『両者相棒ポケモンをキョダイマックス!大怪獣バトルの始まりだ!』
「ダイナックル!」
「ダイウォール!」
キョダイマックスしたウーラオスが拳を突き出すと、天から拳型のエネルギーが降り注ぐ。流星群のように幾重にも迫り来るエネルギーの暴力を、タルップルはガラル粒子を掻き集めた強固なシールドによって全て防ぎ切って見せた。
攻撃が終われば、その反動で僅かながらウーラオスに隙ができる。ヤローはその緊張が綻ぶ一瞬を見逃さない。もう一度攻撃しようとするその隙に、反撃の一打を与えていく。
「キョダイカンロ!」
「たるぅ……!!」
「ウラッ……!?」
タルップルの口から放たれるのは、彼の身体の中で熟成発酵された大量の体液。果実のような甘味を内包したその液体は、キョダイマックスしたウーラオスの巨体を瞬く間に糖の海へと沈めていく。
『果汁の波がウーラオスを飲み込んでいく!甘い甘い糖の海に沈むウーラオス、抜け出せるか!?』
「ウーラオス、ダイサンダー!」
「ウラァ!」
重い果汁の沼から無理矢理右腕を引き出し、高々とその拳を天に掲げるウーラオス。突き出した頂点に引き寄せられるように曇天がターフスタジアムを覆い隠し、轟雷を落とした。
落雷の衝撃で果汁が弾け、その衝撃でタルップルはキョダイカンロを吐き出すのをやめてしまう。中途半端に残ってしまった果汁が喉に詰まり、盛大にえずくタルップル。その大きなモーションを逃すようなチカではない。すかさずウーラオスに対して、最大の一撃を放つよう指示を出した。
「ブチ抜け……キョダイイチゲキ!」
「ウッ……ラアアァッ!」
「ぐっ……タルップル、ダイウォールです!」
「た、たるぅ……!」
焦るヤローの指示を聞き、体制を立て直してバリアを張るタルップル。どんな攻撃だろうと必ず防いでくれる無敵のバリア。せめてこの場を凌いでから後をどうにかしようという、時間稼ぎのための指示であったのだが……しかし、ウーラオスにはバリアなど通じない。
拳に収束していく暗黒のエネルギー。赤と黒の激しい波が右腕に絡み付き、ウーラオスのキョダイマックスにより白くなった身体を染めていく。そのまま正拳突きの構えを取り、必殺の一撃を暗黒の力を乗せて打ち放つ。
必殺『キョダイイチゲキ』。全ての力を一点に集約させたその技は、拳から標的を守るあらゆる苦難や障害をブチ抜くのだ。
「そ、そんな……ダイウォールを貫く!?」
「ウーラオスを前にして……バリアーなんてガラス板とおなじだ!」
「ウゥ……ラァッ!」
「たっ……るっ……」
ダイウォールの厚い障壁を貫通し、タルップルの喉元に突き刺さるキョダイイチゲキ。ウーラオス最高の技を急所に食らってしまったタルップルは、そのままキョダイマックスを強制解除され地面に倒れ伏した。
ガラル粒子が爆散し、急速に元の大きさへと戻っていくタルップル。ぐるぐると目を回して動かないその姿を確認して、審判はこのバトルに決着がついたことを宣言する。
「タルップル、戦闘不能!ウーラオスの勝ち!これにより、ジムリーダーヤローの手持ちポケモンは全てが戦闘不能になりました!よって勝者、チャレンジャーチカ!」
「うおおおぉぉ!」
「凄かったぞー!」
「このまま全員ブチ抜いて優勝だー!」
「お前がチャンピオンだー!」
「ウーラオスはその特性で、どんな守りも貫けるということは知ってましたが……まさかダイウォールすら突破できるとは思ってもいませんでしたよ。今回は僕の完敗ですね!」
「フッ……まあざっとこんなもんですよ!リベンジなら最後のトーナメントで受け付けますよ!」
「その言葉、ちゃんと覚えておいてくださいよ。これが僕に勝利した証……くさバッジです。トーナメントまであと7つ、まだまだ道のりは長いですが頑張ってください!」
「もちろん!対戦、ありがとうございました!」
チャレンジャーの勝利した証であるバッジをヤローから受け取り、チカはそれを専用のホルダーにしまう。チャンピオンに挑戦するための長い長い道のり、その壁の一つを突破したのだ。
バトルが終わればもう、2人の間に後腐れなどどこにもない。がっちりと固い握手を交わし、対戦ありがとうと挨拶をする。礼儀正しくスポーツマンシップを遵守する彼らに、観客は思いのままに声援を浴びせた。どんなに強いトレーナーでも、それがマナーのなっていない人間ではどんなバトルも白けるというものである。
「次の目的地はバウタウン。対戦相手はジムリーダールリナです。彼女も強いですが……君ならきっと素晴らしいバトルを見せてくれるでしょう!僕を倒したその力で、そのまま突き進んでください!」
「はい……もちろん、俺は誰にだって勝ってやりますよ。応援ありがとうございました!」
ユニフォームからいつもの服に着替えたチカは、この日最後の勝利した挑戦者ということでヤローから見送りを受けていた。次の目的地と戦う相手を教えてもらい、その地に向けて自転車を走らせる。一つの大きな関門を超えたその足は、とても軽快に自転車のペダルを漕いでいた。
「そういや、ウインディ」
「ういん?」
「お前には結局、大した出番をやれなかったな」
「ういん……」