閃の軌跡Ⅲ ―偽りの仮面―   作:アルカンシェル

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86話 衝突

 

 

 

「そうですか……そんな事があったんですか……」

 

 その日の夕方。

 約束通りリィンはアルティナを待っていたのだが、帰ってきた彼女はとても話ができる状態ではなかった。

 扉の隙間から、ベッドの上でシーツを頭から被って引きこもるアルティナの痛々しい姿にリィンは顔をしかめる。

 

「戦術殻による《ティルフィング》のブラックボックスの解析か……」

 

「リィン、その事についてはアルきちも戦術殻にそんな機能があるなんて知らなかったんだ。あまり責めてやるなよ」

 

「分かってます、ランディ教官」

 

 リィンのランディの言葉に頷く。

 

「……言われてみれば、あって当然の機能でしょう」

 

 《クラウ=ソラス》に関する新しい情報は驚くべきことではない。

 アルティナの出自を考えれば想定しておくべきだった事。

 そこに気を回さなかったのは無意識にアルティナは“リィン”の味方だという甘えがあったのだろう。

 

「あって当然って何よ?」

 

 リィンがその事実を静かに受け止める一方で、その淡白な反応にユウナが眦を上げた。

 

「《クラウ=ソラス》もアルティナも情報局、オズボーン宰相側の人間だったんだ……

 あの鉄血宰相なら、そういう仕込みをアルティナに知らせずにしていてもおかしくはないって話だ」

 

「あんたは……《クラウ=ソラス》が本当に裏切っていたと思ってるの!?」

 

「《クラウ=ソラス》の意志は関係ない……

 だけど……案外これで良かったのかもしれないな」

 

 落ち込んでいるアルティナには悪いが、同時にリィンは安堵している。

 アルティナと《クラウ=ソラス》と共に戦う事は確かに安心感があり、頼りにしていた。

 しかし、一方でこれからより激しくなるだろう戦いからアルティナを遠ざける理由を得た事に安心している。

 

「これで良かったって……あんたは本気で言ってるの!?」

 

 ユウナは淡々としゃべるリィンの胸倉を掴んで声を荒げた。

 

「お、おい、ユウナ!」

 

「ユウナさん」

 

 そのまま殴らんとする勢いにクルトとミュゼが制止に動くが、ユウナは拳を握り締めたまま言葉をぶつける。

 

「アルティナは! あんたに信頼されたいから鉄血宰相に直談判に行ったのよ!

 クラウ=ソラスだって、それが分かっているから自分で止まったに決まってるでしょ!」

 

「……それをどうやって証明できるって言うんだ?」

 

「そんなの仲間だからよ!」

 

 リィンの言葉にユウナは迷うことなく即答する。

 

「…………ユウナは単純で羨ましいよ」

 

「リィン……あんたはっ!」

 

 リィンの空虚な眼差しにユウナは思わず固めた拳を振り抜いていた。

 

「ユウナッ!」

 

「リィンさんっ!」

 

 よろめいたリィンは特に何も言わず、冷めた目でユウナを見返す。

 

「どうしてあんたはそうなのよ! あんたがアルティナとクラウ=ソラスを信じて上げないでどうするのよ!」

 

「信じてどうにかなる問題じゃない……

 アルティナもクラウ=ソラスも……俺も……ユウナとは違うんだ」

 

「何が違うって言うのよ!」

 

 もう一度ユウナはリィンの胸倉を掴んで詰め寄る。

 

「あんたはいつもそうよね!

