ダンジョンのある世界に転生したのは間違っているだろうか   作:舌百

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序章
第一話 迷宮都市(オラリオ)


「なあんでこうなっちゃったかなぁ…。」

 

中世風の部屋の中で服を着替えながら1人愚痴る。こんなことになった原因というのも…。

 

時を遡ること数時間

 

私、福永紗凪はいつものようにアラームの音で目を覚まし、いつものようにご飯を食べ、親に行ってきますと言って学校への道をてくてく歩いていた。日差しの強い真夏日だった。そして校門が見えた時に背中に誰かがぶつかった。直後背中に広がる温かい感覚、朦朧とし始める意識。立っていられなくなって膝から地面に倒れる。倒れて少しして、私は気づいた。ああ、刺されたんだな、と。そして私は白い光を最後の景色として意識を落とした…はずだった。

何故か目を開けられた。背中にあったはずの痛みもない。

 

「…あれ?」

 

それどころかうつ伏せに倒れたはずなのに自分は今空を見上げている。どこまでも広がる青い空、しかし先程までの刺すような日差しはどこにもなく太陽は優しく私を照らしている。背中に触れる草原のくすぐったさや頬を撫でる柔らかな風が心地いい…草原?

ハッと気づいて体を起こして辺りを見渡す。そこには草原が広がっていた。私の17年の経験では私の住んでいる場所は日本という国の一般的な住宅街。近所にこんなアルプスやモンゴルの大草原のような場所はなかったはず。これはあれですか、最近流行りの異世界転生とかいうやつですか。

 

その考えが頭に浮いた時に喜びよりも先に親や友達と今生の別れとなった悲しみが溢れ出し、ポロポロと涙がこぼれ落ち始めた。これ言っておけばよかったかな、もっと一緒に遊びたかったな、今頃悲しんでるかななどが次々に頭に溢れる。日頃から転生してみたいとか言ってはいたけど実際すると、そんな後悔しか浮いてこない。溢れ出る涙を抑えられるほどに心が大人ではなくその場で泣きじゃくってしまった。

数十分たったか、それとも数分だけかはわからないが私は意を決した。立ち上がり、顔を袖で拭って天を仰ぐ。

 

「過ぎたこと気にしすぎてもしょうがない!よし!私頑張れ!お母さん、ごめんね!私この世界でやっていくよ!」

 

そう大声で宣言し、前を見据える。

 

「ところでこれって、何系の世界なんだろうなぁ。転生なのはいいんだけど転生系小説特有の神様が眼の前に出てきてスキル覚えさせてくれたりとかなかったし、もしかしてほのぼの系?」

 

そうつぶやき周囲を見渡す。もしかしたら何か情報が手にはいるかもしれないと思ってだ。そして後ろを振り返ったときに視界に入ったものは、私の愛読している小説でよく見知ったものだった。

天を衝く巨大な塔にそれを囲う巨大な城壁…迷宮都市(オラリオ)だ。

ダンまち…『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』の舞台でありこの世界において最大の、冒険者の集う都市。眼前に広がる景色に先程までの悲壮感とはうってかわって、私の心は躍っている。そしてルンルン気分のまま足を踏み出したとき、長く伸びた草は現代人の足にとって不慣れ極まりないことを失念していた私は思いっきり地面に体を叩きつけた。

 

「ぼふぁぇ?!」

 

しかも、昨日辺りに雨が降ったのだろうか、ちょうどころんだ先に浅く張った水たまりがあり、顔面もセーラー服もまるごと泥だらけになってしまった。

顔から泥を払っていると後ろから声をかけられる。

 

「あの…大丈夫ですか?」

「ふぇ…?」

 

そこにいたのは、見知ったストーリーのキャラ…ではなく橙色がかったショートヘアーに黄色の瞳、そして冒険者らしい服装をしたシアンスロープの少女だった。

 

「えと、その…盛大に転んでらっしゃったので。」

「あ、お恥ずかしいところを…。」

「もしよろしければ、うちのファミリアのホームに来ませんか?着替えくらいなら、貰えると思いますので。」

「いいんですか?ありがとうございます!」

 

そしてその少女についていき、今に至るというわけだ。その少女から聞いた話によると、さきほどは隣町との交渉からの帰りだったらしく、他のメンバーより少し早く帰宅してギルドへの報告なんかをする役割だったらしい。彼女は今はギルドに行っておりこのホームには私一人しかいない状況である。彼女に聞いた話ではここはケルヌンノスファミリアという中堅ファミリアらしい。ストーリー本編では名前すら上がっていなかったがあったようだ。団長はレベル3、主神はケルヌンノスという牡鹿の角を持つ男性神らしい。

今手に持っている服は冒険者が鎧の下のインナーとして着ているような服で、簡素なデザインが可愛い。袖を通し、ホックを閉めて一通り身に纏えたところで姿を見ようと鏡の前に立ったとき、絶句した。

日本人特有の黒い髪、黒い瞳はどこへやら、そこには白い髪に緑の目をして、エルフ耳を生やしている美人なハーフエルフが映っていた。

 

「な、なんじゃこりゃあ!」

 

変わっていないのは身長体重、胸の薄さのみでその他は前の体の面影がないほどに変化していた。リアル志向だった画風も心做しかアニメ寄りになっている気がする。

脳みそが混乱で何も考えられなくなっているときにいきなり下の階にある扉が開いた音が聞こえた。

自分のいる部屋から音を出さないように出て吹き抜けのところから一階を見ると先頭に牡鹿の角を持つ男性、その後ろに多数の冒険者がいた。どう考えてもあれはこのファミリアの主神、ケルヌンノスであるだろう。

あの少女の仲介もなくいきなり顔を出すのもなぁ…とウンウン唸っていると、牡鹿の男性がこちら側を一瞥した。

 

「そこにいるのは…だれかな?」

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