閃の軌跡Ⅲ ―偽りの仮面―   作:アルカンシェル

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83話 レクリエーション

 

 

 四日間のテストが終わったその日、第Ⅱの生徒たちは何故か水着に着替えてクラブハウスのプールに集合させられていた。

 

「これは……」

 

 目の前に広がる光景にリィンは首を傾げる。

 プールにはみっしぃが浮かんでいた。

 正確に言えば教官のみっしぃではなく、等身大みっしぃのフロート。

 他には浮き輪にビーチボールなど、普段の授業の水練では馴染みのない遊具の数々にリィンだけではなく生徒たちも困惑する。

 

「集まったな」

 

 そんな生徒たちの戸惑いを他所に水着に着替えたオーレリアが他の教官たちを従えて生徒たちの前に立つ。

 自然と生徒たちは姿勢を正し、オーレリアの言葉を待つ態勢を取る。

 その姿にうむっとオーレリアは頷き、口を開いた。

 

「まずは四日間に及ぶ試験、御苦労だった」

 

 最初に労いの言葉を――

 

「加えてオルディスから端を発した内戦の後始末……

 かつて貴族連合の将だったと者として、そなたたちの尽力に感謝しよう」

 

 クロワールが起こした事件に思うところがあるのか、オーレリアは感謝を述べる。

 

「さて、そんなそなたたちの働きを労うために、我々はちょっとしたレクリエーションを企画させてもらった」

 

「それがこの遊具ですか?」

 

 オーレリアの言葉にリィン達は改めてプールに浮かぶものに目を向ける。

 

「そうだ。特別演習を一人も欠けることなく生き残り、定期考査も終わった……

 存分に息抜きをするがいい」

 

 宣言するように告げられた言葉に生徒たちは顔を見合わせて、困惑が続く。

 

「分校長、自由参加なら俺は辞退してもよろしいでしょうか?」

 

 そんな空気の中、リィンは遠慮することなく手を上げた。

 

「博士たちに頼んでおいた“剣”が既に仕上がっているようなので、その調整をしたいんですが」

 

「そ、そうだよな。来月の夏至祭レースのこともあるし、次の特別演習だってまた修羅場になるかもしれないなら遊んでいる暇なんてないんじゃないか?」

 

 リィンの言葉に同調する言葉を生徒たちがもらす。

 

「それに……」

 

 生徒たちは恐る恐ると言った様子でオーレリアの背後に控えているミハイル教官の顔色を伺う。

 

「…………」

 

 水着に着替えているものの、納得していないと言わんばかりの彼の態度に生徒たちは委縮する。

 

「ふむ……アーヴィング教官、何か問題があるか?」

 

 生徒たちの視線を感じ取り、オーレリアはミハイルに声を掛ける。

 

「いえ、自分に異論ありません」

 

「え……?」

 

 まさかのミハイルの言葉に生徒たちがざわつく。

 生真面目で堅物の教官である、ミハイルが遊びを認める異常事態に生徒たちは彼の正気を疑う。

 

「ククク、普段どういう風に見られているか良く分かるな」

 

「く……」

 

 オーレリアに笑われるがミハイルは唸る。

 別に普段の姿をどう捉えられているか気にするつもりはない。

 主任教官として自分が引き締め役となり、甘やかすのはトワやみっしぃに任せれば良いと割り切っている。

 しかし、今回ばかりは話は別になる。

 

「ではアーヴィング教官、手本を見せてやれ」

 

「はっ!」

 

 オーレリアに促されていっそう仰々しくミハイルはプールサイドに立つ。

 生徒たちの視線を一身に受けながら、ミハイルは先程のリィンと生徒たちの言葉を思い出す。

 皇帝陛下や宰相からのお褒めの言葉に慢心せず、テストが終わった直後にも関わらず、次の特別演習に意識を向ける事については頼もしくもあり、危機感を覚えた。

 

 ――まるで学生時代のクレアのようだな……

 

 脇目も振らずに自分を高める事に邁進し続けた従妹の姿が生徒たちに重なる。

 もちろん細部は違うが、彼女のように笑わない氷の兵士を増産する気はミハイルにはない。

 

