようなので目を通してみる。

 

一枚。ローション相撲。やっても良いけど怪我人が出そうなので却下。あと昔から何回も却下されている。また違う箱の人達にやらせておけ。

 

二枚。突撃!ホロメンのお宅訪問。勝手にやるが良い。

 

三枚。ホロメンがマネちゃんスタッフ達に指示して目的達成させようゲーム。伝達力が求められるゲームだろうか。悪くなさそうだ。ある程度話を詰めてみてもいいかもしれない。

 

四枚。ホロメンチームとマネちゃんもしくはスタッフ達と対決!勝てばご褒美が貰える。これは悪くないかもしれない。その道の隠れプロがスタッフさん達やマネちゃん達にいる。その隠れプロ発掘にも使えるし、事前に何種類かの情報を打ち出しておけば参加者を募ったりして時期を見て遊べるかもしれない。コレが一番アリだ。

 

「お、やっぱりこれアリですよね!ゲームとか料理とか、機械弄りとか色々出来そうじゃない?ご褒美は豪華景品お菓子とかそういうの。最後レビューして締める。そんな感じのやりたい!」

 

笑虎さんは胸を張った。その顔には妙な自信が見えることから、きっと本命だったのだろう。企画書にもう一度視線を落とした。悪くない。チーム戦も考えれば応用も出来そうだ。早速四枚目の案を採用して肉付けをしていこう。ある程度形になれば予算を貰って一発やってみようではないか。

 

「やったー!!通ったー!!へへへ、ルイ先輩に褒めてもらえるかも…」

 

ウキウキで小躍りしていた笑虎さんの口から欲望が漏れてるが放っておこう。

その後とりあえず笑虎さん主体でホロメンVSホロライブスタッフもしくはゲストとのミニゲーム大会という形になる事が決まった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

数日後。

 

吾輩は別の収録準備をしていた。今回の企画はぺこらさんの企画であった。ついでに今後の流れも詰めていく。スタッフルームには何人かのスタッフが行き交い、パソコンのキーボードを叩く音や、遠くから聞こえる笑い声が響いている。悲鳴やあえんびえんな事がない。素晴らしい平穏な仕事状況である。

 

吾輩は資料を確認しながら、次の段取りを頭の中で組み立てていた。

 

すると。

 

「モブさーん!」

 

遠くから声が飛んできたので、振り返る。笑虎さんがこちらへスキップするような動きで走ってきていた。妙にウキウキ顔であった。話をしていたぺこらさんも声に気づき顔を上げた。

 

「モブさーん!!」

 

「んー?あれ笑虎じゃん。…モブさん呼んでるよー」

 

“そのようで。どうかしましたか?”

 

「モブさん聞いてください!あ、ぺこら先輩お疲れ様です!ルイ先輩に企画通ったと話したら褒められちゃった!あ、ちなみに企画内容はしっかり話してませんよ。そこはしっかりしてるんで…フフフフ」

 

「…おつー。おー、良かったじゃん。」

 

笑虎さんは吾輩の前まで来ると、勢いよく机に両手をついてルイさんに褒められたとニッコニコで語っていた。ぺこらさんもそんな様子にほのぼのとした顔で眺めていた。いつもならこんな様子で来られるとそそくさと離れるのだが、話す相手の対象が吾輩寄り故か、ぺこらさんは気にせずスマホをポチポチし始めた。

 

「いやー頑張ってきた甲斐があった。私はルイ先輩に褒められる為に生きている!ルイ先輩万歳!ルイ様ー!!」

 

「なんか信仰心みたいで怖くね?大丈夫なのアレ」

 

後光を受けて輝いている虎もどきは絶頂であり続けていそうだ。ぺこらさんは何かヤバい薬でもやってるのでは?と言わんばかりに吾輩に耳打ちしてきた。ヘブン状態なので放っておけば良いだろう。ぺこらさんは「こわーい」と呟きながらも無視を決め込んだようだ。吾輩達はそのまま企画の話を詰めていくことにした。

