閃の軌跡Ⅲ ―偽りの仮面―   作:アルカンシェル

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103話 帝都ヘイムダルⅠ

 

 7月15日――

 帝都ヘイムダルの南部。

 駅を抜けた南門を抜けた街道には大きな集団が集まっていた。

 

「流石にこれだけ集まると壮観だな」

 

 色とりどりの制服を纏った学生たちは到着した列車から降りるとすぐに作業に入る。

 リィン達、第Ⅱの生徒たちは到着が早かったこともあって、彼らの作業をのんびりと眺めていることができた。

 

「本来なら各都市の士官学生たちが一堂に会するなんて機会はなかったからな」

 

 リィンの呟きにクルトが応える。

 

「僕たち第Ⅱと違って、他の士官学院は来ているのは二クラスくらいだからこれでも少ない方だろう」

 

「それはそうだろうな……

 新設された第Ⅱにはそもそも二年生がいないんだから」

 

 単純に考えれば二倍の生徒数。

 しかし各学院の生徒たちの数は第Ⅱの生徒と同じくらいの人数くらいしか確認できない。

 極論で言えば、機甲兵の操縦者と整備班がいれば十分なのだから全校生徒が来ているのは第Ⅱくらいだろう。

 もっとも――

 

「参加校は全部で九校だったな?」

 

 リィンの言葉にアルティナが頷く。

 

「はい、オズボーン宰相が新しく打ち出した《新帝国八大都市構想》に合わせて……

 ヘイムダル枠を二つとしてトールズ本校と分校、オルディス、バリアハート、セントアーク、ルーレ……

 そしてクロスベルとジュライ、ノーザンブリアのハリアスクのそれぞれの士官学院もしくは軍警察学校の生徒たちになりますね」

 

「一校二十人くらいだとして、生徒たちだけで180人か……」

 

「生徒たちが多いのは仕方がないが……」

 

 クルトは周辺を見回して、他校の生徒たちが作業の合間にちらりちらりと自分たちの様子を窺っていることを確認する。

 

「注目されているならリィン」

 

「それは……まあそうだろうな」

 

 クルトの言葉に頷いてリィンは背後を振り返って、膝を着いていた《零》の肩に乗っているアルバート・ラッセルを見上げた。

 

「おおっ! あの機甲兵は腕を足に取り付けておるではないか! 思い切ったことをするのう!」

 

 と、アルバートが双眼鏡を覗き込みながら楽しそうに他校の機甲兵を観察していた。

 

「ふん! ケストレルの装甲をさらに軽量化して、ヘクトルのエンジンを載せたか……

 しかしあれでは重心が高過ぎてバランスを取るのが難しくなると何故気付かん」

 

 《蒼》の手のひらに乗って、同じく双眼鏡を覗き込みながら辛辣な評価をするのはシュミットだった。

 

「良いじゃないです。ああいう効率を考慮しない若さゆえの思い付きは私たちにはもうできない事なんですから……

 彼らの失敗を見守るのも私たちの役目でしょう」

 

 《藍》のティルフィングの手のひらの上で、さらに同じく双眼鏡を持ったハミルトンは微笑む。

 

「博士たちはすっかり観察姿勢に入ってますね」

 

「機体は完成して、レース中の整備はリベールとカルバードの技術スタッフに丸投げするみたいだからな」

 

 エプスタインの三高弟は自分の仕事を終わらせたことで趣味に没頭していた。

 放っておくと作業中にも関わらず見学に行きそうな三人を見晴らしの良い騎神の上を提供して見張っているのがリィン達の今の仕事だった。

 

「そういえばクロスベルとジュライの学院も来ているなら、ユウナとクロウの知り合いがいるんじゃないか?」

 

「そうだったな……挨拶をする余裕くらいはあるんじゃないか?」

 

 リィンが思い付きを口にすると、クルトは頷いてユウナとクロウに提案する。

 

「たしかに……軍警察学校の同期はいるけど……別に気遣ってくれなくて良いわよ」

 

「俺もだ……っていうかジュライの奴らは基本的に俺を恨んでるだろうからな」

 