 ――そのためならば今日くらいは道化を演じよう……

 

「ミハイル・アーヴィング……いくぞっ!」

 

 気合を吐き、ミハイルはプールへと跳ぶ。

 

「ミハイル教官!?」

 

 飛び込むのではなく、踏み切って跳んだミハイルはみっしぃフロートへと足を乗せ――滑って盛大な水柱を立てて水の中へと沈んだ。

 

「うむっ!」

 

 オーレリアはその結果に満足そうに頷き――

 

「ヴァンダール、シュバルツァー。姉弟子と命じる――続け」

 

「続けって……分校長……」

 

 ミハイルの盛大な一番手に気後れするクルトだが、リィンはため息を吐いた。

 

「分かりました」

 

「リィン!?」

 

「クルト、こういう時の姉弟子に逆らっても無駄なのは分かり切ってるだろ?」

 

 遠くを見つめるリィンにクルトは顔を引きつらせた。

 

「リィン、君は洗脳されて――」

 

「二番手、リィン・シュバルツァー……全力で行きます」

 

 クルトの言葉を置き去りにして、リィンはプールへと踏み切って跳ぶ。

 

「一つっ!」

 

 ミハイルが着地に失敗したみっしぃフロートを蹴って更に跳ぶ。

 

「二つっ!」

 

 同じように浮かぶ浮き輪を蹴って、更に一歩。

 

「っ――三つっ!」

 

 そしてビーチボールを蹴り、プールの中央へ。

 その先に足場はなく、三歩目の飛距離も小さい。

 勢いは完全になくなり後は、リィンが沈没するのを生徒たちは見守り――

 

「――四つっ!」

 

 リィンは一度だけ水面を蹴り――わずかに跳んでから水柱を上げてプールに沈んだ。

 

「おおおっ! 今、水面を蹴ったぞ!」

 

「達人すげえっ!」

 

「もしかしてクルト君も……」

 

「っ……!?」

 

 リィンの曲芸に興奮した生徒たちは次はクルトの番だと期待に胸を膨らませる。

 

「いや……待ってくれ……」

 

 あんな大道芸を自分に期待されても困るとクルトは生徒たちからの視線に怯む。

 

「ふむ……仕方がない弟弟子だ。オルランド、みっしぃ手伝ってやれ!」

 

「うっす!」

 

「みししっ!」

 

「え……?」

 

 気付けばクルトは右腕をランディに、左腕をみっしぃに掴まれていた。

 

「待ってください! まさか!」

 

「観念しろクルト」

 

「みしし、今日はみんなでエンジョイしようネ☆」

 

「分かりました! 分かりましたから――」

 

「ティオ助に自慢できるなっ!」

 

「エンジョーイ!」

 

「「みっしいいいいっ!」」

 

「うわあああああああ――っ!?」

 

 二人の教官によってクルトは高く投げ飛ばされ――そのままプールへと落ちて水柱を上げた。

 

「えっと……良い子は真似しちゃダメだからね」

 

 トワが取って付けた注意を生徒たちに告げ、オーレリアは改めて生徒たちを促す。

 

「さて、改めて言おう《第Ⅱ》の生徒たちよ。今日は存分に“息抜け”」

 

 

 

 

 

 最初は戸惑ったものの、ミハイルの体を張った音頭によって生徒たちは恐る恐る遊び始める。

 普段は水練にしか使えないプール。

 テスト後の解放感もあり、更には日に日に暑くなっている気温もあり、十分もすれば生徒たちは思い思いに遊び始める。

 更には軽食やドリンクなども用意されており、事務員を兼ねた執事が――

 

「子猫ちゃんたち、喉が渇いたならこちらで冷たいドリンクをどうぞ」

 

「こ、困りますアンゼリカ様……こんなところで……」

 

「フフ、久しぶりだねゼシカ君……どうだい? 放課後、私と――」

 

「おい……」

 

 クロウは執事服を纏ったアンゼリカの後頭部を叩く。

 

「痛いじゃないかクロウ? いきなりご挨拶だね」

 

