閃の軌跡Ⅲ ―偽りの仮面―   作:アルカンシェル

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108話 帝都ヘイムダルⅥ

 

 

 

 武術が尊ばれるエレボニア帝国。

 その帝都ヘイムダルには競馬場の他にも武術大会のために使用される巨大なスペースのある闘技場が存在している。

 その闘技場は今は様々な形の機甲兵が並び、一般人が近くで見て触れられる催しが行われていた。

 兵器であることもあり、普段は見ることができない機甲兵の姿を間近で見ることができる。

 シミュレーションではあるが実際に乗って動かせる体験スペースなど、学生たちを中心に行われた祭りは盛り上がりを見せていた。

 

「ふむ……」

 

「ほほう……」

 

「なるほど……」

 

 外の祭りを彼らなりの方法で楽しんでいたエプスタインの三高弟は闘技場の控室で人の身長ほどある巨大な杭のオーブメントに額を突き合わせていた。

 

「これが帝都の地下、怪しげな集団が使っていたオーブメントになります」

 

「オリビエさんとシェラザードさんが言うには、リベールのツァイスで《結社》が使った杭と似ているそうですが」

 

「そうじゃの」

 

 リィンの疑問に口を開いたのはその時の当事者だったアルバート・ラッセルだった。

 

「造り……外観は当時のものと同じではある。結晶回路を見るに機能も似たものじゃろう」

 

「リベールではこれを用いて地震を操っていたと聞きます」

 

 アルバートの考察にミュゼが質問を重ねる。

 

「そもそも地震って操れるものなの?」

 

「地震の種類によりますね」

 

 ユウナの半信半疑の疑問にハミルトンが答える。

 

「大地の奥に流れている七耀脈に干渉し力を一点に集中させることで地震を起こすこともできれば、水脈を作り出すことも理論上は可能ですよ」

 

「しかしラッセルよ。貴様は似ていると言ったな?

 ではこのオーブメントは違うのだな?」

 

 耳聡くアルバートの考察をシュミットが指摘する。

 結論を急ぐシュミットにアルバートは肩を竦めながら口を開く。

 

「そもそもツァイスの杭には《霧の魔獣》を取り込む機能なんて付いとらんのじゃ……

 導力を外部から供給する《ゴスペル》の代用かと思ったが、どうやらそうではないようじゃな……

 いや、そもそもこれは杭と言うよりも注射器ではないかとワシは感じたな」

 

「注射器……ですか?」

 

 アルバートの答えにアルティナは首を傾げる。

 

「霧の魔獣が持つセピチウムをオーブメントに注入したのだろう……

 それを大地に注ぎ込んで何を行おうとしていたのかは、ヘイムダルの霊脈の変化も調べる必要があるのう」

 

「では、このオーブメントが地震を起こしていたんじゃないんですか?」

 

「機能的にはできると思うが、やはり《ゴスペル》がない事がどうしても引っかかる」

 

 アルバートは腕を組んで考え込む。

 

「オーブメントについての解析はしておこう……

 調査を続け、似たような導力器を発見したらすぐに知らせろ」

 

「分かりました」

 

 シュミットの言葉にリィンは頷き、退出しようとしたところでそれを思い出す。

 

「そう言えばアルティナ」

 

「はい」

 

 リィンの呼び掛けに応じてアルティナは魔導杖の拡張空間から“それ”を取り出して杭の横に置いた。

 

「これを使ってクルトとのユウナの武器とアルティナの魔導杖用の導力発信体を作っておいてくれませんか?」

 

「ほう……これはゼムリアストーンか。随分な量を持ち込んだな」

 

 もはや見慣れた光沢の鉱石にシュミットは興味深そうに目を細める。

 

「リィン、僕たちの武器を作るっていきなり何を言い出すんだ?」

 

「そうよ。あたしのガンブレイカーは別に問題ないわよ」

 

 リィンの提案に、名前を出されたクルトとユウナが反論する。

 

「問題ないわけないだろ。“神気”を使った戦闘の体の負担は実感しただろ?

 武器だってそうだ。せっかくゼムリアストーンが手に入ったんだ。それで最高の武具を作ってもらった方が良い」

 

「それは……」

 

 その指摘にクルトは思わず双剣に視線を送る。

 第Ⅱに入学する際に新調したものの、度重なる戦闘で細かな傷が目立つようになってきた。

 まだ使える。

 しかし“神気”を使い続ければどれだけ摩耗が激しくなるのか、クルトにはまだ判断ができないのも事実だった。

 

「すぐに交換しろって言っているわけじゃない……

 ただ予備の武器は用意しておいた方が良いって話だ」

 

「なんだか経験がありそうな言葉ね」

 

「…………まあ、俺も……太刀を何本も折ったから……」

 

 ユウナの指摘にリィンは思わず視線を逸らす。

 

「うーん、私だけ仲間外れですか……」

 

「ミュゼのライフルはまだ限界まで使い切れていないだろ?」

 

「そうですけど……そうですけど」

 

 納得がいかないとミュゼは頬を膨らませる。

 

「武器の件は了解した……

 三人で手分けすれば、夕方までには終わるだろう」

 

「なんじゃシュミット? ワシらにもやらせると言うのか?」

 

「お前たちはⅦ組にどれだけ世話になったと思っている?