 昔の同期が帝国人と仲良くなっている自分をどう見るのか悩むユウナ。

 そしてクロウは自分がとどめを刺したジュライの人間に対して開き直る。

 

「まあ、無理をする必要はないか」

 

 二人の主張に納得しながらリィンは改めて他校の生徒たちを見回す。

 各地の士官学生には引率には教官が付き従っているのはもちろん、リィンの見知った顔もいくつかあった。

 クロイツェン州士官学院にはユーシス・アルバレアが。

 ルーレ士官学院にはアンゼリカ・ログナーが。

 サザーランド士官学院にはパトリック・ハイアームズが。

 オルディス士官学院にはウォレス准将が。

 ハリアスク士官学院にはシャトラール辺境伯。

 ジュライの引率に見覚えはないのだが、クロスベル軍警察学校の引率にはルーファス・アルバレアがいた。

 

「…………なあクルト」

 

「何だいリィン?」

 

「あそこに見えるのはルーファス総督だよな?」

 

「…………ああ、僕にもルーファス総督に見える」

 

 リィンの疑問にクルトは静かに肯定する、

 

「そうだよな……そう見えるよな……ついでに《エル=プラド―》もいるし」

 

 自分の目に映るものを確認しながら、リィンは振り返って《C》と《桃》色のドラッケンを見る。

 

「おや? どうかしたかな二人とも?」

 

 《C》は二人の視線に堂々とした態度で応える。

 

「《C》……まさかまたやったんですか?」

 

「ふふ、何のことだか私には分からないな」

 

 クルトの咎める目に悪びれもせずに《C》は仮面の奥で笑う。

 

「…………俺たちは何も知らない事にしよう」

 

「そうだな。その方がいい」

 

 リィンとクルトはそれについて見ないふりをすることにする。

 

「うわああ! 見てください! あの機甲兵!

 上半身がケストレルで下半身が戦車ですよ! あんな風に改造するなんて! もっと近くで見てみたいなあ!」

 

「はいはい、ティータさん。後でゆっくり見れますから今はジッとしていてください」

 

 リィン達がそうしている一方で、ミュゼ達女子生徒は落ち着かないティータを座らせておめかしをしていた。

 普段来ているパーカーを脱がし、第Ⅱ分校の制服を正しく着させ、儀礼用のマントを羽織らせる。

 

「よし、このままお化粧もしましょう」

 

「ティータちゃんも普段からもっと着飾れば良いのに」

 

「えっと……そんなことよりもわたしは他校の機甲兵の敵情視察をするべきだと」

 

「ダメです」

 

「だめですよ」

 

「そ、そんなあー」

 

 クラスメイト達からのダメ出しにティータは泣きそうな声を漏らすのだった。

 

「はは、ティータ君は予想通りみたいですね」

 

 そんな嘆きの声を聞き流しながらセドリックがやって来る。

 

「セドリック皇子、もう良いんですか?」

 

「ええ、各地の士官学生たちは予定通り到着、顔見せも済みました……

 あとはパレードの開始時間を待つだけなんですが、まだ帝国側の代表が到着していないんですよ」

 

「帝国の代表? あ……そういえば……」

 

 セドリックの言葉にクルトは思い至る。

 

「リベール王国はユリアさん。カルバード共和国はエミリアさん……

 だけど帝国のシュミット博士の機体に乗る操縦者について僕はまだ教えてもらってないんです……

 オズボーン宰相が選んだそうなんですが、リィン君は何か聞いていませんか?」

 

 セドリックの質問に一堂の視線がリィンに集中する。

 

「それは……」

 

 心当たりがあるリィンは思わず口ごもる。

 

「順当に考えればクレアさんじゃないかしら?」

 

「だな。リベールとカルバードが綺麗どころの二人を選んで来たんだ……

 オズボーンはともかくオリヴァルト皇子の性格からして、帝国の方も美人を出さないわけにはいかないだろう」

 

「そうでしょうね……

 クレア少佐なら能力についてはあの二人に引けを取らないでしょうから……リィン?」

 

 クロウの軽薄な言葉に冷たい視線を向けながらアルティナはその候補に頷く。

 しかし、目を泳がせるリィンに首を傾げた。

 

