界の軌跡、まあ終わらないとは思っていました
エクスキャリバーがエスカッションを使っている
残滓、レグナントの存在
強化型○○・○○○○○○が出て来る
ーーの消失
……なんで?
とりあえず予定していた宇宙戦はなしの方向になりそう
「アルティナ!」
軍用導力車から降りたリィンは海上要塞の惨状や、横転したデアフリンガー号を立て直している機甲兵たちに目もくれず少女の姿を探す。
「リィン……?」
《クラウ=ソラス》と共に作業していたアルティナは焦った様子で駆け寄って来たリィンに面食らう。
「…………怪我はないのか?」
「え……ええ……はい……」
その言葉を聞いてリィンは安堵の息を吐く。
そんなリィンの反応にアルティナは戸惑う。
リィンもまたそのアルティナの反応に遅れて気付き、決まりが悪そうに一歩下がる。
「…………申し訳ありません」
「え……?」
突然の謝罪にリィンは首を傾げる。
「私がいながらリィンの《ティルフィング》を賊に奪われるなんて……こんな事になるならランディ教官は見捨てておくべきだったかもしれません」
「いや、《ティルフィング》よりもアルティナが無茶しなくて良かったよ」
「…………そ、そうですか……」
歯に衣着せぬ物言いにアルティナはたじろぐ。
「…………こほん、二人とも」
そのやり取りを横で聞いていたユウナは咳払いをして自己主張をする。
「あたしたちも結構危ない目に合っていたんだけど?」
「え……?」
言われてリィンは周囲を見回せば、要塞に残っていた生徒達の視線が――そして自分に遅れて導力車から降りて来た生徒達の生温かい視線に気付く。
「うふふ、良いですねアルティナさん。少し妬いてしまいます」
「はっ……見せつけてくれるじゃねえか」
「べ、別にアルティナの能力を考えれば無事だという事は分かっていたぞ」
揶揄うミュゼとアッシュの言葉にリィンは取り繕うように弁明する。
「でもリィンさん。お店で事件の話を聞いた時に真っ先に――」
「ティータ、余計な事は言わなくて良いから……
それで被害はどれくらいなんだ? 教官達はどうするって?」
「今、ウォレス准将を交えてデアフリンガー号の一号車で会議をしています」
リィンの強引な話題転換にアルティナが答える。
「《第Ⅱ》の被害はクルトさんとクロウ先輩だけのようですが……ユウナさん、賊は本当にクロワール・ド・カイエンと名乗っていたんですか?」
「うん……あれからまた導力ネットに犯行声明を上げているけど見る?」
「お願いします」
ミュゼは厳しい面持ちでユウナに促されて導力端末へと向かう。
「…………クロウはオルディーネごと攫われたのか?」
「はい……」
「クルトの坊ちゃんも派手にやられたみてえだが、生きてんのか?」
「生きてはいます……ですが……」
アッシュの質問にアルティナは口ごもる。
「もしかしてクルトの身に何か――」
「放せっ!」
良くない予感を感じたが、それを否定するようにクルトの珍しい叫びが響き渡る。
「落ち着けクルト!」
「僕は十分に落ち着いてる! それより《シュピーゲル》は何処だ! 今すぐにカイエン公を追い駆けないと!」
「無茶だ! お前の《シュピーゲル》は両腕がないんだぞ! そんな状態で追ったってまた負けるだけだろ!」
「っ――僕はまだ負けてない!」
そこには今からでも飛び出そうとしているクルトを必死に引き留める男子たちの姿があった。