 政府から与えられた“要請”だったとはいえ、その恩を返さないつもりか?」

 

「あら、シュミットの口から恩返しだなんて明日は雨かしら?」

 

「ふん……協力する気がないのなら別に私が一人でやるだけだ」

 

 ハミルトンの揶揄う言葉にシュミットは無理強いはせずにゼムリアストーンを手に取る。

 

「はいはい、ちゃんと手伝いますよ……

 私はそうね。アルティナさんの魔導杖の改造パーツをいくつか作りましょう」

 

「ではワシは剣を作るとしよう」

 

「ならば私はガンブレイカーか」

 

 シュミットたちはそれぞれの役割分担を決める。

 

「よろしくお願いします」

 

「お、お願いします」

 

 トントン拍子で決まった武器の製造にクルトは頭を下げ、ユウナも続く。

 そして待合室から出たクルトはリィンに言葉を返した。

 

「本当に良かったのか?

 武器が必要だというのなら、それこそリィンがゼムリアストーン製の太刀を作ってもらうべきだったんじゃないのか?」

 

「俺は“神気”に慣れているから下手に扱って太刀を折ることはないさ……

 それにこの太刀はダーナさんが《理術》を掛けて作ってくれた特別性だから、次に同じゼムリアストーン製の守護者が出てきても斬ってみせるさ」

 

「…………そうか。リィンがそれでいいなら良いんだけど」

 

 少し声を弾ませて太刀を自慢するように誇らしげに語るリィンにクルトは苦笑して、闘技場に視線を送りⅦ組のスペースを探す。

 

「アッシュ、代わりの武器はあったか?」

 

「…………ああ」

 

 壊されたヴァリアブルアクスの代わりにスタンハルバードをこの場で調達したアッシュはどこか上の空な返事をクルトにする。

 

「…………僕よりもアッシュの武器を優先した方が良かったんじゃないか?」

 

「アッシュもミュゼと同じで、普通のヴァリアブルアクスで十分じゃないか?」

 

 リィンの言葉にクルトはため息を吐く。

 彼の言葉には悪意はない。

 クルト達にはゼムリアストーン製の武具を持つ意味はあり、ミュゼとアッシュにはない。

 武芸者としての思考はリィンの考えを肯定している。

 しかし、こうも直球で言えば今のアッシュではリィンに噛みつきかねないと警戒した。

 

「…………ちっ……」

 

 しかしクルト達の心配を他所にアッシュは舌打ちをするだけで、リィンに噛みつくことはしなかった。

 

「アッシュ……」

 

 アッシュの様子、アンゼリカのフォロー。破壊されたヴァリアブルアクス。

 それらから独断専行気味に仮面の者たちを追った彼に何があったのか、容易に想像できる。

 クルトもリィンも察しながら触れないように話題を午後の地下調査に変える。

 

「クロウから何か連絡はあったか?」

 

「いえ、履歴には何もありません。こちらから連絡を――」

 

 アルティナが答えていたところでタイミング良くリィンの《ARCUS》が鳴る。

 

「どこかで見ているんじゃないだろうな?」

 

 リィンはぼやきながら《ARCUS》を開き、みんなに聞こえるようにして通信を開く。

 

『よう、首尾はどうだガキども?』

 

 悪びれた様子は一切ないクロウの声に一同はため息を吐きたくなる。

 

「成果はあった。そっちはどうだ?」

 

『ちくしょう……何であそこでライノブルームが来るんだよ…大穴も大穴じゃねえか……』

 

 突然愚痴り出すクロウにやはり一同はため息を吐く。

 

「……そういう事を聞いているんじゃなくてだな」

 

『分かってるって……

 サラ達や協力者に話は付けてある。今から駅前に来てくれ』

 

 そう告げるとクロウは一方的に回線を切った。

 

「…………行くか」

 

 リィンは《ARCUS》をしまって短く言った。

 一同はその言葉に頷いて、オリビエ達と合流してドライケルス広場に向かうのだった。

 

 

 

 

 帝都中央駅。

 機甲兵のパレードが始まったその場所はそれまでの賑わいから落ち着きを取り戻していた。

 それでも夏至祭の初日ということもあり、そこには普段より多くの人が行き交っている。

 

「あ、やっほー! アーちゃん! リィンも!」

 

「ミリアムさん、ですからその呼び方はやめてくださいと何度も言っているんですが」

 

 リィン達を見つけたミリアムが駆け寄って来る。

 アルティナに早速構い始めるミリアムに苦笑しながら、リィンは改めてその場に集まった者たちを見る。

 まず目に入ったのは紅い制服の《Ⅰ組》の生徒たち。

 セドリックを始め、キーアとシャーリィ達がいた。

 

「どうやら先を越されたみたいね……流石ロイド先輩にキーアちゃん」

 

「別に競争をしていたわけじゃないだろ」

 

 先に到着していたⅠ組に誇らしげになるユウナにリィンは苦笑する。

 Ⅰ組の他には彼らの協力者だったロイドやエレイン、ルネもいる。

 更にそちらに協力していたユーシスは複雑な顔をして、誰かを睨んでいた。

 

「あれは……?」

 