 斜に構えて! 勝手に見下して! 決めつけて! いつまで拗ねてるのよ!」

 

 勢いのまま叫んだ言葉にユウナはようやく合点がいった。

 ずっとリィンに感じていた距離感。

 目の前の少年は初めて会った時からずっと拗ねて不貞腐れているのだと本能でユウナは理解する。

 

「…………何の事だ? 俺は別に拗ねていない」

 

「そうやってすぐに惚ける……

 ティルフィングに選ばれて、ゾア・ギルスティンに選ばれて、特別だからってあんたが全部正しいと思ってるんじゃないわよ!」

 

「そんな事! ユウナに言われる筋合いはない!」

 

 リィンはユウナの叫びに負けじと叫ぶ。

 

「リィン……」

 

「ユウナ……」

 

 睨み合う二人。

 遠巻きにしていた生徒たちは一触即発の空気に狼狽える。

 

「……お前ら、熱くなりすぎだ」

 

 見かねたランディが仲裁のため口を挟み――別の音に二人は言葉を呑み込んだ。

 キイっと小さな音が響いて、ドアが開く。

 

「…………やめてください…………」

 

 まるで生気を感じさせない声。

 立っているのもやっとというように体をドアに預け、俯いたままアルティナはか細い声で訴える。

 

「…………リィンは悪くありません」

 

「ちょっとアルティナ!」

 

「リィンは悪くありません……悪かったのはわたしとクラウ=ソラスです……だからリィンを悪く言わないでください」

 

 ユウナの言葉を無視して、アルティナは抑揚のない淡々とした言葉でリィンは悪くないと繰り返す。

 

「っ……」

 

 アルティナの物言いにユウナは責めるようにリィンを睨む。

 その視線を感じながらも無視して、リィンはアルティナに一言告げた。

 

「アルティナとクラウ=ソラスが悪かったとは思ってない……

 だから、必要以上に自分を責めなくていい……」

 

 それ以上の言葉は思いつかなかったのか、リィンはアルティナに背中を向けて歩き出す。

 

「あ……」

 

 離れていくリィンにアルティナは小さな声をもらすが、すぐに押し黙り、その場にへたり込む。

 

「アルティナちゃん!」

 

 ティータがすぐに駆け寄ってその体を支える。

 

「ぐぬぬぬぬっ!」

 

 そんなアルティナを一度も振り返らずに去って行ったリィンにユウナは憤怒に体を震わせるのだった。

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 日付が変わる深夜。

 リィンは床に入らず、仔猫印の導力端末の前で腕組をして微動だにしなかった。

 

「…………」

 

 今日の実験で判明した《零》の機構を纏めなければいけないのに、レポートは一文どころか一文字も書けていない。

 

「…………俺のせいなのか……?」

 

 ユウナに殴られた頬をさすりながらリィンは独り言ちる。

 脳裏には憔悴し切ったアルティナの姿がこびりついて離れない。

 

「俺もアルティナについて行くべきだったのか……?」

 

 アルティナの言葉を信じて送り出したのは間違いだったのだろうか。

 《OZ》という出自に、情報局という所属に、彼女に付きまとう不信さにばかり気を巡らせていた結果、《クラウ=ソラス》がいなくなった。

 

「…………貴方なら、どうしていた?」

 

 天井を仰いでリィンは誰かに尋ねる。

 当然答えなど返って来るわけはなく、リィンはただ空しい自問自答を続ける。

 

「アルティナを信じ切れなかったから、クラウ=ソラスが俺を信じてくれなかったから……

 ユウナが言う通り、俺はプログラムを果たすための“人でなし”だから、こんな事になってしまったんだろうか?」

 

 いくら考えを巡らせても、後悔ばかりが募る。

 実際に戦術殻にはリィンが懸念していた機能があった。

 だから正しい選択をしたいるはずなのに、リィンは胸は晴れない。

 

「……アルティナが前線から遠ざけられるなら、これでも良いのかもしれないって思ったけど……思ったんだけど……」

 

 戦術殻の太刀がなくても、“はがねのつるぎ”がある。

 まだ扱え切れていないが《騎神》と戦える《零》もある。

 だから必ずしもアルティナのサポートは必要ないのに、リィンは言葉にできない喪失感を持て余す。

 

「はあ……本当にこんなことで鋼の“呪い”を滅ぼす事ができるのか?」

 