 

「あ、ぺこちゃんはこの企画失敗したらこの企画を降りる!くらいの自信があるぺこよ!早起きして準備もガッツリやるんだ」

 

凄い熱意だった。確かに面白そうな企画であったのでそういう気持ちになるのも頷ける。今夜は期待で眠れないかもしれない。

 

「そこはちゃんと寝てもろて。モブさんもかなり仕事あるぺこよこれ」

 

吾輩はぺこらさんの自発的に動く姿に感動し、今夜は眠れずに明日に差し支えてしまうかもしれない。

 

「ちょっと待ってよ。モブさん!あんたさては頑張る気がないな!?」

 

バンバンと机を叩いて吠えるウサギさん。たまにはからかうのも良いだろう。吾輩は酷薄に笑い、降りる降りないはぺこらさんだけだからね。と呟いた。

 

“ぺこらさんの企画かかってると思うと今夜は眠れねぇなぁ。これは酒を浴びるだけ飲んで寝るしかない”

 

「おい!!テメェ!!」

 

ぺこらさんに首を掴まれガクガクと振られながら吾輩は笑った。すると先程まで悦に浸っていたはずの笑虎さんが、吾輩達の間に飛び込んできたではないか。

 

「配信外でそんな面白い話しないでよ!」

 

「いてぇぺこだよ!?」

 

机をなぎ倒しながら吾輩とぺこらさんは笑虎さんに吹き飛ばされた。周囲のスタッフが何事かとこちらを見るので気にしないように手を振った。そして。

 

「配信外でそんな面白い会話して!!いつもこんな感じなの!?」

 

笑虎さんは吾輩達の上に座り込みながら吠えていた。ぺこらさんと吾輩は横たわりながらお互いの顔を見た。大凡会話する時はこんな感じか、業務連絡のみである。

 

「こんな感じじゃね?あと、重い。近い。離れろ」

 

「ウッ!?」

 

吾輩が何とか虎を押し返していると、ドゴム!という鈍い音と共にぺこらさんが笑虎さんを蹴り退けた。吾輩が押し上げた際の隙間に足を差し込んだのか。流石逃げのぺこらと呼ばれるだけあり、器用なことをするもんだと感心した。

 

「確かに今の会話の流れ面白かったぺこ。これ、配信で話してもいい?」

 

起き上がりつつ、ぺこらさんに承諾の意を込めて頷いた。別に隠すような話でもない。スタッフとそんな話をしていたと言えばリスナーは酷い会話だと笑うだろう。吾輩がそんな他愛もない未来を思い描きつつ笑みを浮かべていると、笑虎さんはじっとこちらを見つめていた。

 

「……なんか見てるぺこよモブさん」

 

“なんでしょうね。吾輩怖いわ?”

 

「モブさんも一緒に配信しましょう!!女装して!!ギャグ担当アイドルになろう!」

 

「うわっ」

 

“ひえっ”

 

吾輩達は引いた。笑虎さんは笑顔で、しかもマジで言っている。あぁ、恐ろしい。

 

「ほらモブさん女装したときの写真見たけど美人だったし!イケるイケる!!胸も…デカいし!!」

 

「肩幅もデカいしなー。あとそれは胸筋だ笑虎。ぺぇではないぺこよ」

 

却下却下。ただでさえ吾輩は手が離せない仕事の部分が多いのだ。鼻息荒く語る笑虎さんに無理だと語る。ぺこらさんはオモロいけど身内ネタだしね。と呟きつつ呆れた顔をしていた。

 

「そんなぁ。女装チャンネルも面白いと思ったのに…笑虎たん仕事手伝うからなんとかなりませんカネ?」

 

「凄い熱意。女装したモブさんのガチ勢か何かだったりすんのぉ?」

 

「あの隠しきれない男の肩幅と意外に綺麗な顔のギャップが面白いんですよ!存在そのものが笑いの神みたいな」

 

「勝利の女神の亜種的な?まぁ、少しわからなくもないぺこ。少しだけね?」

 