 金髪にサングラス。そして黒いスーツ姿にリィンは一瞬誰だか分からなかった。

 

「まさかルーファス総督?」

 

「やあリィン君」

 

 纏う《金》の気配から察したリィンにルーファスは朗らかに声を掛けてくる。

 

「その格好はどうしたんですか?」

 

「あちらの服は目立ってしまうからね……

 帝都の地下の調査ならこちらの方が動き易いと思っただけだよ」

 

「それは良いんですけど……」

 

 ルーファスから視線を移して、リィンは彼の背後に付き従っている《C》と水色の髪の少女に目を向ける。

 

「どうして《C》がいるのかは良いとして、ティオさんはどうしてここに?」

 

「お久しぶりです。リィン君」

 

 ぺこりと頭を下げてティオは続ける。

 

「クロスベル軍警察学校に技術監督者として同行させて頂いていました。朝は挨拶に行けずに申し訳ありませんでした」

 

「いえ、そんな朝の準備に忙しかったのは俺たちもですから……

 でもまさかクロウはティオさんにも声を掛けたんですが?」

 

「いや、彼女に声を掛けたのは私だよ」

 

 リィンの疑問にルーファスが答える。

 

「帝都の地下を調査するならば霊的な観測ができるティオ君に協力してもらうのが良いと思ってね……

 それにそうすればロイド君やキーア君とも会えると思ってね」

 

「総督のお心遣いには感謝しています」

 

 ティオは社交辞令のような口調でルーファスに礼を言う。

 

「それでそちらの《C》は……」

 

「な、何かなリィン君?」

 

 変声機を通した声は変わらないが、それでも今朝第Ⅱ側にいた《C》とは別人だとリィンは察する。

 

「あなたは……女の人?」

 

「え……?」

 

 指摘された《C》はリィンの言葉にあからさまにぎくりと反応する。

 

「ふふ、流石だねリィン君。ただ彼女についてはあまり詮索はしないでくれたまえ」

 

 そんな《C》をルーファスがフォローする。

 

「貴方がそれで良いなら、俺が言うことはありませんが……」

 

 少し離れたユーシスがルーファスと《C》を見比べて唸っているのを見ない振りして、リィンは次の集団に目を向けた。

 

「それでどうして貴女達、《鉄機隊》がいるんですか?」

 

 リィンは警戒しながら鎧姿ではなく、巷間に合わせた旅装で一般人に溶け込んだ服装をしているデュバリィ達に話しかける。

 

「文句ならアームブラストに言いなさい」

 

 リィンに話しかけられたデュバリィは不機嫌さを隠さず言い返す。

 

「私たちはマスターの意向でワイスマンの動向を探って帝都の地下を捜索していたのよ」

 

「調査の合間に小休止をしていたところにアームブラストが現れ、協力しないかと打診されたのだ」

 

 しかし、エンネアとアイネスが掻い摘んで自分たちの状況を説明してしまう。

 

「ぐっ……」

 

「帝都の近衛や憲兵隊の目を盗みながらの調査の難しさを感じていたところだったから協力することにしたのよ」

 

「アームブラストが以前のままの性根ならば拒否していたが、今の彼ならば協力するのも悪くないと判断した」

 

「そういうわけだから、よろしくねリィン君」

 

「何を馴れ馴れしくしているんですかっ!?」

 

 簡単に自分たちの内情を喋る二人にデュバリィは声を上げて抗議する。

 

「勘違いするんじゃありませんわよ!

 《結社》としてもワイスマンを放置しておくことは《幻焔計画》の妨げになると考えての事ですわ……

 それに今日中に解決しておかなければ明後日のレースに支障が出るかもしれませんからね」

 

「その言い方、まるで貴女が結社の代表に聞こえるんですが?」

 

「ああ、結社からはデュバリィが参加することになった」

 

「本当は私たち三人で操縦する機体なのだけど、走らせるだけならデュバリィだけでも大丈夫でしょう」

 

「ちょっとこちらの手の内をペラペラ話すんじゃありませんわ……

 ええい! アームブラストはどうしたんですの! さっさと――」

 

「そうや! アームブラストはどこにおる!?」

 

 デュバリィの声を遮って声を上げたのは、《西風の旅団》のゼノだった。

 

「まさかとは思ったけど、貴方達まで呼び付けたのか……

 帝都襲撃の片棒を担いでいたくせによく帝都に顔を出せたな?」

 

「あれはカイエン公の意向であって俺たちはそこまで関与していない」

 

「そやで、恨むならカイエンのオッサンを恨んでや……

 で、アームブラストはどこや?」

 

 リィンの睨みを気にも留めずにレオニダスとゼノはクロウの姿を探す。

 

「クロウに何の用があるんだ?」

 

「あの野郎、協力しなければ“あの事”をバラすって脅してきたんや」

 

「それに貴族連合の時のツケをここで払えと強請られてしまってはな……」

 

 息巻くゼノに対してレオニダスはあくまでも不本意ではないと唸る。

 

「“あの事”……“ツケ”……

 クロウは貴方達にどんな交渉をしたんだ?」

 

「お? 知りたいか?」

 

 リィンの呟きにどこからともなく現れたクロウがニヤニヤとしながら声を掛けて来た。

 