 ため息を吐き、リィンは導力端末に手を伸ばすが、やはり手はそこで止まってしまう。

 全く調子が上がらない。

 ならばいっそう寝てしまえば良いのかもしれないが、眠気も感じない。

 どうしようかと途方に暮れるリィンは――抜けた気を引き締めて、鋭い視線をドアに向ける。

 

 ――コンコン――

 

 数秒遅れて、控えめなノックが深夜の部屋に響く。

 

「その気配はアルティナか? 鍵なら開いているから入って大丈夫だぞ」

 

 入室の許可を出せば、ゆっくりとノブが回って扉が開く。

 

「…………夜分、遅くに失礼します」

 

 静かに部屋に入ったアルティナはどこか落ち着かない様子だった。

 

「何かあったのか? 消灯時間はとっくに過ぎているぞ」

 

「それをリィンが言いますか?」

 

 アルティナは椅子に座って電源が点いている導力端末を一瞥して、作業していただろうリィンにジト目を向ける。

 

「お、俺のことはいいんだ」

 

 アルティナの眼差しにリィンは怯みながら、端末の導力を落とし、改めてアルティナと向き合う。

 

「それで……ええっと……ユウナに何か不埒な事をされたとか? それで避難をしにきたのか?」

 

「いえ……添い寝をしようとしてくるユウナさんは追い出したので問題ありません……ですが……」

 

 アルティナは佇まいを直して、頭を下げた。

 

「申し訳ありませんでした」

 

「アルティナ……」

 

「わたしのせいで《ティルフィング》の情報が漏洩していました」

 

「それはアルティナのせいじゃないだろ」

 

「いいえ……わたしはもっと自分について考えるべきでした」

 

《OZ》であることの意味に情報局であることの意味。

 

「まさにリィンが懸念していた通りになったわけですから……」

 

「それでも俺はアルティナに傷ついて欲しかったわけじゃない……《クラウ=ソラス》だってちゃんと仲間だと思っていた」

 

「その気持ちだけで十分です……リィン、これを受け取ってください」

 

 そう言ってアルティナが差し出したのは銀のハーモニカだった。

 

「アルティナ、それは……」

 

 リィンはそれが何かを知っている。ただそれはあくまでも知識としてアルティナと“彼”の絆の証として知っているだけである。

 

「このハーモニカはわたしが初期化された時に持っていたものです……

 《影の国》から持ち出せたものだと分かったのは内戦の時ですが、わたしにとってこのハーモニカを吹いている時は任務を忘れて温かな気持ちになれる一時でした」

 

「…………ああ、知っている」

 

「でも、やはりわたしにこれを持っている資格はなかったんです」

 

「アルティナ……」

 

「どれだけ繕ってもわたしは命じられればどんな任務も遂行する《黒兎》だったんです……

 “彼女”を殺した人形……

 わたしは……わたしもクロスベルに派兵される“あの人”を黙って見送っていた帝国政府側の敵だったんですから」

 

「それは“私たち”も同じだ……」

 

 リィンは口調を変えて、アルティナに同調する。

 

「力の大半が使えないから、“彼”が力を望んでくれなかったから……

 そんな言い訳をして“私たち”は“彼”ならば何かあっても乗り越える。そう過信して、見送ってしまった」

 

「リィン……」

 

「そして何よりも“彼”を殺してしまったのは“俺”だから……

 そのハーモニカを受け取る資格は俺にはない」

 

「リィンのそれはわたしとは違います」

 

「ああ、違うな……

 アルティナの罪は君の知らないところで勝手にプログラムされた事だ……

 “あの子”の事も、《ティルフィング》の事も、君の意志とは関係ない……

 それに比べて俺は浅はかに願いを叶えて取り返しのつかないことをしてしまったんだ……

 今回のことだって俺がもっと気を付けていたら――」

 

「いいえ、わたしが――」

 

「いいや、俺が――」

 

「おいおい、こんな夜更けに騒ぐんじゃねえよ」

 

