閃の軌跡Ⅲ ―偽りの仮面―   作:アルカンシェル

16 / 113
16話 サザーランド州Ⅶ

 

 

 

 結社の襲撃から夜が明ける。

 負傷者の救護、破壊された施設の片付け、残存している敵の始末。

 それらの作業は夜を徹して行われた。

 

「なあ……」

 

「ああ……」

 

 幸いなことに大きな怪我はあるものの、教官共に死者はいなかった生徒達の空気は重かった。

 

「昨日の襲撃ってやっぱり……」

 

「それにあの時のリィンは……」

 

 演習地の各地で囁かれる猜疑を含んだ陰口。

 《Ⅶ組》の中では唯一まともだと思われていたリィン・シュバルツァーの豹変と彼を狙ったものだと公言された襲撃が生徒達の中に不信感を芽生えさせていた。

 アルティナは《クラウ=ソラス》に《機甲兵》の残骸を運ばせながら、呼び出されたリィンを案じるように何度も《デアフリンガー号》を振り返る。

 

「それでシュバルツァー。君は結社に狙われる心当たりはないと?」

 

 襲撃の片付けが落ち着いた頃、リィンはミハイルに呼び出され、ブリーフィングルームの椅子に座らされて睨まれていた。

 

「……」

 

 リィンは俯き、ミハイルの質問に黙り込む。

 

「いつまで黙っているつもりだ」

 

 厳しい言葉を叩きつけられるものの、リィンには黙り込むことしかできなかった。

 憶測を語るなら、《結社》はアリサと同じように“リィン”が本物なのかを見極めに来たのだろう。

 だがそれをミハイルに行った所で彼を納得させるだけの説明をすることはできないためリィンは黙る事しかできなかった。

 

「っ……」

 

 口を開こうとしないリィンにミハイルは苛立ち、舌打ちする。

 

「デアフリンガー号の損傷……小破した機甲兵は二体。大破した機甲兵は一体……

 並びに設置したテントを始めとした備品、教官と生徒達の負傷……全て貴様のせいなのかもしれないのだぞ」

 

「っ……」

 

 ミハイルの指摘にリィンは拳を握り締める。

 

「…………それでも……俺に言えることはありません」

 

「シュバルツァー」

 

「はいはい、そこまで」

 

 ミハイルが怒鳴り付けようとした瞬間、まるで見計らったかのようなタイミングで扉が開き、その男はクロウを伴ってブリーフィングルームに入ってきた。

 

「アランドール特務少佐……? わざわざ何故貴方が?」

 

 連絡なら導力通信があるのに帝国情報局の中でも一番のキレ者でありオズボーン宰相の右腕とさえ言われているレクターがここに現れたことにミハイルは訝しむ。

 

「いろいろと連絡事項をな……

 とりあえず生徒をいじめるのは感心しないぜ。クレアに言いつけるぞ」

 

「人聞きの悪い事を言わないでもらおう。これは……」

 

「確かに《結社》の襲撃の目的はシュバルツァーだったかもしれねえが、襲撃されることを許したのはあんた達教官側の責任だろ?」

 

「っ……」

 

 痛いところを突かれてミハイルは唸る。

 レクターの指摘通り、《結社》の目的がリィンだったとしても周辺の警戒と安全警備の指示を怠ったのは教師陣の非が大きい。

 

「ま、責任の所在よりもこれからの話をしようぜ」

 

 そう言ってレクターはリィンの横の席に座る。

 

「まず最初に言わせてもらうが、この件で鉄道憲兵隊は動かせない」

 

「……それは何故だ?」

 

「帝国の東側、クロイツェン州で面倒な事件が起こってな。こっちに戦力を割く余裕がないんだとさ」

 

 レクターの報告にミハイルは顔をしかめる。

 

「今回の件は現地領邦軍と第Ⅱの現有戦力で対処してもらうってのが帝国政府の決定っでわけだ」

 

「無茶だ……」

 

 ミハイルはその決定に首を横に振る。

 

「生徒達は昨日、本物の戦場を体験して生き延びた……今すぐ彼女たちと戦えと命じてもどれだけ士気が上げられるか」

 

「ああ、それは当然だな」

 

 ミハイルの懸念にレクターは頷く。

 

「奴等に烏合の衆をいくら送り込んだって返り討ちにされるだけだ……

 帝国政府だって第Ⅱが《結社》に通用するなんて考えちゃいない。現有戦力なんて言ったが《結社》に通用するのはシュバルツァーとアームブラストの二人だけだろうよ」

 

「それは……」

 