「いやーあの頃は大変だったんだぜ……

 学生をしながら帝国解放戦線の活動の計画をしたり、指示を出したり……

 カイエン公に定期連絡をすれば、こいつらが出てきてフィーの様子はどうだとか聞いてくるし、写真まで要求してきやがったんだぜ」

 

「お、おい! アームブラスト」

 

「その話は内密にと、言ったはず――」

 

 慌てて西風の二人はクロウの口を塞ごうとするが――遅かった。

 

「ふうん……」

 

 二人の背後を取った銀髪に仮面を被った黒騎士が冷えた声をもらした。

 

「フィ、フィー……」

 

「今のはその……」

 

「フィーって誰の事? わたしはヴァルトラウテ……

 それはそれとして二人ともちょっとこっちに来て」

 

「待て、話を聞いてくれ」

 

「そや、決してやましいことはなくてやな……」

 

「来い」

 

「う、うむ」

 

「……はい」

 

 西風の二人はヴァルトラウテに連行されて行った。

 

「…………それでクロウは今まで……そっちの男は誰だ?」

 

 リィンは太刀に手を伸ばしながらクロウに尋ねる。

 

「ひっ……」

 

 無精ひげを生やした男はリィンに凄まれてクロウの背中に隠れる。

 

「脅すなよ。こいつはギデオン。俺の帝国解放戦線の時の仲間だ」

 

「ギデオン…………たしか二年前の暗黒竜のテロでエリゼ姉さんを足蹴にした奴がそんな名前だって聞いたことがあるな」

 

「あー」

 

 クロウは思わず天を仰ぐ。

 

「そのケジメについては後にしてくれ」

 

 しかしリィンは太刀から手を放さずギデオンを睨み続ける。

 

「ここは俺に免じて納めてくれよ……

 ヴィータが言うには《暗黒竜の寝所》って所まで行く必要があるんだ。ギデオンはそこを知っている」

 

「…………分かった」

 

 クロウの説得にリィンは折れて太刀から手を放す。

 

「ふう……助かったよクロウ」

 

「後でちゃんと謝っておけよ。リィンにじゃねえエリゼの方にな」

 

「ああ、そうだな……そうだった」

 

「それで後は……」

 

 リィンは改めてその集団を見回す。

 本校Ⅰ組に分校のⅦ組と旧Ⅶ組。

 公安七課にルーファスとその協力者、遊撃士の二人。

 鉄機隊と西風の二人。黒騎士の三人。そして――

 

「ふう……何とか間に合ったか」

 

「やっほー弟君、キーアちゃん」

 

「ランディ教官、それにアネラスさん……会場の方は良いんですか?」

 

「ああ、あっちは生徒たちだけでうまく回せていたからな」

 

「クロウ君から提案されたこともあって、ナイトハルト教官とオーレリア分校長が許可してくれたよ」

 

「それは頼もしいですね」

 

 ランディとアネラスが加わり、リィンは改めて集まった人数の多さに呆れる。

 

「よくこれだけの人たちを集められたな」

 

「ふ……これもひとえに俺の人望って奴よ」

 

 一部は明らかに脅していた気がするが、リィンは聞かなかったことにする。

 

「おいおい、よくこれだけ掻き集めたな」

 

 そして新たにやってきたレクターが一団を見てリィンと同じ感想をもらした。

 

「よく言うぜ。Ⅰ組とⅦ組だけで帝都の地下を捜索させようだなんてそっちの方が無謀だろうが」

 

 レクターの言葉にクロウは反論する。

 

「言いたいことは分かるが、クレアの報告を聞く限りじゃ一般兵じゃ返り討ちにされるのが関の山だろ」

 

「それにしたって、学生に全部丸投げしてんじゃねえよ……

 それに加えて迷子を救出しないとならないんだろ?」

 

「迷子?」

 

 クロウが出した言葉にリィンは首を傾げる。

 

「ああ、どうやら観光客が調子に乗って帝都の地下に降りちまったらしくてな……

 そいつらの保護もしなくちゃならなくなったわけで俺たちまで駆り出されたってわけだ」

 

「俺たち……?」

 

 レクターが場所を開けて背後にいた二人に場所を譲る。

 

「ふふ、レンの事は自己紹介するまでもないわね」

 

 小悪魔的に微笑みかけてくるのはレン・ブライト。そして――

 

「俺は初めましてになるか? 共和国で遊撃士をしているジン・ヴァセックだ」

 

「二人はリベールの異変の時の当事者でな……

 随行団として同行していた二人に御協力をお願いしたわけだ」

 

「貴方もクロウの事を言えませんよね」

 

 国賓の護衛かスタッフとして来た二人を都合が良いからとこき使うレクターにリィンはため息を吐く。

 

「あら、リィンはレンが来て嬉しくないの? それともエステル達の方が良かったかしら?」

 

「いや……そういうわけじゃないけど……」

 

「でもごめんなさい。エステルとヨシュア“は”帝国の怖い宰相に入国を認めてもらえなかったの」

 

 レンはくすくすと笑う。

 

「やあジンさん。久しぶりだね」

 

 オリビエがジンに話しかける。

 