「…………あれがクルト?」
「はっ! 随分と頭に血が昇ってんじゃねえか」
激昂するクルトにリィンは目を疑い、アッシュはここぞとばかりに面白がる。
「大破した《シュピーゲル》から救助して目を覚ましてから、ずっとあの様子です」
ため息を吐くアルティナに他の生徒達の苦労がにじみ出る。
「それだけ負けたのが悔しかったんですね」
普段物静かな好青年であるクルトの激情を剝き出しにした姿にティータは知り合いの顔を思い浮かべる。
「御二人とも、クルトさんを止めてもらえますか?」
「分かった」
「しゃあねえが、後で弄るネタにはなりそうだな」
アルティナのお願いにリィンとアッシュは叫び散らすクルトに向かって歩き出した。
*
日付が変わった深夜。
静謐に包まれたオルディスの海が不意に大きく揺れた。
「おい、何だあれは?」
埠頭の警備員が最初にそれに気付く。
月夜が照らす海が盛り上がっていく。
「津波か……いや……」
海の中から現れたのは巨大な機械人形だった。
機甲兵と比べてもなお大きい。
紺碧の青にカラーリングされた巨人は海水を滴らせ、その巨大な足でオルディスの港に上陸する。
「う……うわあああああああああっ!」
巨人が一歩歩く度に大地は地震が起きた様に揺れる。
巨人が進む。
港に積まれた貨物コンテナや停泊している導力車を薙ぎ払い、踏み潰して進む。
そしてその巨人が過ぎ去った後に、もう一体の巨人が海の中から続く。
「あ……あ……憲兵隊……いや統合軍に通報を――」
警備員は我に返って通報しようと駆け出し――
「その必要はない」
「ひっ――」
振り返った警備兵は突き付けられた銃口に悲鳴を上げた。
オルディスの街は深夜だというのに騒然となる。
海から現れた巨大な機甲兵はその存在を誇示するように港から外へと街を踏み荒らしながら進んでいく。
更には街中には色とりどりの猟兵達が混乱する住人たちを銃や剣で脅し、抵抗する者を制圧していく。
「何が起きているというのだ?」
カイエン公爵家城館で、街で起きた騒動を見下ろしたユーシスは絶句する。
「どうやら尋常ならざる事態のようだ」
同じものを見てアンゼリカは肩を竦める。
「あれもジュノー海上要塞で建造されていたらしい新型の魔煌機兵なのかね?」
ゴライアスに相当するだろう巨体。
それが十二機も海から現れてオルディスの中を歩いて進み、街を囲む城壁を体当たりで崩して外へと出て、まるで壁になるように整列する。
「二人とも、これを見たまえ」
窓の外を見入っている二人をパトリックが呼ぶ。
「どうした?」
ユーシスは促されるままにパトリックの背後に立って、彼が開いている導力端末の画面を覗き込む。
そこには《蒼の騎神》が魔煌機兵に破壊される映像が流れていた。
「これは……」
「クロウ……」
最後には倒れた《蒼》の首が《白のティルフィング》の太刀によって掲げられた姿にユーシスとアンゼリカは絶句する。
「――見て頂けただろう! クロスベルやジュライで活躍した帝国の騎神は決して無敵の兵器などではない!」
映像は切り替わり、オルディスの広場が映し出される。
映像の正面には精悍な顔つきの男。
その背後には立てつけられた十字架に磔にされた首も両腕も失った《蒼の騎神》の無惨な姿が晒されていた。
「オルディスの民よ! 帝国貴族よ! そして名もない戦士たちよ!