 レクターの指摘にミハイルは口ごもり、何故クロウを伴ってレクターが現れたのか遅まきながら理解する。

 

「ああ、そういう事だ」

 

 その考えを肯定するようにレクターは持ち込んだ封筒から一枚の書状を取り出してミハイルに突きつけた。

 

「《トールズ第Ⅱ分校》に帝国政府の要請を伝える」

 

 既にクロウには言っているのか、責任者のミハイルに帝国政府の決定を提示する。

 

「《蒼の騎士》クロウ・アームブラストに特別活動として、リィン・シュバルツァーを伴い、サザーランド州にて進行する《結社》の目的を暴き、これを阻止する任務を与える」

 

「俺も?」

 

 自分も名指しされたことにリィンは驚いて振り返るが、当のクロウは肩を竦めるだけで驚いた様子はなかった。

 

「Ⅶ組として受けるか、二人でやるかはお前達が決めるんだな……

 ああ、それからアームブラスト。サザーランド州内での《騎神》の飛行許可も取ってあるから好きにして良いぞ」

 

「そいつはありがたいな」

 

 レクターが用意してくれた許可にクロウは感謝を述べる。

 

「…………俺もですか?」

 

「何だ不服か?」

 

 《蒼の騎士》として帝国政府の要請に従う義務を持っているクロウが《第Ⅱ》から借り出される事はこれまでも度々あったのでリィンは驚かない。

 しかしそこに自分が含まれている事に戸惑う。

 

「流石の蒼の騎士様も多勢に無勢だからな……ま、お前さんには拒否権があるがどうする?」

 

「…………やります」

 

 レクターの問いにリィンは強く頷いていた。

 

「あの襲撃が俺のせいだと言うなら……俺がやらないといけない事ですから」

 

「シュバルツァー……」

 

 漏らしたリィンの呟きにミハイルは自分が浅はかさな行いをしていた事に気付く。

 

「ちっ……私はまた同じ事を……」

 

 悔やんでいる内にリィンは席を立ってしまう。

 

「待てシュバルツァー。いくら《蒼の騎士》と同行すると言ってもあんな化物達に二人だけでは……せめて他のⅦ組も連れて行け」

 

「必要ありません」

 

「何……?」

 

「これは俺の問題です。ミハイル教官は覚悟のないユウナ達に死んで来いと命令するつもりですか?」

 

「っ……」

 

 リィンに言い返された言葉にミハイルは思わず息を呑む。

 

「しかし……」

 

「それでは我らがその“要請”を手伝わせてもらおう」

 

 そう言ってブリーフィングルームに新たに三人が入ってきた。

 

「ラウラさん……フィーさんにエリオットさんも……」

 

 生徒ではない部外者。

 昨夜の戦闘に援軍として駆け付けて来て、今も負傷者の手当てなどを手伝ってくれた旧Ⅶ組の登場にリィンは訝しむ。

 

「部外者は口を挟まないでもらおうか」

 

 旧Ⅶ組の三人にミハイルは追い払うように厳しい言葉を投げかける。

 

「政府の要請は“一生徒”としてのものじゃないはず……なら私達が手伝っても構わないはずでしょ」

 

「ならばこう言わせてもらおうか。民間人が出しゃばるな」

 

 フィーの屁理屈にミハイルは正面から対抗する。

 

「私は――」

 

「おっとクラウゼル。お前さんはⅦ組のOBとして帝国に入国したはずだぜ……

 遊撃士の身分を使うって言うなら、帝国政府としては黙っていられないぞ」

 

 それでも言い返そうとするが、レクターの指摘にフィーはその言葉を呑み込む。

 地方の領地――レグラムならばその土地の領主の裁量でまだ遊撃士は活動できるが、帝国での遊撃士への締め付けはかつてよりもなお厳しくなっている。

 

「アルゼイドとクレイグも卒業してから行方をくらませていたそうじゃねえか……

 いったい何処で何をしていたのか明確にしてくれねえと、帝国を揺るがしかねない事件の解決を任せるなんてできるわけねえよな?」

 

「む……」

 

「それは……」

 

 続くレクターの指摘にラウラとエリオットは怯む。

 

「だがまあ、肝心な事だがシュバルツァー。お前はこの三人に背中を預けられるか?」

 

「え……無理です」

 

 話を振られたリィンは咄嗟に即答していた。

 

「リ、リィン!?」

 

「いえ……昨日会ったばかりの人に俺の死地で一緒に戦ってくださいなんて言えるわけないじゃないですか」

 

 予想していなかった拒否に狼狽えるエリオットにリィンは正論を返す。

 