「お前は…………やれやれ皇宮の出迎えにいないと思ったら……

 しかし相変わらずのようで何よりだ」

 

「ふふ、この場にエステル君とヨシュア君がいなくて残念でならないよ……

 ティータ君も帝都にいるけど、彼女は士官学生としての仕事があるからね」

 

「…………そうか」

 

 昔を懐かしむオリビエに対し、ジンは何かを言い辛そうに目を逸らした。

 

「おや? ジンさん、どうかしたかい?」

 

「いや何でもない。それよりも――」

 

「そろそろ良いか?」

 

 その場に集まった者たちに向かってクロウが呼び掛ける。

 

「今日はよく集まってくれたな……

 今からお前たちには帝都の地下に潜伏しているゲオルグ・ワイスマンの捕縛を手伝ってもらう」

 

「クロウ、それはええんやけどな……

 これだけの人数を揃える必要はほんとにあるんか?」

 

 クロウの言葉にゼノは周囲を見回しながら尋ねる。

 まだ子供の学生はいるものの、どこを見ても一流と言って差し支えない猛者たちが集まった集団。

 これからバルフレイム宮に襲撃を掛けると言われても納得してしまいそうな程に戦力過剰だった。

 

「それについてはミスティに聞いてくれ……って言うか、後は任せた」

 

 クロウはそう言うと早々に場所をミスティに譲り、更には後の事も丸投げする。

 

「はあ……クロウに代わって、貴方達の指揮を取らせてもらうことになったミスティよ」

 

「ね、姉さん……」

 

 まさか彼女まで出てくると思ってなかったエマは狼狽える。

 

「詳しい状況を説明する前に、ワイスマン一人にこれだけの人数を動員する必要があるかという問いに答えるわ……

 当然、その必要があるわ」

 

「その根拠は?」

 

 言い切るミスティにレオニダスが尋ねる。

 

「私たちが遭遇した《人形遣い》のリルティナ……

 彼女は100体を超える《戦術殻》を一人で操る規格外な存在よ」

 

「戦術殻……単純に計算すれば《白兎》が100人いると考えられますね」

 

 ギデオンはミリアムに視線を向けながら考え込む。

 

「更に言えば、帝都の地下に結社から《剣帝》《怪盗紳士》《痩せ狼》の三人を順次投入したけど、それぞれ連絡が取れなくなったわ」

 

「はあ! あの三人が行方不明!?」

 

「それはちょっと信じられないわね」

 

「彼らが100体程度の戦術殻で不覚を取るとは考えられないな……となると……」

 

 ミスティの言葉に鉄機隊は耳を疑う。

 それだけに三人の執行者たちの音信不通は信じられない出来事だった。

 

「にわかには信じ難い話だね」

 

「ああ、あの三人が逃げる事すらできねえとは考え辛い」

 

「ヴァルターは確かに戦闘狂の面はあるが、引き際を見誤る様な事はしないだろう」

 

「同感ね。だとすれば……どう思うレン?」

 

「《OZΩ》って言う《太刀使い》が《人形遣い》より強い存在……っていう可能性もあるけど……

 他の二人はともかくレーヴェは《教授》に取り込まれるだけの理由はあるわね」

 

「今更あいつが《教授》の言いなりになるのかよ?」

 

 レンの考えにアガットが聞き返す。

 

「忘れたの?

 本来ならレーヴェが《福音計画》でやろうとしていた“試し”はリベールじゃなくてエレボニアにするのが筋だったのよ」

 

「それは……」

 

「ともかく三人の《執行者》が消息不明となった……

 それがこれだけの戦力を集めた理由として納得してもらえるわね?」

 

 ミスティの確認に異を挟む者はいなかった。

 

「ワイスマンの潜伏先の《暗黒竜の寝所》と呼ばれている場所よ」

 

「《暗黒竜の寝所》……そう言えば今はあの場所に何があるんですか?」

 

 リィンはイオの存在を思い出しながら尋ねる。

 《暗黒竜》は二年前にその身を浄化され、《大地の聖獣》の力を継いで今のイオとなった。

 故にその場所は滅し切れなかった《暗黒竜》はもう存在していない。

 

「《暗黒竜》はもういないけど、あの場所は帝都でも有数な霊場の一つで――」

 

 リリリリリリ――

 

 その音はミスティの言葉を遮る形で一斉に鳴り始めた。

 

「これは……」

 

「みんなの戦術オーブメントが……」

 

 音の出所はそこに集まった全員の戦術オーブメントから。

 

「非通知か……」

 

 本来なら表示されるはずの通信の番号が表示されていないことをルネは訝しむ。

 

「私が出るわ」

 

 そう言ってミスティが代表するように着信に出れば、けたたましく鳴っていた着信が全てぴたりと止まり、その画面に一人の男を映し出す。

 

『ご機嫌よう――

 深淵の魔女殿。そしてゼムリア大陸に名を馳せる猛者たち……

 私はヨアヒム・G・ワイスマン。君たちが話題にしている者です』

 

「っ……」

 

 画面に映し出されたのは白髪に紅い目に眼鏡をした学者風の男。

 

「この男がワイスマンか」

 

 その顔を知らない者たちは初めて“彼”を認識する。

 

『それにしてもミスティさん……よくそれだけの戦力を集めましたね……

 ですが、いきなりここに攻め込もうなんてひどくありませんか?』

 

「よく言うわね。帝都の地下で怪しげな実験をしておいて」

 

『ですが晩餐会でも言った通り、私たちは積極的に《幻焔計画》を邪魔するつもりはありませんよ?