「うーん……ともかくもうすぐパレード開始の予定時間だから帝国政府に確認を――」

 

「その必要はありませんわ」

 

 セドリックが落ち着かない様子で《ARCUS》を取り出すと、そこに待ったの声が掛かる。

 

「その声は……アルフィン? …………え?」

 

 声に反応して振り返ったセドリックは姉の姿を見て固まった。

 

「ふふ、Ⅶ組の皆さんおはようございます」

 

 クレアとエリゼを従えて現れたアルフィンは朗らかな笑みを浮かべる。

 

「おはようじゃないよアルフィン! その恰好は何のつもりさ!?」

 

「あら見ての通りですわ」

 

 声を上げるセドリックに対してアルフィンはその場でくるりと回って、その装いを見せつける。

 アルフィンの姿は普段の簡素でありながら優雅さのある緋のドレスではなかった。

 導力バイクなどに乗る際に推奨されている上下一体型のツナギ服――緋色のライダースーツを着たアルフィンはどうだと言わんばかりに胸を張る。

 

「帝国の代表、シュミット博士が手掛けたドラッケンに乗るのはわたくしです」

 

「はああっ!?」

 

 アルフィンの答えにセドリックは驚愕の声を上げる。

 

「アルフィンが選手!? クレア少佐でもエリゼさんでもなくてアルフィンが!? 何を考えているんだオズボーン宰相は!?」

 

「あら……ちゃんとオズボーン宰相に許可は取りましたし、クレアさんとリィン君の試験も合格をいただきましたわ」

 

「クレアさんっ! リィン君も!?」

 

 クレアはともかくリィンも知っていて黙っていたのかとセドリックは驚愕の声を上げる。

 

「えっと……宰相やアルフィン……殿下に口止めされていたので」

 

「リィン君を責めないでねセドリック。それにセドリックが悪いのよ……

 騎神騎神ばかりでセドリックがやるべき仕事がどれだけわたくしに流れて来ているか、分かってるわよね?」

 

「…………アルフィンには感謝してるよ」

 

 笑顔のアルフィンにセドリックは冷や汗を浮かべながらありがとうを伝え、

 

「それはそれとして、アルフィンが機甲兵に乗るなんて危険過ぎる……

 皇城や女学院で蝶よ花よと育てられ、過ごしてきただけの君が現役の軍人に勝てるわけない」

 

「先程も言ったけど、クレアさんとリィンさんのお墨付きはもらってます……

 それに三年前まではわたくしの方がセドリックより強かったのを忘れたの?」

 

「っ――ああ、そうだ昔は君が僕を守っていた」

 

 アルフィンの指摘にセドリックは言葉を詰まらせながら認め、言い返す。

 

「だけどそれはアルフィンが言った通り、昔の話だ……

 今や僕の方が君よりも強い。そして本当の戦場を知っている……

 だからはっきり言おう。君が出ても無様をさらすだけだ……

 皇族であるからって贔屓させる事は主催者として認めるわけにはいかないんだ」

 

「上等ですわ」

 

 セドリックの言葉にアルフィンは笑う。

 

「何でしたらセドリックも一緒に出場するのはどうかしら?

 久しぶりに姉の偉大さを思い知らせて上げますよ」

 

「アルフィン……」

 

「それとも負けるのが怖いかしら?」

 

「…………何だって?」

 

 アルフィンの挑発にセドリックは眉を顰める。

 

「おい、乗るなセドリック」

 

 クロウがセドリックの肩を掴むが、気にせずセドリックはアルフィンを睨みつける。

 

「自惚れが過ぎるんじゃないかい?