「それにオルディーネやティルフィングの使用許可が出ている戦場で貴方達に出来ることはあるんですか?」

 

 見たところ、アリサの様に《旧Ⅶ組》のティルフィングは持ち込まれていなかった。

 帝国政府が《騎神》の使用を推奨する程の相手に挑むには彼らの装備はあまりにも頼りなく見えてしまう。

 反論しない三人にリィンは失望を感じながらクロウに振り返る。

 

「……行きましょうクロウ先輩」

 

「へ……?」

 

 クロウはリィンがフィー達の協力を受けると思っていただけに間の抜けた返事をしてしまう。

 そうしている間にリィンは立ち尽くす旧Ⅶ組の三人の間をすり抜けて後部車両へと歩き出す。

 

「お、おい……」

 

 慌ててクロウはその後に続く。

 

「リ、リィン!?」

 

 呼び止めようとする声を無視して歩き出したリィンだが、《デアフリンガー号》から一歩外に出るとその足を止めてしまった。

 

「あ……」

 

「っ……」

 

 振り返る同級生たちはリィンの姿を見るとあからさまに顔をしかめる。

 そこにあったのは先程詰め寄って来たミハイルと同じものがあった。

 居住スペースに寝かされた怪我人。

 それを介抱している軽傷者。

 彼らがリィンに向ける眼差しには、昨日までにないものが溢れていた。

 畏怖、猜疑、そして恨み辛み。

 

 ――あの襲撃はリィンのせい――

 

 ――化物じみた変身はなんだったんだ――

 

 ――いたい、何で俺がこんな目に――

 

 彼らの――“■の眷族”とも呼べる帝国人たちの負の感情をリィンは感じ取ってしまう。

 

 ――お前のせいだ――

 

「っ……」

 

 今の光景に失ったはずの過去が想起するようにリィンは頭痛を覚えて頭を押さえる。

 

 ――お前は生まれて来てはならなかったのだ……

 

 ■■■■■が告げた言葉。

 

 ――お前は危険すぎる……

 

 ■■■■■が告げた言葉。

 

「これは……」

 

 《緋》と《黄金》の影の言葉が脳裏に浮かび、リィンは今の状況と彼女たちの眼差しを重ねてしまう。

 

「おい……リィン」

 

「だ、大丈夫です」

 

 クロウに応え、リィンは気を取り直して歩き出し――

 

「さーおにーさんいっしょにいくヨ! エンジョーイ――」

 

「みっしぃ~☆」

 

「…………」

 

 負傷者を寝かせる場所を確保するため、貨物室から出してあった《ティルフィングS》の前でみっしぃとオリビエの二人が踊っていた。

 

「ハッハッハ……流石だね、みっしぃ君……

 君のダンシング・センス……はっきり言って脱帽したよ」

 

「みししっ、おにーさんもとっても上手だったヨ~☆ どこかでダンスを習ってたの~?」

 

「ふ……社交ダンスをとある貴公子に徹底的に仕込まれてね……

 本来ならレディと優雅にステップを踏みたいところだが、君と踊るのもなかなか楽しかった……

 流石はクロスベル一のマスコットと言ったところかな」

 

「みししっ、照れちゃうナ~☆」

 

 陰鬱な空気が満ちている演習地で場違いな会話をしているみっしぃとオリビエ。

 

「…………何をしているんですか?」

 

「おやリィン君」

 

「あ、おつかれ~ミハイル教官との話は終わったの~?」

 

 振り返る二人にリィンは先程とは別の意味で頭が痛くなるのを感じる。

 

「ええ……《結社》の追跡を俺とクロウ先輩の二人で行う事になりました」

 

 言いたいことは色々あったが、ぐっと堪えてみっしぃにブリーフィングルームで決まったことを説明する。

 

「それは――」

 

「それは本当ですか?」

 

 リィンの説明に言葉を返したのは目の前のみっしぃではなく、背後から。

 振り返るとそこにはアルティナがいた。

 その背後にはユウナとクルトも控えていた。

 

「帝国政府からのクロウさんへの要請……アランドール少佐が来ていたのはそのためですか」

 

「…………ああ、俺とクロウ先輩はこれから《結社》を追って、みんなとは別行動を取る」

 

「別行動って……」

 

「彼女たちを追う。それも二人だけだなんて無謀な」

 

 リィンの言葉にユウナとクルトが難色を示す。

 

「だから何だって言うんだ?」

 

「っ……リィン?」

 

 拒絶を孕んだリィンの声にクルトは思わず怯む。

 