私、クロワール・ド・カイエンはこの選ばれし者にのみ乗れるとされる《ティルフィング》と四機の《アスモダイン》を持って今の偽りのエレボニア帝国を打ち砕くことをここに誓おう!」
クロワール・ド・カイエンの演説は続く。
彼は内戦で放逐された貴族や摘発から生き延びた猟兵を纏めた軍隊でヘイムダルへと攻め込むと言っていた。
しかし、ユーシス達は最初にまず画面の男を疑った。
「この男がクロワール・ド・カイエンだと!?」
「髭はどうしたというのだ!? それに体つきも一回り大きくなっていないか!?」
「ふ、二人とも落ち着くんだ。声を聞けば確かに元カイエン公……のはずだ……たぶん……」
パトリックは自信なさげにしながら二人を宥める。
「彼が本物かどうかは一先ず置いておくとして、何故カイエン公が《ティルフィング》と共にいる! あれはリィンの機体のはずだ!」
「それにいくら多数に無勢だったからと言って、クロウがまさか……」
憤るユーシスと画面の中の《蒼》の姿にアンゼリカは彼の安否を気にする。
「…………どうする? どうやら街には猟兵が放たれているようだが」
パトリックの言葉にアンゼリカは深呼吸をして思考を切り替える。
「ユーシス君、君の《紅のティルフィング》は今どこに?」
「領邦会議の前にラインフォルトから帰ってきたが、バリアハートに置いてきた……
会議には無用だと思ったが……ちっ」
己の先見の明のなさにユーシスは舌打ちをする。
そんな彼にアンゼリカとパトリックは顔を見合わせて頷き合った。
「ではユーシス君。君は裏口から脱出したまえ」
「アンゼリカ先輩?」
「たしか今、オルディスにはウォーゼルが滞在していたはず。彼と合流するといい」
「パトリック……しかし……」
「ユーシス君、聞こえているだろ?」
アンゼリカに言われて耳を澄ませば、開いた窓から銃声と機甲兵に似た駆動音が近付いて来ているのにユーシスは気付く。
「内戦の時と同じだよ。今の公爵邸には領邦会議で各地の地位の高い貴族が集まっている」
「元カイエン公はおそらく僕達を人質に、要求にあるラマール州の独立や収監された猟兵達の解放を求める腹つもりなのだろう」
「ならばここで逃げ出すわけには――」
「ユーシス君、君にはこの事態に対抗できる《ティルフィング》がある……
それにリィン君の《ティルフィング》を使われている事。海上要塞やトワの《第Ⅱ》がどうなっているのかも気になる……
君が行って確かめて来てくれたまえ」
「貴族として元貴族の後始末を帝国政府に丸投げするわけにはいかないからな……
とは言え、あれだけの機甲兵達をどうにかする手段を僕達は持ち合わせているわけでもない」
どこにこれだけの手勢を潜めていたのか感心するが、これでまた政府からの貴族の取り締まりが厳しくなりそうだとパトリックはため息を吐く。
「元カイエン公に賛同しそうな領主たちの説得は僕達が何とかする……
ユーシス、君には君にしかできない最善を尽くしてくれ」
「パトリック……」
「そう言う事だ。ユーシス君がいないという事に関しては……そうだね、ラクウェルに夜遊びに行っていたと言い訳しておくよ」
「アンゼリカ先輩……」
おどけて言い訳の内容を決めるアンゼリカにユーシスはため息は吐く。
「…………あまり問答をしている暇はないか」
屋敷の中も、起きた領主たちが状況を把握し始めて騒然とし始めている。
動くならば早く決断しなければならない。
「……分かった」
ユーシスもそれ以上の役割分担の案を思い浮かばずに、後ろ髪を引かれながらも公爵邸からの脱出を試みるのだった。
………………
…………
……
「…………まさか貴女が元カイエン公についているとは……」
オルディスの人気のない路地裏でユーシスは一人の女性に追い詰められていた。
「シャロンさん……貴女は何故、あんな男に協力する? どうしてアリサの下に帰らない?」
掠めたナイフの傷は決して大きくはない。
しかし小さな傷に反して体は痺れて動かなくなってくる。
「…………」
元トールズ士官学院第三学生寮の寮母だったメイドはユーシスの質問に答えず、指を動かす。
「くっ――」
途端、闇夜の中に線が走る。
ユーシスの手足はシャロンの鋼の糸に四方から縛られる。
「…………ここまでか……」
無念にユーシスは目を伏せ――
「間に合ったか!」
シャロンの短剣が十字槍に弾き飛ばされた。
*
「帝都市民、並びに帝国の全国民の皆さん――ご機嫌よう……
エレボニア帝国政府代表。ギリアス・オズボーンである」
鉄血宰相ギリアス・オズボーンの言葉が導力ネットを通して、帝国中に流された。
「――諸君も、既にご存知かと思う……
一年半前の内戦を主導したクロワール・ド・カイエンが再び帝国に姿を現し、あろうことかラマール州の“独立”と内戦の罪で収監された元貴族と猟兵達の解放を要求すると言う愚にもつかない宣言を行った」
画面の中のオズボーンは拳を握り弁舌を振るう。
「帝国は今、内戦を経て貴族と平民は手を取って前に進む事を選んだ……
しかし彼はそれを否定し、もう一度あの内戦を起こそうとしている! これは許されざる蛮行だ!」
そして映像が切り替わりオズボーンの演説は続く。
「これを見て欲しい……
クロワール・ド・カイエンはあろうことか、彼が徴用して利用した《蒼の騎士》を嬲りものとした!
