今年最後の投稿になります。
閃Ⅲの序章分が終わったので次回以降の投稿は期間を開けると思います。
また、次回の投稿に合わせて表題のあらすじなどの修正を行う予定です。
一年間、お付き合い頂きありがとうございます。
次の一年もどうかよろしくお願いします。
出会いは最悪、その一言につきた。
「貴様よくも邪魔してくれたな!」
「訳わかんねえこと言ってんじゃねえよ!」
そいつはあまりに貴族らしからぬ女だった。
「貴様がいなければ、私はトワ君を抱き締めて華麗な着地を極めていたというのに」
嘆く四大名門貴族のお嬢様にクロウはこれが貴族の令嬢かと嘆いた。
ログナー侯爵から、娘が入学すると聞いていた。
場合によっては、《C》であることを彼女に明かして学院内での活動の協力者にすれば良いと言われたが、顔を合わせた瞬間にこいつに打ち明ける選択肢はないとクロウは判断した。
その判断は正しく、アンゼリカ・ログナーは四大名門の長女だと言うのに破天荒でありとても貴族らしくない貴族だった。
「ちっ……これだから貴族は」
「ふん、居眠りと遅刻の常習犯に私の事をとやかく言われる筋合いはない」
何の因果か、後の《Ⅶ組》の前身となる特別班として彼女を含む四人で特別実習なるものをさせられた。
最初は衝突ばかりだった。
しかしアンゼリカの行動力にいつしか乗せられ、導力バイクなるものを作る手伝いをさせられた。
トールズ士官学院に通うのは鉄血宰相に近付くための足場固めでしかなかったはずなのに、クロウはいつしかその生活に愉しんでいた。
「いって……くそっ……余計なこと思い出した」
地下まで転がって落ちたクロウは弾性のあるマットに大の字になって、かつての記憶を振り返る。
旧校舎で自分達がサラに同じように転がされたのは三年前。
その時間の長さにクロウが浸っているとパンッと乾いた音が鳴り響いた。
「なんだ?」
銃声にしては軽い快音。
何事かと体を起こしたクロウが見たのは、平手を振り抜いたユウナと頬を張り飛ばされたクルトの姿だった。
「…………しまった。くそっ! 見逃したか!?」
おそらくお約束なシーンがあっただろうことにクロウは見逃した事を悔やむのだった。
*
「で、何をしたんだクルト? ここはテンプレとしてユウナを押し倒したのか?」
「別に……貴方に説明する必要を感じません」
揶揄う口調のクロウにクルトは頬を抑えながら憮然と返す。
「おいおいつれない事言うなよ。それじゃあリィン、何があったのかリーダーに詳しく説明しろ」
「えっと……」
「言わなくて良い」
いきなり話を振られて困るリィンにクルトは睨むように釘を刺す。
「フンッ、これだから帝国の男子っていうのは……」
「別に帝国どうこうは関係ない気もしますが」
顔を赤くして文句を口にするユウナにアルティナの冷静な指摘が入る。
「その……災難だったな」
ユウナを止めようとしたリィンは止められなかったことを申し訳ないと思いながらクルトを慰める。
「別に……無様な体勢になってしまったのも修行不足だ……
それに偶然とはいえ女子に無用な恥をかかせてしまった――これも僕の未熟さのせいだ」
「そ、そうか……」
真面目なクルトの言葉にリィンは言葉を詰まらせる。
下手をすればクルトと立場が入れ替わっていたかもしれないだけにリィンにとって今回の事は他人事ではない。
「はあ……真面目なこって、誰かさんとは大違いだ」
クロウがそんなクルトにため息を吐き、続ける。
「で、四人とも、大きなダメージはないな?」
その言葉にリィン達はクロウに向き直る。
「いろいろ文句はあるだろうが、文句は一旦飲み込んでおけ……そして今はこの小要塞の攻略に集中しろ」
「何を偉そうに……」
クロウの言葉にユウナが真っ先に噛みつく。
「偉そうじゃなくて偉いんだよ。俺は“班長”なんだからな」
「っ……こんな茶番に本気で付き合うつもり?」
「博士の事は知っているが、茶番を仕掛ける暇人じゃねえよ……
まあみっしぃの方がどこまで本気かは分からねえがよ」