「ご挨拶じゃねえ! 何でお前がここにいんだよ!?」

 

 クロウは思わず突っ込む。

 ノルティア州の領主の令嬢が何故トールズ第Ⅱのレクリエーションに執事の格好をしているのかと問いただす。

 

「ふ……今月からプール開きだと教えてくれたのは君だろ?」

 

「だからってなあ……」

 

「そこで! ラマール州での働きを労いたいと個人的にトワに頼み込んでバイトと言う名目で働かせてもらったのさ……

 ああプールの後はグラウンドでバーベキューの用意もしているから安心してくれたまえ」

 

「そこまでするか……」

 

 アンゼリカの答えにクロウは呆れる。

 

「まあ建前はそれとして、やはりリィン君の事が気になってね」

 

 そう言ってアンゼリカは水面に浮かんでいるリィンに視線を向ける。

 

「ラマール州の貴族ではない部外者だったとはいえ、リィン君に今回の事件の後始末を押し付けるような事になってしまったからね……

 だが、あの様子だとミュゼ君とアルフィン皇女にすっかり口説き落とされたかな?」

 

「それを本気で言ってるのか?」

 

「…………」

 

 クロウの言葉にアンゼリカは浮かべた笑みを消して黙り込む。

 

「そんなに状況は悪いのかい?」

 

「お前はどうなんだよ? 例えばセドリック皇子と勝手に婚約を決められたとしたら」

 

「それがログナー家とノルティア州を守るためなら、私は受け入れるよ。それが“貴族の義務”というものだ」

 

「はっ……あのアンゼリカがそんな事を言うとは大人になったじゃねえか」

 

「……貴族としてはだ……個人としては……まあセドリック皇子もすっかり逞しくなられたが……

 いや、やはり私は美少年よりも美少女を侍らせたい!」

 

「前言撤回だ……お前はやっぱりゼリカだ」

 

 クロウは重々しいため息を吐いて肩を竦める。

 

「私に出来る事は何でもするのだが、もちろんユーシス君やハイアームズ卿もそう言っているのだけどね」

 

「それがあいつの何の助けになるって言うんだ?」

 

「いや……しかしだなクロウ……」

 

「余計な事はすんなよ。まだリィンだって全部を納得できているわけじゃねえんだから」

 

「…………いや、そうだな」

 

 クロウの忠告に、アンゼリカは頷く。

 

「今日の所はトワの艶姿を目に焼き付けて我慢するとしよう」

 

「お前は本当にぶれないなあ」

 

 そんなアンゼリカにクロウは呆れ――

 

「ふふ……仲が良いのね」

 

「げ……」

 

「おや……初めて見る子猫ちゃんだね」

 

 アンゼリカは声を掛けてきた小さな少女に佇まいを直す。

 

「私はアンゼリカ・ログナー……気軽にアンお姉ちゃんと呼んでくれたまえ」

 

「これはご丁寧に、私はイソラ・ミルスティンと言います」

 

「ミルスティン……? 言われてみればエマ君にどことなく似ているような……」

 

「ええ、エマの家族です」

 

「ほう……エマ君の……これは将来が楽しみな子だね」

 

 アンゼリカは水着姿のイソラを上から下へと見て笑みを浮かべる。

 

「おいイソラ。お前はこいつに近付かない方が良いぞ」

 

「おいおいクロウ。私とイソラ君が仲良くなることを嫉妬するなんて小さな男だな」

 

「うーん……できればエマの話を聞きたいのだけど……クロウ君がそう言うならまたの機会にしようかしら?」

 

 クロウの意見を尊重するイソラにアンゼリカは眉を顰めて尋ねる。

 

「ちなみにクロウとはどんな関係――」

 

「おおっと! ゼリカ! バイト! 冷たいドリンクを今すぐ寄越せっ!」

 

 アンゼリカの質問にクロウが声を上げて掻き消そうと試みる。

 しかしクロウの妨害は空しく、イソラが答える。

 

「私はクロウ君の所有物です」

 

「……………所有物……?」

 

 イソラの答えにアンゼリカは固まった。

 