 私たちはただ私的な理由で実験を行っているだけで、まだ誰にも迷惑を掛けていないはずですが?』

 

「女学院の幽霊、霧の魔獣、そして帝都で多発している地震。それらが貴方と無関係だと言わせないわよ」

 

『だとしても、まだ何の被害も出していないですよ……

 それに暗躍については《幻焔計画》の進行役の魔女殿にとやかく言われる筋合いはないと思いますよ』

 

「…………」

 

 ワイスマンの指摘にミスティは一度黙り込む。

 

「だったら俺が言ってやろうか?」

 

 その間にレクターが口を挟む。

 

『おや……? これはこれは……』

 

「あん? 何だよ?」

 

 ワイスマンの不躾な眼差しをレクターは訝しむ。

 

「まあ、何でも良いが……帝国政府の言葉として正式に立ち退きを要求させてもらおうか……

 もし拒絶するなら、ここに集めた戦力でお前さんの所に攻め込ませてもらうぜ」

 

『それは怖いですね』

 

 言葉では怖がりつつも、ワイスマンは余裕の態度を崩さない。

 

『ところで――』

 

 そして飄々とした態度のまま話題を変えた。

 

『実は先日、私はブルブランにある物を盗んできて欲しいと依頼を出しました』

 

「いきなり何の話だ?」

 

『そのある物とはですね……

 二ヶ月ほど前にクロスベルで騒ぎになった《グノーシス》です』

 

「なっ!?」

 

 突然話題に上がった《グノーシス》にロイド達が息を呑む。

 

『クロスベル解放戦線から回収された《グノーシス》はレミフェリアやアルテリア法国で治療のために研究されていました……

 それをブルブランに盗み出してもらい、私の手元にあります』

 

「……それをどうするつもりだ?」

 

『ふふふ、それでこの帝都の上水道が汚染されたらどうなると思いますか?』

 

「この外道が」

 

『冗談ですよ……

 ですが、貴方達が問答無用で攻め込んでくるというのなら、私もなりふり構わずに対応すると覚えておいてください』

 

「…………要求は何だ?」

 

 完全に主導権を取られている事を感じながらレクターは少しでも隙を探すために質問する。

 

『まあまあ、帝国政府の意見ももっともだと分かっています……

 ですので、ここは一つ“ゲーム”をしようじゃありませんか』

 

「“ゲーム”だと?」

 

『ええ、これから私は彼女たちに《グノーシス》を持たせて帝都の地下に放ちます』

 

 そう言うとワイスマンを映していた画面が切り替わり、無表情で佇んでいる四人のアルティナが映される。

 

「アーちゃんが四人!?」

 

 四人のアルティナにミリアムが驚きの声を上げる。

 

「いいえ、違うわ」

 

 しかしレンはそれにいち早く気付く。

 

「違うというのは何がだいレン君?」

 

 オリビエの言葉にレンは答える。

 

「あれは人ではない。関節に継ぎ目があるでしょ。あれは機械仕掛けの“お人形”よ」

 

『はは、流石ですねレン……

 貴女の指摘した通り、これはアルティナ君を模しているだけの機械人形《OZミラージュ》というものです』

 

 確かによく見れば、アルカディスギアの装備で露出している肌や関節は作り物めいた継ぎ目が存在している。

 

『君たちは《グノーシス》を所持した四体の《OZミラージュ》をこの帝都の地下から見つけ出し撃破する。そういう“宝探し”のゲームですよ』

 

「で、俺らがそいつの相手をしている間にお前たちは悠々と脱出するって寸法か?」

 

『ふふふ……』

 

 レクターの質問に肯定も否定もせずにワイスマンは笑う。

 

「この……」

 

 悪趣味だと分かっていても、危険性を考えれば乗らないわけにはいかない。

 レクター達はただ苛立ちを募らせる事しかできなかった。

 

『あと、当然彼女たちは単体でも戦闘できますが、彼女を守る“守護者”も用意しています……

 彼らを退けて《OZミラージュ》をぜひ撃破してください』

 

 そう言うと四体の《OZミラージュ》から上半身が裸のワイスマンに画面が戻る。

 

「…………ちょっと待て」

 

『おや? まだ何か質問がありますか?』

 

「ああ、ある……っていうか何でてめえ裸なんだ!?」

 

 レクターは思わず画面に映るワイスマンに突っ込みを入れる。

 最初は顔のアップだけで気付かなかったが、今映されている上半身は衣服を着ていない裸だった。

 

『実はですね。ちょっと実験として帝都の霊脈を操作して地下に温泉を作ってみたんです』

 

「はあ!? 温泉!? 何考えてんだ!?」

 

『《暗黒竜の寝所》改め、《暗黒の園》……いえ《暗黒竜の浴所》と言ったところでしょうか?