「だったら――」
「それとも不貞腐れてここにずっと引き籠ってるつもりか?」
「むぅ……」
「じゃあとりあえずお前らの武器を見せてくれ」
そう言ってクロウは班の武器を確認する。
クルトは双剣。それも導力を刃にしたオーブメント。
ユウナはトンファーに銃の機構を組み込んだガンブレイカー。
アルティナは《黒い戦術殻》の《クラウ=ソラス》。
そして――
「で、お前さんの武装は何だ?」
「俺の武器はこれです」
リィンはそれを抜いて見せる。
「それは……“太刀”だな」
「ええ、帝国では珍しいと思いますが、切れ味はちょっとしたものですよ」
クロウの呟きにリィンは頷く。
「ちなみに流派は?」
「《八葉一刀流》ですが、それが何か?」
「…………いや、何でもない」
顔をしかめるクロウにリィンは首を傾げる。
「とりあえず行くとするか、経験上、地上に出ればこのテストは終わりだ。とりあえずそれまでよろしく頼むぜ」
疑問を振り払うように頭を振ってクロウは仕切る。
「経験上……学年が下がったのは伊達じゃないって事かしら?」
「やはり少なくても彼にとっては三回目ということか……道理で慣れているはずだ」
「…………おい」
ユウナとクルトの呟きにクロウは半眼で睨む。
「えっと……とりあえず油断だけはしないようにしよう」
「それでは状況開始、ですね」
リィンはそんな二人にため息を吐きながら注意し、アルティナは淡々と戦闘の準備を進めるのだった。
*
「リィン・シュバルツァー」
徘徊する魔獣を倒し、その区画の安全を確保したところでクルトは表情を険しくしてリィンに話しかけた。
「ん? 何だクルト改まって」
太刀を納め呑気な返事をするリィンにクルトは不愉快そうに顔を歪める。
「君は……どうして本気を出さない?」
「え……?」
「なっ!? 手を抜いていたって言うの!?」
クルトの指摘にリィンは首を傾げる。
しかし、彼以上にユウナが大きく反応した。
「《八葉一刀流》……それは東方流派の集大成……だが君のそれは正直聞いていたほどじゃない……いや……」
無礼な事を言いながらクルトは違和感を言葉に戸惑う。
肩を並べて戦い、危なげなく魔獣を倒している。
リィンの立ち回りは決して悪いものではない。ユウナと共に足を引っ張ることもなく、さりとて突出することもなく無難に戦えている。
それなのにクルトはそれを本気を出してないと感じて、気付けば詰問していた。
しかし、クルト以上にユウナがその言葉に反応してリィンに詰め寄っていた。
「どうなのよ! 本当に手を抜いて戦っていたの!?」
「いや……そんなつもりはないんだけど」
リィンは決して手を抜いたつもりはない。
歯切れの悪い答えにユウナは考え込む。
「じゃあどういうことよ!?」
「クルトが誰と俺を比べているかは分からないが、俺は八葉一刀流と言っても《初伝》程度の実力しかないからきっとクルトの勘違いだ」
「初伝……ああ、そう言う事」
リィンの答えにユウナは得心が言ったと頷く。
「クルト君、いくら何でも《初伝》止まりの人をアリオスさんと比べちゃかわいそうよ」
「え……? いや……僕は――」
「何って言ったってアリオスさんは《風の剣聖》なのよ。帝国人なんかと比べるなんてそもそもアリオスさんに失礼よ!」
力強く言い切るユウナにクルトは思わず閉口する。
「聞き捨てなりませんね」
ユウナの言葉に応えたのは今まで一歩下がって様子を見るに徹していたアルティナだった。
冷めた目をした少女は淡々とユウナの言い分に抗議する。
「アリオス・マクレインは遊撃士の立場を利用してクロスベル独立を教唆し、留置場から脱獄した指名手配犯です……
そんな人物とリィンを比べる事の方が失礼ではないでしょうか?」
「なっ!? 勝手なこと言わないでちょうだい! 今でもアリオスさんにはファンは多くて……っ――」
言い返そうとしたユウナは途中で言葉を詰まらせる。
そんなユウナからアルティナは視線を外して冷たい目をクルトに向ける。