「俺はここにいない方が良い。みんな……俺がいたら“また”襲われるかもしれないって不安がっているんだから」

 

 周囲を見回し、リィンに注目していた生徒達は聞こえて来た言葉に居心地が悪そうに目を逸らす。

 

「わかりました。でしたらわたしだけでも――」

 

 アルティナは当たり前のようにリィンについて行くと提案する。しかし――

 

「来なくて良い」

 

「え……?」

 

「これは俺の問題だ。他の誰かをこれ以上巻き込むつもりはない」

 

 虚を突かれたアルティナにリィンは厳しい口調のまま告げてから、少しだけそれを崩す。

 

「これも良い機会だ。アルティナはクルト達と行動してくれ……俺は君の好意を向けられていい存在なんかじゃないんだから」

 

「で、でも……わたしは……………」

 

 部活動の時とは違う“壁”を感じ、アルティナは俯き黙り込んでしまう。

 

「ちょっとそんな言い方はないでしょ!」

 

 落ち込むアルティナを見てユウナがリィンに食って掛かる。

 

「これ以上の問答をするつもりはない……俺は――」

 

「しかしリィン君。《結社》を追うのは良いが当てはあるのかな?」

 

 ユウナを無視して《機神》に乗り込もうとしたリィンにオリビエは疑問を投げかける。

 

「それは……」

 

 オリビエの指摘にリィンは口ごもる。

 ここにはいたくない。そんな気持ちが先走っていたことにリィンは気付く。

 

「ふむ……クロウ君の方はどうかね?」

 

「…………さあな。サザーランド州で隠れられそうな場所はいくつか知っているから、とりあえず空から探してみるさ」

 

 オリビエの馴れ馴れしさに眉を顰めるものの、クロウは答える。

 

「どうやらクロウ君の方にも明確な当てはないみたいだね……

 ならばリィン君、“ハーメル”という言葉を調べてみると良いよ」

 

「ハーメル?」

 

 聞き慣れない名前にリィンが首を傾げていると、そこにレクターが口を挟んで来た。

 

「おい」

 

 普段の軽い飄々とした態度はどこに行ったのか、厳しい目でレクターはオリビエを睨み口を開く。

 

「テメエ……その名前をどこで知った?」

 

「ふふ……」

 

 不敵な笑みを浮かべて答えようとしないオリビエにレクターは舌打ちする。

 

「ちっ……その事といい、“オリビエ”と言う名前といい……お前、何者だ?」

 

「おや? オリビエなんて名前はそんなに珍しいかな?

 僕はしがない旅の演奏家さ……流浪の旅人だから出会いを求めて山で遭難する事だってあるさ」

 

 オリビエの飄々とした態度にレクターは苛立つ。

 

「おっと怖いお兄さんがいるから僕はこの辺で退散させてもらうよ」

 

「オリビエさん」

 

「皆まで言うなリィン君……

 この別れはあまりにも辛い。だからこそボクらの絆はかけがえの無いものとなるだろう……アディオス、ブラザー」

 

 オリビエはコートを翻し、リュートを鳴らしながら去って行った。

 

「えっと……」

 

 残ったのは何とも形容しがたい空気。

 張り詰めていたリィンは何だか急に馬鹿馬鹿しくなった気になってクロウを振り返る。

 

「とりあえずオリビエさんが言っていた“ハーメル”について調べてみませんか?」

 

「あんな変人の言う事を信じるのかよ?」

 

「確かにオリビエさんは変人ですけど……全く信用できないわけじゃないと思う……たぶん……」

 

 自信なさげなリィンの答えにクロウは肩を竦める。

 

「ま、当てがないのは確かだからな。ひとまずはそれで調べてみるか」

 

 レクターの反応を見る限り“ハーメル”の名前には特別な意味があるようだった。

 彼への――帝国政府に対してちょっとした意趣返しができるならばというくらいのノリでクロウは行動の方針を決める。

 

「…………ちっ……ちょっと待ってろ」

 

「レクターさん?」

 

「“ハーメル”を調べるならハイアームズ侯爵とドレックノール要塞の将軍と面会しろ。今そのための手紙を書いてやる」

 

「え……?」

 

「随分と大事じゃねえか」

 

 らしくないレクターの反応にクロウはほくそ笑む。

 

「流石に“ハーメル”が関わってくると俺の一存では決められないんでな……ったく本当に何者なんだあいつは」

 

 愚痴りながらもレクターは面会のための手紙を書くために《デアフリンガー号》へと戻って行く。

 

「あの人の意見は聞くんですね」

 

