ガラルの頂点を目指して   作:笛とホラ吹き

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主人公の旅路を、応援よろしくお願い致します。


0:プロローグ

『エースバーン、キョダイカキュウ!』

『ああぁぁ!ジュ、ジュラルドーン!』

『決まったあぁぁァ!チャンピオンの相棒が最後の一撃を飾る!その無敗伝説に、新たなる1ページが加わりました!』

『ワアアアァァ……!』

 

「はぁ……やっぱスゲーぜ、チャンピオンユウリ!ダクマもそう思うだろ!?」

「マー!」

 

 画面の向こうで行われる激しい戦い。その決着と共に勝利をアピールする最強の姿を見て、少年は大きく歓声を上げた。

 

 ポケットモンスター、縮めてポケモン。

 

 とても不思議な生態を持つ彼らと人間が共存するこの社会では、最もポピュラーな娯楽として人間が育てたポケモン達を戦わせる『ポケモンバトル』が存在する。

 ここガラル地方では、ポケモンバトルを一つの興行として大企業『マクロコスモス』主導の元、より洗練させてきた。トレーナーがポケモンを育てやすくするために必要な道具を整え、より優美で豪快なバトルの様子をお茶の間にお送りするべくスタジアムを建設。更にスポンサー制度を確立し、より多くのトレーナーが現れるよう、分かりやすい『夢』を用意した。一攫千金という夢を。

 

『今年もまた、ガラル最強のトレーナーを決める時期がやってきましたが……誰にだって負けるつもりはありません!全力で、かかってきなさい!』

『チャンピオンユウリ、ありがとうございました!今年のリーグも楽しみになってきましたね!』

 

「俺たちもいつかは、あんな風に……」

「マー……」

 

 年に一度のポケモンバトルの祭典……ガラル中のトレーナーが頂点を目指して競い合う舞台『ガラルリーグ』が、今年も幕を開けようとしている。

 

 

 〜

 

 

「なぁ師匠!今年のリーグは俺も参加していいって言ってたけどさ、嘘じゃないよな!?」

「ワシはそういうウソはつかないよん。チカちんはもう十分な実力を身に付けた……故にマスター道場師範『マスタード』の名において、ガラルリーグへの挑戦を許可する!」

「っ……しゃあ!やったな、ダクマ!」

「マー!マー!」

 

 マスター道場の門下生であるチカには、ある一つの夢があった。それはポケモントレーナーならば誰もが一度は夢見る、憧れの座。何を隠そうリーグを制して、チャンピオンとなることである。

 彼はそんな夢を持った5歳の頃からずっと、道場でポケモントレーナーとして研鑽を積んだ。師範から課される理不尽とも言えるような課題、同門のライバルとの切磋琢磨、共に頂きを目指そうとする相棒との出会い。そんな紆余曲折の末……13歳となった彼は遂に、師範より皆伝及びリーグ挑戦の許可を得たのだった。

 

「先代のダンデちんに、今代のユウリちん……マスター道場からは既に、2人のチャンピオンを出している。チカちんがそれに続き、新たなチャンピオンとなれることを願ってるかんね!」

「あんまり気負い過ぎるのも良くないけどね。気楽に楽しんでくるんだよ……チカ」

「私達も、画面の向こうから応援しています!」

「チャンピオンになって、帰ってくるのですぞ!」

 

「へへ……応援が身に沁みるぜ!」

「マー!」

 

 道場のあるヨロイ島から旅立つその日、チカと相棒ポケモンのダクマは、道場のみんなからの激励を受けていた。

 チャンピオンへの道は、決して楽なものでも楽しいばかりのものでもない。それが分かっているからこそ、旅立ちを見送るみんなの眼からは心配が滲み出ている。不安・心配。そんな心に沁みる気持ちに対して安心させるように、チカは勢いよくサムズアップする。そして一言、宣言した。

 

「見とけよみんな……今年のリーグでは、数多の強豪もユウリ先輩も全員倒して……!俺達がチャンピオンになーる!」

「クマー!」

「その意気だぞ!」

「いくらでも調子に乗りなさい!」

 

 

「テントは持った!?」

 

「ポケモン図鑑は!?」

 

「食料は忘れてないよな!?」

 

「師範の推薦状は!?」

 

「モンスターボールは!?」

 

「キズぐすりも大丈夫か!?」

 

「地図はちゃんと読めますか!?」

 

 

「だー!大丈夫だよ、昨日の内に何度も何度も忘れ物がないか確認しただろ!?」

「みんな別れるのが寂しいだけだよん。あんまり邪険にしないであげて。これ……皆伝の証ね。ガラル本島に着いたら忘れず使うこと!」

「はい!みんな……見送りありがとう。少しだけ寂しくなっちゃうけど、行ってきます!」

「マ────!」

 

 本島に向けて走る列車に乗り、チカは道場の仲間達に別れを告げる。あっという間にヨロイ島は小さくなり、そのシルエットは見えなくなった。

 最後の最後まで口うるさいみんなだったが、これからはあの喧騒もなくなると思うと、少しだけ寂しいと思えてくる。そんな胸に滲む寂寥感を振り払うように、列車の揺れに身を任せながらチカは窓の外を眺めるのだった。

 

 ダクマは既にボールの中に入り、戦いの時が来るのを待っている。自分も列車を降りた先で待つその時まで、興奮し昂ぶる気持ちを鎮めていく。自分達以外は誰も乗っていない列車からは、揺れる鉄の音だけが静かに響いていた。

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