 自分が悪いと言い張るアルティナとリィンの間に第三者の声が割って入った。

 

「消灯時間はとっくに過ぎてるんだ。あんまり騒いでいると怖……くはないが、めんどくさい教官に見つかると面倒な説教を喰らう事になるぞ」

 

「クロウ……」

 

「しっかし……」

 

 クロウは部屋の中のリィンとアルティナを見比べて意味深に笑う。

 

「ついにお前たちも大人の階段を昇る時が来たってわけか?」

 

「…………はあ……そういう下世話な話をしていたんじゃない」

 

「不埒ですね」

 

 クロウの言葉にリィンとアルティナは息を合わせた軽蔑の眼差しを送る。

 

「はは……」

 

 二人のそんな目をクロウは笑い飛ばす。

 

「で、いつまで終わっちまったヤツの事でウダウダ足踏みしているんだ?」

 

「…………」

 

「…………クロウ……」

 

「事実だろ?」

 

 二人に睨まれながらもクロウは肩を竦ませるだけで臆することなく続ける。

 

「今のお前らを見たら“あいつ”は何て言うと思う?」

 

「む……」

 

「それは……」

 

「やっちまった事を悩んでないで、前向きになった方が良いんじゃないか?」

 

「簡単に言ってくれますね……」

 

 クロウの言葉にアルティナは言い返す。

 

「あなたは許す事ができるんですか?

 あなたがリィンだったら、わたしが《ティルフィング》やリィンの情報を漏洩させていた事を」

 

「ああ、どうでも良い」

 

 アルティナの訴えにクロウははっきりと頷いた。

 

「俺には知識もなければ、鍛える時間もない。オルディーネを直すには帝国の奴らの協力が不可欠だし、武装デバイスだって必要だ」

 

 クロウは拳を握り締め、屈辱を噛み締めながら続ける。

 

「オズボーンの野郎が用意してくれるって言うなら、喜んで利用させてもらおうじゃねえか……

 デメリット上等、それを呑み込んで上で、奴をぶん殴ってやるよ」

 

「…………それは単純過ぎませんか?」

 

「お前らが複雑に考えすぎなんだよ」

 

 アルティナの文句をクロウは軽くあしらって背を向ける。

 

「とっとと寝るんだな……

 トワが言うには明日からまためんどくさい事が始まるらしいしな……

 消えるなんて勘弁してくれよ。お前たちは貴重な博士たちのブレーキ役なんだぜ」

 

 言うだけ言って、クロウはリィンの部屋から去って行く。

 

「…………勝手な事を……」

 

 改めて二人きりになったリィンとアルティナだが、先程の険悪な空気はクロウによってすっかり毒気を抜かれてしまった。

 少なくてもこのまま口論を続ける意思は萎えてしまった。

 

「とりあえずもう遅い、話すなら明日にしよう」

 

「………………そう……ですね……」

 

 リィンの提案にアルティナは何故か目を逸らした。

 

「アルティナ?」

 

「いえ……これはわたし、個人の問題になりますので気にしないでください」

 

「個人の問題……?」

 

 アルティナの物言いにリィンは首を傾げる。

 そもそもどうして深夜とも言える時間にアルティナが訪ねてきたのか、そこに違和感を覚えた。

 

「もしかして《クラウ=ソラス》がいなくてトイレにいけなくなったのか?」

 

「…………」

 

 アルティナは無言でリィンの脛を蹴った。

 

「いっつ!?」

 

「不埒ですね……ですが、当たらずとも遠からずでしょうか……」

 

 アルティナは観念したようにため息を吐いて続ける。

 

「わたしはこれまで意識断絶中は《クラウ=ソラス》に周囲を警戒してもらっていました……

 ですが、その《クラウ=ソラス》がいない今は……」

 

「周囲が気になって眠れないと……」

 

「…………強いて言えば……そうかもしれません」

 