 実は先程一仕事終えた後でしてね。レーヴェたちにも好評を――』

 

「聞いてねえよそんなこと! 本当に何してんだお前らっ!?」

 

 予想を超えるアホな答えにレクターは叫ぶ。そして自慢の“勘”で気付いてしまう。

 

「まさか杭のオーブメントはそのためのものか!?」

 

『ふふふ、それも一つの理由ではあります』

 

 レクターの問いにワイスマンははっきりと頷き、レクターは頭を抱えたくなる。

 

『見ての通りこちらは万全の準備を整えて君たちを歓迎させてもらいます……

 夏至祭の催しものとでも思ってこの“祝祭”を楽しんでください……

 君にも期待しているよ“アランドール”君』

 

 その言葉を最後に通信は切れた。

 そしてその場には何とも言えない空気が残った。

 

「…………あれが《結社》の《使徒》か……」

 

 リィンはそう呟いてからミスティへと視線を向ける。

 

「………………」

 

 一同の視線が集まってミスティは帽子で顔を隠して俯いた。

 

「我が主をあのような男と一緒にされては困る」

 

「そうですよ。マスターは気高く真面目、戦場の非道は許しても外道では決してありません」

 

 アイネスとエンネアが耐えかねて聞いてもいない弁明をする。

 そして二人は真っ先に声を上げそうなデュバリィが沈黙している事に首を傾げた。

 

「どうしたデュバリィ?」

 

「そうよ。こういう時は貴女が真っ先に声を上げるのに」

 

「いえ……ちょっと気になることがありまして……」

 

 腕を組み、眉を顰めてデュバリィは考え込む。

 

「ゲーム……四体の《OZミラージュ》……守護者……」

 

「ああ、くそっ!」

 

 レクターは天に叫んで気持ちを切り替える。

 

「多少の修正は必要になったが、やることは変わらねえ……

 地下に入ってあの男の企みを阻止する。異論はねえな?」

 

「そうですね……ではチームを四つに分けましょうか?」

 

 レクターの言葉にセドリックは頷き、提案する。

 

「いいえ、最低でもチームは五つに分けるべきでしょうね」

 

 しかしセドリックの提案にミスティが反論した。

 

「セドリック皇子……貴方はキーアちゃんを除いたⅠ組とⅦ組を率いて《暗黒竜の寝所》へと向かってちょうだい……

 貴方達なら《人形遣い》がどれだけ戦力を溜め込んでいたとしても、《騎神》で薙ぎ払う事ができるはずよ」

 

「それならキーアも」

 

 ミスティの提案にキーアが口を挟む。

 

「いやキーアの力は索敵に向いている……

 お前は《OZミラージュ》の捜索に使った方が良いだろ……

 バニングス、ランドルフ、プラトー。お前たちがキーアと組め」

 

「レクターさん!」

 

「おい、そいつは……」

 

「私たちは良いですが……」

 

 レクターの提案にロイド達は戸惑いながらも、どこか嬉しそうにキーアと顔を見合わせる。

 

「しかし、それではいささかバランスが悪くないかね?」

 

 そんな彼らに水を差すようにルーファスが口を挟む。

 

「《C》……君もキーア君のフォローをしてあげたまえ」

 

「……了解した」

 

 《C》は驚いたようにルーファスの顔を一度見ると頷いた。

 

「ルーファス総督。気持ちはありがたいが、《C》は剣士のはずだぞ」

 

「いや、ランディ君。《C》は武芸百般でね、剣はもちろん銃でも導力魔法でもそれなりの腕前を持っている……

 《C》には銃でも使わせれば、前衛と後衛のバランスも良くなるだろう」

 

「心遣い感謝します。よろしく頼む《C》」

 

 ロイドはルーファスに礼を言って《C》に手を差し出した。

 

「…………ああ、こちらこそよろしく頼む」

 

 《C》はロイドの手をじっと見てからその手を取って、握手を交わすのだった。

 

「…………《C》。おかしな事を聞くがどこかで会った事がないか?」

 

 仮面に包まれた顔にロイドは何故か既視感を覚えて尋ねる。

 

「…………気のせいだろう」

 

 素っ気なく《C》は答えると、ロイドに背中を向ける。

 そんな背中にロイドはやはり既視感を覚えて首を傾げ、一方でキーアが声を潜めて《C》に話しかける。

 

「ねえもしかして今の《C》はエ――」

 

「キーアちゃん」

 

 《C》は彼女にだけ聞こえる囁きを返して口元に立てた指を当てる。

 

「キーア、どうしたんだ?」

 

「ううん、何でもないよ」

 

 ロイドの呼びかけにキーアは首を振って、《C》に手を差し出した。

 

「よろしくね《C》」

 

「ああ、よろしく」

 

「それでわたしたちは良いですが、貴方はどうするおつもりですか?」

 

 片腕である《C》を貸し出したルーファスにティオは尋ねる。

 

「私はそうだね。《鉄機隊》の諸君、そして《西風の旅団》の二人をまとめよう」

 

 ルーファスは迷わずに提案する。

 

「ふん……貴方程度にわたくしたちが御せるとでも?」

 

「ま、あんたなら文句はないなあ」

 

 挑発を交えながら鉄機隊も西風もルーファスの提案を拒むことはしなかった。

 

「ルーファス総督は彼らとお知り合いだったんですか?」

 