分かるな分かるな。それ全てヴィヴィさんに負担がいくんだ。そう言うと笑虎さんはしょんぼりした顔をした。全くこれだから貪欲な笑いの追求者は大変なのだ。色んな事に目がオモロフィルターをかけて見てしまっている。

 

「ちょっとーモブさん笑虎が落ち込んじゃってるじゃーん。パーフェクトスタッフとしてどーなのー?」

 

ニヤニヤしてこちらを見てくるぺこらさんは先程からかった事をやり返してきているようだ。しかし吾輩はその程度の事で動じるほど甘くない。却下却下と言いながら仕事に戻ると告げた。

 

「ヴィヴィに聞いたらやってみてくれないかな。モブさんを女装させて配信に出させるとか言えばノッて来そうじゃね?」

 

「ヴィヴィなら絶対乗り気だと思うんだけど。問題はモブさんが明確な理由がないとやってくれないことですカネ」

 

吾輩が部屋から退出しようとした瞬間に、コソコソと相談するぺこらさんと笑虎さんの姿が見えたのでコラーと叱っておく。脳裏でヴィヴィさんが「ヴィヴィにお任せー!!」と胸を叩いてる姿が浮かんだ。余計な事を言うなと雑念を振り払うように首を振った。

 

「「えー!!」」

 

「広告担当とか」

 

「エイプリルフールとか」

 

「「色々出来そうなのにー!!」」

 

散れ散れ。吾輩はピーチクパーチク鳴いている兎と虎に手を振って各々の仕事に戻るように指示を出した。2人はしばらくゴネたがなんだかんだ諦めたようだった。

面白そうなことを考えるのが染み付いてしまっているようだ。だが、それを止めるのもまた、パーフェクトスタッフの仕事なのだろう。

 

……たぶん。

 

きっと。

 

恐らく。

 

吾輩はため息を漏らしながら仕事に戻るのであった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

後日

 

「モブさん次の企画も考えてきたんですけど」

 

“女装して配信しろというのなら却下です。ホロライブのブランディングの問題とか、吾輩の体力気力の問題で”

 

「あっ…」

 

トボトボと笑虎さんは帰っていった。しかしそう簡単に諦めないのが虎の凄いところだった。さらにその後、星街さんの家の長女としてバックダンサーやろう!とか理由の分からない設定をつけて参加させようとしたが、却下した。あまりにも酷い付け足し設定に草も生えない。

そのはずだったが、その話をどこからか聞きつけた星街さんと姉街さんにお姉ちゃん呼びされる事件が発生。宇宙猫のような顔になってしまった。

そしてほかのホロメンやヴィヴィさんに次の女装をいつするかと急かされる日々を過ごすことになってしまったのだった。吾輩は渋々今度時間ができればと応えるのが精一杯だった。

 

近くでにやぁと笑う笑虎さんが見えた。狡猾な奴めと吐き捨てながら吾輩は仕事に戻るのであった。




モブ
認知してない妹が2人もできた。また女装させられるぞ!配信はしないと心に誓っているが、ネタになる覚悟は決まっている。心の中に芸人魂も根付いているパーフェクトスタッフ。

笑虎
勝てるまでやる。押してダメならもっと押す。それでもダメなら日にちを変えて別角度から押す。諦めない心にぇ!!とどこかの巫女の言葉を胸に今日も人を笑わせようと努力している。

AZKi
着拒は明日解除します。(忘れる)

ぺこら
企画はなんだかんだ成功した。モブが仕事を放棄することはないと信じてはいる。女装モブの写真集はネタとしての破壊力が高くそこそこ売れるので好き。内心楽しみにしている一人だったり。

星街
姉になるモブ。悪くない。面白そう。とりあえずご飯は作ってもらう。野菜はないものとする。

姉街
姉になるモブ。妹になるのは新鮮。悪徳令嬢みたいな役をしてもらい、ちょっと一緒に過ごしてみたいと思ってしまう。
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