「それ以外に言い様はないと思うけど……同室のユウナがそんなに信用できないのか?」

 

「いえ、彼女は既に意識を断絶しているので朝まで起きることはないでしょう……

 ユウナさんからの襲撃の危険はありませんが、それでも……」

 

「さっきから意識の断絶って……いやまあいいか」

 

 リィンはアルティナの物言いに苦笑いを浮かべながら、彼女の様子を伺う。

 眠気を感じながらも周囲に怯える様はリィンにも覚えがある。

 あれはそう……

 

「老師とシズナ姉さんに夜の森に置き去りにされた時の俺みたいな……」

 

「リィン……?」

 

「いや、何でもない」

 

 トラウマを振り払って、リィンはアルティナに提案する。

 

「だったら、ここで寝るか?」

 

「…………え……?」

 

「俺の部屋は二人部屋を一人で使っているからベッドは一つ余ってるのは知っているだろ?」

 

 かつてキーアが短期留学した時に使われていたベッドに視線を送る。

 

「《クラウ=ソラス》の代わりになるかは分からないけど、アルティナが眠るまで俺が見守っているよ」

 

「…………ですが、それではリィンが……」

 

「俺は大丈夫だ……魔獣がひしめく森の中で寝た事があるんだから、何かが襲ってきてもちゃんと迎撃できる」

 

 遠い目をするリィンにアルティナは追及する元気はなかったのか、眠そうに目を擦りながらその提案に頷いた。

 

「それでは……おねがいします……」

 

「アルティナ、そっちは……」

 

 止める間もなく、アルティナは普段リィンが使っている方のベッドに潜り込むと、数秒もしない内に規則正しい寝息を立て始めた。

 

「…………まあ、別に良いか」

 

 自分がもう一方のベッドを使えばいいかとリィンは納得する。

 

「…………おやすみ、アルティナ……」

 

「…………ん……」

 

 既に眠りに落ちたアルティナは小さく唸るようにリィンの声に反応して声を返す。

 リィンはそれに苦笑して、机の灯りを消した。

 

 

*

 

 

 

 翌朝。

 リィンはユウナの怒声に似た叫びに起こされた。

 

「大変よ! アルティナがいなくなったの!」

 

 ドアを乱暴に開けたユウナに、その直前に体を起こしたリィンは淑女とは程遠いユウナにため息を吐いた。

 

「ユウナ……朝から元気だな……」

 

「元気だな、じゃない!

 アルティナがいないの! まさか昨日の事で思い詰めて――」

 

「落ち着けユウナ、アルティナならそこに……え……?」

 

 リィンが視線を向けた先のベッドにアルティナはいなかった。

 

「っ――アルティナッ!」

 

 馬鹿なと、そんな気配はなかったはずなのにとリィンは慌ててベッドから飛び出し――

 

「んん……」

 

「うぐっ!?」

 

 ベッドから飛び出そうとしたリィンを引き留めるように、何かがリィンの体を締め上げた。

 勢い余ってリィンは――リィンと彼に抱き着いていたアルティナが転がり落ちる。

 

「ア、アルティナ!?」

 

 いなくなったと思ったアルティナがいた事にリィンは安堵する。

 しかし、アルティナは起きる気配はなくリィンの体にしがみついたままだった。

 

「…………」

 

「ユ、ユウナ……?」

 

 殺気を感じてリィンは顔を上げる。

 そこには無表情なユウナがいた。

 

「…………」

 

「ユウナさん……?」

 

 恐る恐るリィンは呼びかける。

 しかしユウナはそれに答えず、葛藤に顔をしかめながらゆっくりと後退る。

 

「えっと……お邪魔したわね……

 ま、まだ今日の朝礼には時間があるから……ご、ごゆっくり?」

 

「ユウナ、待てっ! 待ってくれ誤解だ!」

 

 必死に呼び止めるものの、ユウナは何も見なかったと言わんばかりに部屋から出ていくのだった。

 

 

 

 

 

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