「所有物……そうか……そうか……クロウ……歯を食いしばれっ!」

 

 以前のオルディスで再会した時以上の殺気を漲らせてアンゼリカは拳を握り締めた。

 

「イソラ! だからその所有物って言うのはやめろって言っただろ!」

 

「でも、私は《騎神》のための武具だから《蒼の起動者》の持ち物として士官学院に登録されているのよ」

 

「ふむ……《騎神》のための武具という事は君はミリアム君やアルティナ君と同じというわけか……」

 

 アンゼリカは腕を組み、考え込む。

 そして十秒後――

 

「クロウ、私に《蒼の騎神》を譲れ!」

 

「ふざけんなっ!」

 

「いいや私は本気だ! イソラ君のような子猫ちゃんに合法的に御主人様と呼んでもらえるならば、私は“修羅”になることも厭わない!」

 

 そう言い切ってアンゼリカは拳をクロウに向けて――

 

「アンちゃん……」

 

 静かなその言葉に凍り付いた。

 

「まて……待ってくれトワ……これは違うんだ」

 

 まるで浮気現場を目撃された男のようにアンゼリカは言い訳を捲し立てる。

 

「言ったよね? 変な事しないって? クロウ君と喧嘩しないって?」

 

「こ、これはその……クロウ……」

 

「いやー助かったぜトワ教官、危うく水に沈められるところだった」

 

「クロウッ!?」

 

 助けを求めるアンゼリカをあっさりとクロウは切る。

 

「アンちゃん……お説教だよ」

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 リィンは水面に浮かび、ぼうっと天井を見る。

 

「…………………」

 

「何をしているのですか?」

 

「アルティナ……?」

 

 呼ばれてリィンは浮かんでいた体勢から体を起こして振り返る。

 プールサイドに立ち、浮き輪を抱えて自分を見下ろすアルティナと目が合い……リィンは首を傾げた。

 

「たしかアルティナは水泳部だったよな?」

 

「何か文句がありますか?」

 

 リィンの視線にアルティナはジト目を返す。

 

「いや……文句があるわけじゃ……」

 

「たしかにわたしはまだ40アージュを泳ぎ切る能力はありません……

 ですが今回は長期間水中で遊ぶ必要があるため、この浮き輪を利用することが最適な装備なのです」

 

「そ、そうか……」

 

 早口で浮き輪を装備している正当性を語るアルティナにリィンは怯みながらも頷く。

 

「えっと……」

 

 続く言葉をリィンは考える。

 テスト前に言ってしまったアルティナを巻き添えにしてしまった言葉をどう謝罪しようかとリィンは考えて、アルティナを見上げる。

 真っ白な足が最初にリィンの目に飛び込んできた。

 そのまま顔を上げていくと、太ももに浮き輪。そして体にフィットした競泳水着。

 下から見上げれば小柄なアルティナも相対的に大きく見えるなと、場違いな事をリィンは考えて――アルティナがリィンの頭を踏み、水の中へ押し込んだ。

 

「ぶくぶくぶく……何をするんだっ!?」

 

 アルティナの足を避けて水面に顔を出したリィンが叫ぶ。

 

「不埒な視線を感じました」

 

「人聞きの悪いことを言わないでくれ、そんな気持ちは全く――」

 

 最後まで言わせてもらえずリィンはもう一度アルティナに踏まれて水の中に沈む。

 

「――――アルティナッ!」

 

「…………」

 

 抗議の言葉を聞き流して、アルティナは浮き輪を水面に浮かべて座る。

 

「…………《クラウ=ソラス》程ではありませんが、悪くない座り心地ですね」

 

「そうか……それは良かったな……」

 

 リィンはため息を吐いて、項垂れる。

 

「リィンは……皆さんと遊ばないんですか?」

 

「遊ばないって言われてもな……」

 

 リィンはプールの中央へ視線を向ける。

 そこでは――

 

「死ねこらっ!」

 

「物騒なことを言うな!」

 

 アッシュとクルトが直径5アージュ程の浮島でスポンジの剣を交えていた。

 水上チャンバラとでも言えば良いのか、限られた不安定な足場から落ちたら負けと言うシンプルなルールで武闘派なクラスメイト達が戯れている。

 