 レクターが戻るまで待ちぼうけすることになったリィンにアルティナが言葉をかける。

 

「アルティナ……」

 

 感情の起伏に乏しいアルティナは声や態度に不満だと主張している。

 だがそれ以上は何も言わずに踵を返す。

 

「…………失礼します」

 

 そう言い残してアルティナはその場から離れて行った。

 

「ちょ、アル……!?」

 

 ユウナが呼び止めようとするが、声を無視してアルティナは行ってしまった。

 

「何よ……私達よりその変態の方が信用できるっていうの!?」

 

「別にそういうわけじゃないけど……」

 

 オリビエの顔を思い出しながらリィンは唸る。

 

「でもユウナよりは信用できるかも」

 

 リィンの答えにユウナは眦を上げる。が、激昂することなくふんと鼻鳴らす。

 

「あっそ……ならもう勝手にすれば良いじゃない。行こうクルト君」

 

「ユウナ……」

 

 リィンに見切りをつけてユウナもまた去って行く。

 そんなユウナの背中にクルトはため息を吐く。

 

「リィン……もう少し言い方というものをだな」

 

「俺はむしろどうしてみんながオリビエさんを毛嫌いするのか不思議だよ……変態で変人なのは認めるけど」

 

「正直、そう言える君が少し心配になる」

 

 クルトは危機感のないリィンにため息を吐く。

 

「二人のフォローは僕がしておく。リィンもいくら《機神》があるからってくれぐれも油断はしないように」

 

「クルト……」

 

「それからみんなは戸惑っているだけで、本心からリィンを拒絶しているわけじゃない……

 君がいなくなって良い、なんて思っている人はいない。それを忘れないでくれ」

 

「………………」

 

 その言葉に応えず俯くリィンにクルトは苦笑をしてユウナ達の後を追って歩き出した。

 

「…………おい」

 

 クロウは立ち尽くすリィンの背中に声を掛ける。

 襲撃の後から思い詰めている事はクロウも気付いていた。

 

「今ならまだ間に合うぞ」

 

「…………いえ、クロウ先輩を付き合わせてしまうのは心苦しいですが、これは俺の問題ですから」

 

 頑な態度。

 お人好しな部分は変わらないが、自分の事には一線を引いて人を遠ざける態度はクロウの知っている“リィン”にそっくりだと思い出す。

 

「お前がそう言うなら構わないけどな」

 

 それ以上の追及はせずクロウは周囲を見回し、スタークと目が合った。

 

「あ……っ……」

 

 何かを言いかけたスタークは逡巡して踵を返して何処かへ行ってしまう。

 

「は……俺も他人の事は言えねえか」

 

 クロウは自嘲しながら《オルディーネ》を見上げて考える。

 

 ――何かが動き始めている……

 

 《結社》だけではない《鉄血宰相》も来るべき何かに向けて水面下で行動を始めている。

 彼らは“裏”で蠢きながら“リィン”という存在に最大限の警戒を持って見極めようとしている。

 そしてそんな彼らに対抗しようと《旧Ⅶ組》を始めとしたクロウの友人たちは動き始めている。

 

「俺は……」

 

 《蒼の起動者》であり、リィンの級友となり、その暗躍の中心に一番近いところにいるはずなのにクロウは何をすべきか答えを出せずにいる。

 “帝国の狗”を振る舞い続け、与えられた任務を贖罪として働かされることに楽だと感じ流されるままになっている自分を顧みる。

 

「…………二人だけか……殺せるもんなら殺してくれよ」

 

 そんな投げやりな事を考えながらクロウはリィンと並んでレクターが戻って来るのを待つのだった。

 

 

 

 

 

 








閃の軌跡NWのアニメで思ったのは、北の猟兵はがっつりとノーザンブリアの政治に首を突っ込んでいるんですね。
自分は猟兵稼業の責任をノーザンブリアに負わせないために適度に距離を保っているのだと考えていただけにちょっと意外でした。

というか一万人規模の猟兵団で、ノーザンブリア軍の影が残っている……
隣接している国はエレボニアとレミフェリアの二つ……遠いけどリベールでは猟兵を雇う事は禁止されている……
主な活動は帝国になるのかな?

サラ曰く焼討は北の猟兵の常套手段。
“死神”“戦争屋”と呼ばれる猟兵を名乗っているのに、綺麗な仕事をしているつもり?

なんというか帝国以上にやばい略奪国家じゃないかと思い始めています。
そりゃあ大義名分が整えば“北の猟兵”を排除しようとするのは当然の判断だと思います。




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。