「貴方も聞いていた程ではないですね」
「…………どういう意味だ?」
「別に……帝国の武の双璧と呼ばれている《ヴァンダール流》……剛剣術と双剣術にどれだけ違いがあるか知りませんが、リィンが貴方に劣っているとは思えません」
「僕は別に……」
「内戦で役に立たなかった“守護の剣”にリィンを蔑む権利があるとでも言うんですか?」
「あ、アルティナ、流石に言い過ぎだ」
当の本人を差し置いて攻撃的に言い返すアルティナをリィンは窘める。
「事実かと……」
「それでも流派の事を――」
「随分、好き放題言ってくれるな」
リィンの言葉を遮って、クルトの剣呑な声が通路に響く。
「魔獣相手では本気になれなかっただけだ……
ヴァンダール流の本気、君の木偶人形で試してあげようか」
「そちらがその気なら――」
双剣を抜くクルトに対してアルティナは《クラウ=ソラス》を背後に出現させる。
「ちょっと待て二人とも!」
一触即発の空気にリィンは二人の間に立って仲裁する。
「おいおい、お前らはしゃぎすぎだ」
それを助けるようにクロウが口を挟んで来た。
「ったく……子供じゃねえんだからどっちが強いとか下らない事比べてんじゃねえよ」
呆れ切ったクロウをクルトとアルティナは邪魔をするなと言わんばかりに睨む。
「お前らはユーシスとマキアスか? 喧嘩ならここから出てからにしろ」
「誰ですかそれは? いや、とにかく二人ともここは抑えてくれ」
クロウの横槍に機先が緩んだと察してリィンは二人を宥める。
「っ……」
「…………」
どちらともなく双剣と戦術殻を納めて、リィンは一触即発の空気が霧散したことに安堵する。
「助かりましたクロウ先輩」
「…………はあ……これじゃあガキの引率だな」
聞こえるように嫌味にクルトはクロウを睨む。が、それだけで口を噤んで歩き出した。
「ちょ、ちょっとクルト君!?」
ユウナが無言で歩き出したクルトを追い、リィン達は一度肩を竦めて歩みを再開するのだった。
*
『その先が終点だ。とっとと入ってくるがいい』
そう放送に促されて、一同は広間へと入る。
「こ、これって……帝国軍の《機甲兵》!?」
目の前に膝を着いて鎮座している巨大な機械人形にユウナは目を丸くして叫ぶ。
「こんなに近くで見るのは初めてだが……」
クルトも並んで配置されている四つの機械人形に威圧感に息を飲む。
「これが……噂には聞いていた《機甲兵》なのか……」
「いえ……これは……」
「ったく、博士が思わせぶりな事言っていたからまさかと思ってはいたが、久しぶりだなオルディーネ」
『うむ、壮健そうで何よりだクロウ』
機械人形の一つに歩み寄ってクロウが声を掛けると、返事があった。
「しゃ、しゃべった!?」
「あれは《機甲兵》ではなく《騎神》です……
それにおそらく、この中に純粋な《機甲兵》は存在していないかと思います」
ユウナの驚愕の声にアルティナが答える。
「それはどういう意味なんだ?」
「それは――」
『オライオンを除く、各自は《ARCUSⅡ》が示す繋がりを印にそれぞれの機体に乗れ』
アルティナの言葉を遮って、シュミット博士がリィン達に行動を促す。
「《ARCUSⅡ》が示すって……」
リィンは戦術オーブメントを取り出して意識を集中してみると、確かに細い糸が機械人形と繋がっている感覚があった。
「でも、アルティナは……」
「おかまいなく、こうなることは事前に聞いています」
そう言ってアルティナは《クラウ=ソラス》の腕に抱えられて、広間の奥の階段の上へと退避した。
その姿を見送ったリィンは改めて自分と繋がりを感じる《白い機甲兵》を見上げた。
「これは……どうやって乗るんだ?」
首を傾げて他の人達はどうしているのかとリィンは振り返る。
「ちょ、何よこれ!?」
訳が分からないと叫ぶユウナは光となって《赤色の機甲兵》に呑み込まれた。
「くっ……いったい何が!?」
クルトも同じように《緑色の機甲兵》に光となって呑み込まれる。
「二人とも――」
『大丈夫です、リィンさん』