 クレアさんやリィン君に認められたからって、二人を上回ったわけじゃない……

 それだけで僕の土俵に立ったと君は言うのかい?」

 

「セドリック、わたくしは貴方に聞きたいことがあるわ」

 

「…………何だいそれは?」

 

 突然変わった話にセドリックは訝しみながら聞き返す。

 

「貴方は騎神騎神と言って政務をわたくしやお兄様に押し付けているけど……

 “あの人”と同じ事をしようとしていないでしょうね?」

 

「…………」

 

 アルフィンの指摘にセドリックは肯定も否定もせず黙り込む。

 それだけで十分だったのか、アルフィンはため息を吐いて続ける。

 

「これ以上はわたくしが貴方に勝ったら言わせてもらうわ」

 

「アルフィン」

 

「セドリック、姉弟喧嘩をしましょう」

 

「…………」

 

 アルフィンの宣言にセドリックは沈黙する。

 

「えっと……何かあったの?」

 

 そんな緊迫した空気の中に困惑したトワの言葉が響く。

 

「トワ教官、どうかしましたか?」

 

 リィンはトワを振り返り尋ねる。

 

「うん、Ⅰ組とⅦ組の生徒は至急デアフリンガー号の会議室に集合して」

 

「分かりました」

 

 トワの言葉にセドリックが即答した。

 

「セドリック、返事は――」

 

「アルフィン殿下。今の僕は士官学生の一人でしかありません……

 演習の邪魔はしないでください」

 

 一方的に告げると、セドリックはアルフィンに背中を向けて歩き出した。

 

「…………はあ……」

 

 深々とアルフィンはその場でため息を吐く。

 

「アルフィン……殿下……」

 

「大丈夫ですリィン君。貴方達も行ってください」

 

 取り繕ったアルフィンの微笑みにリィン達は何も返さず、セドリックの後に続くのだった。

 

 

 

 

「来たか」

 

 デアフリンガー号の会議室に入ればミハイルがリィン達を出迎えた。

 

「ミハイル教官、急に招集とはいったい何があったんですか?」

 

 リィンは呼び出された理由を尋ねる。

 

「少し待て……」

 

 ミハイルの言葉にリィン達は顔を見合わせて首を傾げる。

 が、すぐに彼女たちが現れた。

 

「うむ、揃っているな」

 

 奥の扉から会議室に入ってきたオーレリアはⅠ組とⅦ組の生徒たちの姿を確認して振り返る。

 

「ではアランドール。後は任せた」

 

「はいよ……」

 

 オーレリアに促されてレクターが前に出る。

 

「このパターンは……」

 

「たぶんそうだろうな……だけど……」

 

 アルティナの呟きにリィンは頷きながら、オーレリアと共に会議室に入ってきたもう一人の赤毛に視線を送る。

 

「さて……トールズ士官学院Ⅰ組並びにⅦ組の諸君……

 帝国政府の“要請”を伝える」

 

「このタイミングで“要請”?」

 

 レクターの言葉にセドリックが驚く。

 

「構わねえだろ……

 今回のⅠ組とⅦ組は裏方だ……

 これから始まるパレードには参加する必要もないはずだ。ああ、セドリック皇子は主催者だからパレードの方に参加しても構わねえけどな」

 

 レクターは肩を竦めて突然過ぎる“要請”を認める。

 

「セドリック、とりあえず聞いてみようよ」

 

「……ああ、そうだね。レクターさん続けてください」

 

 キーアに窘められたセドリックはレクターを促す。

 

「トールズⅠ組、Ⅶ組……

 お前たちには《白面》という男の捜索をしてもらう……

 彼の狙いと目的を見極め、《原点回帰》という計画が何なのか調べてもらいたい」

 

「それって……」

 

「晩餐会に乱入してきた男の事ですね」

 

「おい、アランドール。漠然と調べろって言われても無理だぜ?

 何か指標か取っ掛かりはあるのか?」

 

 戸惑うクルトとミュゼの呟きを横にクロウが尋ねる。

 

「ああ……今、帝都で起きている三つの事件をまず調べてくれ」

 

「三つの事件ですか?」

 

「それは……いったいどんなものなのでしょうか?」

 

 エイダとフリッツは言葉を選びながら聞き返す。

 

「前に話したもんとは別件になるが……」

 

 そう前置きをしてレクターは続ける。

 

「現在帝都では原因不明の事件が三つ起きている……

 一つは定期的に起きる地震。二つ目はサンクト地区を中心に出没している幽霊……

 そして三つめは東のオスト地区でたびたび目撃されている“霧”の魔獣の目撃とそれに伴う昏睡事件だ」

 