「あの手の訓練は散々やらされていたからな……俺は遠慮しておくよ」

 

「…………そうですか」

 

「そういうアルティナはみんなに混ざらないのか? あの条件ならアルティナにも十分に勝算はあると思うけど」

 

「…………それはわたしが邪魔と言う事でしょうか?」

 

「そういうわけじゃないけど……」

 

 二人の間に気まずい沈黙が流れる。

 どうしようかと途方に暮れるリィンだが、アルティナが話題を振った。

 

「次からリィンは《ゾア・ギルスティン》に乗るつもりですか?」

 

「それは……」

 

「《ティルフィング》はどうするつもりでしょうか?」

 

「《ティルフィング》の扱いについては分校長にも言ったけど、まだ何も決めてない……

 《ゾア・ギルスティン》に乗るかと言われたら……そっちの方が良いんだろうな」

 

 今まで《ティルフィング》で“相克”に、他の騎神たちに挑むつもりだったがそれは無謀な試みでもあった。

 《機神》はまだ導力工学の常識を超える性能を有していなかった。

 そんな“格”が足りてない機体で騎神に挑むことは自殺行為に等しい。

 だが戦わないわけにはいかないリィンには《機神》で戦うしかなかったのが以前の話。

 

「性能的には新しい《ティルフィング》は《オルディーネ》に近い性能を持っているし、操作性も扱いやすい……

 それに比べて《零》は……」

 

 リィンは言葉を濁して唸る。

 《零の騎神》ゾア・ギルスティンはとにかく扱いにくい機体だった。

 性能が低いわけではない。

 むしろ高過ぎて今のリィンでは持て余す。

 複数の《聖痕》によってリミッターが造られて、その状態なのだからリィンとしてはどうすれば全ての性能を引き出せるのか考えてしまう。

 

「やはり《ゾア・ギルスティン》に乗るつもりなんですね」

 

「…………ああ……」

 

 《騎神》たちの相手を考えれば、《零》を使わない理由はそれこそない。

 

「キーアから“剣”を受け取っていましたね」

 

「アルティナ?」

 

「……わたしは……わたしの“剣”はもう不要だと言う事でしょうか?」

 

「それは……」

 

 アルティナの問いにリィンは答えに詰まる。

 

「戦術殻の武具は武器としてではなく、《騎神》や《機神》の性能を引き上げる効果があります……

 それは《ゾア・ギルスティン》にも適用されるはずです。なのに別の“剣”を用意するということは、わたしはもう不要だという事でしょうか?」

 

「あの“剣”とアルティナの太刀は比べられるものじゃない……

 《ティルフィング》のように《ゾア・ギルスティン》の力も引き出してくれるなら、アルティナの“太刀”はこれほど心強いものはない」

 

「なら……」

 

「だけど、ここから先の戦いでアルティナが俺に協力したら、立場的にまずいんじゃないのか?」

 

「…………」

 

 目を伏せて、考え込みながら話すリィンはアルティナの変化する反応に気付かない。

 

「…………《クラウ=ソラス》」

 

「え……?」

 

 黒い戦術殻が現れると、リィンが反応する間もなく鋼の両手を使って水の中へと沈める。

 

「…………アルティナ!?」

 

 《クラウ=ソラス》の腕から逃れて水面に顔を出したリィンは流石にこれは冗談では済まないと怒ろうとして――

 

「明日の夕方、改めて話があります」

 

「アルティナ?」

 

 そのお叱りから逃げるようにアルティナは浮き輪から《クラウ=ソラス》に乗り換えてリィンから距離を取る。

 

「その時にわたしの覚悟を見せます……良いですか?」

 

「…………分かった……」

 

 その言葉からリィンは何かの決意を感じ取って頷いた。

 

「アルティナ! リィン! 二人とも何してるの! 二人もこっちに来なさいよ!」

 

 ユウナの呼ぶ声に、二人は肩を竦めてクラスメイト達の輪へと入って行った。

 

 

 

 

 

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