 その様子にロイドは尋ねる。

 

「二年前、内戦が始まる前にいろいろと橋渡しをしていてね。彼女たちの人となりは理解している……

 不穏分子をまとめておくという意味でも私が適任だろう」

 

 そう言ったルーファスの背後に一人の青年が近付き、声を掛けた。

 

「ルーファス・アルバレア。俺を貴方の班に入れてもらおう」

 

「…………ユーシスか」

 

 ユーシスはルーファスを睨みつけ、ルーファスはそんなユーシスに冷めた眼差しを向ける。

 

「ロイドが抜けるなら公安は残りのメンバーでまとまりますか?」

 

「そうね……あたしとマキアスとエレイン、ルネの四人……

 まず索敵に徹するなら四人でもいいでしょ」

 

 マキアスの提案にサラは唸る。

 

「ですがサラさん。《人形遣い》の力は結局分からないまま四人で戦うのは……

 《OZミラージュ》と守護者の実力が未知数と言っても失敗はできませんよ」

 

「しかし俺たちの中に斥候が得意なものはいないからな。どこかに鼻が利く奴でもいれば良いのだが」

 

 エレインの懸念に頷きながらルネがぼやく。

 

「ユーシスさんがルーファス総督のチームに行ってしまったので、私たちがマキアスさん達のチームに入れば良いんじゃないでしょうか?」

 

 そんなマキアス達にエマが提案する。

 

「うーん、それでも良いんだけど……

 あんたたちはあっちと組んだ方が効率が良いんじゃない?」

 

 サラは別案としてに黒騎士達を指す。

 

「私たちは構わない」

 

 蒼い髪の黒騎士は異論はないと、三人を代表して頷く。

 

「でもサラ教官」

 

「まずは索敵を優先しましょう。敵を見つけて、無理そうなら連絡を取って戦力を集中させればいいわ」

 

「それは……」

 

「不安ならば私がエマ君たちの班に入ろう……

 エマ君とガイウス君、そして私。黒騎士とこれで人数のつり合いは取れている。もっとも彼らがこの状況で裏切りるとは思えないけどね」

 

 アンゼリカが提案して探るように黒騎士達へ話しかける。

 しかし黒騎士達は必要以上の事は語ろうとはしなかった。

 

「人手が欲しいと言うのなら、ケビン神父に応援を頼もうと思います」

 

 ガイウスは《ARCUS》を取り出す。

 

「それじゃあレンはレナとカリンを呼ぼうかしら?」

 

「待ちたまえレン君」

 

 ガイウスに乗じて援軍の心当たりを呼ぼうとしたレンの言葉にオリビエは待ったを掛ける。

 

「あら何かしら?」

 

「詳しく、説明して欲しい……今、ボクは冷静さを欠こうといている」

 

 努めて冷静にオリビエはレンがもらした言葉の意味を聞き返す。

 

「クスクス、レンにはオリビエが何を言いたいのかよく分からないわ……

 レンはただ王女様のメイドさんに援軍を頼もうとしているだけよ」

 

「あら、あの二人。結局その方法で入国したのね」

 

 レンの言葉に思い当たるものがあるのか、シェラザードは苦笑いを浮かべる。

 そんな光景をリィン達は一歩下がった位置で見守っていた。

 

「なんかどんどん話が決まっていくな」

 

 自分たちが意見を出す前に提案と反論が交わされ、最適解を考えた意見交換が行われて班や対処方法が決まっていく。

 

「流石ルーファス総督にロイド先輩よね」

 

 口を挟む余地のない進行にユウナは自分の事のように誇る。

 

「ゲオルグ・ワイスマンか……オルディスで会った時は普通の学者に見えたが、やはり収監されているだけの理由があったということか」

 

 クルトはかつて共に脱獄したワイスマンの本当の顔を知って唸る。

 

「アッシュさん、流石に今回は――」

 

「ちっ……分かってるよ」

 

 予め釘を刺すミュゼにアッシュは迷惑そうに距離を取る。

 

「それにしても温泉か」

 

 ふと何気なく呟かれた言葉に《Ⅶ組》はリィンを見る。

 

「リィン、あんたまさか……」

 

「この状況で入りたいとか言わないでくれよ」

 

「この温泉マニアが空気を読めよ」

 

「ふふ、流石リィンさんですね」

 

「不埒ですね」

 

「まだ何も言ってないのに……」

 

 集中攻撃されたリィンはガックリと肩を落とした。

 

 

 

 

 







 暗黒竜の浴所 突入班
 Ⅰ組(-キーア)+Ⅶ組+ギデオン+レクター+ミリアム+シャーリィ+イソラ

 《OZミラージュ》捜索A班 特務支援課チーム
 キーア ロイド ランディ ティオ 《C》

 B班 元貴族連合チーム
 ルーファス 鉄機隊 西風の旅団 ユーシス

 C班

 黒騎士三人 エマ ガイウス アンゼリカ


 D班
 公安七課(-ロイド)


 E班 リベールチーム
 アガット シェラザード ジン オリビエ レン クレア アネラス


 外部待機 各班との通信維持役 ミスティ トワ


 他 リベール王女付きのメイド レナとカリン
   七耀教会守護騎士たち

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