咄嗟に駆け出そうとしたリィンを手の中の《ARCUSⅡ》からの通信が制止する。
『あれは霊子変換技術によって、御二人を機体の“核”に取り込んだだけですから大丈夫です』
「ちょ! 何よこれっ!?」
膝を着いていた機械人形は勢いよく立ち上がり、混乱したように自分の手を見下ろす。
その仕草はとても機械仕掛けの人形とは思えない程に自然な人間の動きだった。
「これは……僕が《機甲兵》になっているのか?」
クルトを取り込んだ機械人形は恐る恐ると言った様子で立ち上がり、体を確かめるように動かす。
「……凄い技術だな……えっとそれでどうやればこれに乗れるんだ?」
『あのあの……“霊子変換技術”はその子には使われていないので、私のナビゲーションに従ってください』
「了解……えっとティータさんで良かったんだよな?」
『…………はい、ティータです。ティータ・ラッセル……よろしくお願いしますリィンさん』
リィンはティータの指示に従って《白い機械人形》の背後に回り込む。
そこには梯子が用意されており、促されるままに昇ると機械人形の背中が人一人が入れそうな空間が開いていた。
「ここに入れば良いのか?」
『はい、起動はこちらでやるのでリィンさんはその子に乗ってください』
言われるがままにリィンは狭いコックピットに乗り込むと、ハッチが閉じて暗闇に閉ざされる。
『《ARCUSⅡ》と《ティルフィングS》のマッチングテスト開始します』
ティータの言葉を合図に一瞬、リィンの体に電気が走るような衝撃が走る。
『――っ……《ティルフィングS》とリィンさんの接続成功しました!』
「え……?」
まるで成功しないことが前提の言葉にリィンは驚き、次の瞬間暗闇が晴れて視界が開ける。
場所は変わらない小要塞の広間。
ただし生身の時とは違い、視点は高くなり、体の感覚も変わっていた。
まるで巨人になったような感覚にリィンは驚きながらも立ち上がる。
『《神機》ドラッケン、《神機》シュピーゲル、《機神》ティルフィングS、《蒼の騎神》オルディーネ……全ての機体の起動確認できました』
『よろしい』
ティータの報告にシュミット博士が鷹揚に頷く。
『それでは最後のテストを始める』
そう宣告すると、広間の中央に巨大な陣が広がる。
「これって!?」
「導力魔法!? いや、何か出てくる?」
「おいおい、マジかよ」
ユウナとクルトがその霊子の高まりを機体のセンサーで感じ取り異常に身構える。
そしてクロウはこれから起きる事が何なのか察しているようだった。
導力の光が集まって膨張し、人型となる。
「これも機甲兵なの?」
「いや……《灰の騎神》――おいシュミット博士! これはどういうことだ!?」
ユウナの呟きにクロウが答え、現れた《灰の騎神》についての説明を求める。
『それは《灰の騎神》の姿をさせた《魔煌兵》に過ぎん。それの撃破をもって今回のテストを終了とする』
「おい! 説明になってないぞ! ちっ――切りやがった!」
一方的に切られた通信にクロウが悪態を吐く。
「クロウ先輩! 来ますっ!」
リィンの声にクロウは意識を《灰の魔煌兵》に切り替える。
《灰》は太刀を抜き、陽に構える。
「ちっ――お前ら油断するなよ!」
「な、何言ってるのよ!?」
「ユウナ、今は目の前の敵に集中するんだ!」
「どうやら手強い相手のようだな」
一同は油断なくそれぞれに用意されていた武器を抜いて構える。
「トールズ第Ⅱ分校、Ⅶ組特務科、全力で目標を撃破するぞっ!」
そしてクロウの号令によって四対一の巨人戦が始まった。
*
帝都ヘイムダル、バルフレイム宮。
大会議室の導力モニターには五つの機械人形が戦う姿が映し出されていた。
「単刀直入に聞こう。オズボーン宰相……
彼は“リィン・シュバルツァー”かな?」
オリヴァルトの鋭い眼差しから投げかけられた質問に鉄血宰相ギリアス・オズボーンは首を横に振る。
「いいえ、彼は“リィン・シュバルツァー”ではありません」
「しかし彼はレーヴェ君にしか起動できないようにロックされた《ティルフィングS》を起動することに成功した……