「地震と幽霊と……“霧”の魔獣の昏睡事件?」

 

 ユウナが首を傾げる。

 

「たぶんこの三つの事件はおそらく自然現象じゃあない……

 そしておそらく繋がっている。さっきクロスナーにも確認を取った」

 

 そう言ってレクターは背後の赤毛、アガットを一瞥する。

 

「今までは点でしかなかった三つの事件が、《白面》で繋がった……

 この事件は以前リベールで起こされたものを模倣しているってな」

 

「リベールでも……」

 

 リィンはレクターの言葉にアガットがいる理由を察する。

 

「ツァイスの地震、ルーアンの幽霊騒動、ロレントの霧……」

 

「それらの事件は《リベールの異変》に繋がる前準備だったと聞きます……

 結社が初めて表舞台に出てきた事件。《原点回帰》というのはそういう意味なのでしょうか?」

 

 アルティナは自分なりの考察を言葉にする。

 

「そうだとするならば、この後に続く事件も予想はできるが理解できない部分もある……

 ただ、それについて知っていそうな奴がそこにいるわけなんだが、どうなんだシャーリィ・オルランド?」

 

 レクターはⅠ組の生徒として混ざっているシャーリィを睨む。

 

「ええ、何の事かシャーリィには分かんないなあ」

 

「惚けやがって。お前が《白面》と繋がってることはもう分かってんだぜ」

 

「そこは認めても良いけど、本当に教授が何をしようとしているのかシャーリィは知らないよ……

 ただシャーリィの勘が面白そうだからちょっと雇われているだけだよ」

 

 あっさりと繋がりを認めながらもシャーリィは白を切る。

 

「無駄ですよレクターさん……

 僕もあれからシャーリィを問いただしてみましたが、依頼人への守秘義務と言って黙秘していますから」

 

 こうなったらシャーリィの口を割らせるのは不可能だとセドリックはため息を吐く。

 

「ま、その代わり帝都の地下でコソコソしていた奴らはお姫様があらかた捕まえたみたいだから安心してよ」

 

「地下でコソコソ?」

 

「何の話でしょう?」

 

 シャーリィの言葉にリィンとアルティナは首を傾げる。

 そんな二人を無視してレクターが続ける。

 

「そいつは有難い話だ。できればさっさと引き渡して欲しいもんだがな」

 

「それはそっちで自力で見つけなよ。もっとも見つからない方が《鉄血宰相》にとってはそっちの方が都合が良かったりするんじゃない?」

 

 レクターとシャーリィは探るように睨み合う。

 が、すぐにレクターはため息を吐いて切り替える。

 

「ともかくそういう事だ……

 もうそろそろ空港には他国からの賓客も到着する。憲兵隊はそっちの警護に回るからそっちの援護は期待しないでくれ……

 代わりに公安の奴らや助っ人が先行して調査をしているから、そっちと協力して事件を解き明かしてくれよ……

 何か質問はあるか?」

 

 レクターの問いかけにリィンが手を挙げる。

 

「一つ……いえ、二つ聞かせてください」

 

「何だ? シュバルツァー?」

 

「ローゼリアとイオ様の二人の護衛は? この事件がリベールの事件になぞらえているのなら必要ではありませんか?」

 

「それに関してはそっちのみっしぃ教官に任せてある。もう一つは?」

 

「…………サンクト地区の幽霊騒動……

 サンクト地区と言えばアストレイア女学院がある北西地区ですが……

 その幽霊はもしかして……」

 

「流石に勘が良いな……

 ああ、お前が思っている通りだ。幽霊の目撃者にはエリゼ・シュバルツァーも含まれている」

 

「そうですか……エリゼ姉さんに被害を……」

 

 レクターの答えにリィンは静かに頷き、咀嚼するように飲み込んで一言呟いた。

 

「万死に値するな」

 

「……このシスコンは……」

 

 リィンの言葉にクロウは深々とため息を吐いた。

 

「相手は幽霊なのですから、既に死んでいるのではないでしょうか?」

 

 そしてアルティナの冷静な突っ込みが入るのだった。

 

 

 

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