彼が使っている《機甲兵》もトールズ士官学院の生徒から盗み出したもの!
武を尊ぶ帝国人にあるまじき行為であり、人として唾棄するべき愚行だと言わざるを得ない!」
画面はオズボーンに戻る。
「クロウ・アームブラストは内戦の罪を後悔し、今日まで罪を償うために様々な方法で帝国に貢献してきた……
そう、例え学年が下がったとしても腐らず、卒業するはずだったトールズを一年生から真面目にやり直しているにも関わらず、彼の贖罪を前カイエン公はその償いを踏みにじった!」
学年が下がったと強調するオズボーンは同情するように画面の向こうの視聴者に訴えかける。
「諸君――果たしてそのような“悪意”を許して良いのか!?
誇り高き帝国人である我々がこの暴挙を許すのか!?
否――断じて否! 鉄と血を贖ってでも、正義は執行されなくてはならない!
演説は熱を帯びて見ているものを引き付ける。
「これは紛う事なき『国難』である。しかし、同時にこれは最初の試練でもある!
内戦を経て、和解した《貴族派》と《革新派》。今こそ我々は一丸となって、古く悪しき貴族の象徴たる巨悪と戦う時である!」
オズボーンはそこで一呼吸の間を入れて、続ける。
「このギリアス・オズボーンが帝国政府を代表し、陛下の許しを得て、今ここに宣言させていただこう!
正規軍、統合軍を問わず、帝国の“力”を結集し……
クロワール・ド・カイエンという“悪”を正し打倒するために、彼の者の宣戦布告に対して徹底抗戦にて応じる事を!」
*
「…………また戦争を始めると言うのね」
その演説をアリサはラインフォルト社の最上階で聞いていた。
アリサはため息を一つ吐くと、おもむろに立ち上がった。
「お祖父様、母様、留守をお願いするわ」
「アリサ……」
卓を囲んでいたグエンは突然のアリサの言葉に言葉を詰まらせる。
対して、最新の導力車椅子に座っていたイリーナは納得したように頷いた。
「そう、行くのね……アリサ、分かっていると思うけど……」
「分かっているわ母様、あそこにはシャロンもいる」
ガイウスからの連絡と《蒼》と戦っていた中にいた一機の戦い方にアリサは確信を得ていた。
「とりあえず《ティルフィング》を持って現地に向かうわ。そこで何が出来るかは向こうで考えるわ」
「そう……ちゃんと考えているのなら好きにしなさい」
どれだけ忙しくても、毎日《機神》のシュミレーター訓練を続けているアリサにイリーナは異論を挟む事はしなかった。
「とりあえずアルバレア家に連絡、《紅のティルフィング》を空輸してもらって帝都で受け取るとして……
あとは一応マキアスの動向の確認とユミルから《青》も借りておこうかしら?」
イリーナとの会話もそこそこにアリサは端末を操作して、いくつかの導力メールを手早く送信する。
「それじゃあ母様、お祖父さま。行ってきます」
あっという間に準備を済ませると二人の家族の返答を待たずにアリサは部屋を飛び出した。
「ううむ……アリサめ、ますますイリーナに似てきたな」
「あら、それはどういう意味かしら父様?」
思わず零した愚痴をイリーナが聞き咎め、グエンは首を竦めた。