これは彼が“リィン君”だという証明にならないかな?」
《機神》ティルフィングは内戦で活躍した四機と、当時はまだロールアウトしていなかった一機の計五機が存在している。
新Ⅶ組のリィン・シュバルツァーに用意したのは、その未完成だった機体。
だが、そもそもこの《機神》は誰にでも乗れるものではない。
「《機神》ティルフィングは宰相も知っての通り、初期《ARCUS》を操縦系統に使用したこともあり、乗れる者は限られている……
特に《ティルフィングS》は組み込まれた《雲の欠片》の認証がレーヴェ君にのみ適応されて、Ⅶ組の子でも起動できない置物となっていた」
「ええ、存じております」
「ならば《ティルフィングS》が認めた彼は“リィン君”で間違いないのではないかな?」
「いいえ、それでも“彼”は“リィン・シュバルツァー”ではあり得ない」
オリヴァルトが並べる証拠にギリアスは認めないと主張する。
そんな頑なな態度にオリヴァルトは肩を竦める。
「オズボーン宰相、いったい何故認めようとしないのかな?」
「皇子こそ、何故彼を“リィン・シュバルツァー”にしたがるのですかな?」
放蕩皇子と鉄血宰相は睨み合いながら、導力モニターに流れる戦闘を横目に続ける。
「ではクロウ君を《第Ⅱ》に送り込んだのは貴方の差し金ではないと?」
「ええ、アームブラストについては彼の自業自得と言うものです。“リィン・シュバルツァー”を名乗るあの者の監視はアルティナ一人で十分でしょう」
「……それでも監視をつけたのは否定しないのだね」
「あれは確かに“リィン・シュバルツァー”ではない。しかし彼は“リィン”が残した希望ならば見守る価値はあるでしょう」
「やれやれ……流石鉄血宰相か。既にあの“リィン君”がどんな存在なのか掴んでいると……
それは是非とも教えて頂きたいものだね」
「フフ、それは貴方への宿題としておきましょう」
オリヴァルトの質問にギリアスは今は答える気はないと告げる。
「ところで皇子、貴方は以前のリィン・シュバルツァーとの会話を何処まで思い出せているのですかね?」
「それは……」
答えを窮するオリヴァルトの反応にギリアスはその程度を推測して笑みを浮かべる。
「翼と剣をもがれ、最後の悪あがきたる“第Ⅱ分校”……
貴方が《彼》をどう扱うのか、見極めさせていただきますよ。オリヴァルト皇子」
ギリアスは席を立ち、最後に告げる。
「私と……リィン・シュバルツァーを失望させないことを期待していますよ」
そう言ってギリアスは振り返り、導力モニターを見上げる。
『くっ――』
《白の機神》が《灰の魔煌兵》の一撃に耐え切れず、その手から太刀が弾き飛ばされる。
返す刃が《白》に振り下ろされる。
『――させない』
その間に割って入った《赤の神機》が《灰の魔煌兵》の太刀を受け止める。
見ればそれぞれの機体に霊的なリンクの光が宿っている。
《ARCUSⅡ》による戦術リンクの初期駆動が定着し、最適なタイミングで《緑の神機》が太刀を受け止められている《灰の魔煌兵》に迫る。
『オオオオオオオオオオオオオッ!』
一息で繰り出される双剣による無数の斬撃が太刀に打ち込まれ、《灰》の手から弾き飛ばされる。
『――――』
《灰の魔煌兵》は咄嗟に後ろに跳び――
『逃がすかよ』
《蒼の騎神》が投げ放ったダブルセイバーによって横撃されて膝を着く。
『今だ! やっちまえリィンッ!』
《蒼の騎神》の叫びに《白の機神》が動く。
背後に落ちた太刀に目もくれず、《灰の魔煌兵》に肉薄すると拳を握り締める。
『八葉一刀流……八の型――《破甲拳》ッ!!』
その拳は《灰の魔煌兵》の胸を打ち砕き、仰け反って倒れた《魔煌兵》は霧散して消滅した。
強敵を打ち倒した新しい《Ⅶ組》は機体を降りて互いを労い合う。
「…………リィンは……もういないのか……」
新たな仲間と語り合うその少年の姿にギリアス・オズボーンは寂し気に呟いて、執務室を後にするのだった。